採用計画とは?計画を立てる5つのステップと作成のポイント|テンプレート例も無料公開

d's JOURNAL
編集部

企業の経営方針や事業計画を実行するために、必要な人材やスケジュールを定めておく、採用計画。採用活動を計画的かつスムーズに進めていくには、採用計画によって自社が求める人物像を明らかにし、どのようなスキルを備えた人材を集めたいかなどを明確にしておく必要があります。

この記事では、採用計画の目的や策定するための手順、立て方のポイントなどをご紹介します。採用計画書に必要な項目とテンプレート例も詳しく解説していますので、作成する際の参考にしてください。

採用計画とは

採用計画とは

採用計画とは、企業の経営方針や事業計画を遂行するために立てる計画のこと。具体的には、「いつまでに」「どの部署に」「どのような人材が」「何人必要か」を明らかにし、「いくら使って」「どのような方法で採用するか」を検討します。

採用計画の詳細は企業規模や業種、経営状況などによって異なりますが、上記に加え、「採用後のフォロー体制」や「人材育成のプラン」などの項目を盛り込むケースが多いです。

採用計画が必要な理由は『効率的な採用活動をするため』

採用活動を行う前に採用計画を立てる理由は、採用活動を効率的に行うためだといえます。特に計画を立てなくても採用活動そのものを行うことは可能ですが、どうしても場当たり的な動きになりやすいので注意が必要です。

採用計画を立てないまま採用活動を実施すると、予想外に費用が膨らんでしまったり、そもそも必要な人材を確保できずに、採用活動が長期化してしまったりするケースがあります。採用計画は自社の人材戦略を支える重要なものであるため、あらかじめ綿密な計画を立てておくことで、自社が求める人材に効果的なアプローチを行うことができます。

必要な人材を着実に獲得し、人員計画や要員計画を満たすためには、採用計画の策定が不可欠です。また、採用計画を立てることによって採用担当者の間で基準が明確になり、採用活動を効率的に進めていけます。

能力の高い候補者を取り逃がす機会損失を減らせますし、雇用のミスマッチを防げるので入社後の離職率を抑える効果も期待できるでしょう。

採用計画を立てるための事前準備


自社の実態に合わせた採用計画を立てるには、あらかじめ次のような準備を行っておく必要があります。

・自社の採用に関するデータを集めて分析する
・経営層や担当部署へヒアリングを実施する
・人員計画・要員計画を立てる
・採用市場や競合他社の動向をリサーチする
・過去の採用活動を見直す

それぞれのポイントについて見ていきましょう。

自社の採用に関するデータを集めて分析する

採用計画を立てる前に、これまでに実施した自社の採用活動におけるデータを収集し、分析しておく必要があります。過去のデータからは、求人に対する応募者数や選考の通過率、実際に採用できた人数や入社後の定着率といったデータがわかるはずです。

採用活動にまつわるデータを整理することで、自社が抱えている採用活動における課題が明らかになってきます。例えば、求人に対する応募者数に問題がなくても、選考の通過率が低い場合、自社が求める人材像とのミスマッチが起こっていることが考えられます。

採用ペルソナをより明確にすることで、選考通過率を高めることが採用数の増加につながるといったような施策を実施できるはずです。自社の採用に関する課題を洗い出すことによって、より精度の高い採用活動を行うためのヒントを把握できるでしょう。

どのような採用課題を抱えているかは企業によって異なりますが、採用活動に支障が出ている原因を特定できれば、よりよいプランを策定できるはずです。

経営層や担当部署へヒアリングを実施する

自社の実態に基づいた採用計画を立てるには、経営戦略や事業計画に沿った形でプランを取りまとめる必要があります。採用計画の策定は採用担当者を中心に行いますが、そのプロセスにおいては経営層や現場の責任者などへのヒアリングが欠かせません。

経営層や現場の責任者などが求めている人材を明確に把握することで、採用活動におけるミスマッチを未然に防げるでしょう。逆にいえば、社内でのヒアリングを十分に行わないまま採用活動をスタートさせても、結局はミスマッチが生じてしまい、せっかく採用した人材が早期離職してしまうといった事態を招く恐れがあります。

