異業種・異職種からの転職受け入れ上昇率1位は――。いま、採用ターゲットの拡大が活発化している理由

d's journal編集部
異業種転職でのポイントは「スキルアップできるか」「仕事の親和性」など
異職種転職は、未経験でも専門性を有していれば即戦力採用する企業も
まとめ

パーソルキャリア株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:峯尾太郎)が運営する転職サービス「doda(デューダ)」は、コロナ禍前で転職求人倍率の平均がもっとも高かった2016年度(※)と、コロナ禍の2020年度に転職サービス「doda」を利用して転職した約40,000人のデータを分析、「異業種転職」「異職種転職」の実態とその結果をまとめました。

2016年度から2020年度にかけて、異業種からの受け入れ上昇率1位となった業種は「IT/通信」。異職種からの転職受け入れ上昇率1位となった職種は「専門職(コンサルティング他)」となります。

新規事業を新たにスタートさせた、本来の計画と違った採用戦略を推し進めている、DX(デジタルトランスフォーメーション)を実践したい――。こうした動きの中で、これまで自社で採用実績のなかった職種や、新たなポジションで活躍する人材の採用を行う企業も少なくありません。

同業界から経験者のみを採用ターゲットとしている企業や人事・採用担当者は、本コラムをご覧いただき、この機会に異業種・異職種出身の転職希望者の動向に目を向けてみてはいかがでしょうか。採用ターゲットの拡大が、採用成功に近づくキーポイントとなるでしょう。

(※)転職求人倍率の統計開始は2014年4月

異業種転職でのポイントは「スキルアップできるか」「仕事の親和性」など

上昇率1位 「IT/通信」

2020年度の異業種からの転職で、もっとも多くの転職希望者を受け入れた業種は「IT/通信」(57.5%)でした。これは前回の2016年度調査と比較して9.9ポイントの増加となっています。

昨今、全産業でIT人材の需要が高まる中で、「IT/通信」は他業界と比較して、「企業側の採用意向が旺盛であること」「DX人材採用のため、さまざまな業界で採用枠を増やしていること」などが、上昇率アップの要因として考えられます。

また転職希望者側では、成長性の高い「IT/通信」業界でスキルを高めたいというニーズが増えていることも、上昇を押し上げる一つと考えられます。特に同業界を目指す未経験の方は、プログラミングなどをゼロから学べるスクールなどでIT関連の基本スキルを体得した後、転職活動をスタートさせるといったケースも見られます。IT人材を獲得したいと考える他業界の企業は、こうした転職希望者のニーズを踏まえ、採用のための創意工夫をされるべきでしょう。

一方で、IT業界全体の案件が増えたことによる人手不足も深刻化しつつあり、プログラミングなどのIT基本知識を持つ転職希望者は即戦力候補となり、2016年度と比較すると「IT/通信」の異業種転職は比較的成功しやすくなっていると言えますが、採用側から見ますと、その採用競争は激化の方へ向かっています。

図1&図2:【2020年度「IT/通信」が異業界から転職を受け入れた業種の内訳と割合】

内訳を見てみましょう。図1は2020年度に、「IT/通信」が異業種からもっとも多く受け入れた業種は「サービス」からであるという結果を表しています。さらにこの数値を分解した図2を見ると、「サービス」の中でも特に「人材サービス・アウトソーシング・コールセンター」からの転職希望者が多くなっていることが伺えます。

その理由として、派遣系のサービス企業からSIerにITエンジニアとして派遣されるケースが多く、実績を積んでから派遣先のSIer企業に転職しようと考える人が多いという背景があります。これは定番のキャリアパスの1つとなっている模様です。

また、「旅行/宿泊/レジャー」からの同業種への転職も増加しています。これはコロナ禍による業界の先行きの不安などから、安定と将来性を求めて「IT/通信」への転職をしようと考える人が増えたことも理由の1つと考えられるでしょう。

さらに、2番目の「メーカー」は、もともと理系出身者が多く、「IT/通信」への転職に抵抗感を持っていないこと仕事内容に親和性があることが異業種間の移動を容易にしています。

上昇率2位 「金融」

上昇率2位となった業界は、「金融」です。同業種に転職した人のうち、2020年度の異業種転職は60.2%となり、2016年度の51.4%と比較して8.8ポイントの増加となりました。

そして「金融」の中でも、異業種からの転職をもっとも受け入れている業種は「生命保険/保険代理店」。2020年度は「金融」が受け入れた異業種転職で全体の53.0%を占めました。

前提として「生命保険」は、ストック型のビジネスモデル(サブスクリプション型ビジネス)であり、景気上昇局面では業績が伸びづらいという傾向にあります。一方、景気後退局面では、安定的な収入が得られる点で景気に左右されづらく、ビジネスが安定しているという特徴があります。

