嫁ブロックとは?引き起こされる原因と対策方法を解説

d’s JOURNAL編集部

採用を決めた人材から入社を辞退されてしまう原因の一つに、「家族からの反対」が挙げられます。特に既婚者の場合は、生計をともにする配偶者がいることから、パートナーの理解を得られるかどうかも入社の意思を左右する大切な要素となります。

この記事では、人事担当者が知っておくべき用語の一つとして、「嫁ブロック」の基本的な捉え方や企業としての対策方法などを見ていきましょう。

嫁ブロックとは


「嫁ブロック」とは具体的にどのような意味を持つ言葉なのでしょうか。ここではまず、用語の正確な意味と現状について確認しておきましょう。

嫁ブロックの意味

言葉の明確な定義があるわけではありませんが、一般的に嫁ブロックとは、既婚者が妻に反対されたことを理由に転職や独立を諦めることを指します。また、企業から見れば、内定を出した転職者から、妻の反対を理由に入社を辞退されてしまう状態を指す場合が多いです。

なお、夫の反対が原因である場合は「夫ブロック」と呼ばれます。いずれにしても、求職者本人は内定先の企業に前向きな意識を持っているにもかかわらず、配偶者からの理解が得られずに入社を断念してしまうのが特徴です。

もともとは転職市場において、エージェントや採用担当者間の専門用語として使われていた言葉ですが、昨今では広く浸透し始めています。

嫁ブロックの現状

嫁ブロックによる内定辞退は、近年増加傾向にあると見られているのが現状です。2016年の調査では、とある転職サイトの利用者のうち4人に1人が嫁ブロックを経験しており、実際にその約半数が嫁ブロックを理由として内定辞退しているというデータが示されています。

この背景には、「転職希望者の増加」や「女性の社会進出」といった社会的な変化が関係しているという見方も強いです。こうした動きにともない、採用市場においても家族向けの採用説明会を開く企業が現れるなどの変化が生じています。

嫁ブロックが起こってしまう原因


人材採用を行う企業にとって、嫁ブロックは大きな機会損失につながる要因です。入社直前での辞退が増えれば、採用の費用や労力が無駄になってしまうため、企業としては原因を正しく把握して予防に努めることが大切です。

ここでは、嫁ブロックの主な原因を3つに分けて見ていきましょう。

転職先企業の認知不足

嫁ブロックの主要な原因として挙げられるのが、転職先企業の認知不足です。例えば、前職と比べて転職先の知名度や規模が劣る場合には、どうしてもマイナスイメージが先行してしまい、反対される可能性が高くなります。

特に大企業から中小企業への転職では、「収入面の安定性が低くなってしまう」「周りの目が気になってしまう」といった理由から、反対を受けてしまうケースが多いようです。また、これまでと異なる分野へ転職する場合は、業界そのものへの認識不足によって理解が得られないという可能性も考えられます。

たとえ転職先企業の業績に問題がなかったとしても、配偶者の認識を変えられないことで、内定を辞退されてしまうケースは少なくありません。

労働条件に対する不満

配偶者の理解が得られないもう一つの原因は、労働条件に対する不満です。特に多いのはやはり「収入の低下」であり、前職と比べて条件が劣る場合には、きちんとした説明がなければ説得するのは難しいといえるでしょう。

また、「休日日数が少ない」「有給休暇取得率が低い」「勤務地が遠い」といった勤務条件の変化は、家族への影響も大きいことから反対される原因となりやすいです。同様の理由で、「出張が多い」「単身赴任しなければならない」なども、ブロックされてしまう原因になると考えられます。

特に近年では子育て世帯での共働きもメジャーになっていることから、勤務条件の変化による育児への影響は気にされやすいポイントといえます。

夫婦間のコミュニケーション不足

嫁ブロックが発生してしまう原因としては、求職者本人における夫婦間のコミュニケーション不足も考えられます。転職について事前にきちんと相談できていない場合は、「将来のビジョンが見えない」「家族への影響を考慮していない」といった理由で配偶者に不安を与え、反対されてしまう可能性も高くなるでしょう。

転職活動のスピードは人によっても異なるため、なかには「想像よりもスムーズに進んだために配偶者へ相談するのが最終盤になってしまった」というケースもあります。この場合、配偶者から見れば「計画性が感じられない」「今の仕事から逃げようとしている」といった悪い印象を抱かれてしまう可能性もあるでしょう。

そのため、企業側としては入社までに十分な時間を与え、理解が得られるような配慮を行うことも重要な施策となります。

嫁ブロックの3つの対策方法


嫁ブロックが起こるのを防ぐうえでは、企業としても事前に対策を練っておく必要があります。ここでは、企業が取り組める対策方法を3つに分けてご紹介します。

労働条件の見直しに取り組む

配偶者からの理解が得られやすい職場にするためには、収入や勤務時間などの労働条件を改善するのが近道といえます。特にワークライフバランスの重要性が高まる現代においては、残業や長時間労働、休日出勤といった要素は大きなマイナス要因となります。

内定直前での辞退を避けるには、業務フローの改善に取り組み、労働条件を改善することが重要かつ着実な方法といえるでしょう。業務の効率化が実現されれば、企業としての生産性も高まるため、ゆくゆくは業績の向上にともなう給与の上昇や事業規模の拡大といったステップアップも期待できます。

丁寧にコミュニケーションを行う

先にも述べたように、嫁ブロックの主要な原因の一つにはコミュニケーション不足があります。夫婦間での円滑なコミュニケーションをサポートするためにも、企業側は内定者に対して、きちんと将来のビジョンを提示することが大切です。

また、内定者とじっくり懇談できる機会を設け、家族が不安に感じていることを丁寧にヒアリングするなどの配慮も重要となります。ホームページや外部向け資料だけでは伝わらない部分も多くあるため、入社後のビジョンや育成システム、自社の将来性などを丁寧に伝えられるように情報を整理しておくとよいでしょう。

柔軟な働き方を提示する

求職者の多様なニーズに応えるためには、ライフステージに合わせた柔軟な働き方を提示するのも重要なポイントとなります。育児や介護などとの両立が図れる職場であれば、家族からの理解も得やすくなります。

そのためには、自社の労働環境や業務システムを見直し、リモートワークやフレックスタイム制などを実現できる環境を整えることも大切です。その結果、既存の人材にとっても仕事をしやすくなるため、定着率の向上も期待できます。

人材を確保するうえでは、働きやすい職場づくりを目指すことが何よりも重要な鉄則といえるでしょう。

まとめ

内定を出した求職者が嫁ブロックによって入社を辞退すれば、企業にとっては大きな損失につながってしまいます。せっかく採用した人材を逃さないためには、嫁ブロックを引き起こす原因を正しく理解し、予防のために丁寧なサポートを心がけることが大切です。

また、配偶者や家族からの理解が得られやすいように、労働条件や職場環境を改善することも重要です。社内環境が改善されれば、生産性や定着率の向上にもつながるため、結局のところは自社の可能性を大きく広げることに結びつきます。

根本的な解決を図るためにも、まずは自社のあり方や既存の仕組みに目を向け、改善できるポイントがないかじっくりと見直してみるとよいでしょう。

(制作協力/株式会社STSデジタル、編集/d’s JOURNAL編集部)