無駄な費用や手間が生じるだけでなく、採用活動そのものが長期化する恐れがあるので注意が必要です。

人員計画・要員計画を立てる

「人員計画」は各部署にどのような人材を配属させるかを決める計画、「要員計画」は、事業を遂行する際に必要となる人数を見積もるための計画です。採用計画は要員計画の一要素として考えられています。人員計画や要員計画を策定することで「現在の社員の人数」と「理想とする社員の人数」とのギャップが明らかになり、採用計画において「新たに採用すべき人数」を把握できます。

詳しくは、関連記事を参考にしてみてください。

(参考:『【フォーマット有】要員計画の概要と計画の立て方・流れを解説』)

以下のフォーマットを使用すると、部署・部門ごとに要員要望数を入力することで、直間比率や労働生産性が自動で計算されます。中長期的に会社に必要な人材を算出する際に活用できますので、ぜひダウンロードしてみてください。

採用市場や競合他社の動向をリサーチする

採用計画を立てるにあたって、自社の状況を正確に把握することは重要ですが、それだけでは実効性に乏しいプランになる恐れがあります。なぜなら、採用活動を予定しているのは自社だけではなく、競合他社も同じだからです。

また、近年の日本の採用市場は労働人口の減少などの影響から、売り手市場だといわれています。能力の高い人材ほど競合他社との激しい獲得競争にさらされる懸念があり、採用計画を立てるにあたって、採用市場や競合他社の動向を事前にリサーチしておくことは欠かせません。

十分なリサーチを行うことによって、給与水準や待遇などが他社と比べて問題ないかが把握できますし、自社の強みや弱みを理解する機会にもなるでしょう。自社の強みを改めて知ることで、求職者の関心を引き付ける訴求ポイントの把握などに役立つはずです。

過去の採用活動を見直す

過去の採用活動を振り返り、課題がなかったかを見直すことも大切です。以下のポイントに沿って自社の状況を洗い出してみましょう。

・採用スケジュールの期間配分や人員配置
・採用手法・チャネルの種類、数
・採用コストの配分
・候補者が自社を選んだ理由
・入社辞退・早期退職者の数、理由
・入社後の人材活躍

入社承諾後・入社後に辞退者が多い場合は、採用方法が適切でなかったり、入社前のフォローが不十分だったりする可能性があります。採用したい人物像と募集内容がマッチしているかなどを改めて振り返る必要があります。

採用活動の見直しにおいては、課題だけでなく成功した点も把握し、ブラッシュアップを図ることが大切です。PDCAを回すことで、よりよい採用活動につながるでしょう。

採用計画の立て方の具体的なステップ

採用計画の立て方の具体的なステップ

採用計画を具体的に立てていくためには、以下の手順を押さえておくことが大事です。

・経営戦略に基づいたペルソナを設定する
・採用人数を決める
・どの雇用形態で採用するかを検討する
・採用候補に合わせた採用手法を選ぶ
・採用計画のスケジュールを策定する

各ステップのポイントを解説します。

経営戦略に基づいたペルソナを設定する

採用計画はあくまで、自社が掲げる経営戦略や事業計画を実現させるためのものであるため、求める人材像を明確にしておく必要があります。採用ペルソナを設定する際は、年齢・性別・職業・家族構成・年収・居住エリア・ライフスタイルなどを細かく見ていくことが必要です。

人材に関する要件をリアルな人材像として明らかにすることで、採用担当者の間で共通認識を持ちやすくなります。採用ペルソナを明確にしておけば、求人広告の作成時に役立ちますし、選考を行うときにも採用基準が明確になりやすいでしょう。

採用計画を作成する前に実施した社内ヒアリング結果をもとに、経営層や現場の責任者の意見・考えを反映させながら、採用ペルソナを明らかにしていくことが大切です。また、同時に複数の職種を募集する場合は、職種ごとに採用ペルソナを設定しておくとスムーズでしょう。

採用人数を決める

採用計画を立てる際は、何人採用する予定であるのかを明らかにしておきましょう。必要となる採用人数の求め方として、一般的には「必要採用数=必要要員数-在籍人員」で算出できます。

ただし、必要とする採用人数は今後の経営戦略や事業計画などによって違ってきますし、どれくらい採用活動に予算を割けるかによっても違ってくるでしょう。また、欠員を補充する場合は、現場の責任者の意見を聞きながら今後の業務量も踏まえて検討していく必要があります。

