【かんたん図解】改正健康増進法の施行で罰則を受けないために、企業が最低限とるべき4つの対応

第一東京弁護士会労働法制委員会、日本CSR普及協会(雇用労働専門委員)、経営法曹会議等に所属。経営者側労働法を多く取り扱い、労働審判・労働訴訟等の係争案件、団体交渉(組合・労働委員会)、労災(行政・被災者対応)、労務DD対応を得意とする。
経営課題を抽出し、依頼者のニーズを踏まえたベストプラクティスの提案を心掛ける。
主著に『労働行政対応の法律実務』(中央経済社 共著)、『「働き方改革実行計画」を読む』(月刊人事労務実務のQ&A 2017年7月号 日本労務研究会 共著)など。

改正健康増進法が2020年4月1日から全面施行
改正健康増進法の変更内容
改正健康増進法に違反した場合、罰則も
まずは確認:改正健康増進法の対象施設
対象だった場合:改正健康増進法に違反しないために、企業がとるべき4つの対応
条件を満たしていれば一定の経過措置も

2020年4月から全面施行された「改正健康増進法」。今回の改正では、「望まない受動喫煙の防止」という目的が新たに加わっています。これにより、施設区分による喫煙の可否や、設置できる喫煙室の要件などが定められました。法律に違反した際は、罰則が適用される場合もあり、対象となる施設では、規制内容にのっとった適切な対応を求められます。しかし、具体的にどのような対策をとるべきなのか、まだきちんと把握できていない企業も多いのではないでしょうか。
今回は、全面施行された健康増進法の概要や改正内容、対象施設の区分、対象となる施設ごとに必要な対応などについて、わかりやすくご紹介します。

改正健康増進法が2020年4月1日から全面施行

2020年4月、健康増進法の一部を改正した「改正健康増進法」が全面施行されました。この法改正は望まない受動喫煙を減らすことを第一の目的としたものです。これにより、多数の利用者がいる施設、旅客運送事業船舶・鉄道、飲食店などにおいて、原則的に屋内が禁煙となり、併せて「施設区分に応じた喫煙の可否」「喫煙場所のルール」「喫煙所の設置要件」などが定められました。

改正健康増進法第六章の条文には、受動喫煙の防止について、以下のように記載されています。

第二十五条(国及び地方公共団体の責務) 
国及び地方公共団体は、望まない受動喫煙が生じないよう、受動喫煙に関する知識の普及、受動喫煙の防止に関する意識の啓発、受動喫煙の防止に必要な環境の整備その他の受動喫煙を防止するための措置を総合的かつ効果的に推進するよう努めなければならない。

第二十六条(関係者の協力) 
国、都道府県、市町村、多数の者が利用する施設(敷地を含む。以下この章において同じ。)及び旅客運送事業自動車等の管理権原者(施設又は旅客運送事業自動車等の管理について権原を有する者をいう。以下この章において同じ。)その他の関係者は、望まない受動喫煙が生じないよう、受動喫煙を防止するための措置の総合的かつ効果的な推進を図るため、相互に連携を図りながら協力するよう努めなければならない。

第二十七条(喫煙をする際の配慮義務等) 
何人も、特定施設及び旅客運送事業自動車等(以下この章において「特定施設等」という。)の第二十九条第一項に規定する喫煙禁止場所以外の場所において喫煙をする際、望まない受動喫煙を生じさせることがないよう周囲の状況に配慮しなければならない。

 特定施設等の管理権原者は、喫煙をすることができる場所を定めようとするときは、望まない受動喫煙を生じさせることがない場所とするよう配慮しなければならない。 

ここでは、国や地方公共団体および、該当する施設の管理権原を有する管理権原者の責務として、望まない受動喫煙が生じないよう必要に応じた対策を講じることを義務づけています。また、喫煙者に対しても、周囲に対し受動喫煙が生じないように配慮する、配慮義務を課しています。

改正法施行の背景には、「受動喫煙を要因とする年間死亡者が1万5,000人にのぼるとの予測」や「乳幼児をはじめとする未成年者と病気がある人への配慮」「日本の喫煙対策が最低レベルとのWHOの評価」などが挙げられます。また、東京オリンピック・パラリンピック開催にあたり、喫煙マナーを徹底したいという点も、法改正の背景にあるようです。

