女性活躍推進法、企業が取るべき対応とは。5つの対応で企業に大きなメリットも
「女性活躍推進法」は2016年4月に施行されました。これは、少子高齢化により将来的な労働力人口の不足が予想される中で、「働きたい」と考える女性たちが、無理なく活躍できるような社会づくりを目指す法律です。罰則はありませんが、この法律と真摯に向き合うことで、優秀な人材の確保や定着率のアップ、ブランディングにつながるなどのメリットがあります。この記事では、そんなメリットの多い「女性活躍推進法」への5つの対応方法を、わかりやすく解説していきます。
女性活躍推進法とは?
「女性活躍推進法」の正式名称は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」です。2019年5月には改正法も成立、より幅広い事業主が対象となり、公表する情報の区分も強化されました。まずは、法律の内容や対象企業を確認していきましょう。
女性活躍推進法の内容
女性活躍推進法において、企業が求められている主な対応は下記の通りです。
① 自社の女性活躍に関する状況把握・課題分析
② 課題を解決するための数値目標と取り組みを盛り込んだ、行動計画の策定および届出
③ 自社の女性活躍に関する情報の公表
行動計画の策定・届出を行った企業のうち、女性の活躍に関する取り組みの実施状況が優良な企業は、「えるぼし認定」を取得できます。
えるぼし認定とは、女性活躍推進法に基づいた基準を一定数満たしており、なおかつより女性の活躍推進に取り組んでいる企業に与えられる認定制度のことです。「採用」、「継続就業」、「労働時間」、「管理職比率」、「多様なキャリアコース」という5つの項目にそれぞれ基準が定められており、取り組み状況に応じて3段階の認定レベルがあります。えるぼし認定を取得すると、自社の商品や広告などに認定マークを付すことができます。これにより、自社の働きやすさをアピールできますし、各府省庁などが公共調達を実施する場合には、加点評価を受けられるというメリットもあります。
女性活躍推進法の対象企業
女性活躍推進法が義務付けられているのは、「国・地方公共団体・常時雇用する労働者が301人以上の民間事業者」が対象で、300人以下の中小企業については努力義務となっています(2022年3月末まで。その後は下記を参照)。現時点では労働者数が少ない企業も、今後、企業規模を拡大していく過程で法律の対象となる可能性があります。企業規模にかかわらず、概要は最低限理解しておくことが必要です。
2019年5月に成立した改正内容
2019年5月に成立した改正法の内容と施行日は、下記の通りです。
2020年4月1日施行:一般事業主行動計画の数値目標設定の仕方が変更に
2020年4月1日以降、常時雇用する労働者数が301人以上の事業主は、一般事業主行動計画を策定する際、原則として達成しようとする目標の内容を、新たに定められた2つの区分ごとに1つ以上の項目を選択し、それぞれ数値目標を定め、行動計画の策定届を管轄の都道府県労働局まで届け出る必要があります。2つの区分とは「①女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」、「②職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備」です。
従来は、全項目から1つ以上の数値目標を定めることが要件でしたが、改正後は①と②からそれぞれ1つ以上(計2つ以上)の数値目標を定めることが義務付けられます。
「機会の提供」と「環境の整備」の、両面から取り組む必要性を重視した改正となります。
①女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供 | ②職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備 |
---|---|
・採用した労働者に占める女性労働者の割合 ・男女別の採用における競争倍率 ・労働者に占める女性労働者の割合 ・男女別の配置の状況 ・男女別の将来の育成を目的とした教育訓練の受講の状況 ・管理職および男女の労働者の配置・育成・評価・昇進・性別役割分担意識その他の職場風土等に関する意識 ・管理職に占める女性労働者の割合 ・各職階の労働者に占める女性労働者の割合および役員に占める女性の割合 ・男女別の1つ上位の職階へ昇進した労働者の割合 ・男女の人事評価の結果における差異 ・セクシュアルハラスメント等に関する各種相談窓口への相談状況 ・男女別の職種または雇用形態の転換の実績 ・男女別の再雇用または中途採用の実績 ・男女別の職種もしくは雇用形態の転換者、再雇用者または中途採用者を管理職へ登用した実績 ・非正社員の男女別のキャリアアップに向けた研修の受講の状況 ・男女の賃金の差異 |