採用人数を決定する前に、現在の人員配置を適正化することで課題を解決できないかも精査しておくことが大事です。採用活動を進めていった結果、余剰人員が生まれてしまわないように、どのようなスキルや能力を持った人材が必要であるか、人材要件を改めて整理しておきましょう。

採用人数を決めると同時に、人材要件を明確にすることで、採用の間口を広げることにもつながります。

どの雇用形態で採用するかを検討する

一口に採用活動を行うといっても、どのような雇用形態で採用するかで、候補者へのアプローチは異なってきます。前述の通り、企業が採用活動を実施するのは、あくまで経営戦略や事業計画の実現のために必要な人材を確保することにあります。

例えば、「繁忙期を乗り切るために短期雇用の人材を多く確保したい」といった場合、長期雇用を前提としていないため、契約社員やアルバイトなどの雇用形態で人材を募集することになるでしょう。一方で、「新規プロジェクトの中核となる人材を採用したい」のであれば、正社員を前提として求人を行う必要があります。

そのため、採用計画を作成する際は人員計画や要員計画と照らし合わせて、必要な人材要件を細かく定義しておくことが大切です。雇用ポートフォリオを作成して、どのような雇用形態の人材を何人採用する必要があるのかを明らかにしておきましょう。

採用候補に合わせた採用手法を選ぶ

採用計画には具体的な採用手法も盛り込んでおく必要があります。採用手法は別に一つに絞り込む必要はなく、採用候補者に合わせて最適なものを選んでいくことが大切です。

具体的な採用手法として、次のものが挙げられます。

採用手法 利点 注意点
求人広告 ・幅広い人材にアプローチが行えるので、母集団の形成に役立つ。

・採用人数が多くなるほど、採用にかかる費用を抑えられる。

・採用活動が長期化すれば、かえって費用がかさんでしまう。

・採用のミスマッチが起こる可能性がある。

スカウト採用・SNS採用 ・転職潜在層へのアプローチが行える。

・企業側が直接的に採用活動に携わるので、採用のミスマッチを防ぎやすい。

・スカウトメールを送ったり、SNSを運用したりする必要があるため、採用担当者の業務負担が大きくなる。
人材サービス ・人材サービス会社に業務を委託できる部分が多いため、採用担当者の負担を軽減できる。

・専門性のあるスキルを持った人材の採用が行える。

・採用につながった際に、人材サービス会社に支払う費用が割高。

・外部に委託する部分が多いため、自社に採用ノウハウが蓄積しづらい。

ホームページ ・自社のことを深く理解してもらえる情報を直接発信できる。

・採用活動にかかる費用を抑えられる。

・ホームページの採用ページを作成する必要がある。

・採用ページを見つけてもらうための工夫が必要になる。

リファラル採用 ・自社の従業員や取引先などに人材を紹介してもらうため、採用のミスマッチが起こりにくい。

・転職潜在層にアプローチできる。

・紹介者に対してインセンティブの支払いが必要。

・不採用時のフォローを行うことが大事。

上記のように、採用手法にはさまざまなものがあるので、採用ペルソナや採用スケジュールを踏まえたうえで、どの手法でアプローチしていくかを検討しなければなりません。必要に応じて複数の手法を組み合わせてみましょう。

採用計画のスケジュールを策定する

採用計画を作成するときは、採用計画のスケジュールも盛り込んでおく必要があります。どれくらいの期間で採用活動を行うかを決めておかなければ、採用活動が長期化してしまい、予算が膨らんでしまう恐れがあるので注意が必要です。

採用計画のスケジュールは基本的に、いつまでに何人必要かといった目標と照らし合わせて、日程を逆算して決めていきます。また、求人を行うタイミングについてもよく検討しておきましょう。

中途採用の場合であれば、一般的に求職者の数が多いのは3~4月ごろであり、求人数が増えるのは9~10月ごろだといわれています。求職者が多い時期は自社の認知度を高めることができますが、競合他社の求人数が多い時期であれば工夫をしないと、自社の求人が埋もれてしまう可能性があるでしょう。