(参考:厚生労働省『健康増進法の一部を改正する法律案』)
(参考:厚生労働省『受動喫煙対策』)

改正健康増進法の変更内容

従来の健康増進法では、施設管理者に対し、受動喫煙防止に向けて必要な措置を講じる「努力義務」を定めていました。しかし、受動喫煙を生じさせずに喫煙できる場所が不明確だったため、「非喫煙者が望まない受動喫煙をしてしまう」「喫煙者自身も意図せず受動喫煙をさせてしまう」といった課題が浮き彫りに。そこで、望まない受動喫煙を生じさせないよう、改正法では施設や場所ごとの喫煙の可否を明確にし、対象となる施設の管理者に対して必要な対策の実施を義務付けました。

法改正による主な変更点

2020年4月の法改正による主な変更点は次の通りです。

・管理権原者の責務を明示
・屋内は原則禁煙に
・施設の類型ごとに、禁煙措置や喫煙場所を特定
・喫煙室設置に関する、技術基準を明示
・喫煙可能な場所の標識掲示の義務付け
・20歳未満の喫煙エリアの立ち入り禁止
・違反時の罰則規定

(参考:厚生労働省『受動喫煙対策』)

法改正で何がどう変わったのか、この後詳しく見ていきましょう。

改正健康増進法に違反した場合、罰則も

改正健康増進法では、違反時の罰則を規定しています。それによると、罰則の対象は喫煙者を含む「全ての人」と、所有者など、施設の設備改修等を適法に行う権原を有する「管理権原者」や事実上現場の管理を行っている「管理者」(「管理権原者」と「管理者」とを併せて「管理権原者等」といいます。)に分けられます。「禁煙場所での喫煙」「設備の違反」といった違反が発覚した場合、まず、都道府県知事による「指導」を受けることに。その後、「勧告」や「命令」などを経ても状況が改善されない場合、最終的に罰則の適用となる可能性があります。

違反内容によって罰則は異なりますが、最も重いもので50万円の過料が規定されています。

改正健康増進法に違反した場合、罰則も

(参考:東京都『改正健康増進法・都条例について』)
(参考:厚生労働省『受動喫煙対策』)

まずは確認:改正健康増進法の対象施設

改正健康増進法の対象となる施設は、大きく3つに分けられます。ここでは、それぞれの施設区分を説明していきます。自身の職場がどの施設に当てはまるか、確認しましょう。

まずは確認:改正健康増進法の対象施設

①第一種施設(学校、病院、薬局、児童福祉施設、行政機関の庁舎など)

第一種施設として指定されているのは、不特定多数が集まる公共性の高い施設です。特に健康への配慮を必要とする病院や学校などが第一種施設に含まれます。これらの施設は、最も規制が強い施設に該当するため、敷地内は原則的に禁煙となります。

ただし、敷地内の屋外に、所定の要件を満たした「指定屋外喫煙所」を設置することは可能です。

②第二種施設(事務所、工場、ホテル、旅館、飲食店など)

第二種施設は、第一種施設以外で多数の人が利用する施設全般が該当します。企業で使用するオフィスの多くは第二種施設です。これらの施設では、原則的に屋内禁煙となります。

屋内での喫煙を認める場合は、要件を満たした喫煙専用室などの設置が必要です。

③経営規模が小さい飲食店

経営規模が小さい飲食店の区分は、第二種施設です。しかし、すぐに対策を講じることが困難な状況への配慮から、経過措置として、喫煙可能場所である旨を掲示した上での屋内の喫煙が認められています。該当する飲食店の範囲は、後ほど詳しく説明します。

④喫煙目的施設(バー、スナックなど)

喫煙目的施設には、「たばこの対面販売をしている」「主食として認められる食事を提供していない」という要件を満たすバーやスナックなどが該当します。また、「たばこや喫煙器具の販売をしている」「設備を設けて飲食をともなう営業をしていない」という要件を満たす店内で喫煙ができるたばこ販売店や公衆喫煙所も、喫煙目的施設です。

