競合より先に欲しい人材を早く見極め早く採る!面接回数や期間短縮化をかなえる選考フロー設計ノウハウ

株式会社 人材研究所

シニアコンサルタント 安藤 健

プロフィール

採用難が続く中、自社が求める人材を他社よりも早く獲得するため、面接回数や期間の短縮化を検討する企業が増えています。人事・採用コンサルタントとして多くの企業を支援する安藤健氏は「短期間で自社にマッチする人材を獲得するためには、面接の構造化と候補者のフォローが鍵になる」と指摘しています。

短期間で自社にマッチする人材を獲得するために、構造化やフォローを意識しながらどのような選考フローの設計を行うべきなのでしょうか。具体的な方法や設計時のポイントなどを安藤氏に伺いました。

選考期間が長引くほど、人材の採用難易度が高まるという課題

近年、採用難が続く中で、他社よりも早く人材を獲得するため、面接回数や期間を短縮化し、2次面接までに決め切りたいというニーズが高まっています。一方で、選考フローの短縮化の具体的な方法がわからないなどの課題を感じる企業も多いのではないでしょうか。

安藤氏:そうですね。まず、面接回数や期間を短縮する上で人事選考の運用という観点から言うと、人事・採用担当者のリソース不足という課題が挙げられます。候補者がエントリーしてから入社承諾をするまでに理想的な期間は約1カ月以内といわれており、選考期間が長引くほど他社から入社承諾が出て辞退率が増加してしまいます。しかし、特に中小企業では、担当者のリソース不足により面接の日程調整がうまくいかず、選考期間全体が延び、結果的に人材を採用する難易度が高まっています。

このため、面接の回数などステップを少なくし選考フローの短縮化をします。それに加え、1次選考と2次選考の間を空けないよう、社内で人事・採用担当者の人員を増やしたり、面接のアウトソーシングを活用したりする工夫が必要になるでしょう。

他にはどのような課題があると思いますか。

安藤氏:これは選考期間の長短にかかわらず課題として挙げられますが、選考から採用までの全体設計ができていないこともあるでしょう。1次面接、2次面接それぞれでどのような質問をして何を確認し、候補者の何を見極めたいのか、候補者に何を伝えたいのかということがぼんやりしていると、自社に合う人材の確保は難しくなります。

さらには面接回数を少なくしたり選考期間を短くしたりすることで、候補者が関わる自社の社員が少なくなることが課題として挙げられます。1次面接で人事・採用担当者1人、2次面接では社長など、関わる人が少なくなってしまうことで、企業の雰囲気や社員の人柄などが伝わらずに入社意欲の醸成が厳しいということもあるでしょう。

このため、選考を短縮化するには「面接を構造化して効率的にジャッジすること」「選考期間が短くても、候補者がここで働きたいと思えるフォローをすること」。この2つが大事だと考えます。

選考期間が長引くほど、人材の採用難易度が高まるという課題

選考の短縮化には、フェースごとの役割分担が重要

面接の構造化や候補者のフォローを意識しながら選考フローを短縮化する際に、どのように全体設計を行えばよいのでしょうか。

安藤氏:大前提として、企業によって異なります。ただ、通常の選考では、書類選考の後、1次面接で専門知識や専門スキル、コンピテンシーといわれる高い成果につながる行動特性を、最終面接で志望動機や企業ミッションへの共感度などを確認することが一般的です。

各プロセスで見極める要件の例

選考を短縮化する際に、1次面接で全ての項目を確認したり、事前に適性検査を受けてきてもらったりする“課題を与えるやり方”を行っている企業もあると思います。しかし、前者は人事・採用担当者の負担が大きくなり、後者は候補者の負担が大きくなるため、フォローの観点からはベストとは言えません。

そこで、選考短縮化の全体設計としては、1次面接の際に職務経歴書の入力や適性検査を受ける時間を設ける方法をお勧めします。候補者には面接当日の時間を確保してもらうことになりますが、事前準備の必要がなく、人事・採用担当者もすぐに面接の案内ができるという利点があります。

なるほど。1次面接と2次面接の役割については、それぞれどのように設計すればよいのでしょうか。

安藤氏:例えば、1次面接においては人事・採用担当者だけでなく、部門リーダーなどの専門スキルについて確認できる人材を同席させることも選考期間を短縮する方法の一つです。人事・採用担当者は基本的なコンピテンシーやリーダーシップ、傾聴力などを評価し、専門知識や経験、スキルについては部門リーダーが評価するなどの分担をします。そのように役割をしっかり設けて同時に行うことで、より短期間で自社に合う人材を見抜けるでしょう。

他にも、1次面接においては事前に質問項目を開示しておくのもよいでしょう。これは人事・採用担当者にエピソードの掘り下げスキルが求められるため少々難易度が高くなりますが、候補者は事前にどんな話をするかを考えて整理しておけるというメリットがあります。

2次面接では、社長が志望動機やミッションへの共感を確認することに注力するなど、1次面接と2次面接での確認事項を切り分けることが大切です。

▼選考短縮化による、1次面接と2次面接の役割分担例

1次面接 人事・採用担当者と専門知識を持つ部門リーダーが同席
人事・採用担当者:コンピテンシー、リーダーシップ、傾聴力などを見極める
部門リーダー:専門知識、経験、スキルなどを見極める
2次面接 社長が志望動機やミッションへの共感・理解度などを確認
採用面接では、企業によってさまざまなニーズがあると思います。例えば「カルチャーフィットを大事にしたい」「ストレス耐性を確認したい」など、それぞれのニーズに対して、具体的にどのような対策ができるのでしょうか。

