募集要項とは?採用側が押さえておきたい基本的なポイント

d’s JOURNAL編集部

「求人広告を出してもなかなか応募がこない」「これから求人広告を出したい」という場合は、募集要項を改めて見直すことが大切です。募集要項の内容をきちんと精査することで、広告の効果にも大きな違いが生まれます。

この記事では、募集要項の重要性や記載すべき項目、作成時の注意点などを見ていきましょう。

募集要項とは


募集要項とはそもそもどのようなものを指すのでしょうか。ここでは、求人票との違いなども踏まえて解説します。

募集要項の概要

募集要項とは、求人を行うに当たっての応募条件や賃金条件、労働条件などを記載した文書のことです。募集概要や応募要項とも呼ばれることがあり、採用に関する重要な条件が記載されることから、企業が人材の採用を行う際には必ず作成されます。

募集要項は採用条件が端的にまとめられているのが特徴であり、求職者にとってもその企業の特色を手軽に把握できるのがメリットです。また、一定のフォーマットに沿って作成されるため、求職者からすれば「他社との比較がしやすい」のも特徴となっています。

そのため、募集要項は自社に対する第一印象を決めるものといっても過言ではありません。募集要項の内容に不十分な点があれば、他社と比較してアピールポイントが見劣りしてしまうため、大きな機会損失につながります。

求人票と異なる点

求人票とは、企業が求人募集を申し込むときに提出する書類一式のことです。おもな相手方はハローワークや人材紹介会社、大学・専門学校の就職課などであり、求人票によって正式な募集がスタートします。

求人票には、会社概要や企業の取り組み、企業理念といったさまざまなものが添付され、そのなかの一つが募集要項です。つまり、募集要項は求人票に含まれる文書の一つであるということです。

ただ、募集要項は求人票のなかでもメインの役割を果たす文書でもあるため、文脈によっては「求人票=募集要項」として扱うこともあります。

募集要項を作成する目的


募集要項には、大きく分けて2つの役割があります。ここでは、募集要項を作成する基本的な目的について見ていきましょう。

求職者に情報を正しく伝える

募集要項は求職者に対して、必要な情報を正しく端的に伝えるために作成されるものです。一般的に、求職者は初めから特定の企業だけに絞って就職活動を行うのではなく、複数の会社を比較しながら最適なゴールを見つけます。

このときに、比較検討の有力な材料となるのが募集要項です。募集要項を見れば、業務内容や給与、勤務地、休日の取り扱いといった基本的な事柄を簡単に把握できるため、その企業の特色を理解しやすいのです。

自社の魅力をアピールする

企業にとって、募集要項は自社の魅力を客観的にアピールできるものでもあります。自社で働くことがどのような利益につながるのかを明確に示すことで、求職者からの評価を高められるのです。

そのため、自社の強みや魅力、働きやすさがきちんと伝わるように見せ方を工夫することが大切です。たとえば、未経験者の採用にも積極的であることを示すのであれば、単に「未経験者歓迎」と記載するよりも、「前年度の未経験者採用の実績」や「具体的な教育制度・サポートシステム」も併記するほうが効果的といえます。

求職者からすれば、詳しい情報が記載されているほうが安心感もあり、実際に働くイメージを膨らませやすいのです。また、会社独自の福利厚生の取り組みや教育制度などもまんべんなく記載することが大切です。

以下では、自社の魅力を確認するのに役立つ「魅力整理シート」をダウンロードできます。募集要項の内容を検討する際にぜひご活用ください。

募集要項のおもな記載事項とポイント


募集要項の内容には、「必ず記載しなければならない項目」と「記載することが望ましい項目」の2つがあります。必須項目については、職業安定法によって決められているため、漏れがないように注意しなければなりません。

ここでは、必須項目の具体的な内容について見ていきましょう。

①職種

募集要項では、どのような職種を募集しているのかを明記する必要があります。同じ企業でも、採用される職種によって業務内容や求められるスキルが大きく異なるため、誤解のないように正しく記載することが大切です。

②業務内容

業務内容については、求職者が入社を判断する重要な基準になるため、正確に記載することが大切です。仕事によっては危険がともなったり、大きな責任を負ったりするケースもあるため、業務内容を明記することで求職者の誤解を予防する必要があります。

また、企業側にとっては、業務内容を明記することで採用時のミスマッチを防ぐという効果があります。できるだけ具体的に明示することで、仕事のイメージが湧きやすくなり、求職者のほうでも自身の向き・不向きを判断しやすくなるでしょう。

