事業トップ自ら「カジュアル面談」。サイバーセキュリティ分野でハイクラス人材採用を続けるベリサーブの秘訣
クルマや家電などの領域を中心に、IoTデバイス関連のサイバーセキュリティビジネスを強化している株式会社ベリサーブ。その担い手であるセキュリティコンサルタント職のキャリア採用にも力を入れています。
サイバーセキュリティや組込みソフトウエアの知見を持つ人材は希少、かつ引く手あまたであるにもかかわらず、同社では毎年10〜15名の規模で採用に成功しているといいます。難易度の高いハイクラス人材の採用を進める秘訣とは?事業部トップの桑野氏と採用担当の小松氏にそのノウハウを、実際に入社した椿田氏にはベリサーブに入った理由を伺いました。
採用候補者は超希少、ハイクラス領域でも「ポテンシャル採用」
——貴社では現在、セキュリティコンサルタントとPM(プロジェクトマネージャー)を兼任できるハイクラス人材の採用を強化していますね。
桑野氏:当社は長年にわたり、ウェブの脆弱性テストなどの分野で実績を重ねてきました。組込みソフトウエアのメーカーさまとの取引が多いことも特徴で、私たちソリューション事業部にはサイバーセキュリティに関するご相談が数多く寄せられています。
特にここ数年増加しているのがクルマに関連する案件です。自動車もIT化が進み、サイバーセキュリティの重要性が高まっているのです。そのため2016年頃から、車載ソフトウエア製品を中心にIoTデバイス関連のセキュリティビジネスを強化してきました。この事業を牽引していただくセキュリティコンサルタント、およびPMのキャリア採用にも注力しています。
——この採用活動において苦労している点があればお聞かせください。
桑野氏:採用候補となるハイクラス人材はどこの会社からも声が掛かるような状況です。求める人材と出会えた際には、当社の事業の可能性を知ってもらうこと、そして当社でキャリアを積むことに意義を感じてもらうことに腐心していますね。
小松氏:最も理想的な採用候補者は、サイバーセキュリティを専門にしている人か、車載ソフトウエア製品の知見を持っている人です。しかし、もともとセキュリティエンジニアは売り手市場であり、さらに車載ソフトウエアの組込み技術に精通した人となると、経験者はほとんどいません。
桑野氏:その意味では、経験だけにこだわっているとなかなか採用が進みません。そのため他領域のITエンジニアにも枠を拡大したポテンシャル採用も行っています。その際には、知的好奇心があるか、当社の組織風土に合うかの2点を重視しています。
ハイクラス人材の採用ではカジュアル面談で「相手に選んでもらう」
——具体的な選考フローについてもお聞かせください。
小松氏:人材紹介サービス各社の協力の下で母集団形成を進め、当社全体では直近で毎月10〜20名の採用決定に至っています。フローとしては書類選考、面接2回、適性検査という流れです。前述の通り採用候補者が希少であり、「選考というよりもお見合い」という考え方でカジュアル面談を実施しています。当社の本気度を感じていただきたいため、事業責任者である桑野に初回の面接をカジュアル面談で実施してもらい、事業やマネジメントへの理解を深め、好感を持ってもらえるようにしています。
——カジュアル面談ではどのような会話を?
桑野氏:打ち解けた雰囲気をつくってフランクに会話しながら、まずは事業について理解してもらえるようにしています。サイバーセキュリティは難解な領域なので、「システムを守る側に立つ」という役割をわかりやすく伝えるために、クルマや家電などセキュリティリスクのある身近なモノを例に挙げて説明することが多いですね。
——直接的な経験以外の、ポテンシャルも含めた部分で最適な人材だと判断する際は、どんなポイントを見ているのでしょうか?
桑野氏:対人能力を判断するために、人との会話の中で相手の意図をくんだリアクションができるか、こちらの質問に対して意図を踏まえた切り返しができるか、などを見ています。上手な受け答えをするというよりも、対話の中で議論が深まっていくかどうか、相手に対して興味を持って質問してくれているのかといった点がとても重要だと思っています。その上で、採用候補者の能力を知りたいと感じれば深い質問もしますが、当社にとって最適な人材はすぐにわかりますね。
技術者・事業責任者として、自社の課題も率直に伝える
——前述の取り組みを踏まえて、ハイクラス人材の採用に成功した事例をお聞かせください。
小松氏:従業員数12万人規模の大手電機メーカーで半導体事業のエンジニアとして活躍し、セキュリティ関連のDX事業経験も豊富な54歳の椿田さんを採用できました。椿田さんからは、技術者の視点でベリサーブのセキュリティ事業に可能性を感じたことや、ベリサーブのプロジェクトの透明性が高く、組織の風通しも良いと感じたことなどを入社理由として挙げていただいています。
——椿田さんにそうした実感を持っていただけた秘訣はどこにあったと思いますか?
