若手層はプライベート重視なのか?20代・30代の「はたらく価値観」本音調査 2019

d's JOURNAL
編集部

働き方の価値観が変化するに伴い、「会社の飲み会に参加しない」「残業せずに定時で家に帰る」といった社会人がニュースになることもしばしば。若手層は仕事よりもプライベートを重視すると思われがちですが、本当のところはどうなのでしょうか?

そこで、d’s JOURNAL編集部では20代・30代のdoda会員331人に、転職先に求める条件や仕事におけるやりがいの有無、残業時間や適切な業務量に関してのアンケートを実施。若手層の「はたらく価値観」を探りました。

20代と30代で変わる?転職先に求める条件

まず「転職先に求める条件」を聞いたところ、全体の順位としては1位「年収アップ」(21.5%) 2位「人間関係のよさ」(16.9%)3位「やりがい」(16.6%)という結果になりました。

20代と30代で変わる?転職先に求める条件

多くの方々が転職時に「年収アップ」を望むのは、容易に想像がつきます。年代、性別で分けても30代女性以外は「年収アップ」が1位です。「人間関係のよさ」と「やりがい」は全体で見るとほぼ同数ですが、年代や性別で違いがある模様。では、20代・30代の男女それぞれのTOP3を見てみましょう。

最も求める条件トップ3

20代男女のTOP3は、「年収アップ」「人間関係のよさ」「やりがい」の順となりました。理由のコメントを見ると、年収に不満がある人は年収アップを、仕事内容が思っていたものと違う人はやりがいを…といった具合に、現職で感じている不満がそのまま求める条件に反映されているようです。
30代男性では、1位「年収アップ」(23.8%)2位「やりがい」(21.5%)3位「人間関係のよさ」(13.1%)となり、20代と比較すると「人間関係のよさ」が減り、「やりがい」が大幅に増えました。「やりがい」を求める方の理由には、「やりがいがモチベーションや成長意欲につながる」という回答が多く、自分の「はたらく価値観」が明確になっていることが見て取れます。
一方、30代女性の1位は「人間関係のよさ(24.3%)」で、求める理由には「やりがいがあって給与が多かったとしても、人間関係がよくないと精神的に負担がかかる」「人間関係が悪いとモチベーションも上がらない」といった意見が多いのが特徴です。

これらの結果から、モチベーションの源泉には男女差があることがわかります。男性は「やりがい」がモチベーションにつながる傾向が見て取れました。一方で女性は「人間関係」、つまり「誰と一緒に働くか」によってモチベーションが左右される傾向があるようです。

「やりがい」を重視すると回答した30代男性数名から、さらに詳しい話を聞いたところ、「人間関係は会社に入ってみないとわからない」「上司・部下や同僚など、相手のことは変えられない」という理由から、情報収集・求人への応募時には人間関係を気にしないという意見もありました。

男女問わず30代になると、仕事に対する価値観や優先順位が明確になってきます。20代から変わらず同じものを大事にする方もいれば、何かのきっかけで価値観が大きく変わる方もいるでしょう。特に結婚や出産を機に価値観や優先順位が変わったという意見は、女性だけでなく男性からもあがっていました。入社後のミスマッチをなくすためにも、「転職先に何を求めるのか?」「なぜそう思うか?」をしっかりと確認しておいた方がよさそうです。

選考中と内定承諾時で、求める条件の優先順位が変わる可能性も

転職活動の段階を軸に分析すると、また違った一面が見えてきます。転職検討中の場合、面接に参加するなど転職活動の段階がより進んでいる人の方が、「年収アップ」よりも「人間関係のよさ」を重視する割合が大きくなります。

一方、直近6カ月以内に転職をした人たちの中では「人間関係のよさ」を重視する割合が低く(10.5%)、「年収アップ」と答えた人の割合(22.4%)と比べると2倍以上の開きがあるという結果に。

選考中と内定承諾時で、求める条件の優先順位が変わる可能性も

確かに、求人に応募する段階では情報が限られていて、人間関係を気にしていたとしても判断のしようがありません。一方、面接段階まで進むと、その企業で働く人たちの人間性や雰囲気が見えてくるので、「人間関係のよさ」を気にする割合が高まっていくのでしょう。「カルチャーフィット」という言葉も最近耳にしますが、当然ながら転職希望者も企業と同様に、「この会社で自分はやっていけるだろうか」という視点で企業を見ています。もともと年収アップを重視して活動をしていた人も、選考中のやりとりや面接官とのコミュニケーションから感じ取れる印象が転職先の決定に影響していることは大いに考えられます。

