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はたらクリエイトがつくる、地方の子育て中の女性を活かす職場【連載:第1回】

公開日:2019.01.07

PROFILE

株式会社はたらクリエイト

取締役 キャリアコンサルタント 高木 奈津子【寄稿】

1989年富山県生まれ。東京の人材総合会社にて、求人広告の法人営業を経て女性やエンジニアに特化した転職フェアの企画・運営を担当。「地方の人材を活かす場をつくりたい」という思いから2015年に長野県上田市に移住し、女性向けコワーキングスペースHanaLab.UNNOの立ち上げに携わる。その過程ではたらクリエイトを立ち上げ、取締役に就任。現在は受託業務のコンサルティングや、働きがいを見出すためのフォロー・制度構築を行う。

近年の人口減少に伴う働き手不足により「働き方改革」や「女性の活躍促進」が求められる一方で、採用市場の激化や人材の流動化など、企業は多くの課題に直面しています。
長野県上田市にある株式会社はたらクリエイトは、地方の人材やリソースを活かし働く人に向き合った制度や仕組みを作ることで、独自の人材獲得・育成のモデルを確立しています。はたらクリエイトの取り組みについて、連載3回に分けて紹介します。

※本記事は、株式会社はたらクリエイト 取締役 キャリアコンサルタント 高木 奈津子氏に寄稿いただいたものです。

はたらクリエイトの特徴

私たち、株式会社はたらクリエイトは長野県上田市にあります。上田市は長野県の東部に位置する、長野市・松本市に次ぐ人口約16万人規模の都市。山々に囲まれた自然を身近に感じられるロケーションでありながら、北陸新幹線の停車駅があり、東京からは1時間半程度でアクセスできます。
長野県上田市
はたらクリエイトのオフィスは、北陸新幹線上田駅から歩いて10分程度の商店街の中。オープンキッチンや託児所を併設したコワーキングスペースを拠点にしており、フリーランスや他の企業に所属するリモートワーカーも同じ空間で働いています。

私たちは、2015年のコワーキングスペース開設とともに「子育て中の社会復帰支援」の取り組みを始め、就業意欲の高い女性の増加と受託業務拡大に伴い、2017年8月に株式会社化しました。主に首都圏の企業を対象とした「リモートチーム」サービスを展開しており、Webコンテンツの制作・運用を中心に業務の代行を行っています。最近では「働き方改革」が浸透したことで、規制された残業時間に業務を収めることができなかったり、事業は伸びているの一方で安定的な人材獲得に苦戦していたりと悩みを抱えているクライアント企業も多く、中長期的な体制構築を視野に入れたご依頼も増加しています。
ホームページ

(『はたらクリエイト HP』より)

 

現在スタッフは68名(主にパートタイマーと短時間正社員)。そのうち約95%は1歳~小学生程度の子を持つ女性で、結婚や子育てを機にUターンした地元出身者のほか、パートナーの転勤で県外から移住してきたスタッフもいます。これまでのキャリア経験も、教員や保育士、サービス業など様々。どのスタッフも結婚や出産を機に一度離職した経験があり、ブランクを経てこの職場で働いています。
はたらクリエイト社

地方の女性を取り巻く就業環境

人材不足と言われる中で、企業は優秀な人材を求めて取り合っている状況です。人口減少が進行していけば働き手の取り合いはより激化していくことが予想されます。そんな中、地方の女性を取り巻く就業環境はどのような状況にあるのでしょうか。

①企業の競争率は低いが求職者のスキルを活かす選択肢や多様性が少ない

平成30年10月時点の長野県上田市の有効求人倍率は1.33%東京の1.80%と比較すると、企業の採用の競争率が低い一方で、求職者が持っている選択肢は少ないと言えます。
東京などの都心と比べると仕事の多様性も少なく、長野県上田市は製造業を中心に発展してきた土壌があるため、パソコンを扱う仕事の割合も低い傾向にあります。そのため、仮に都心で多様なスキルを積んでいても、移住してそれを活かせる場がないという状況が起こっています。