・男女の平均継続勤務年数の差異 ・10事業年度前およびその前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用割合 ・男女別の育児休業取得率および平均取得期間 ・男女別の職業生活と家庭生活との両立を支援するための制度(育児休業を除く)の利用実績 ・男女別のフレックスタイム制、在宅勤務、テレワーク等の柔軟な働き方に資する制度の利用実績 ・労働者の各月の平均残業時間数等の労働時間(健康管理時間)の状況 ・労働者の各月の平均残業時間数等の労働時間(健康管理時間)の状況 ・有給休暇取得率 |
2020年6月1日施行:女性の活躍推進に関する情報公表の仕方が変更へ
情報公表においても、数値目標と同じように2つの区分が設定されます。従来は14項目から1つ以上の情報を公表することが要件でしたが、改正後は①と②からそれぞれ1つ以上(計2つ以上)の情報を公表することが必要となります。
①女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供 | ②職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備 |
---|---|
・採用した労働者に占める女性労働者の割合 ・採用した労働者に占める女性労働者の割合 ・男女別の採用における競争倍率 ・労働者に占める女性労働者の割合 ・係長級にある者に占める女性労働者の割合 ・管理職に占める女性労働者の割合 ・役員に占める女性の割合 ・男女別の職種または雇用形態の転換実績 ・男女別の再雇用または中途採用の実績 |
・男女の平均継続勤務年数の差異 ・10事業年度前およびその前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用割合 ・男女別の育児休業取得率 ・労働者の一月当たりの平均残業時間 ・雇用管理区分ごとの労働者の一月当たりの平均残業時間 ・有給休暇取得率 ・雇用管理区分ごとの有給休暇取得率 |
2022年4月1日:義務の対象が拡大へ
「一般事業主行動計画の策定・届出義務および自社の女性活躍に関する情報公表」の義務の対象が、常時雇用する労働者101人以上の事業主に拡大されます。常時雇用する労働者が101人以上300人以下の企業は、努力義務が義務に変更となるため、2022年4月1日に向けて準備が必要です。余裕を持った対応をお勧めします。
2020年6月1日:プラチナえるぼし認定が創設へ
現行の「えるぼし認定」よりも水準の高い、「プラチナえるぼし認定」が創設されます。「プラチナえるぼし認定」は、えるぼし認定企業のうち、一般事業主行動計画の目標達成や女性の活躍推進に関する取り組みの実施状況が得に優良であるなど、一定の要件を満たした場合に認定され、一般事業主行動計画の策定・届出が免除されます。
(参考:厚生労働省『女性活躍推進法特集ページ(えるぼし認定)』)
対応しなかった場合、罰則はあるのか
女性活躍推進法は、常時雇用している労働者の人数によって義務付けられているものの、罰則は規定されていません。ただし、対応している企業の情報を厚生労働省のデータベースで検索できるため、対応していない企業は一目瞭然です。対応していないと、女性の活躍推進に消極的な企業というイメージを持たれ、従業員の定着率や採用力に影響が出る可能性もあります。対応を怠ることなく、本来の目的を見据えて真摯に取り組みましょう。
女性活躍推進法が施行された背景
そもそも女性活躍推進法は、なぜ施行されたのでしょうか。
女性活躍推進法を語る上で欠かせないのが、男女雇用機会均等法の存在です。1986年に施行された男女雇用機会均等法では、企業において性別を理由とする不平等をなくすため、格差を是正することが求められてきました。この男女雇用機会均等法の次の手段として生まれたのが、女性活躍推進法です。
また、近年では少子高齢化による労働力人口の不足が見込まれていることもあり、ますます女性の活用・活躍が求められています。将来の日本経済を支える上でも、重要な取り組みとなるでしょう。
女性活躍推進法における企業のメリットとは?