喫煙目的施設では、その施設内での喫煙が可能ですが、喫煙目的室の要件を満たす必要があります。
また、屋外は規制対象外となりますが、受動喫煙を生じさせない場所に喫煙箇所を設置するなどの配慮が求められています。

(参考:厚生労働省『受動喫煙対策』)
(参考:東京都福祉保健局『受動喫煙対策 施設管理者向けハンドブック』)

対象だった場合:改正健康増進法に違反しないために、企業がとるべき4つの対応

改正健康増進法の規制対象となる施設では、法律に違反しないよう、対応する必要があります。企業に求められる対応策について、ご紹介します。

①職場やオフィスでは原則禁煙

第二種施設に該当する企業のオフィス内は、原則禁煙です。煙がほぼ出ないことから、受動喫煙対策としても近年利用者が増えている「加熱式たばこ(電子たばこ)」も、屋内禁煙の対象になります。

屋内喫煙所を設ける際は、基準を満たした「喫煙専用室」または「加熱式たばこ専用喫煙室」の設置が必要です。

②特定屋外喫煙場所・屋内喫煙室の設置

喫煙所を設ける場合、施設の区分によって、「屋外喫煙所」または「屋内喫煙所」のいずれかを選択します。第一種施設では、屋外喫煙所のみ設置可能です。それぞれの喫煙室を設置する際は、基準となる要件を満たす必要があります。各喫煙室の要件と、設置可能な施設を確認しましょう。

特定屋外喫煙場所の設置要件

第一種施設では、以下に挙げる全ての要件を満たせば、「指定屋外喫煙所」を設置できます。

設置要件
①第一種施設の屋外の場所であること
②管理権原者によって、禁煙場所と区画されていること
③喫煙可能な場所である旨を表示した、標識が設置されていること
④施設の利用者が通常立ち入らない場所に設置すること (例)建物の裏や屋上など

※屋外喫煙場所では、屋内喫煙室のように詳細な技術的基準は定められていません。

屋内喫煙室における、喫煙室外への煙の流出防止措置(=技術的基準)

屋内に喫煙室を設置する際は、次に挙げる技術的基準を全て満たすことが必要です。要件を満たした喫煙室の設置にあたっては、費用の一部を補填できる「受動喫煙防止対策助成金」も用意されています。助成の対象となる施設では、活用を検討するのもよいでしょう。

①出入り口において、喫煙室の外側から内側に流入する空気の気流が0.2メートル/秒以上であること
②たばこの煙が喫煙室の中から施設の屋内に流出しないよう、壁・天井によって区画されていること
③たばこの煙が施設の屋外に排気されていること
・施設内が複数の階に分かれる場合、壁・天井などで区画した上で、喫煙者と禁煙階を分ける扱いも可能です。(=フロア分煙可)
・従業員がいないなど一定の要件を満たした飲食店が、喫煙可能室として店内を全面喫煙可能とする場合は、②のみ満たす必要があります。
・2020年4月に既に存在している建築物などで、管理権原者の責任において責めに帰すことができない事由によって技術的基準を満たすことが困難な場合は、一定の経過措置が設けられます。

(参考:厚生労働省『受動喫煙防止対策助成金 職場の受動喫煙防止対策に関する各種支援事業(財政的支援)』)

屋内喫煙室の種類と設置可能な場所の要件

上述した基準を満たす喫煙室を屋内に設置する場合、設置できる喫煙室の種類は以下の4つのタイプです。どのタイプの喫煙室が設置できるかは、施設の区分によって決まっています。

施設の種類 用途 設置場所 スペース内飲食
①喫煙専用室 喫煙専用 第二種施設または鉄道・船舶の屋内の一部
施設内の全ての場所への設置不可
②指定たばこ専用喫煙室 加熱式たばこのみ喫煙可能 第二種施設または鉄道・船舶の屋内の一部

施設内の全ての場所への設置不可

③喫煙目的室 喫煙を目的とした施設 シガーバー・スナック・たばこ販売店など
屋内の一部または全てに設置可
可(主食提供不可)
④喫煙可能室 要件を満たす飲食店の喫煙席 屋内の一部または全てで喫煙可