特に求人数が多い時期は、求職者に対するアプローチの仕方が大事ですが、同時に内定を出すスピードについても考えておく必要があります。競合他社よりも内定を出すスピードが遅ければ、他社に人材をとられてしまう恐れがあるため、社内体制を十分に整えておかなければなりません。

採用市場や競合他社の動向などを踏まえた上で、採用計画のスケジュールを立ててみましょう。

採用計画書に必要な項目と無料テンプレート(フォーマット)例

ここでは、採用計画に必要な項目とテンプレートの例を解説します。

採用計画書に必要な7つの項目

採用計画書に必要な項目は以下の通りです。

1.募集職種
2.雇用形態・採用人数
3.採用期日
4.人材要件・求める人物像
5.採用チャネル・コストの概算
6.選考プロセス
7.採用スケジュール

「人材要件・求める人物像」では、必要な資格やスキル、経験などを具体的に定義します。「採用チャネル・コストの概算」では、依頼先と費用の概算を算出しましょう。

「選考プロセス」では、書類選考・一次面接・二次面接などの過程とともに、それぞれの選考担当者も記載すると、誰が・いつ・どのような関わり方をするかが把握しやすくなります。

採用計画書のテンプレート例

ここでは、テンプレートとして中途採用の例を紹介します。

募集職種 営業職
雇用形態・人数 正社員:2名
採用期日 2024年12月末
人材要件・求める人物像 必須条件 顧客と直接接点をもつ営業経験
あるとよい条件 IT・システム業界での就業経験
求める人物像 傾聴力と提案力が高く、社内外問わず積極的にコミュニケーションを図る人物
採用チャネル・コスト 求人広告 A社:20万円
B社:10万円
人材紹介サービス C社:150万円
選考プロセス 書類選考 履歴書・職務経歴書により人事が実施
一次面接 管理職が実施
二次面接(最終) 役員が実施
採用スケジュール 8月 <情報収集>
・自社の採用データの収集・分析
・経営層
・担当部署へのヒアリング
・採用市場・競合他社のリサーチ
9~10月 <事前準備>
・人員計画・要員計画の策定
・採用スケジュールの決定
・採用手法の見直し
・募集要項の作成
・求人広告の掲載
・人材紹介サービスへの依頼
・選考基準のすり合わせ
・面接官研修の実施
11月 <選考>
・書類選考
・一次面接
・二次面接
12月 <入社前フォロー>
・面談
・労働条件の提示
・入社手続き

以下のフォーマットを活用すると、5年後、10年後の組織ごとの年齢・性別や、年収バランスなどがグラフ化され、ひと目でわかります。採用計画や人員配置などを考える際にご活用ください。

採用計画をスムーズに立てるためのポイント

採用計画をスムーズに立てるためのポイント

採用計画をスムーズに立てるには、以下の点を押さえておくことが大切です。

・採用業務の効率化について考える
・優先順位をつけて取り組む
・必要に応じてアップデートする
・採用計画に活用できるテンプレート

各ポイントについて解説します。

採用業務の効率化について考える

採用活動は採用計画に沿って実施していきますが、細かな作業が発生しやすく、一部の採用担当者に過度な業務負担が生じる恐れがあります。採用業務は広範囲に及ぶため、業務を効率的に進められるように、ITツールの導入を早い段階で検討しておくことが重要です。

採用活動を行う目的は採用業務を行うことにあるわけではなく、あくまで自社が求める人材を着実に獲得していくことにあります。そのため、細々とした採用業務に日々追われてしまうと、本来時間をかけるべき候補者の選考やコミュニケーションが不足するなどして、せっかくの人材を取り逃がすリスクが出てきます。

求人を行うタイミングによっては、競合他社との激しい人材獲得競争にさらされることになるため、どのようなときでもスピーディーに選考を進め、いち早く内定を出せる体制を整えておくことが大事です。採用業務のなかには応募を受け付けたときの返信メールの送信や、選考結果を通知する業務などITツールを活用することで自動化できる部分が多くあります。

また、オンライン面接を導入したり、得られたデータを分析したりすることもITツールとの親和性が高いといえるでしょう。必要に応じてITツールを活用していくことで採用業務を効率化し、人材の見極めなどのコア業務にかける時間を増やしてみましょう。