③契約期間

アルバイトや契約社員といった非正規雇用を行う場合は、トラブルを避けるために契約期間も明示する必要があります。また、更新の条件が決められている場合は、あわせて表示しておくほうが親切です。

なお、正規雇用を行う場合でも、誤解を避けるために「期間の定めなし」と記載するようにしましょう。

④試用期間

採用に当たり、試用期間を設けている場合は、その間の待遇や具体的な期間を記載する必要があります。仮に、試用期間と本採用の待遇に大きな差がなかったとしても、無用な誤解や不安を招かないために、正確な情報を記載することが大切です。

試用期間の明記については、2018年の職業安定法改正にともなって新たに加わったルールなので、見落としがないように注意しましょう。

⑤就業場所

就業場所は仕事をするうえで特に重要な条件の一つといえます。通勤の負担や費やす時間によって、求職者の働き方に大きな影響が生まれるため、募集要項の段階で明記しておくことが大切です。

たとえば、単に「東京都内」と記載するだけでは、23区内とそれ以外のエリアとで実際の状況は異なります。求職者にとっては、通勤できるのかどうかを判断しにくいため、その企業に興味があっても応募をためらってしまうでしょう。

募集要項の役割を果たすためには、市区町村や最寄り駅まで正確に記載することが重要です。また、職種によって勤務場所が異なる場合は、それぞれの条件を分けて記載しましょう。

⑥ 就業時間・休憩時間・休日・時間外労働

就業時間については、実働時間や休憩時間、勤務時間帯などを記載するのが一般的です。また、残業がある場合は目安の残業時間も併記しておきましょう。

就業時間に関する取り扱いは、労働基準法で明確に定められたルールがあるため、改めて抵触していないかどうかをチェックする必要もあります。企業によっては、残業時間を記載することで応募が集まりにくくなってしまうと考える場合があるかもしれませんが、採用後のトラブルを避けるためにも誠実に明示することが大切です。

また、休日については具体的な日数や曜日を明確に記載すると、求職者からの信頼を得やすくなります。「完全週休2日」「祝日」「夏季・年末年始」「慶弔」のように、休みをとれる条件をわかりやすく明記しましょう。

なお、裁量労働制を採用している場合は、就業時間の取り扱いについて具体的に記載する必要があります。たとえば、「企画業務型裁量労働制により、〇〇時間働いたものとみなされます」といった具合で、求職者にわかりやすく提示することが大切です。

裁量労働制に関する記載も、2018年の職業安定法改正にともなって新たに加わった項目 であるため、漏れがないように注意しましょう。

⑦給与

賃金に関する条件の書き方は、スタート時期のものを記載するケースやある程度の幅を持たせて記載するケースなど、企業によってさまざまです。ただし、給与幅がある場合は、求職者に過度な誤解を与えないためにも、常識の範囲内で設定する必要があります。

たとえ虚偽の記述ではなくても、下限と上限にあまりにも大きな差があれば、求職者にはマイナスイメージを与えてしまう可能性があります。なお、固定残業代を採用する場合は、基本給とは別に「〇時間を超える時間外労働分についての割増賃金は追加で支給」といった形で記載しなければなりません。

この点も2018年の改正で新たに加えられたルール なので注意しておきましょう。

⑧ 加入保険

加入保険も募集要項の必須項目です。雇用保険や労災保険、厚生年金、健康保険といった基本的なものとともに、自社で加入しているものがあればあわせて記載しましょう。

⑨ 募集者の氏名または名称

募集者の氏名・名称は、2018年の改正時に新たに加えられた必須項目 の一つです。基本的には募集をかける会社名を記載することとなります。

⑩その他

ここまでの必須項目に加えて、記載することが望ましい項目についても詳しく見ていきましょう。まずは、採用に当たって必要となる応募要件があげられます。

業務を担ってもらううえで、最低限必要となるスキルや経験、資格などは明記しておくとスムーズに選考が行えます。また、企業が独自で整えている福利厚生や教育制度なども記載しておくと、他社との差別化が実現可能です。

それ以外の項目としては、求める人物像や職場の雰囲気、ワークライフバランスに関する内容などがあげられます。ただし、募集要項は端的に情報がまとめられているのが前提であるため、冗長にならないように心がけることが大切です。