女性活躍推進法に積極的に取り組むことは、労働者だけでなく企業にもさまざまなメリットが考えられます。
メリット①:優秀な人材の採用成功確率が上がる
女性の活躍推進に継続的に取り組むことで、優秀な人材に自社を選んでもらえる確率が上がります。自身の能力を発揮でき、キャリアアップの機会に恵まれる環境があることは、仕事を選ぶ上で優秀な人材ほど重視するポイントだからです。取り組みをより対外的にアピールするには、「えるぼし認定」を取得し、広報活動に積極的に認定マークを活用していきましょう。
メリット②:働きやすい環境づくりにつながることで定着率が上がる
従業員が仕事と家庭を両立できる環境があれば、結婚や子育てなどのライフイベントに影響を受けることなく、長期間就業してもらうことが可能となります。働きやすい環境を整えることは、人材の定着率アップにつながります。
メリット③:企業のブランディングにもつながる
女性活躍推進法の行動計画の種類は、多岐にわたっています。その中のどれを選ぶかは、企業が何を課題と捉えていて、何に取り組んでいくのかという価値観を周知することでもあります。例えば残業時間の削減を目標に、生産性向上に取り組んでいることを周知すれば、「生産性の高い会社、効率化に積極的な会社」というブランドイメージの向上につながります。
メリット④:競合他社との比較が容易になる
厚生労働省のデータベースでは、各社が同じ基準で分析したデータが公表されているため、競合他社の状況を確認できます。他社と比較して自社が優位な部分をアピールポイントとして採用や広報の場面で打ち出したり、逆に後れを取っている分野を認識し、改善に取り組むことができます。自社の情報を公表するだけでなく、他社が公表している情報も閲覧し、比較することをお勧めします。
女性活躍推進法で企業が取るべき対応5つ
女性活躍推進法に対応するには、何をすればよいのでしょうか。対応すべき事項は、下記の4つのステップと情報の公表の合計5つです。ただし、女性活躍の推進は一度対応すれば終わり、というものではありません。PDCAサイクルを確立し、継続的に取り組むことが必要です。
①【行動計画ステップ1】自社の状況の把握・課題分析
はじめに、状況把握と課題分析を実施します。その後、目標とそれを達成するために取り組む内容まで落とし込んでいきます。
(参考:厚生労働省『一般事業主行動計画策定支援マニュアル』『一般事業主行動計画策定入力支援ツール』)
基礎項目を把握
現状把握は、下記4つの必ず把握すべき項目(基礎項目)の確認から始めます(非正社員の場合は★部分の3つ)。①および②は、「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」に関する基礎項目、③および④は「職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備」に関する基礎項目です。
① 採用した労働者に占める女性労働者の割合(目安:20%以上)★
=直近の事業年度の女性の採用者数(中途採用含む)÷直近の事業年度の採用者数(中途採用含む)×100(%)
② 管理職に占める女性労働者の割合(目安:20%以上)
=女性の管理職数÷管理職数×100(%)
③ 男女の平均継続勤務年数の差異(目安:70%以上)★
=女性の平均継続勤務年数÷男性の平均継続勤務年数×100(%)
④ 労働者の各月の平均残業時間数等の労働時間の状況(目安:45時間未満)★
=「各月の対象労働者の残業時間数の合計」÷「対象労働者数」
上記の4項目を基に、自社の課題を把握し、優先順位を付けていきます。
選択項目を把握
前項で把握した自社の課題について、さらに深掘りしていきます。追加で把握しておくと効果的な観点として、「採用」「育成」「定着」「登用」「職場風土改革」「多様なキャリアコース」「賃金格差」などに関わる選択項目が挙げられています。全てを把握する必要はありませんが、定着しないことが問題なのか、キャリアコースがないことが問題なのかなど、俯瞰的に課題を捉えるためには参考になる項目です。
たとえば、女性の採用・就業継続はできているが、管理職が少ないという企業のケースでは、配置状況の男女差や教育訓練受講状況の男女差など、育成・登用に関する項目を重点的に確認します。
採用 | ・男女別の採用における競争倍率 ・男女別の再雇用・中途採用の実績 ・労働者に占める女性労働者の割合 |
---|---|
配置・育成・教育訓練 | ・男女別の配置の状況 ・男女別の将来の育成を目的とした教育訓練受講状況 ・各職階の労働者に占める女性労働者の割合および役員に占める女性の割合 ・男女の人事評価結果の差異 ・男女別の1つ上位の職階への登用割合 |