そのためコロナ禍においては、多くの業界で採用活動を控える中、大手生保各社は他業種からの転職者を積極的に受け入れたことが、上昇率アップの要因となりました。

さらに「生命保険/保険代理店」が受け入れた業種を見ると、「小売/外食」と「サービス」が全体の5割程度を占めていることがわかりました。

「生命保険/保険代理店」は、未経験者を多く採用してきた長年の実績もあり、採用後の教育や研修環境が充実している会社も多くあります。そのため、他業界を目指す人を受け入れられる体制があることから、業界や会社の将来に不安感を抱く転職希望者(特に「小売/外食」と「サービス」)が、希望業界の1つに「金融」を選んだため、上昇率のアップにつながったのでした。

また、2020年度に、「金融」全体が異業種から受け入れた業種の割合でも、1位「サービス」、2位「小売/外食」という結果になりました(図3)。

図3:【2020年度「金融」が転職を受け入れた業種内訳と割合】

上昇率3位 「メディカル」

「メディカル」業界に転職した人のうち、2020年度の異業種転職は65.2%となり、2016年度の58.1%と比較して7.1ポイント増加しました。

図4:【2020年度「メディカル」が転職を受け入れた業種内訳と割合】

「メディカル」が異業種からもっとも多く受け入れた業種は「メーカー」です(図4)。転職希望者からすると、有形商材を扱う仕事として親和性がありそのイメージが湧きやすく、応募のハードルが低かったことなどが要因の1つと考えられます。

図5:【異業種から転職を受け入れた「メディカル」の領域内訳と割合】

異業種からの転職を受け入れた「メディカル」の内訳を見ると、「医療機器関連」がもっとも多く、次いで「医薬品関連」の割合が高い結果となりました(図5)。

一方、2019年度や2020年度と比較すると、「医療機器関連」の割合は減少しています。これは、コロナ禍でメディカル業界各社が経験者に絞った採用にシフトしたことにより、相対的に異業種からの転職者が減少したことが考えられます。

ちなみに「医薬品関連」では、2016年頃、製薬メーカーを中心にMRを積極採用していましたが、その後、大手を中心にリストラが相次いだことなどの影響で、減少に転じているようです。

また、同時期に経験者採用が活発だったCRA(臨床開発モニター)は、コロナ禍による治験中止の影響で採用も止まっていましたが、2020年秋ごろから治験の再開によって採用枠が拡大されています。

さらに、2020年はCSOMR(製薬企業に自社が直接雇用したMRを派遣)において、一時的にコロナワクチン関連の未経験採用枠が増加したこともポイントです。こうした要因が2020年度の上昇率向上となりました。

専門性が強いイメージのある「メディカル」業界ですが、取り扱う商材や仕事内容の親和性があれば、異業種出身者でも採用できるポイントであると捉えることができるでしょう。

異職種転職は、未経験でも専門性を有していれば即戦力採用する企業も

上昇率1位 専門職(コンサルティングファーム/専門事務所/監査法人)

「専門職(コンサルティングファーム/専門事務所/監査法人)」に転職した人のうち、2020年度の異職種からの転職は89.3%となり、2016年度の77.7%と比較して11.6ポイント増加しています。

「専門職(コンサルティングファーム/専門事務所/監査法人)」は、職種未経験でも特定業界や領域においての専門性や知見をもつ方であれば、異職種からでも積極的に採用している職種です。

その背景には大きく2つの理由があります。1つは、景気上昇時は事業拡大、景気下降時はコスト削減などのニーズが増えるため、景気に左右されにくいこと。もう1つは、他職種よりも給与設定が比較的高い一方、激務で残業時間も長い傾向があり、ワークライフバランスを求めて他職種への転職が多いことから、経験者採用の難易度が高いことです。

そのため、特定業界の専門的な知見や経験を持つ未経験者の方の採用はスムーズに進む一方、職種経験者枠の採用難易度は全職種の中でも高い傾向にあります。

図6: 【2020年度「専門職(コンサルティングファーム/専門事務所/監査法人)」が異職種から転職を受け入れた職種内訳と割合】

近年では、利益確保やコスト削減の観点から、中長期計画に物流や購買戦略を掲げる企業が多くなっています。そこで、こうした課題を解決できる知見と経験を持った方が求められやすい傾向になっています。

たとえば、物流や購買部門で戦略全般に携わっていた採用候補者であれば、ロジカルな思考で全体を俯瞰(ふかん)してボトルネックとなる部分を改善するスキルを持っているため、コンサルタントとして活躍できる素養があると判断されます。そのため、たとえ未経験の候補者であっても、ニーズの高い業界に関する知識や経験を持つ方が、即戦力として採用されるのです。