②子育て期に下がる女性の就業率

女性の就業率は、子育て期の30歳前後に下がる傾向が見られます。内閣府『出産前有職者に係る第1子出産前後での就業状況』を参照すると全体の46.9%が出産や結婚を機に離職、子どもが小さいうちは急な対応が発生することも多く、時短勤務や柔軟な勤務を望むようです。
出産前有職者に係る第1子出産前後での就業状況

(出典:内閣府『出産前有職者に係る第1子出産前後での就業状況』※一部改変)

③子育てとの両立のための「非正規雇用」という選択

現在、女性の2人に1人が非正規雇用と言われています。男女共同参画白書 平成25年版によると、30代の前後の子育て世代の女性が「非正規雇用」を選ぶ理由として、「家事・育児・介護等や趣味・学習等と両立しやすい」が上位。つまり、多くの女性が「子育てとの両立」を理由に非正規雇用を選択している傾向にあると言えるでしょう。

第1位第2位第3位
25~29歳

都合のよい時間に働ける(34.8%)

正社員として働ける会社がなかった(30.2%)

家事・育児・介護等や趣味・学習等と両立しやすい(28.0%)

30~34歳

家事・育児・介護等や趣味・学習等と両立しやすい(40.3%)

都合のよい時間に働ける(38.8%)

家計の補助・学資等を得たい(29.8%)

35~39歳

都合のよい時間に働ける(44.9%)

家計の補助・学資等を得たい(42.4%)

家事・育児・介護等や趣味・学習等と両立しやすい(41.8%)

40~44歳

家計の補助・学資等を得たい(51.5%)

都合のよい時間に働ける(43.8%)

家事・育児・介護等や趣味・学習等と両立しやすい(41.6%)

(出典:男女共同参画白書 平成25年版『非正規雇用を選択した理由:女性(平成22年 複数回答)』※一部改変)

 

④正規雇用と非正規雇用の格差

非正規雇用には「子育てとの両立」や「時間の融通を利かせやすい」といったメリットがある一方で、長期的に収入を確保しづらいというデメリットもあります。正規雇用と非正規雇用の年収を比較すると、正規雇用は年齢を重ねるごとに年収が右肩上がりに増えていくのに対し非正規雇用は一定の金額を推移し、年齢を重ねるにつれて正規雇用と差が開いています。
正規雇用と非正規雇用の格差

(出典:厚生労働省 平成29年賃金構造基本統計調査『雇用形態、性、年齢階級別賃金』)

 
長野県などの地方でも、子育て中は製造業やサービス業のパートタイマーなど非正規雇用として働くのがスタンダード。しかし、非正規雇用から正規雇用への転換の間口は狭く、子育てが落ち着いていざ正規雇用として働きたいと考えても、希望が叶わない可能性があります。このように子育てを理由に一度仕事から離れると、長期的なキャリアを描きづらくなります。

地方のリソースを活かし、世の中に働き手を増やす

上記のような課題の中で、都心部よりも人材の競争率が低い地方で、ITなど時代の変化に対応できる人材を育て戦力化していくことは人材不足解消の糸口になるのではないでしょうか。私たちは働きやすい環境の整備とともに、地方で活かしきれていない優秀な人材やポテンシャルのある人材を育成するシステムを作ることで、世の中に働き手を増やしたいと考えています。

はたらクリエイトが実践する、欲しい人材が集まり定着する仕組み

私たちが求めるのは、「共に進化を楽しめる人」。新しいモデルを一緒に作っていく仲間として、子育てから次のステップに進んでいく意欲の高く、柔軟に取り組める素養がある人を採用しています。ここでは、そんな人材が集まり定着するために実践していることをご紹介します。