多様なキャリアコース | ・男女別の職種・雇用形態の転換実績 ・男女別の職種または雇用形態の転換・再雇用・中途採用した者の管理職登用実績 ・非正社員の男女別のキャリアアップに向けた研修受講状況 |
職場風土改革 | ・雇用管理区分ごとの労働時間 ・有給休暇取得率 ・管理職および男女の労働者の配置・育成・評価・昇進・性別役割分担意識・その他の職場風土に関する意識 ・セクハラなどの相談状況 |
賃金格差 | ・男女の賃金の差異 |
定着 | ・男女別の10年目前後の継続雇用割合 ・男女別の職業生活と家庭生活の両立支援制度の利用実績 ・男女別の育児休業取得率・平均取得期間 ・男女別のフレックス、在宅勤務等柔軟な働き方の利用実績 |
課題分析
大枠の課題が把握できたら、その中でも「より大きな課題」の見当を付けます。部署別・職種別で傾向差の確認や、教育訓練の中でも将来の人材育成を目的としたものに限定して男女差を把握するなど、さらに絞り込んだ観点で状況を確認します。
例:復職女性の配置や能力発揮・キャリア形成が困難なケースの分析項目
部署ごとの配置状況(男女別) | 営業、管理など、企業ごとの代表的な部署の配置について、性別による偏りを確認。
女性配置割合の高い部署 女性___% 男性___% ※計算方法「当該部署の女性or男性労働者数」÷「(女性or男性)労働者数」×100(%) |
---|---|
将来の人材育成を目的とした 教育訓練の受講の状況(男女別) |
対象となる層に占める受講割合が、男女で同程度になっているかを確認。
女性___% 男性___% ※計算方法「女性で選抜研修等を受講した人数」÷「対象となる層の女性労働者数」×100(%) |
職種または雇用形態の転換の実績(男女別) | 当該年度等における職種・雇用形態転換実績を男女別に確認(特に女性の実績があるか否か)。 女性___人 男性___人 |
管理職や男女の労働者の 配置・育成・評価・昇進に関する意識 |
配置・育成・評価・昇進等に関わる事項についての意識調査を実施。
女性___ポイント 男性___ポイント |
なお課題を分析する際は、次のような視点を持っておくといいでしょう。
・ 産休・育休から復職した女性社員が復帰できない部署・職種はないか
・ 復職した女性が能力発揮できているか(営業職だが顧客対応から外れるなど)
・ 選抜型研修や管理職養成研修等に、子どもを持ちながら就業継続してきた女性たちにも参加機会が与えられているか
・ 職種や雇用形態等の転換制度が適切に活用されているか。本人の意向を尊重した運用になっているか。復職等の機会に、本人の意向とは別にキャリアダウンとなる転換が行われていないか
・ 女性社員が、出産・子育てをしながらキャリア形成していくイメージや意欲を持つことができているか。管理職が、復職女性に対するマネジメント責任・育成責任を認識できているか
目標設定
課題が明確になったら、それをどの程度改善するか、目標を設定します。重要なのは、測定可能な数値を設定すること。また、限定的な課題に対する目標より、複数の課題に対する目標を優先的に設定する方が、より効果を上げることができます。
目標設定の例:復職女性の配置や能力発揮・キャリア形成が困難なケース
・▲▲部(※)で働く女性の配置割合を●%以上とする(※復職女性の配置が困難となっている部署・職種等を設定)
・女性の選抜研修等の受講割合を、男性と同水準の●%以上(対象層に占める割合)とする
・育休取得者とその上司を対象とした復職研修を100%実施する
取り組み内容の決定
目標を設定したら、次は具体的な対応策を検討し、取り組み内容を決めます。
例:復職女性の配置や能力発揮・キャリア形成が困難なケース
・育休復職者とその上司を対象とした制度利用者の能力開発や、キャリア形成支援研修を行う
・時間制約のある社員を活かす、職場マネジメントの好事例開発・紹介
・社員一人一人のキャリアプランを本人と上司で作成し、中長期的な視点での育成を行う
②【行動計画ステップ2】計画の策定、社内周知、外部公表
課題の分析を経て、取り組み内容まで決まったら、行動計画の策定と周知を行います。
行動計画の策定
行動計画には、「計画期間」「数値目標」「取り組み内容」「取り組みの実施時期」の4項目をわかりやすく記載するといいでしょう。以下に、(a)~(d)の4つに分解して、もう少し具体的に説明します。
内容 | 例(書き方) | |
---|---|---|
(a) 計画期間 |
