【最新版】障害者雇用促進法の2020年改正を図解!企業が取るべき対応とは?

弁護士法人アドバンス

弁護士 大嶋 拓実(第一東京弁護士会所属)

慶應義塾法科大学院修了 
「法律の一歩先へ」をモットーに個人のお客様から、企業のお客様まで、幅広く取り扱う新進気鋭の弁護士。

障害者雇用促進法とは
障害者雇用促進法において雇用の義務が発生する対象企業
障害者雇用促進法における障害者の定義
2020年改正の内容と押さえるべきポイント
改正された背景
違反した場合の罰則
障害者雇用を促進するために企業が取るべき対応

障害者の雇用安定を図るための取り組みを定めている「障害者雇用促進法」。1960年に制定された「身体障害者雇用促進法」が基になっており、名称の変更や段階的な改正を経て、現在に至っています。2020年4月1日に施行された改正では、企業に対して「事業主に対する給付制度」「優良事業主としての認定制度の創設」という2つの措置が新しく盛り込まれました。今回の記事では、障害者雇用促進法の内容と対象となる企業、新しく施行された改正案で押さえるべきポイント、企業の担当者に求められる具体的な対応などをご説明します。

障害者雇用促進法とは

障害者雇用促進法とは、障害者の雇用の安定を実現するための具体的な方策を定めた法律です。障害者雇用に取り組む意義と、企業が守るべき義務が定められています。正式名称は「障害者の雇用の促進等に関する法律」と呼び、英語では「The Act for Promotion of Employment of Persons with Disabilities」と表記します。

障害者雇用促進法における5つの措置

障害者雇用促進法は「障害者の雇用促進」「雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会および待遇の確保」「職業生活において自立」に関する施策を総合的に講じ、障害者の職業安定を図ることを目的としています。主な措置として、事業主に対する「①雇用義務制度」「②差別禁止と合理的配慮の提供義務」「③障害者職業生活相談員の選任」「④障害者雇用に関する届出」、障害者本人に対する「⑤職業リハビリテーションの実施」の5つがあります。それぞれの特徴について、以下にまとめました。

障害者雇用促進法における5つの措置

障害者雇用促進法の歴史

障害者雇用促進法は、どのような経緯を経て今日に至ったのでしょうか。1960年の「身体障害者雇用促進法」が制定されてから、現行の「障害者雇用促進法」に至るまでの変遷を表にまとめました。

障害者雇用促進法の変遷
1960 「身体障害者雇用促進法」制定(最低雇用率の義務付け ※非強制)
1976 身体障害者雇用促進法 改正
・身体障害者の雇用を努力目標から義務雇用
・法定雇用率の強化(民間企業1.5%)
雇用納付金制度の制定
1987 身体障害者雇用促進法 改正
「障害者の雇用の促進等に関する法律」(障害者雇用促進法)に改称
・これまで身体障害者のみであった実雇用率に「知的障害者」の算出が可能となる
・職業リハビリテーションが法律に明記される
1992 障害者雇用促進法 改正
・精神障害者に障害者雇用納付金制度の各種助成金が適用となる
1998 障害者雇用促進法 改正
・障害者雇用義務の対象として「知的障害者」を追加
2002 障害者雇用促進法 改正
・障害者就業・生活支援センター事業を実施
・職場適応援助者(ジョブコーチ)事業を実施
2016 障害者雇用促進法 改正
・障害者に対する差別の禁止および合理的配慮の提供が義務化される
2018 障害者雇用促進法 改正
・障害者雇用義務の対象として「精神障害者」を追加
2019 障害者雇用促進法 改正
・障害者雇用義務対象となる民間企業を「従業員数50名以上」から「従業員数45.5名以上」に範囲拡大
・民間企業の法定雇用率を「2.0%」から「2.2%」に引き上げ
2020 障害者雇用促進法 改正
・事業主に対する給付制度の創設
・優良事業主としての認定制度の創設
~2021/4 民間企業の法定雇用率を「2.3%」へ引き上げ予定

(参考:厚生労働省『障害者雇用促進法の概要』『障害者に対する差別が禁止され、 合理的な配慮の提供が義務となりました』)

障害者雇用促進法において雇用の義務が発生する対象企業

障害者雇用促進法第43条第1項により、全ての事業主に対して「障害者雇用率(法定雇用率)」が定められています。法定雇用率とは、一定数以上の労働者を雇用している企業や地方公共団体を対象に、常用労働者のうち「障害者」をどのくらいの割合で雇う必要があるかを定めた基準です。障害者雇用の義務が発生する条件について、以下にご紹介します。