取り組み①:託児所の運営

託児所の様子
1~3歳までを対象にした託児所を自社で運営。保育士も7名(内2名正社員)雇用し、スタッフの子ども約20名の保育を行っています。一緒に通勤してお昼は子どもと一緒に食事をとるなど、子どもの成長を近くで見ることができるため、「子どもが小さいうちは近くにいたい」という理由から仕事を躊躇する女性も安心して仕事に踏み出すことができます。
お昼休み

また子どもが小学生の場合、夏休みや冬休みなどの長期休暇中は仕事に集中しづらくなるため、職場や商店街の空きスペースを使って子ども向けのプログラムも実施。母親の働く姿を見てもらうことで、子どものキャリア教育も目指しています。
夏休みに実施したプログラミング教室の様子

(夏休みに実施したプログラミング教室の様子)

 

取り組み②:フレックスタイム制の導入

子育て中の女性は子どもの体調不良などにより、急に仕事を休まなければならない状況が起きがちです。また子どもを幼稚園や保育園に預けている場合には時間の制約があります。
そのため、月ごとのフレックスタイム制を導入。朝の子どもの送迎や家事を済ませてから出社したり、早めに出社して夕方以降の時間をお迎えや家事に充てたりと、柔軟なシフト設計が可能です。またスタッフ自身に働き方を選択させ、毎月労働時間を申請し実行してもらうことで、自己管理能力と責任感を育てます。
フレックス

取り組み③:能力や意欲、キャリアプランに応じた選択肢

雇用契約は有期パートタイマーからスタート。子育ての状況や転勤の可能性等によるキャリアプランに応じて、短時間正社員や業務委託への転換等様々な働き方の選択肢を作っています。入社時に「仕事に対する価値観」を知るためのワークを行うほか、定期的に個別面談を行い、業務の振り返りやフィードバックとともに中長期的なキャリアについて相談を行います。
また業務も多岐に渡るため、ジョブローテーションで視野を広げながら、よりその人の強みを発揮できるポジションをともに探っていきます。

取り組み④:在宅勤務制度の導入

入社3カ月以上の経過し一定のスキルを満たしていることを条件に、業務内容に応じて在宅勤務を承認しています。
家族の看病や介護等、やむを得ない事情で在宅勤務を希望する人もいますが、ほとんどのメンバーは出勤して働くことを希望します。仕事をしていない時期に「社会とのつながりがなくなってしまった」という感情を持っていた人が多く、働くことで社会とのつながりを実感し「お母さん」としてのコミュニティではなく自分自身のコミュニティを持てたという声も聞かれます。

スタッフの中にはパートナーの転勤で長野県に来た人もいて、いずれまた転居する可能性があります。在宅勤務を導入することでキャリアを中断することなく家族と過ごすことができ、会社としても育てた人材を手放すことなく継続的な雇用が可能になります。

取り組み⑤:関係性の維持

いくら制度を整えても、家庭の事情などで退職に至るケースもあります。退職に至った後もコミュニケーションを取り続けることで、働ける状態になったときにもう一度戻ってきてもらう「カムバック制度」を設けています。以前掲載された『アルムナイとは?退職者ネットワークを活用し、工数をかけずに優秀人材の採用へ』のコラムでも掲載されていたように、すでに会社の文化や風土・仕事内容を理解している人材が入社することになるので業務の立ち上がりも早くなります。
またパートタイマーに対しても育休制度を設けており、育休を取得するスタッフに対して安産のお守りを授与し、育休中でも会社に遊びに来やすい環境作りを行っています。また復帰の前も面談を実施することで状況をキャッチアップし、スムーズに復帰できるようにサポートしています。

環境を整えることは甘え?「マズローの欲求5段階説」から考える環境づくり

「マズローの欲求5段階説」によると、欲求の種類には5種類(生理的欲求、安全欲求、社会的欲求、承認欲求、自己実現欲求)あり、低階層の欲求が満たされると、より高次の階層の欲求を欲するとされています。
マズローの欲求5段階説