中長期で必ず実現できる計画を作ることと、改善サイクルを細かく回し、実現の可能性を上げることが重要。計画期間としては10年程度の長期計画を作って、2~5年間に区切る。定期的に進捗を確認しながらPDCAを回すのが望ましい。 |
長期計画期間:2020年4月1日~2030年3 月31日 |
(b) 数値目標 |
ステップ1で設定した目標(測定可能な数値目標)を、必ず1つ以上記載。実情を踏まえつつ「管理職に占める女性割合を●%以上にする」など、数値目標を達成できるか否かという視点で設計する。 |
・▲▲部(※)で働く女性の配置割合を●%以上とする(※復職女性の配置が困難となっている部署・職種等を設定) |
(c) 取り組み内容 |
ステップ1の最後で設定した内容を記載。より大きな課題に対応する取り組みを優先的に実施する。 |
・育休復職者とその上司を対象とした制度利用者の能力開発や、キャリア形成支援研修を行う |
(d) 取り組みの実施時期 |
取り組み内容の実行に必要となる具体的なタスクを切り出し、実施時期と合わせて記載。 |
育休復職者とその上司を対象とした制度利用者の能力開発やキャリア形成支援研修を行う |
行動計画の例としては、復職女性の配置や能力発揮・キャリア形成に課題があり、これを改善したいという場合、次のような行動計画となります。
(参考:厚生労働省『一般事業主行動計画』)
社内周知
行動計画を策定したら、その内容を社内に周知します。周知は、正社員だけでなく非正社員も対象です。全ての従業員が随時、容易に確認できる方法を選択してください。
周知の方法例:
・事業所の見やすい場所への掲示
・書面での配布
・電子メールでの送付
・イントラネット(企業内ポータルサイトなど)への掲載
外部公表
自社の行動計画は、厚生労働省が運営する『女性の活躍推進企業データベース』や自社のホームページなどに掲載し、外部からも内容が確認できるようにします。なお、後述の両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)の受給を申請する場合には、行動計画などの公表を「女性の活躍推進企業データベース」上で行うことが条件となっていますので、ご注意ください。
外部に公表する目的は、女性の活躍推進に関する自社の姿勢や取り組みなどを、求職者などに知らせることです。また、効果的な取り組みなどを事業主の間で情報共有することで、相互の女性活躍推進を期待することにあります。
(参考:厚生労働省『女性の活躍推進企業データベース』)
③【行動計画ステップ3】都道府県労働局への届出
行動計画の策定が完了したら、届出をします。届出先は、自社の住所を管轄する都道府県の労働局です。届出の方法には、電子申請・郵送・持参があります。様式は、厚生労働省が用意している参考様式、もしくは同等の必要記載事項を記載した独自の様式を用いましょう。厚生労働省が用意している参考様式には「女性活躍推進法単独型」と、「次世代育成支援対策推進法との一括型」の2種類があります。一括型の様式を利用できるのは、次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画の要件も同時に満たし、計画期間も同一の場合のみです。
※ただし2020年4月1日以降は以下の通りに変更になります。(以下、厚生労働省『東京労働局-女性活躍推進法特設ページ』から引用)
一般事業主行動計画の改正内容(施行:令和2年4月1日)
常時雇用する労働者が301人以上の事業主は、令和2年4月1日以降が始期となる一般事業主行動計画を作成する際は、原則として、①女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供、②職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備の区分ごとに1つ以上の項目を選択し、それぞれ関連する数値目標を定めた行動計画の策定届を、管轄の都道府県労働局まで届け出る必要があります。
(参考:厚生労働省『様式第一号 一般事業主行動計画策定・変更届(女活法単独型)』『様式第二号 一般事業主行動計画策定・変更届(女活法・次世代法一括型)』)
④【行動計画ステップ4】取り組みの実施、効果の測定
行動計画の届出まで完了したら、計画に沿って取り組みを進めます。確実に数値目標を達成するためにも、計画の中間時点で効果を測定しましょう。そのためには事前に効果測定の時期を設定しておくとよいでしょう。進捗状況によっては、行動計画を変更する必要があるかもしれません。その場合は、ステップ1の「自社の状況の把握・課題分析」に戻り、再度、目標の設定や内容の検討を進めましょう。
