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2017.10.27

途中で変更可能?求人票に記載した給与額を下げたい場合【弁護士監修】

PROFILE

安井・好川・渡辺法律事務所(東京弁護士会所属)

安井 之人(やすい これひと)弁護士
【監修・寄稿】

ビジネスを創造する「クリエイティブ法務」を標ぼう。「ルールに縛られる」というネガティブなイメージを抱きやすい法律を上手く活用し、新しいビジネスを創造することや、ご依頼くださった方が、よりポジティブになれる方法を提案することを信条とする。また、理工学部でコンピューターを専攻していた理系の弁護士であり、理数系のバックボーンを活かした、数字や技術、正確なロジックに基づく事件処理を得意としている。

単純に求人票・求人広告・スカウトメールへ記載する内容を間違えてしまった。もしくは、会社の方針が急に変わってしまった。理由は様々ですが、一度出した求人票や求人広告、スカウトメールに記載していた内容を変更したいというケースは十分にあり得ると思います。しかし、求職者は、事前に募集要項・諸条件をある程度確認した上で、応募をしている状態です。採用段階で条件を変更することはよいのでしょうか。
もしも、自分が求職者の立場だとして、応募時から、条件が変わってしまっていたとしたら…? そこで今回は、どのような背景であれ、内定を出す際に条件を変更できるのか。変更できるとした場合、どのような注意点があるのか。特にトラブルになりそうな「給与」をメインに紹介します。

募集要項に記載した給与額は、選考中に変更できる?

結論から言うと、求人票や求人広告、スカウトメールなど、募集の際に記載した給与額を変更して採用することは可能と言えます。求人票・求人広告は、労働契約の申込みの誘因であり、本来そのまま最終の契約条件になることを予定するものではないからです。従って、募集段階で記載していた給与や労働時間などを変更し採用したとしても、ただちに違法とは言えません。

しかし、注意しておきたいのは、これは合理的な理由がある場合に限ります。例えば、著しく給与額が低くなったり、就業規則上は転勤があることが明記されているのにあえて転勤がないようにみせかける行為などがあったりする場合は、企業側は信義則違反として損害賠償責任を負う可能性が出てきてしまいます。

実際に過去の裁判例でも、入社時の賃金の金額が、求人票に記載されたものから下がっていたが、違法性はないと判断された事例があります。この事例は、入社時の賃金の額が求人票記載の金額よりも下がっており、労働者がその差額分の支払いを求めた事例でしたが、求人票には見込の金額であると明示されていたこと、当時の特殊事情(石油ショック)に起因するやむを得ない事情があったことなどから、労働者の請求を退けたというものです。

しかし、この裁判例においても、「求人者は、みだりに求人票記載の見込額を著しく下回る額で賃金を確定すべきでないことは信義則上、明らかである」と指摘されています(八洲測量内定賃金請求事件 東京高判S58.12.19)。

変更理由が悪質な場合、損害賠償責任を負う可能性も

給与額変更にあたって注意しておきたいのは、合理的な理由がある場合に限ります。どのような場合においても変更ができるとは言えません。企業側は信義則を遵守する必要があります。例えば、応募者をとにかく集めたいため、実際払うことができない高額な給与を記載。その結果、著しく給与額が低くなる。また、就業規則上は転勤があることが明記されているのに、あえて転勤がないように表現するなど、あまりにも悪質だと思われる行為がある場合は、企業側は信義則違反として損害賠償責任を負う可能性が出てきてしまいます。

企業側は信義則を遵守する必要があるからです。例えば、先ほども例にあげた、払うことのできないような給与額を記載するといったケース。これを鵜呑みにした求職者がいた場合、トラブルになるのは明らかです。あくまでも、実態に基づく内容を記載していることが大前提となります。具体的には、誇張し過ぎている場合や明らかに就業規則の内容と違う場合、信義則違反となる可能性が高いと言えるでしょう。また、あえて給与額を誇張して求職者を集めていることが、既存社員へ伝わった場合、「現状とまったく違うではないか」と、企業と既存社員の間の信頼関係にも悪影響が及ぼす可能性もあります。

いずれにしろ、採用を行う際の条件設定は慎重に行うように心がけましょう。

求人票・求人広告に記載した条件から変更する場合の注意点

記載した条件から変更する場合の注意点

条件変更になった場合、「いつまでに伝える必要があるか」という問題に関しては、法的な観点から言えば、遅くとも雇用契約書の締結前に求職者へ伝える必要があります。求人票や求人広告記載の条件から変更がある旨を伝え、これを求職者が認め、納得した上で雇用契約を締結しているのであれば、確かに問題はなさそうにも思えます。しかし、求職者は、求人票・求人広告に記載された条件を直前まで信じており、これによって別の企業の内定を断っているということは考えられませんでしょうか?
裁判例でも、会社が転職を要請した労働者に対して、雇用条件を事前に伝え勤務先を退職してまで新たに雇用契約を締結すべきかどうかを考慮する機会を与えなかったとして、会社に対する慰謝料請求を認められたケースがあります(ユタカ精工事件 大阪地判H17.9.9)。

万が一、求人票・求人広告にミスがあった場合などは、できるだけ早く求職者へ、記載内容にミスがあり条件が変更になることを伝える必要があるでしょう。

【まとめ】

給与額に限らず、求人票や求人広告など募集段階で提示していた内容を変更したいというとき、このほとんどは企業側の事情に起因するものと思います。したがって、求職者へはできる限り早い段階で訂正事項を伝え、納得をしてもらう必要があるでしょう。

ただし、納得をしてもらったとしても、注意するポイントがあります。それは、求人票・求人広告の内容と実際の労働条件に変更があり、そのことについて求職者が納得して同意したことの証明ができる状況にしておくことです。雇用契約書などがない場合、(本来的には、この部分もよい状態ではないのですが)求人票に記載されている内容が、そのまま労働条件になると判断されることが多いといえます。つまり、求人票の内容から変更があったことに求職者が同意をしたという証明ができない場合、企業側がそのリスクを負うことになるのです。つまり、雇用契約書や労働条件通知書など「書面」によって、お互いに認識をあわせておく必要があるといえるでしょう。

いずれにせよ、法律とその判断が及ぼす影響を正しく理解し、普段からの準備と、トラブルの種が発生した場合の早目のアクションを心掛けることで、トラブルの予防や早期解決ができるようになります。

【弁護士監修|法律マニュアル】
01. 試用期間の解雇は可能?本採用を見送る場合の注意点とは
02. 入社直後の無断欠勤!連絡が取れなくなった社員の対処法
03.途中で変更可能?求人票に記載した給与額を下げたい場合
04.試用期間中に残業のお願いは可能?残業代の支払いは?
05.炎上してからでは遅い!採用でSNSを使う際の注意点
06.求人票に最低限必要な項目と記載してはいけない項目
07.採用後に経歴詐称が発覚した場合の対応法。解雇は可能?

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