中途採用がはじめての方も、ひさしぶりの方も安心!どんな職種の募集にも役立つ募集要項のまとめ方のポイント【フォーマット付】
d’s JOURNAL(ディーズ・ジャーナル)編集部
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人材を募集する際に作成する「募集要項」に必要な項目やポイントが理解できる
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法改正に基づいた各項目において記載すべき情報がわかる
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「募集要項」に書いてはいけない表現や注意点について確認できる
人材を新たに募集する際に人事・採用担当者が必ず作成する募集要項。はじめて人材を募集する方やひさしぶりに採用業務を担当する方の中には、「どんな項目・内容を記載すればいいかわからない」、「しばらく時間がたってしまい忘れてしまった」という方も少なくないのではないでしょうか。
そこで今回は、基本的な募集要項作成のポイントやコツについてご紹介します。しっかりと情報をまとめないと、思うように人材が集まらなかったり、知らず知らずのうちに職業安定法などの法律違反を犯してしまったりするリスクもあります。
募集要項の基本を押さえ、スムーズに採用活動をスタートできるように備えましょう!
募集要項とは?
募集要項とは、求人に関連する職種名や業務内容、勤務時間、勤務地、応募条件や諸条件(給与・勤務時間など)を記載したものです。
企業にとっては、採用活動の軸となる情報であり、募集に当たり必ず明示することが法律で義務づけられています。また、必ず記載が必要な項目が定められています。「募集要項」は転職希望者にとって、応募を検討するための重要な情報です。そのため、法令・労働関連法を踏まえて正しい情報を網羅的に伝えることが大切です。
最近はさまざまな採用手法があり、ハローワークなどへの求人申し込みや自社ホームページでの人材募集、求人広告の掲載や転職エージェントの求人票など、求人を募集する際に記載する情報・フォーマットは異なります。
自社の魅力を伝えるためには採用手法ごとに、新たな情報を追加したり、表現や見せ方を工夫したりする必要がありますが、まずは基本となる情報を理解し、ルールに則った採用活動ができるようにしましょう。
募集要項に記載する項目
2022(令和4)年10月1日に施行された改正職業安定法により、労働者の募集を行う際のルールが変わりました。募集要項に記載をしなければならない、必須の項目は以下の通りです。
- (1)募集者の氏名または名称
- (2)業務内容
- (3)契約期間
- (4)試用期間
- (5)就業場所(勤務地)
- (6)就業時間(始業・終業時刻)および休憩時間
- (7)休日休暇
- (8)時間外労働
- (9)賃金(給与)
- (10)加入保険
- (11)受動喫煙防止措置
- (12)(派遣労働者として雇用する場合)雇用形態:派遣労働者
(参考:厚生労働省『求人企業の皆さま 改正職業安定法2022(令和4)年10月1日施行 労働者の募集ルールが変わります』)
厚生労働省のホームページには「ハローワークや職業紹介事業者への求人申込み、自社HPでの募集、募集広告の掲載等を行う際」に求人票や募集要項において労働条件を明示する必要があると記載されています。
(参考:厚生労働省・都道府県労働局『労働者を募集する企業の皆様へ』)
また、2024年4月1日からは、職業安定法施行規則の改正により、新たに下記の事項についても「募集要項」に記載することが必要となります。
- ■従事すべき業務の変更の範囲
- ■就業の場所の変更の範囲
- ■有期労働契約を更新する場合の基準に関する事項(通算契約期間又は更新回数の上限を含む)
(参考:厚生労働省『求人企業の皆さま 改正職業安定法2024(令和6)年4月1日施行 募集時などに明示すべき労働条件が追加されます』)
募集要項を作成する時のポイント
募集要項の作成に当たっては、情報を正確、かつ、必要な情報を漏れなく伝えることが重要です。正しい情報を伝えることで、入社した社員が業務や組織文化に早くなじむことができれば、組織全体に良い影響が生まれることでしょう。
逆に、誤った情報によって応募者に期待を持たせてしまうと、入社後のパフォーマンス低下や早期退職につながり、企業の信頼性にも悪影響を与えてしまうので注意が必要です(レピュテーションリスク)。
以下に募集要項の主な項目を作成する際のポイントについてご紹介します。
業務内容
業務内容や職種名については、転職希望者にわかりやすく具体的な内容を記載します。職種名から業務内容が想像できないようでは採用したい人材からの応募獲得は難しいでしょう。また、職種や業種について、実際の業務の内容と著しく乖離(かいり)する名称や表記をしてはいけません。
例)営業中心の業務内容にもかかわらず職種名を「事務職」「管理職」などと記載する
また、2024年4月から、募集時などに明示すべき労働条件として、【従事すべき業務の変更の範囲】が追加されます。
「変更の範囲」とは、雇入れ直後にとどまらず、将来の配置転換など今後の見込みも含めた、締結する労働契約の期間中における変更範囲のことをいいます。
明示事項の記載例については以下のリンクを参照ください。
(参考:厚生労働省『求人企業の皆さま 改正職業安定法2024(令和6)年4月1日施行 募集時などに明示すべき労働条件が追加されます』)
契約期間
2024年4月から、有期労働契約の募集時に、「有期労働契約を更新する場合の基準」を明示することが必要になります。明示事項の記載例については以下のリンクを参照ください。
(参考:厚生労働省『求人企業の皆さま 改正職業安定法2024(令和6)年4月1日施行 募集時などに明示すべき労働条件が追加されます』)
試用期間
試用期間がある場合は、「期間」と「試用期間と本採用後の労働条件変更」について明記しましょう。
