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イノベーティブで多様性のある組織を作る、複業受け入れのススメ

PROFILE

株式会社フューチャーセッションズ

代表取締役
金沢工業大学 教授(KIT虎ノ門大学院)
国際大学GLOCOM 主幹研究員
社団法人 渋谷未来デザイン フューチャーデザイナー
博士(工学)
野村 恭彦

慶應義塾大学大学院理工学研究科 開放環境科学専攻 後期博士課程修了。富士ゼロックス株式会社入社後、同社の「ドキュメントからナレッジへ」の事業変革ビジョン作成を経て、2000年に新規ナレッジサービス事業KDI(Knowledge Dynamics Initiative) の立ち上げに携る。2012年6月、企業、行政、NPOを横断する社会イノベーションを牽引するプラットフォームとして株式会社フューチャーセッションズを創設。2013年4月、金沢工業大学虎ノ門大学院教授に就任。ACM CSCW国際会議やIEEE国際会議、情報処理学会など論文多数。

国を挙げて働き方改革が推進されている昨今では、働き方の多様性を認め、社員の副業を容認する企業も増えてきました。しかし、会社から副業を認めてもらったものの「副業する場所を見つけられない」というケースも珍しくありません。確かに副業を容認する企業の話題が多い一方で、副業者を受け入れる企業の情報はほとんど出ていないのが実情です。そうした中、企業と行政、NPOをつなぐイノベーション・コンサルティングを提供する株式会社フューチャーセッションズは、社長を含む6名の社員に対して6名の副業者(同社の定義では「複業者」)(2018年10月現在)を受け入れることで多様性のある組織づくりを進めていると言います。今回は代表の野村氏にインタビューし、同社独自の複業の受け入れ方、複業者が会社や組織に与える影響やメリットなどについて詳しくお聞きしました。

※本記事では、「副業」=一般的な意味。本業ありきのもの、「複業」=フューチャーセッションズ社やサイボウズ社での使用/自分のスキル向上やビジョン実現のために行うもの、という位置づけで使用しています。

複業者と話し合い、その人にとって魅力的で成長できるような仕事を作る

複業者と話し合い、その人にとって魅力的で成長できるような仕事を作る

正社員6名に対して副業・兼業の方が6名も働いているそうですが、貴社はいつごろから副業・兼業の方を受け入れるようになったのでしょうか?

野村氏:副業というとお金のために本業のサブとして始めるというイメージがありますが、私たちが考えるべき副業は、複数の方の「複業」であると捉えています。複数の仕事を持つことにより、自分自身の本当にやりたいことにフォーカスしながら働くといったイメージでしょうか。実は弊社の場合、プロジェクトベースの仕事では、以前からフリーランス的に働いている方を迎え入れて協業していました。ここ数年、大手企業が副業をOKにするというニュースが出始めたときに「ウチは副業(複業)を受け入れていることになるのか」と改めて認識したぐらいです。

特に意識せずに複数の方たちと仕事をしていたということですね。それでは複業の方を意識的に受け入れ始めたのは最近ですか?

野村氏:本格的に複業の方の受け入れをスタートしたのは2018年に入ってから。それまでのようなプロジェクトベースの仕事ではなく、コーポレートの仕事を中心にお任せするようにしています。今回取材に同席いただいている、なかむらさんはサイボウズの方ですが、当社の広報業務をお任せしています。リクルートグループの方には私と一緒に中期経営計画を作っていただいていますし、元々世界トップクラスのグローバル企業で人事部長をされていた方には当社の組織開発を担当いただいています。

皆さんはどのような経緯があって貴社で複業を始められたのでしょうか? またプロジェクトベースではなく、コーポレート業務を担当いただいている理由についても教えてください。

野村氏:今、当社で複業してくれている方々は、もともとはクライアントであったり、私が教えている大学院の生徒であったりという感じで、さまざまな付き合いの中で知り合った人ばかりです。複業(副業)・プロボノが活発化している中、「自分も何かしたいのですが、どこかでいいところないですか?」と相談をうけた際、「それならウチでやればいいよ」とお誘いしたんです。それ以降「この人がウチに来てくれたら一緒に何ができるんだろう」と考え、本人と話し合いを重ねて担当してもらう仕事を決めています。

ポジションありきで人を当てはめているのではなく、話し合って仕事を決めた結果、コーポレート業務を担当いただくことになったのですね。

野村氏:そうなります。当社は企業や行政、NPOをつなぎ、イノベーション・コンサルティングを提供しているので「異なる組織の人が、いかに協力しあえるか。どうしたら一緒になれるか」ということを常に考えて仕事をしています。だからこそ、誰かに相談された際も「何か一緒にできないだろうか」と、ついつい考えてしまうクセがあるんです。

(取材同席されている)なかむらさんも野村さんがおっしゃったようなパターンでフューチャーセッションズの複業を始められたのでしょうか?