優先順位をつけて取り組む

採用計画を立案する際、検討に時間がかかってしまう項目については、あらかじめ優先順位を決めておくほうが無難です。また、採用人数や採用スケジュールなどは一つのプランに集約させる必要があります。

しかし、採用手法などについては同時に複数のものを組み合わせて実施するケースが多いので、どれか一つに絞り込もうとすれば、かえって余計に時間がかかってしまいます。どの採用手法をメインにして、ほかの手法を補助的に活用するかといった大まかなプランを立てておけば、初めから厳密に計画を立てる必要はありません。

採用計画に盛り込む内容を精査したうえで、スピード感を持って採用活動を行えるように、計画に柔軟性を持たせておきましょう。

必要に応じてアップデートする

採用計画は一度作成して終わりではなく、定期的に点検を行ってアップデートしていくことが大切です。採用活動を一通り終えた段階でデータの分析を行い、課題点を洗い出してみましょう。

重要な課題については対応策を検討し、次回以降の採用活動につなげていく姿勢を持つことが大事だといえます。人材サービスの利用など採用業務そのものを外部に委託する場合は別ですが、自社で採用活動の大部分を担っていくのであれば、蓄積された採用データやノウハウなどを活かしていくことで、採用活動をブラッシュアップできます。

独自のノウハウを施策の実施や改善につなげていけば、競合他社との差別化をうまく図れるでしょう。採用活動が落ち着いたタイミングでは、アップデートしていくことに時間をかけてみてください。

採用計画を策定した後の取り組み


採用計画は策定して終わりではなく、実際にきちんと運用していくことで、どのような成果が得られたのかを確認できます。特にポイントとなる部分は以下の通りです。

・全社的な取り組みとして進めていく
・採用サイトやSNSなどを見直す
・事前に決めた採用手法を実行する
・選考・面談を実施する
・内定者のフォローを行う

それぞれの点について解説します。

全社的な取り組みとして進めていく

作成した採用計画書の内容をもとに、経営層や現場の従業員の協力を仰いでいくことが大切です。採用活動は決して、採用担当者だけで完結するものではなく、全社的な取り組みとして進めていくものだといえます。

採用活動の目的が、自社の経営戦略や事業計画の実現のために必要な人材を確保することに狙いがあるため、どの立場の人であっても社内においては少なからず関係してくるはずです。また、実際に採用した人材は現場に配属されるため、各部署と採用活動を通じて緊密にコミュニケーションを取っておく必要があります。

採用業務に直接かかわらない部署であっても、会社説明会や選考時の面接官を依頼するなど、何らかの形で関係してくる部分はあります。そのため、採用担当者はさまざまな部署と連携を取ると同時に、得られた成果については適宜報告するなどして良好な関係を保つようにしましょう。

全社的な取り組みとして実施できる流れをつくっていければ、採用活動も自ずとスムーズに進んでいくはずです。

採用サイトやSNSなどを見直す

採用活動においては、企業側が積極的に情報発信を行っていくことが大切です。もちろん、求職者にとって有益な情報を発信していく必要があります。

情報発信に消極的な場合、採用活動を進めていくうえでも支障が出る恐れがあるので注意しましょう。例えば、ホームページに採用ページを作成してもまったく更新をしなかったり、情報量が少なかったりすれば、求職者から採用に対する熱意を疑われかねません。

また、SNSを運用している場合も同様であり、フォロワーから寄せられる質問などに丁寧に対応できなければ、かえって自社のイメージダウンにつながる恐れがあります。ただし、情報発信を継続するにはそれなりに負担が大きくなってしまう部分もあるため、自社だけのリソースで対応できるのかも見直してみましょう。

自社のリソースが不足しているのであれば、WebサイトやSNSの運用などに強い外部企業に業務の一部をアウトソーシングするのも一つの方法です。状況に応じて柔軟な対応を行ってみてください。

事前に決めた採用手法を実行する

採用計画書に盛り込んだ採用手法のなかで、どれを実際に用いるのかを決め、実際に実施していきましょう。採用手法には前述の通り、求人広告・人材サービス・リファラル採用など、さまざまな手法があります。

どの手法をメインで実施するのかや、複数の手法を組み合わせて採用活動を行っていくのかなど、採用担当者の間で意見を擦り合わせておくことが大事です。また、リファラル採用の場合は、社内の従業員や取引先から紹介を受ける形となるため、事前に丁寧な説明を行っておくことで、スムーズな実施につなげていけるでしょう。