⑤女性の活躍に関する情報の公表
女性活躍推進法により、企業に求められている対応の最後に、「女性の活躍に関する情報の公表」があります。こちらは、行動計画における数値目標や取り組み内容の公表とは異なり、各社の現状を公表するためのものです。法で定められている公表項目には下記の14項目があり、そのうち1つ以上の公表が義務付けられています(※)。年1回以上情報を公表することで、女性活躍推進に積極的な企業が優秀な人材を確保できたり、企業間の競争力が強化されたりする役割を担う仕組みです。
行動計画の外部への公表と同様、厚生労働省が運営する『女性の活躍推進企業データベース』や自社のホームページへ掲載して公表します。
①女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供 | ② 職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備 |
---|---|
・採用した労働者に占める女性労働者の割合 ・男女別の採用における競争倍率 ・労働者に占める女性労働者の割合 ・係長級にある者に占める女性労働者の割合 ・管理職に占める女性労働者の割合 ・役員に占める女性の割合 ・男女別の職種または雇用形態の転換実績 ・男女別の再雇用または中途採用の実績 |
・男女の平均継続勤務年数の差異 ・10事業年度前およびその前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用割合 ・男女別の育児休業取得率 ・労働者の一月当たりの平均残業時間 ・雇用管理区分ごとの労働者の一月当たりの平均残業時間 ・有給休暇取得率 ・雇用管理区分ごとの有給休暇取得率 |
(参考:厚生労働省『女性の活躍推進企業データベース』)
女性活躍推進法への対応に向けて、活用できる「両立支援等助成金」
常時雇用している労働者が300人以下の事業主は、女性の活躍推進に取り組むことで受給できる両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)が活用できます。女性活躍加速化コースには、加速化Aコースと加速化Nコースの2種類があります。
加速化Aコース
一般事業主行動計画を策定・労働者への周知・外部への公表・労働局への届出を実施していることに加え、行動計画に基づいた取り組み目標の2つ以上達成が支給要件です。受給できる金額は38万円(生産性要件を満たした場合は48万円)です。
加速化Nコース
行動計画に基づいた取り組み目標だけでなく、数値目標も達成した場合には、28.5万円が支給されます(生産性要件を満たした場合は36万円)。また、女性管理職比率が上昇し、かつ15%以上となった場合には、支給額が加算され47.5万円になります(生産性要件を満たした場合は60万円)。
加速化Aコースの支給要件である取り組み目標を達成した日の翌日から、3年以内に数値目標を達成した場合であれば、AコースとNコースの双方を受給することも可能です。
(参考:『【社労士監修】雇用関連のおすすめ助成金。メリット・デメリットや条件・申請方法とは』)
女性活躍推進法の課題
一般事業主行動計画の届出状況は、2019年12月31日時点で全国平均98.9%と、ほとんどの企業が対応しています。また、女性活躍推進法を通じて、働きやすい環境を整備するためのさまざまなノウハウや事例も共有されています。しかし一方で、まだまだ課題もあります。
例えば、女性活躍推進法という法律自体の認知率がまだ低いことが挙げられます。企業の経営者や人事担当者など、法律に対応している人はその存在を認知しているかもしれませんが、就職や転職の機会にこういったデータを活用する文化は、まだまだ根付いてはいません。また、待機児童の問題や男性の育児休暇取得率の低さなど、必ずしもこの法律の推進だけでは解決できない問題もあります。
【まとめ】
人手不足解消の手段の1つとして、今、女性の活用が注目されています。仕事とプライベートをうまく両立できる環境をいち早く整え、優秀な人材を活用できる体制を整えた企業こそ、次の時代に生き残っていけるだと言えるのではないでしょうか。そういった意味でも、企業が女性活躍推進法に積極的に取り組むことは、大きなメリットがあると言えます。
(監修協力/unite株式会社、編集/d’s JOURNAL編集部)
【働き方改革】企業に求められる8つの対応とは?
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