なかむら氏:そうですね。サイボウズは複業を認めているので、周りにも複業をしている社員は多いです。私自身も興味を持っていたので野村さんに何か伝手がないか相談したところ「ウチでやってみない?」と誘っていただきました。野村さんとは昔から面識があり、フューチャーセッションズさんと仕事をすることも多かったので、お互いにどんな仕事をしているのかも理解していました。

フューチャーセッションズさんでは広報を担当されていますが、具体的にはどのような形で仕事をされているのでしょうか?

実際に複業をしてみてどうなのか

※サイボウズ株式会社に所属しながら複業で同社の広報業務を担当しているなかむら アサミ氏

 
 
なかむら氏:複業のあり方として、アドザイザー的な立場で入るパターンと本業と同等のパワーをかけるパターンがあると思うのですが、フューチャーセッションズさんには広報担当の方がいないこともあり、私は後者のパターンでガッツリ入っています。そうは言っても、こちらでの業務は月に10時間程度です。サイボウズで働いている時間の方が圧倒的に多いのですが、最近はこちらで働く時間も増えて来ています。

実際に複業をされてみていかがですか?

なかむら氏:私がサイボウズで広報を担当していたのは2014年ぐらいまでで、それから4年程度しか経っていませんが、当時よりメディアの数が増えました。単純にメディアに売り込むだけでなく会社側で企画して発信することもできるなど、広報の手法自体が大きく変わりました。新しい発見がたくさんありますし、広報としての感覚も取り戻せたので、こちらでの仕事も楽しいですね。

複業をしてもらう際の仕事・ミッションの決め方について、気をつけていることなどはありますか?

野村氏:ポジションありきで複業をお願いしているわけではないので、会社のピースとして考えることはありません。複業をしてもらう人にとって可能な限り魅力的であり、その人が成長できるような仕事を作ってお願いするようにしています。わざわざ複業で入っているのに、つまらない仕事だったら嫌ですよね? 魅力がない仕事であれば、その人も複業をやる意味がありませんから。

あくまでも本人がやりたいことを実現できる仕事を提供するということですね。

野村氏:その通りです。この考え方を推し進めていくと、社員の仕事のあり方についても考えを巡らせるようになります。複業の方が「やりたいことができなくなったら辞めてしまうだろう」ということは理解しやすいのですが、本来は社員も同じはず。どうしても社員になると「つべこべ言わずにやりなさい」という考え方になってしまいがちですが、社員にとっても魅力的な環境、成長できる仕事をしっかり用意する必要があることに気づかされます。社員一人ひとりが満足できる仕事を任せようという姿勢は、今後ますます大切になると思います。

複業者と既存社員の関係構築のために、一緒に考えられる場を作る

複業者と既存社員の関係構築のために、一緒に考えられる場を作る

経営者の立場であれば、どんな働き方であっても「目標にコミットしてほしい」「早く成果を出してほしい」と考えると思いますが、複業の方とはどのように目標を握っているのでしょうか?

野村氏:現在私たちが複業の方にお願いしている仕事は広報業務や組織開発、中期経営計画の策定など、中長期的なスパンで結果・効果を出していくタイプの業務がほとんどです。目標は相談しながら決定していますが、ほとんど複業の方から「いつまでにここまでやります」と提示してもらっています。また、前提として複業で参加いただいている方々はその道のプロフェッショナルなので、短い時間で効果的な仕事をされる方ばかり。複業の方々の仕事の進め方や段取りから、学ばせてもらっていることもたくさんあると思います。

複業の方々と働くことで、社員の皆さんも良い影響を受けられるということですね。

野村氏:広報のなかむらさんに「このプロジェクト面白いですね」と言われれば、担当している社員は喜びます。実は社内では当たり前のプロジェクトであったとしても、なかむらさんから「社会的に面白い、意義がある」と言われれば一気にモチベーションが上がるんです。社外の方からの客観的な評価・フィードバックは社員の心にストレートに響くようです。

社員の方の成長にとっては間違いなくプラスになりますね。

野村氏:ただ、最も重要なことは外部の方と関わることによって社内のカルチャーを変えていくことだと考えています。本来会社には多様な人間が集まっているはずですが、ずっと一緒にいるうちにいつのまにか、みんなで同じようなことを考え始めてしまうのです。さらには社内でのヒエラルキーの中に安住してしまうことも問題です。同じ会社の中だけで順位を競っても意味がありません。社外の専門家と切磋琢磨していくことで社員の意識が変わり、プロフェッショナルのカルチャーを醸成できるということが複業者を受け入れることの大きなメリットであると考えています。

逆に複業の方々を受け入れる際に苦労された点などはありますか?