そして、一定期間の運用をしたら、得られたデータをもとに検証していくことも大切です。求職者の反応や実際にどれくらいの数が選考に結び付いているのかを検証し、採用手法の優先順位についても見直してみましょう。

(参考:『採用手法一覧と各手法を解説|選び方のコツや最新のトレンドも紹介』)

選考・面談を実施する

求人を行った結果、応募があれば次は選考や面談を進めていきます。あらかじめ採用計画書に、選考基準や人材要件、選考に携わる部署などを盛り込んでおけば、スピード感を持って進めていけるはずです。

特に選考基準や人材要件があいまいだと、面接官によって選考にバラつきが出てしまい、せっかくの人材をとりこぼしてしまう可能性があります。順調に採用活動を進めていくためには、ルールに沿った運用が重要になります。

採用担当者や他部署との連携を強化し、綿密なコミュニケーションを取りながら、選考や面談を行ってみましょう。

内定者のフォローを行う

求職者の選考が終わり、内定通知を出してからも、採用活動は続いていきます。内定を出したからといって、内定者が必ずしも入社してくれるとはかぎらないからです。

近年はどの業界でも人材不足が課題となっており、労働人口の減少から売り手市場になっている点を見落とさないようにしましょう。入社をするかどうかの最終判断は内定者にあることを忘れず、適切なフォローを行っていくことが大切です。

既存の従業員と接するための交流会の場を設けたり、定期的に面談を行ったりすることで、自社に対する内定者の志望度を高めていく必要があります。内定者が入社にあたって抱えやすい不安や悩みに寄り添い、積極的に情報開示を行っていくことで、スムーズに入社をしてもらえる流れをつくってみましょう。

新卒採用・中途採用の採用計画案の違い

採用計画を考える際、新卒採用と中途採用では、「採用対象」「採用基準」「採用時期」の3つの項目で違いが発生します。

新卒採用 中途採用
採用対象 社会人未経験者 社会人経験者
採用基準 ポテンシャル・将来性 経験・スキル・能力・即戦力
採用時期 一括採用(定期) 不定期採用(通年)

それぞれの項目について、具体的に見ていきましょう。

採用対象:社会人経験の有無

大きな違いは、社会人経験の有無です。大学や高校を卒業見込みの学生や、学校を卒業したばかりの新卒採用者は、社会人経験がありません。

一方で、中途採用者は他社で少なからず経験を積んでいます。社会人経験の期間や内容にもよりますが、一般的に育成コストを抑えられるのは中途採用といえるでしょう。

採用基準:将来性か即戦力

採用で重視するポイントにも違いがあります。自社が求めるスキルや経験を持つ中途採用者は、即戦力となる可能性が高いでしょう。新卒採用者の場合は、自身のポテンシャルの高さや将来性に期待できるかが鍵となります。

不足している人材がすぐに必要な場合は中途採用を、育成コストや期間にゆとりがある場合は新卒採用をするという選択肢もあります。

(参考:『採用基準とは?具体的な設定手順や自社にマッチした人材の見極め方』)

採用時期:定期か通年

主に学生を対象にした新卒採用は、基本的に毎年同じ時期に採用が行われます。新卒採用では学生が学習時間を確保しながら就職活動に取り組めるように、政府が提示するスケジュールを順守するよう要請されているためです。

一方、中途採用は、「休職者が発生したことによる欠員補充」や「新規プロジェクトのための増員」などを理由として採用が必要になるタイミングで募集するため、不定期もしくは通年で行われることが大半です。

まとめ

採用計画を立てることで、「求める人材像の明確化」「雇用のミスマッチの防止」などが期待できます。

効率的な採用活動を行うためには、しっかりと事前準備を行うことが大切です。自社の状況を正確に把握することはもちろんのこと、どのような人材を採用していけばよいかの方針を経営層や担当部署にヒアリングし、人員計画や要員計画も策定しましょう。新卒採用と中途採用では採用対象や基準などが異なるため、採用計画を別々に立てることもポイントです。

記事の内容を参考に、採用計画の策定や見直しをしてみてはいかがでしょうか。

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