例)試用期間(3カ月)
試用期間がない場合でも項目は削除せず、「試用期間なし」と記載しましょう。
また、試用期間中の給与や労働条件が異なる場合は、必ず記載しましょう。同じ条件である場合も「同条件」などと記載しておくことをお勧めします。試用期間やその期間の待遇面の認識に違いがあったことにより、トラブルに発展してしまう可能性もありますので注意が必要です。
就業場所(勤務地)
配属先となるオフィスの就業場所やアクセス(交通手段・最寄り駅など)は重要です。通勤しやすいかどうかを応募の判断基準とする転職希望者もいるため、できる限り詳細を記載しましょう。車・バイク・自転車などの通勤可否、駐車場/駐輪場の有無などについても触れられていると安心です。
複数の勤務地で募集する場合には、それぞれの勤務地ごとに分けて記載することをおすすめします。希望勤務地を選択できる場合はその旨を案内しておくと良いでしょう。
また、就業場所についても、2024年4月から、募集時などに明示すべき労働条件として、【就業場所の変更の範囲】が追加されます。
(参考:厚生労働省『求人企業の皆さま 改正職業安定法2024(令和6)年4月1日施行 募集時などに明示すべき労働条件が追加されます』)
就業時間
始業と終業時刻、休憩時間を明記し、勤務をする時間帯がはっきりとわかるように記載しましょう。シフト制や2交代/3交代制などの場合には、可能であれば具体的な勤務例を表記すべきでしょう。複数の就業時間のパターンがある際にはその例も明記しておくことをおすすめします。
休日休暇
週の労働日や休日の曜日を記載します。また、完全週休2日制/週休2日制やシフト制など、就業日や休日のパターンなども記載しましょう。
例1)完全週休2日制(土・日)※平日の祝日は出勤日となります
例2)完全週休2日制(水・木)※祝日休み
例3)週休2日制(土・日)※毎月第3土曜日は出勤となります
ワークライフバランスや働きやすさを重視する転職希望者も増えているため、土・日や祝日が休めるのか、有給休暇は取得しやすいか(取得率や平均取得日数)なども可能な範囲で情報を公開しましょう。
時間外労働
残業の有無を記載します。残業がある場合、月の平均残業時間を記載しましょう。裁量労働制を採用している場合は、その具体的な内容を記載します。
賃金(給与)
給与や報酬の具体的な金額を記載します。求職者にとって重要な項目のため、トラブル防止のためにも正確な情報を記載しましょう。賞与制度や昇給・昇進制度なども明記します。
賞与や昇給の回数、社員の平均年収などの情報があると、将来の収入のイメージができるため、転職希望者にとって応募を検討しやすくなります。
固定残業代が適用される際は法律に則ってその内訳を明記しましょう。
(参考:厚生労働省「 固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします」)
募集対象・応募資格
募集対象や応募資格(必要なスキル・経験・資格など)には具体性と明確性が求められます。記載されているスキル・経験が必須条件なのか、あるいは、歓迎条件なのかということは転職希望者にとって重要な材料になります。
はじめて募集要項を書く方でもイメージしやすいように、基本的な項目や例文をまとめたフォーマットをご用意しましたのでぜひご活用ください。
募集要項を作成する際に留意すべきこと
2022(令和4)年10月の改正により、求人企業に対して、【求人情報】や【自社に関する情報】の的確な表示が義務付けられました。具体的には、虚偽の表示・誤解を生じさせる表示の禁止です。
知名度が高いグループ会社などの情報を大きく記載するなど、実際に採用をする雇用元と誤解されるような表示をしてはいけません。
例1)上場企業でないにもかかわらず、上場企業であると表示する
例2)実際の業種と異なる業種を記載する
また、正確かつ最新の内容に保つ義務についても触れられています。
・募集を終了/内容変更したら、速やかに求人情報の提供を終了/内容を変更する。
例)自社の採用HPの募集情報の削除・更新
・いつの時点の求人情報か明らかにする。
例)募集を開始した時点、内容を変更した時点 等
(参考:厚生労働省『求人企業の皆さま 改正職業安定法2022(令和4)年10月1日施行 労働者の募集ルールが変わります』)
募集要項に書いてはいけない表現
募集要項において、法令や労働関連法に則った記載を行うことは、公平な採用を実現し、企業としての社会的信頼を保つために必要不可欠です。
男女雇用機会均等法、最低賃金法、雇用対策法、職業安定法などの関連法を意識しながら、法令・ガイドラインの順守と公平性を意識した表現を徹底することが必要です。
具体的には、年齢、性別、国籍や出身地、民族・宗教に関する差別的な表現などは控え、最低賃金法などの労働法規に則った給与体系を明示しましょう。
ただし、年齢と性別に関しては例外がありますので、募集する内容に応じて適切な表記を心掛けましょう。
まとめ
募集要項に盛り込む項目やその書き方次第で採用活動の行く末が大きく左右されるため、その作成には十分な注意が必要です。業務内容や労働条件を誤解のないように明示し、法令や労働関連法に則った記載をすることが求められます。
また一方で、採用したい人材からの応募を獲得するためには、具体的かつ魅力的な表現を用いて、自社の魅力を最大限にアピールすることが必要です。転職希望者が必要としている情報を網羅的に記載することで、採用のミスマッチ防止や早期活躍につながります。
「手軽に募集要項を作成したい」「募集要項の内容を見直したい」という人事・採用担当者の方向けにフォーマットをご用意しました。本記事では記載しきれなかった、それぞれの項目の具体的な記入例もご紹介していますのでぜひこちらからダウンロードしご活用ください。
監修協力/弁護士 藥師寺正典、企画・編集/白水衛(d’s JOURNAL編集部)
【Excel版・記入例付き】募集要項フォーマット
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