一方、労働力不足を補うため、IT化による業務効率化を喫緊の課題とする企業が増えている背景もあり、日ごろからITシステムを駆使して、製造部門とコスト部門の間で調整や改善を進められる人材も、コンサルタントとして積極的に採用される傾向があります。

同様に、監査法人においても、事業会社の経理経験者などの受け入れが増加しています。

ニーズが高く、慢性的に人材が不足していることなどが、異職種の中でも特に特定領域においての経験や知見を持つ「企画/管理系」からの受け入れが多くなっている大きな要因と言えます。

特定領域における専門性の高い人材を獲得したい場合は、要件定義などをしっかりと定めて、転職希望者に何を解決してもらいたいかなどミッションを明らかにしておくと良いでしょう。

上昇率2位 技術系(IT/通信)

「技術系(IT/通信)」に転職した人のうち、2020年度の異職種からの転職は21.6%となり、2016年度の14.9%と比較して6.7ポイント増加。上昇率2位にランクインしました。

「技術系(IT/通信)」は、全職種の中で同職種転職がもっとも多い職種です。全業界でDX推進の加速によって案件が増加する中、深刻な労働力不足に悩まされる企業も少なくありません。

そこで採用側は「技術系(IT/通信)」として活躍できるポテンシャルを持つ、異職種からの未経験者にも門戸を開き始めています

そのため将来性やニーズの高さに安心や安定感を求め、今後、年収アップが期待できそうな点に魅力を感じることや、スクールやオンライン学習など、専門的なITスキルを体系的に学べる環境が増えたことも、上昇率アップの要因として挙げられるでしょう。

「IT/通信」以外の業界で「技術系(IT/通信)」職種を採用するなら、「年収アップが期待できるポジションである」「専門的なITスキルを必要としている」、「未経験でもスキルや知識を学べる学習環境や制度が整っている」などを求人にうたい、転職希望者へアプローチすることが望ましいと考えられます。

図7: 【2020年度「技術系(IT/通信)」が異職種から転職を受け入れた職種内訳と割合】

「技術系(IT/通信)」が、異職種転職を受け入れた職種で1位となったのは「営業系」、2位は「技術系(電気/電子/機械」となりました(図7)。

「営業系」は、他職種と比較して、折衝経験や高いコミュニケーション能力を持つ人が多く、若手においては、技術力を新たに身に着けてもらえば、優秀なシステムエンジニア(SE)に育つ可能性があります。たとえ異職種かつ未経験の転職希望者でも、積極的に採用を考えるべきポジションであることが伺えます。

また、これまでの営業経験で培かった対人スキルを生かし、製品の導入エンジニアやプリセールスなど、開発経験を必要としないポジションにおいて、PM(プロジェクトマネジメント)としての活躍も期待できるでしょう。

さらに「技術系(IT/通信)」が、異職種からの転職を受け入れた職種2位の「技術系(電気/電子/機械」では、知識の習得欲求が高い、積み上げ思考である点など、「技術系(IT/通信)」との親和性が高いことが、受け入れの要因になっていると考えられます。プログラミングなどへの抵抗感も少ない理系出身の方が多い点も、異職種転職をスムーズにしているポイントと言えます。

異職種出身者を採用成功するためには、活躍できる環境や風土が整っていることをアピールするだけでなく、今後本人の意欲次第ではキャリアアップも可能であるなど、将来性をうたうことも大事であると考えられます。

まとめ

異業種転職

2016年度から2020年度にかけて、異業種からの転職受け入れ率が上昇した業界は、1位「IT/通信」、次いで「金融」、「メディカル」の順となりました。

1位の主な要因は、企業側の採用意向が旺盛であること、個人側でも成長性の高い「IT/通信」でスキルを形成したいというニーズが高まっていることが挙げられます。

異職種転職

2016年度から2020年度にかけて、異職種からの転職受け入れ率が上昇した職種は、1位「専門職(コンサルティングファーム/専門事務所/監査法人)」、次いで「技術系(IT/通信)」でした。

1位の背景には、同職種転職が少なく、事業会社経験者など未経験でも即戦力となる人材を積極採用している職種であることが挙げられています。

■調査概要
2016年度(2016年4月~2017年3月)、2020年度(2020年4月~2021年3月)に、転職サービス「doda(デューダ)を利用して転職した約40,000人のデータを分析し、「異業種転職」「異職種転職」それぞれの実態をレポート

■参考情報
転職サービス「doda(デューダ)」
30,000人の転職事例が示す、異業種転職の割合が高い業種は?【2021年最新データ】
https://doda.jp/guide/saiyo/012.html
※集計期間(2020年7月~2021年6月)です。本調査の集計期間(2020年4月~2021年3月)と異なります

文/鈴政武尊、編集/鈴政武尊・d’s journal編集部

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