野村氏:複業の方は会社に来る頻度も少ないですし、リモートで働くことが多いので、既存社員との関係が希薄になりがちです。例えば私が複業の方と何かを決めた場合、社員から「どうして社外の人と決めちゃったんですか」と言われることもあるわけです。

社員の方は、複業の方を「外の人」と見てしまうんですね。

野村氏:つながりが深い人は「中の人」と見るのですが、そうでない人は「外の人」と見るんですよね。社員としては、自分たちよりも「外の人」が頼りにされているという印象を持ってしまうということもあるでしょう。複業の人の専門分野を明確にして「この部分に関して協業をしている」ということを社員に伝えていく解決策もありますが、それ以上に大切なことは社員全員を集めて複業の方と一緒に考える場を作ることだと思っています。例えばなかむらさんであれば広報をお願いしているので、「みんなで広報の勉強会をしよう」と全員でブレストを行う場を設定しました。そうすることによって社員たちも、名前と顔しか知らなかった「外の人」を、自分たちの仲間として認め始めるんです。

複業者の存在が組織を変革する新たなカルチャーと多様性を生み出す

複業者の存在が組織を変革する新たなカルチャーと多様性を生み出す

社外での複業(副業)を認める会社が増えている一方で、受け入れ体制が整っている会社はまだまだ少ないという現状があります。受け入れが進まない要因としては、先ほどおっしゃっていた既存社員とのコミュニケーションの問題もありますし、その人のための仕事や環境を用意する手間もあると考えられますが、それでもなお複業(副業)を受け入れるメリットは大きいとお考えでしょうか?

野村氏:重厚長大でやってきた大企業の多くは、社会の大きな変化とは少し離れた場所で従来型のビジネスを粛々と続けていますが、今まで通りの仕事のやり方を続けることは最も非効率なスタイルになりつつあります。マーケットがシュリンクしていく現状では、現在の業務をどれだけ効率化しても利益が出にくくなっていますからね。社会の変化に合わせてイノベーションを起こすつもりであれば、会社の中に新しいカルチャーを取り入れることは絶対に必要であり、その手段の一つが複業者を受け入れることなんです。

それでも複業(副業)の受け入れ先が少ないのは、やはり現場のマネジメントの問題が大きいのでしょうか?

野村氏:それもあるでしょうね。経営者レベルの方は理解されていると思いますが、現場のマネジメントの仕事はこれから大きく変わっていくと思います。現状、日本企業のマネージャーのほとんどはプレイングマネージャーなので、複業のような形でフレキシブルに働く社員をマネジメントする余裕がないのですが、これからは本来的なマネジメントを行う必要が出てくると思います。どうしてもマネジメントする人材がいないというのであれば、複業のマネージャーを招いてもいいですよね。

最後になりますが、複業(副業)を受け入れることのメリットについて、読者の方々へのメッセージをお願いいたします。

野村氏:複業者を受け入れることは組織変革のチャンスになりますし、これからイノベーションを起こしたい企業にとっては必須の要素になるのではなると考えています。社内のカルチャーに浸りきっているだけでは多様性は生まれませんからね。また、複業の受け入れというのは、皆さんが考えている以上にリスクが少ないものだと思っています。機能しなければお互いに離れてもいいし、必要になったら近づけばいいというだけ。社員を雇うような白か黒かの意思決定ではないので、お互いに縛られずに済むという側面もあります。こうしたことも含め、複業者を受け入れるベネフィット、社員に複業をさせるベネフィットについては、これからもしっかり周知・共有していきたいですね。
複業によって多様性も産まれる

【取材後記】

複業者を活かす仕事や環境をあえて作ることで、その人のやりたいことを実現してもらうというフューチャーセッションズの複業の受け入れ方は、手間や時間がかかるかもしれません。しかし、野村さんがインタビューで語っていたように、そのような手間を覚悟して複業者を受け入れることこそが組織のカルチャーを変える契機となり、既存社員の成長や、会社としてイノベーションを生み出すチャンスになると言えそうです。現状の組織に新しい刺激を与え、多様性を育むことでイノベーションが生まれる土壌を作りたいと考えている企業の経営者の方々、人事担当者の皆さんは、今回のフューチャーセッションズの事例を参考にして、複業者の受け入れについて改めて検討してはいかがでしょうか。

(取材・文/佐藤 直己、撮影/石山 慎治、編集/齋藤 裕美子)

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