安藤氏:中途採用では特に、カルチャーフィットを大切にする企業は多いと思います。その場合、1日インターンのようなかたちで就業体験を実施してから、面接を行うという方法がお勧めです。これまで培ってきたスキルや持っている資格などは職務経歴書で確認できますが、自社に合う人材かどうかを職務経歴書から判断することは難しいでしょう。就業体験をしてもらうことで、候補者は職場の雰囲気などを掴むことができ、入社後のイメージも持ちやすくなります。また、企業も面接だけでは見えにくい仕事に向き合う姿勢や、コミュニケーションの取り方などを観察できます。面接で関わる社員が少ない場合でも、就業体験を通して複数の社員と関わる機会を設けることで、候補者のフォローにもつながります。

選考期間を短くする場合、会社のことを知ってもらう手段の一つとして職業体験などを取り入れれば、企業と候補者双方の理解度が深まりそうですね。

安藤氏:そうですね。他にも、環境の変化が激しい企業や、個人で担う業務が多岐にわたる場合、候補者が新しいことにチャレンジする意欲を持っているかということを確認したい企業は多いと思います。そのようなときには、ストレス耐性を測るのに特化した適性検査を導入するとよいでしょう。

さまざまな選考手法がある中で、見極めの精度が高いと言えるのは、特に「適性検査」と「構造化面接」です。この2つを組み合わせることが、選考の短縮化には非常に適した方法ではないかと考えます。

選考手法の種類とその妥当性

なるほど。選考フローを短縮したからといって、活躍できる人材が採れない=精度が落ちてしまっては手段が目的化してしまい本末転倒ですよね。また、先ほど面接の構造化に加えて、候補者のフォローも大切だというお話がありました。選考フローを短縮化する上で候補者が「ここで働きたい」と思えるフォローにつながる工夫などはありますか。

安藤氏:オウンドメディアの活用はよいと思います。オウンドメディアリクルーティングといわれていますが、自社のホームページやSNSなどを候補者への情報発信ツールとして活用することです。選考の短縮化により直接会う機会は少なくても、SNSなどを通じて自社の魅力を伝えることができるでしょう。例えば、オフィス環境や社員インタビュー、福利厚生や社内制度、事業内容などのコンテンツをオウンドメディアで発信することで、候補者が企業の社風などを知ることができ、フォローにつながるでしょう。

面接時にできるフォローの工夫はありますか。

安藤氏:オウンドメディアと面接で、それぞれフォローの役割分担を行うのがよいと思います。オウンドメディアの特徴としては、企業は多くの情報を整理して発信でき、候補者は好きなときにその情報に触れることができます。一方で、候補者一人一人が感じる疑問や不安を企業が拾うことは難しいと言えます。このため、基本的な情報発信はオウンドメディアを活用し、面接は候補者一人一人の疑問や不安を聞いて、それをフォローする場と考えるとよいでしょう。

評価シートを工夫して申し送りをスムーズに

選考を短縮化することで、1次面接から2次面接につなげる際に人事・採用担当者の間で齟齬(そご)が生じてしまうこともあるかと思います。申し送りの際の注意点やポイントはありますか。

安藤氏:まず、面接評価シートは1次面接と2次面接、それぞれ分けて作成しましょう。その中で、1次面接で確認する項目とそのための質問に加え、1次面接時に確認した事実と人事・採用担当者の解釈を分けて記載しておくのがポイントです。例えば、候補者が前職で行ったプロジェクトの内容と成果(事実)を聞いて、それに対して人事・採用担当者がどう感じたか(解釈)を分けて記載します。これを申し送り事項として記載しておくことで、候補者が前職で行ったプロジェクトに対するアプローチや成果が、自社にマッチしているのか評価しやすくなります。

また、先ほど面接では候補者一人一人の疑問や不安を聞き、それをフォローするとよいと話しましたが、それも申し送りとして記載しておくとよいでしょう。「この候補者はこんな不安や疑問を抱えており、このように回答した」ということを記載しておくことで、2次面接時にコミュニケーションの重複を防ぐことができます。

短縮化した選考を行う際、人事・採用担当者が選考全体を通して大事にすべき心構えはありますか。

安藤氏:「掘り下げスキルを磨くこと」だと思います。例えば、本当はプロジェクトのいちメンバーとして参加していただけでも、自分がプロジェクトリーダーを務めていたように語る人がいます。そうした「フリーライダー」を見抜くには、候補者のエピソードから原因分析がどれくらいできているかを確認したり、試行錯誤したプロセスを聞いたりすることが有効です。これは、見極めにおいてとても大事なことだと思います。

最後に、企業の人事・採用担当者や経営者に向けてメッセージをお願いします。

安藤氏:選考においては、見極めができることと候補者を引き付けること、どちらも大切です。単に選考期間の短縮化を目的とするのではなく、短期間で企業と候補者それぞれが納得して意思決定できるよう、選考フローの設計を行うことが重要です。その上で、面接の構造化やフォローの工夫などの戦略を立てることを意識していただきたいと思います。

【取材後記】

自社に合った人材を早く獲得したいというニーズが高まる中で、人事・採用担当者のリソース不足や面接の全体設計が不十分なためにうまく採用に結び付かないという課題が見えてきました。しかし、ただ選考期間を短縮することだけを目的にするのではなく、企業と候補者それぞれにとって納得できる意思決定を前提とした選考フローを設計することが大切だと感じました。

(企画・編集/海野奈央(d’s JOURNAL編集部)、制作協力/株式会社はたらクリエイト

求める人材を他社よりも早く獲得!選考短縮化での見極めに役立つ面接質問例

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