45.5人以上雇用している企業は1人雇用が義務

2020年4月現在、民間企業の法定雇用率は「2.2%」のため、45.5人以上雇用している企業は障害者を1人雇用する義務があります。雇用する必要のある障害者の人数(雇用義務数)は、【常用雇用で働いている労働者の人数×法定雇用率(%)】で計算し、小数点以下は切り捨てます。2021年4月までに民間企業の法定雇用率は「2.3%」に引き上げられる見通しです。

●雇用義務数の算出方法(常用雇用で働いている労働者が175人の企業の場合)

時期 計算式 雇用義務数
2020年4月現在 175人×0.022=3.85 3人
2021年~ 175人×0.023=4.025 4人

※雇用義務数は、計算式で出た値の小数点以下を切り捨てた人数
(参考: 『【社労士監修】法定雇用率とは障害者の雇用率。計算式や罰則、企業の対応は?』)

実雇用率の計算フォーマットは、こちらからダウンロードできます。

法定雇用率を達成していない企業には納付義務がある

障害者の雇用状況が規定に満たない場合は障害者雇用納付金の納付義務が発生します。「障害者雇用納付金制度」に基づいて、常用労働者が101人以上の企業は「規定割合と比べて不足している雇用障害者数1人につき毎月5万円」を国に納付する必要があります。この納付金は、障害者雇用の義務を果たしている企業と果たしていない企業の、経済的な負担を調整するものであり、罰金ではありません。障害者を積極的に雇用する企業に分配される報奨金や調整金の財源となります。

障害者雇用促進法における障害者の定義

障害者雇用促進法第2条第1項は、障害者の定義を「身体障害、知的障害、精神障害、その他の心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者をいう」と定めています。しかし、企業に対する「雇用義務制度」の対象となるのは、そのうちの「障害者手帳を持つ人」に限られます。下の表で詳しく解説します。

●障害者雇用促進法における障害者の範囲と障害者雇用率の算定対象(ピンク色の部分が算定対象)

障害者雇用促進法における障害者の定義
2018年4月に法的雇用率算定の対象となった「精神障害者」の雇用については、「症状が安定し、就労が可能な状態にある者」という留意点が付いています。また、「発達障害者」は実雇用率に算定されませんが、他の障害が認定されて、精神障害者保健福祉手帳や療育手帳を持っている場合は対象となります。
(参考: 『障害者雇用対策の基本事項』)

2020年改正の内容と押さえるべきポイント

2020年4月1日に施行された法案改正では、民間企業に対して「事業主に対する給付制度」「優良事業主としての認定制度の創設」という2つの措置が盛り込まれました。ここでは措置の具体的な内容と押さえるべきポイントを解説していきます。

ポイント①: 短時間労働の障害者を雇用する企業に、特例給付金を支給

週10~20時間未満の障害者を雇用する事業主に対して、特例給付金が支給されます。これまでの障害者雇用促進法では、週所定労働時間20時間未満の雇用障害者は、雇用率制度の対象とはならず、事業主は障害者雇用調整金などの支援が受けられませんでした。一方で障害の特性から、週所定労働時間が10~20時間未満であれば就労できる人も一定数いることから、この改正施行によって、短時間であれば就業可能な障害者の雇用機会の増加が期待されています。具体的な内容は以下の通りです。

●基本的な考え方

①週所定労働時間10~20時間未満の雇用障害者数に応じて、事業主に特例給付金を支給
②雇用率制度の対象となる障害者はこれまで通り「週20時間以上の労働者」
③支給期間は限定しない
④支給対象となる雇用障害者の週所定労働時間は10時間が下限

雇用率制度のカウント対象とする常用労働者については、「週20時間以上の労働者」という枠組みが維持されます。そのため、週所定労働時間20時間未満の雇用障害者数は、法定雇用率には反映されないことを知っておきましょう。

●各制度の対象者イメージ(◯: 対象となる ✕: 対象とならない)

週所定労働時間 雇用率制度 障害者雇用納付金
障害者雇用調整金
週20時間未満の特例給付金
30時間以上
20時間以上30時間未満
10時間以上20時間未満
10時間未満

支給額の単価は、調整金・報奨金の単価の4分の1程度となります。支給対象の雇用障害者に基づき、月ごとに算出します。中長期にわたって、20時間以上の勤務に移行できないケースも考えられるため、支給期間は限定していません。