選考フローを見直したり、自社の社員に面接官を依頼したりする際に、自社にどのような印象を持ってもらいたいのかという点も考慮できると、採用成功につながっていくのではないでしょうか。

仕事内容に納得できていることが、現職への満足につながる

切り口を変えて、「現職に満足している」と回答した方々に、その理由を聞いてみました。満足している理由の多数は「仕事内容」「給与」「人間関係」「やりがい」と続き、転職先に求めるものとほぼ同じであることがわかります。

現職に満足している理由

最も回答の多かった「仕事内容がよい・やりたいことができている」という状態をつくるには、きめ細かなフォローや現場の協力なども不可欠です。

社員自身のやりたいことが、入社時点と1年後で変わっている可能性もあります。また、事業内容が変化する場合もあります。最近は1on1のような細やかなフォローやフィードバックの仕組みが注目されるようになりましたが、社員一人一人に対して「やりたいことができているか?」「今の仕事内容に納得できているか?」をヒアリングできる仕組みを、現場を巻き込みながらつくっていくことが求められているのではないでしょうか。
(参考:『【1on1シート付】1on1で何を話す?失敗しない方法を実施前に知っておこう』)

今回のアンケートでは、「現職に満足している」「まぁまぁ満足している」と回答しつつも、転職活動も積極的に行っていると答える方もいらっしゃいました。たとえ社員が会社に満足していたとしても、それが定着と直結するわけではないということを、人事・採用担当者は肝に銘じておく必要がありそうです。

「やりがい」「成長」「稼ぎ」、仕事をする上で大事なのは?

転職に関わらない「仕事への価値観」についても、下記のような質問をしてみました。

 ●仕事にやりがいは欲しいですか?
●仕事を通して成長したいですか?
●仕事を頑張ることでお金を稼ぎたいと思いますか?

「やりがい」「成長」「稼ぎ」大事なのは?

どの質問も「そう思う」と回答した方が60%を超えています。「少しそう思う」を合わせると実に90%近くの方が「やりがい」や「成長」を求め、「しっかりと稼ぎたい」と考えていることがわかりました。性別や年代で分けても、この傾向は変わりません。プライベート重視のイメージを持たれがちな20代・30代ですが、実際は「仕事へのモチベーションが高く、やる気も十分にある」と考えられます。

では、「やりがい」「成長」「稼ぎ」に順位を付けると、どうなるのでしょうか?

「やりがい」「成長」「稼ぎ」に順位

結果としては、「やりがい派」と「稼ぎ派」に大きく2分される形になりました。成長を重視する、どれもバランスよくという意見は「その他」に含めましたが、割合としてはあまり多くないようでした。
「やりがい」を最優先すると答えた人、「稼ぎ」を最優先すると答えた人の主な意見を見ていきましょう。

やりがいを最優先とする人の主な意見

 ●1日の大半を拘束されるので、やりがいがないと続けられない
●やりがいがないと、自分自身の存在意義を感じられない
●年収がよくても、やりがいがないと辞める原因になる
●やりがいが日々のモチベーションや成長につながり、結果として稼ぎも付いてくる

稼ぎを最優先とする人の主な意見

 ●生活基盤が安定しないと、やりがいや自己成長を望む余裕ができない
●やりがいがないとモチベーションは下がるが、安定した収入を得られることが一番大切
●稼ぎによって評価されたい

やりがい重視派の方の意見は似ているものが多く、モチベーションの維持や成長のためにはやりがいが必要だ、というものでした。稼ぎ重視派は、「生活のためにはまずは稼ぐことが大切」という意見と「仕事の評価が給与だから、給与が大切」という意見の2つに分けることができそうです。

仕事へのやる気は十分!だけどプライベートを諦めたわけではない

仕事へのやる気は十分に感じられる20代・30代ですが、「プライベートと同じくらい仕事も重要だと思いますか?」という質問に対しては、50%が「そう思う」、25%が「少しそう思う」と回答しています。

プライベートと同じくらい仕事も重要だと思いますか?