子育て中の女性が一度仕事から離れると、復帰に際して「誰かに迷惑を掛けてしまうのではないか」「自分にできることはあるのだろうか」という不安を抱えるケースが多く、社会における「欠乏欲求」に駆られている(成長欲求に達していない)状況にあると考えます。

わたしたちが目指すのは、「自己実現」し、働くことを楽しむ人が増えること。そのため、子育て中の女性が安心して仕事に取り組むための「社会的欲求」「承認欲求」を満たすことが制度づくりのベースと考えています。
今ある制度や仕組みは、一緒に働くスタッフと意見を出し合いながら作ってきたもの。今後も時代の変化に合わせて柔軟に対応し、進化し続けられるように挑戦していきたいと思います。

スタッフのキャリアストーリー

ここまで社会背景や取り組みについて紹介させていただきました。ここからは実際に働いているスタッフの声をインタビュー形式でご紹介します。
金 久美氏

金 久美 (2016年4月~パートタイマー、2018年10月~短時間正社員に転換)
現在、約20名いる子育てメディアの記事制作チームのチーフエディターを務める。

はたらクリエイトで働く前は何をしていましたか?

金:以前は愛知県で暮らしていて教師をしていました。結婚を機に長野県上田市に来たのですが、当初は韓国人ジャーナリストのサポートや韓国語のレッスン、料理教室をやっていました。

入社を決めたポイントは何ですか?

金:以前から「地方の女性の働き方を変えていきたい」「子育て中の女性の持つ潜在能力を社会で生かしたい」と考えていたので、ここでなら何かおもしろいことができるかもしれないと思い、入社を決めました。
私は子どもに対して「お母さんが仕事を楽しんでいる姿を見せていくこと」を大事にしたいと思っていて、この場所ならそれが実現できると思いました。

実際にはたらクリエイトで働いてみて、どうですか?

金:物事をとらえる視点が変わりました。現在子育てメディアの編集に携わっているのですが、お客さんと一緒にメディアを作っていく中で、消費者視点から提供する側の視点が身についてきたように思います。「社会に与える価値」を考えるようになりましたね。素敵な仲間に囲まれながら、責任を持って組織運営していくことも、お客さんと伴走して作り上げることも楽しいです。

これからチャレンジしたいことはありますか?

金:2つあって、1つ目ははたらクリエイトが作る「地方だからこそできる女性の働き方」のロールモデルになりたいです。はたらクリエイトはこれまで、男性や独身層など「子育て中の女性」以外の存在の力で支えられている部分も大きくて。これからは、自分がこの働き方を作っている当事者として発信していきたいですし、「こんな風に子育てしながら働いてみたいな」と思う人が増えていったらいいなと思います。

2つ目は、この会社で多様性を広げる役割を担っていきたいと思っています。私は「朝鮮半島にルーツを持つ在日4世」というマイノリティな立場で生きてきました。今後会社が大きくなっていく過程で、子育て中の女性だけではなく様々な立場の人が入社してきたときに、お互いに認め活かし合うことができるハブになれたらと思います。

【まとめ】

第1回目の今回は「はたらクリエイトがつくる、地方の子育て中の女性を活かす職場」についてご紹介しました。社会課題と地方のリソースに向き合い、当事者とともに仕組みを構築することで、仕事の価値を生み出すことに挑戦しています。
現在わたしたちは子育て中の女性を中心にしていますが、今後人口減少が進み働き手不足が進む中で、介護中の方や外国籍の方、シルバー人材など多様な働き手を活かしていく必要があります。まずは一緒に、その当事者と「どのように働いていきたいか?」を考えるところから始めてみませんか。

第2回となる次回は、“『補い合うから強くなれる』はたらクリエイトが考える組織づくり”。どのように組織を作り、個々の価値を発揮して事業を発展させているのかについてご紹介します。

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