●支給金額

ポイント①: 短時間労働の障害者を雇用する企業に、特例給付金を支給

※1 支給額は、支給対象の雇用障害者数(実人数)に基づき、月ごとに算出する。
※2 支給上限人数の算定においては、重度のダブルカウントおよび短時間のハーフカウントを行う。
(参考: 厚生労働省『週20時間未満の障害者を雇用する事業主に対する特例給付金について』)

ポイント②: 中小企業を対象とした優良事業主としての「認定制度」の創設

中小企業を対象とした優良事業主としての「認定制度」が新たに創設されました。優良事業主に認定されるためには、評価項目ごとに加点方式で採点し、一定以上の得点を獲得する必要があります。条件を満たした常用労働者300人以下の中小企業は、優良な事業主として認定されます。

●認定基準

①以下の評価基準に基づき、20点(特例子会社は35点)以上を得ること
※取組関係で5点以上、成果関係で6点以上、情報開示関係で2点以上を得ること
②実雇用率が法定雇用率を下回るものでないこと(雇用不足数が0であること)
③障害者(A型事業所の利用者は含まない)を雇用していること
④障害者雇用促進法および、同法に基づく命令、その他関係法令に違反する重大な事実がないこと

●ポイント制 評価基準

2020年改正の内容と押さえるべきポイント

優良企業の認定制度は、中小企業における障害者雇用の促進を目的としています。障害者雇用率を満たしていない企業が多い中、先駆けて障害者雇用に取り組む中小企業には以下のメリットがあります。
(参考: 厚生労働省『障害者雇用に関する優良な中小事業主の認定制度について』)

●優良事業主の認定によるメリット

①自社の商品や広告などに障害者雇用優良中小事業主認定マークを使用できる
②認定マークによってダイバーシティ・働き方改革などの広報効果が期待できる
③障害の有無に関係なく、幅広い人材の採用・確保の円滑化につながる

このように優良事業主に認定されると、自社の商品、広告等への「認定マーク」を掲載できるようになり、公共調達で加点評価されます。
(参考: 厚生労働省『障害者雇用に関する優良な中小事業主の認定制度について』)

改正された背景

2020年の法案改正には、大きく2つの背景があります。

背景①:障害者雇用水増し問題(対象障害者の不正計上)

法案改正の理由の一つとして、2018年に発覚した公的機関による対象障害者の確認・計上の不正が挙げられます。国や地方自治体の多くの機関で対象障害者の不適切な計上があり、法定雇用率を達成していない状態であることが明らかとなりました。再発防止のために「チェック機能の強化」「法定雇用率の速やかな達成に向けた計画的な取り組み」「国・地方自治体における障害者の活躍の場の拡大」「公務員の任用面での対応」といった基本方針を決定し、取り組みが進められています。

背景②:中小事業主における障害者雇用に課題

厚生労働省の「障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改定する法律案の概要」によると、2018年6月時点で、民間企業における障害者の雇用者数は15年連続で過去最高を更新し、ハローワークにおける障害者の年間就職件数は9年連続で増加傾向にあります。ところが中小企業においては、法定雇用義務が進まない現状があります。「45.5人~100人未満」規模の企業の障害者雇用状況をみると、実雇用率は1.68%、雇用率達成企業割合は44.1%とどちらも低く、雇用率未達成企業のうち雇用ゼロ企業の割合は93.7%と高い数字が出ています。企業規模が小さいほど、障害者雇用に課題を抱えていることがわかります。

●企業規模別の障害者雇用状況

実雇用率 雇用率達成企業割合 雇用率未達成企業のうち雇用ゼロ企業割合
全体 2.05% 45.9% 57.8%(100%)
45.5~100人未満 1.68% 44.1% 93.7%(82.1%)
100~300人未満 1.91% 50.1% 30.8%(17.7%)
300~500人未満 1.90% 40.1% 1.3%(0.2%)
500~1,000人未満 2.05% 40.1% 0.1%(0.0%)
1,000人以上 2.25% 47.8% 0.1%(0.0%)

(参考: 厚生労働省『障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改定する法律案の概要』)