桑野氏:ハイクラス人材と向き合う際には、当社が選ぶのではなく、相手に選んでもらうというスタンスで面談することが大切だと考えています。そのため椿田さんのケースに限らず、カジュアル面談では入社後のギャップがないように、自社の課題についてもできる限り率直に、正直にお伝えしています。
転職希望者は、転職という大きな決断に当たって企業の現状はもちろん、直面している課題についても知りたいと思いますよね。また自分の上司となる事業の責任者がどんな人となりで、どのような考え方をしているのかも知りたいはず。だからこそ面談では技術者として、事業責任者として採用候補者と対等な立場で誠実に向き合うよう心掛けています。
「こんな課題を感じているので一緒に解決してほしい」「●●さんだったらどんなことに取り組んだら良いと思いますか」など、採用に当たって期待していることを伝えたり、アドバイスを求めたり、自然体で接しています。
「企業の誠実さ」と「事業トップの人柄」が入社の決め手に
——椿田さんとベリサーブの出会いのきっかけは?
椿田氏:前職では大手電機メーカーに勤務し、半導体事業のエンジニアや、DXセキュリティのコンサルタントとして従事してきました。サイバーセキュリティ分野をさらに追求していきたいと思ったこと、またスピード感とベンチャースピリットのある環境で自分の力を試したいと思ったことから、初めての転職に挑みました。その中で出会った1社がベリサーブでした。
私が関わってきた半導体事業は、日本市場で最盛期を迎えた後に一気に減衰していった領域です。そんな経験も踏まえ、私自身のパーパスとして「ものづくりで日本の再起をお手伝いしたい」と考えていました。
——入社の決め手となったポイントは?
椿田氏:事業や組織の状況を正直すぎるほどありのままにお話しいただいたことですね。ベリサーブはまだまだ若い組織で、スピード感を重視するが故に突っ走ってしまう部分もある。教育カリキュラムもまだまだ不足しているかもしれない…。そんなことも「入社後にびっくりされると困るから」と事業トップの桑野さんからありのままに話してもらいました。
企業としての誠実さが伝わってきましたし、このようにフランクに話ができる組織であれば、自分が求める仕事に思う存分挑戦できるのではないかと思いましたし、「ベリサーブという同じ船に乗りたい」と感じたことを覚えています。
また、もう一つ私の背中を押してくれたのが、ベリサーブとの出会いのきっかけをつくってくれた人材紹介サービスの担当者の存在です。ベリサーブへの応募に当たっては事業の状況や将来性といった情報に加え、面接に当たっての留意点や面接官の人柄などについても事細かにフォローいただきました。
面接での安心感が大きかったことに加え、事前の情報と面接でのやり取りによって信頼できる会社なのかどうか自分の目でしっかり確かめられたことが新たな挑戦への覚悟につながったと感じています。
私の入社後も「新しい環境になじめていますか?」と気にかけ、個別に面談までしてくれた頼れる採用パートナーの存在は、ベリサーブの事業成長にとって欠かせない存在だと感じています。
組織づくりのノウハウや知見を持つ方の力がますます必要に
——椿田さんをはじめとしたハイクラス人材への期待や、組織の変化に向けた展望をお聞かせください。
桑野氏:ソリューション事業部はまだまだ成長途上にあります。活躍しているプレイングマネージャーを中心にチームを編成して、70人規模の部署となりましたが、このままでは成長限界があるし、いつまでもプレイングマネージャーの属人性には頼り続けられないと考えています。
今後、100人を超える規模の事業部へと成長していくに当たっては、個人の力だけではなく仕組みも重要。そうした意味では椿田さんのように大企業を経験し、成熟した組織のノウハウを知っている方や仕組みをつくってきた方の力がますます必要となっていくはずです。事業への直接的な貢献はもちろんのこと、組織づくりにおいても、思い切り活躍してもらいたいと考えています。
取材後記
難易度の高い採用活動と向き合い続ける桑野さんと小松さんは、共に「相手に選んでもらうハイクラス人材だからこそカジュアル面談が重要」だと強調していました。ベリサーブ社はその担い手を事業トップ自らが務めている点でも印象的。入社したハイクラス人材からは「桑野さんの人柄に惚れた」という声も聞かれます。トップが胸襟を開いて採用候補者と向き合い、部門の課題も含めて誠実に語っているからこそ、人材獲得競争が激しい中でもハイクラス人材を引き付けられるのだと感じました。
企画・編集/白水衛(d’s JOURNAL編集部)、野村英之(プレスラボ)、取材・文/多田慎介、撮影/塩川雄也
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