募集要項に記載してはいけない項目


募集要項には、記載を避けるべきNG項目もいくつかあります。労働基準法や男女雇用機会均等法、職業安定法などによって定められているものもあるため、法律違反にならないように注意することが大切です。

具体的なものとしては、性別や年齢を限定した表現があげられます。これには、たとえば「男性限定の仕事」や「〇〇歳以下の女性のみ募集」といった表現が該当します。

法令への抵触や企業イメージの低下を避けるためには、業務上必要な場合を除き、必要以上に限定的な表現を行わないように注意することが大切です。業務上必要な場合とは、たとえば「重量物の運搬や警備員の仕事で男性のみを募集する」「女性用更衣室の係員や巫女は女性のみを対象とする」といったケースです。

そのほかには、国籍などの人種を制限する表現や、居住地を限定するような表現も避けるべきであるとされています。また、募集要項では明確な表現が望ましいため、「容姿端麗な方」や「明るく気配りができる方」といった主観が入りやすい表現も避けましょう。

なお、これらのNG項目は採用面接でも重視すべきポイントとされています。面接時のNG行為については、以下の記事で詳しく解説されているので参考にしてみてください。

(参考:面接で聞いてはいけない質問・会話のNG行為とは?リスク回避のための具体的な対策

募集要項を上手に作成するコツ


募集要項には多くの必須項目があるため、基本的には記載すべき内容を正確に表記することが重要です。そのうえで、ここでは求職者に魅力が伝わりやすい募集要項を作成するコツについて解説します。

求める人材像を明らかにする

企業が求める人材像を明らかにすることは、採用活動全体において重要なテーマといえます。どのような人材を採用したいのが不透明なままでは、募集を行っても選考の基準があいまいになってしまい、本当に必要な人材を獲得することはできません。

なぜなら、単に優秀なスキルや経験を持っているだけでは、自社の企業風土や業務のスタイルに合致するとは限らないためです。そのため、採用時には企業がほしい人材像を明確に描き出した「採用ペルソナ」を設定することが大切です。

採用ペルソナでは、年齢や性別、前職の年収、スキル・経験といった基本的な事柄に加えて、人柄や価値観、コミュニケーションのスタイル、どのように活躍してほしいかといったビジョンなども事細かに設定します。実在の人物のようにキャラクター化することで、どのような募集要項が興味を惹きつけやすくなるのかも判断しやすくなるでしょう。

採用ペルソナについては、以下の記事で詳しく解説されているので参考にしてみてください。

(参考:採用ペルソナとは?重要性や設定ノウハウ・具体例をまとめて紹介【シート付】

自社の強みをきちんと伝える

募集要項では、自社の強みや魅力をわかりやすく伝えられる内容を心がけることが大切です。そのためにはまず、競合他社と比較して、自社にどのような強みがあるのかを丁寧に分析する必要があります。

他社と比べて労働条件や企業風土にどのような特色があるのか、自社の従業員にもアンケートなどで協力をしてもらいながら、客観的な分析を行いましょう。特に福利厚生の内容やワークライフバランスの実現に関するポイントは、求職者からの注目度が高い傾向にあります。

特徴的な取り組みを行っている場合は、よりその魅力が際立つような表現を推敲するとよいでしょう。

わかりやすい文章で書く

自社の募集要項が求職者の目に留まるタイミングは、事前に予測することができません。ざっと流し読みされたときでもきちんと興味を持ってもらえるように、募集要項はシンプルでわかりやすい表現を心がけることも大切です。

そのためには、「漢字の羅列を避ける」「専門用語の使用を控える」「あいまいな表現を避けてできるだけ数字を用いる」といったポイントを押さえるのがコツです。特に業務内容や実際の働き方は、求職者にとってなかなかイメージしづらい面があります。

これらの項目を数字などで具体的に表現することができれば、実際に働く様子をイメージしてもらいやすくなるため、求職者の興味を引き出しやすくなるでしょう。

まとめ

求人における募集要項は、企業と求職者の最初の接点となり得る重要な文書です。募集要項の内容をきちんと精査することで、同じ条件でも求職者に与える印象は大きく異なります。

募集要項には記載しなければならない項目や、避けなければならない表現などのルールがあるため、まずは基本的な決まりを確認しましょう。そのうえで、他社との差別化を図りながら、自社の強みや魅力が存分に伝わるような募集要項を作成することが大切です。

(制作協力/株式会社STSデジタル、編集/d’s JOURNAL編集部)

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