違反した場合の罰則

障害者雇用促進法に定められている雇用義務に違反した場合、どのような罰則があるのでしょうか。

罰則①:改善指導が入る

障害者雇用促進法第43条第7項には、「事業主(その雇用する労働者の数が常時厚生労働省令で定める数以上である事業主に限る)は、毎年1回、厚生労働省令で定めるところにより、対象障害者である労働者の雇用に関する状況を厚生労働大臣に報告しなければならない」と定められています。これにより、企業は「6月1日時点の障害者雇用状況報告書」をハローワークに提出することが義務付けられています。このとき障害者の雇用義務に違反があると、報告書を基に、ハローワークから改善命令や「障害者の雇入れに関する計画」の作成・提出が求められます。同法第86条第1項で定められている罰則により、正社員の従業員が45.5人以上の企業の場合、ハローワークへの報告を怠る、または虚偽の報告をすれば、30万円以下の罰金が科されます。同様に、障害者を解雇した際の届け出を怠る、または虚偽の報告をしても30万円の罰金が科されます。

障害者雇用促進法第5条には、事業主の責務として「すべて事業主は、障害者の雇用に関し、社会連帯の理念に基づき、障害者である労働者が有為な職業人として自立しようとする努力に対して協力する責務を有するものであつて、その有する能力を正当に評価し、適当な雇用の場を与えるとともに適正な雇用管理を行うことによりその雇用の安定を図るように努めなければならない」とあります。この理念の下、障害者の雇用安定のために努力する姿勢が、企業には求められるでしょう。

罰則②:企業名が公表される

雇入れ計画の適正な実施について勧告を受け、雇用計画命令や「障害者の雇入れに関する計画書」の提出指導(2年間の経過観察)、特別指導(社名公表直前の猶予9カ月間)といった指導を受けたにもかかわらず、改善が見られない場合は、企業名が公表されます。社会的な信頼を失うことにつながり、業績に影響する可能性もあるでしょう。

障害者雇用を促進するために企業が取るべき対応

企業が障害者雇用を促進するためには、どのような対策が有効なのでしょうか。3つに分けて解説します。

対応①:自社の実雇用率を知り、雇用計画を立てる

障害者雇用を促進するために、まずは自社の実雇用率を把握し、雇用計画を立てることから始めましょう。実雇用率とは、実際に企業が障害者を雇用している割合です。実雇用率は、以下の算式で求めることができます。

●実雇用率と雇用すべき障害者数の算出方法

・実雇用率=常用雇用で働いている障害者数÷(常用雇用労働者+常用雇用短時間労働者×0.5)

※労働時間の短い「常用雇用短時間労働者」は、1人を0.5人分としてカウントします。

障害者雇用率(法定雇用率)は、事業主ごとに適用されます。そのため、グループ会社ではグループ全体ではなく、「親会社」「子会社」といった各社ごとに法定雇用率を満たす必要があります。ただし、障害者雇用の促進・安定を図るために設立する「特例子会社」は、「親会社」との間で実雇用率が通算できるなど、例外が認められるケースもあります。法定雇用率に対して実雇用率はどの程度足りていないのかを把握し、自社にあった雇用計画を検討しましょう。
(参考: 『【社労士監修】法定雇用率とは障害者の雇用率。計算式や罰則、企業の対応は?』)

対応②:助成金の活用

障害者雇用のための助成措置として、「トライアル雇用助成金」「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース・障害者初回雇用コース)」が設けられています。障害者雇用の経験がない企業を対象とした助成金もあるため、活用するのもよいでしょう。助成金の申請は、都道府県労働局またはハローワークで受け付けています。

対応②:助成金の活用
(参考:厚生労働省『障害者雇用対策の基本事項』)

対応③:ジョブコーチ制度による支援を導入

職場での適応に課題がある障害者に対して、ジョブコーチ(職場適応援助者)による支援を検討しましょう。障害者の円滑な就職および職場適応を図るため、雇用の前後を通じて事業所にジョブコーチを派遣または配置することで、障害特性を踏まえた直接的・専門的な援助を受けられます。この支援は職場での課題改善やきめ細かな人的支援を行い、職場への定着につなげることを目的としているため、雇用障害者だけではなく事業主にとってもメリットがあるでしょう。
(参考:厚生労働省『障害者雇用対策の基本事項』)

まとめ

2020年4月1日に改正となった障害者雇用促進法において、「事業主に対する給付制度」「優良事業主としての認定制度の創設」の2つの措置が新しく制定されました。この改正施行によって、企業には特例給付金の支給や優良企業としての認定を受けられるなどのメリットがあります。さらに障害者雇用の促進を図るための支援や助成金制度の整備も進められているため、積極的に取り入れるとよいでしょう。まずは、自社の障害者雇用率と実雇用率を把握し、多様な人材が活躍できる職場の環境づくりに取り組んでみてはいかがでしょうか。

(制作協力/株式会社はたらクリエイト、監修協力/弁護士法人アドバンス、編集/d’s JOURNAL編集部)