(参考:東京都福祉保健局『受動喫煙対策 施設管理者向けハンドブック』)
(参考:厚生労働省『なくそう!望まない受動喫煙。』)

③喫煙室ではポスターや標識で喫煙表記

施設内に喫煙室を設けるときは、喫煙室およびその施設の主な出入り口の目立つ場所にポスターや標識を掲示し、「施設内に喫煙可能なスペースがあること」と、「どのような喫煙スペースか」を示さなければなりません。喫煙室の分類によって、正しい掲示を行いましょう。以下の標識は、それぞれの喫煙スペースの表示例です。

「喫煙専用室」が施設内に設置されていることを示す標識

この標識が設置された喫煙専用室では、喫煙のみ可能です。それ以外の飲食をはじめとするサービスの提供は禁止されています。

「喫煙専用室」が施設内に設置されていることを示す標識

「加熱式たばこ専用喫煙室」が施設内に設置されていることを示す標識

この標識が設置されたスペースでは、加熱式たばこ(電子たばこ)に限って喫煙が可能です。また、飲食をはじめとするサービスの提供が可能とされています。

「加熱式たばこ専用喫煙室」が施設内に設置されていることを示す標識

「喫煙目的室」が施設内に設置されていることを示す標識

この標識が設置されたスペースは、シガーバ―やたばこ販売店、公衆喫煙所など、喫煙を目的とする施設であることを表します。主食以外の飲食物の提供も可能です。

「喫煙目的室」が施設内に設置されていることを示す標識

「飲食をともなう喫煙可能室」が施設内に設置されていることを示す標識

この標識が設置できるのは、既存の飲食店のうち経営規模が小さい施設になります。喫煙可能室では、喫煙に加え、飲食をはじめとするサービスの提供が可能です。

「飲食をともなう喫煙可能室」が施設内に設置されていることを示す標識

(参考:厚生労働省『なくそう!望まない受動喫煙。』)

なお、東京都福祉保健局ホームページでは、事業者向けのリーフレットと屋内禁煙を示すポスターがダウンロードできるので、参考・活用するとよいでしょう。
(参考:東京都福祉保健局『受動喫煙防止対策施設管理者向けハンドブック』)
(参考:東京都福祉保健局『【新制度周知用】第一種施設用ポスター』)

④20歳未満は喫煙可能な設備への入室禁止

喫煙室の形態や入室目的にかかわらず、20歳未満の人の喫煙室への入室は禁止です。飲食店の喫煙可能スペースに、20歳未満の従業員が立ち入ることもできません。

それぞれの喫煙室には、次のような標識を掲示し20歳未満の人が立ち入らないようにしましょう。

20歳未満立ち入り禁止を示す標識

20歳未満立ち入り禁止を示す標識

(参考:厚生労働省『なくそう!望まない受動喫煙。』)

条件を満たしていれば一定の経過措置も

既存の経営規模の小さな飲食店は、事業継続に影響する可能性への配慮から、経過措置として「喫煙可能室」の設置が認められています。以下に挙げる要件を全て満たした小規模飲食店が、経過措置の対象となります。

①2020年4月1日時点で、現に存する飲食店(既存事業者)であること
②資本金5,000万円以下であること
③客席部分の面積が100㎡以下であること

運用にあたっては、所在地のある保健所に、必要事項を届け出ましょう。
(参考:厚生労働省『なくそう!望まない受動喫煙。』)

まとめ

「望まない受動喫煙をなくすこと」を目的に全面施行された改正健康増進法により、多くの人が集まる施設では原則的に屋内が全て禁煙となりました。規制対象となる施設は大きく3つの区分に分かれ、それぞれ設置できる喫煙室の種類・場所が異なります。改正法では違反すると罰則が適用される場合、それぞれの管理者は、違反しないよう対策が必要です。自身の管理する施設がどの区分に当たるかを確かめた上で、必要な対応策を早急に検討しましょう。

(制作協力/株式会社はたらクリエイト、監修協力/弁護士 藥師寺正典、編集/d’s JOURNAL編集部)