「オンオフのメリハリ」や「仕事とプライベートのバランス」を重視する声が多かったことから、20代・30代の多くが「プライベートも仕事も、どちらも充実させたい」というバランス重視型であることがわかります。

 ●仕事にやりがいが欲しい
●成長もしたい
●稼ぎたい
●プライベートも仕事も両方大事にしたい

20代・30代は、これらをバランス良く全て得られる職場・仕事を求めています。もちろん会社として許容できること・できないことはあるかと思いますが、若手層の新しい「はたらく価値観」を受け入れて、できることを模索してみてもいいかもしれません。

理想の残業時間は月10~20時間?

プライベートも仕事も両方充実させたいと考える20代・30代にとって、“適切な業務量”とはどの程度のものなのでしょうか。

“適切な業務量”

「適切な業務量を考えるときに最も重視するものは?」という質問では、43.8%が「残業時間の少なさ」と回答しました。休日の多さよりも、実際は日々の残業時間を気にしているということがわかります。
では「残業時間が少ない」とは、どれくらいの時間を指すのでしょうか。「この会社は残業時間が少ない」と感じる境界線は月10時間以内という方が46.2%、月20時間以内と答えた方が33.8%でした。つまり、毎日30分~1時間程度の残業が理想のようです。

詳細なコメントからは、「1日真剣に頑張って、定時でなんとか終わるくらい」「集中して取り組んで1日で終わる難易度と量」「少し時間が足りないかなと思うくらいのボリューム」を適切な仕事量であると捉えていることも読み取れました。就業時間内は仕事に集中して取り組み、家に仕事を持ち帰らないようにするのが目指す働き方だと言えそうです。「定時内でアウトプットを出す」という気持ちが強いことを考えれば、時間に対する考え方がシビアになってきているのかもしれません。

20代・30代は仕事もプライベートも諦めない。だから時間にもこだわる

今回の「はたらく価値観」調査では、「定時内で最大のアウトプットを出して、仕事もプライベートも両方充実させたい」という価値観が根底にあるということが見えてきました。

成長意欲もあり、やりがいも給与も求めているという点からも、仕事に対してのモチベーションは高いようです。ただ、「プライベートの充実があってこそ、仕事もうまくいく」という考え方のため、仕事のためにプライベートを犠牲にはしない傾向があるのではないでしょうか。

20代・30代の「はたらく価値観」で重要なキーワードは、「オンオフのバランス」「メリハリ」「どっちも大事」。1日は24時間です。仕事もプライベートも両方大事にしたいなら、時間に対してシビアになり、効率を求めなければなりません。「定時で帰る」「飲み会に参加しない」といった行動は、あくまで表面上のもの。なぜそういう行動になるのか、彼らの価値観をヒアリングすることが重要です。

20代・30代は仕事もプライベートも諦めない。だから時間にもこだわる

20代・30代の新しい「はたらく価値観」に対して人事・採用担当者ができること

このような新しい「はたらく価値観」を持つ20代・30代に対して、人事・採用担当者は何ができるでしょうか?

20代・30代の新しい「はたらく価値観」に対して人事・採用担当者ができること

たとえば採用選考の時点で、仕事とプライベートの優先順位などを含めた「はたらく価値観」を確認しておくことで、入社時のミスマッチを防ぐことができます。特に「給与、やりがい、成長、人間関係をどのように捉えているのか」「モチベーションに一番影響するのは何か?」を、人事・採用担当者としても確認しておく必要があります。
(参考:『中途入社=即戦力ではない。社員定着率97%の橋本氏が語る中途入社者への向き合い方』)

それを基に、入社後は「その価値観を維持しながら働けているのか?」「やりたい仕事ができているか?」という視点でフォローを続けるとよいでしょう。「何か違う」という小さな違和感の積み重ねは、転職を考えるきっかけにもなります。社員一人一人が自分の価値観に合う働き方ができるような環境をつくっていくことは、今後の人事・採用担当者の役割になっていくのではないでしょうか。同時に、社員が「この働き方はおかしくないか?」「こんなに残業する必要があるのだろうか?」といった違和感を持たないようにフォローをしていくことも大切です。

また、これからは生産性についてより厳しく問われることになるため、「定時内にアウトプットを出す」という若手層の考え方は時代に即しているとも言えます。時間に対しての生産性や仕事の価値は、もしかしたら若い世代の方が敏感に感じ取っているかもしれません。彼らの新しい価値観を聞くことは、会社が成長していくための発見にもつながりそうです。
(参考:『【5つの施策例付】生産性向上に取り組むには、何からどう始めればいいのか?』)

 

(企画・制作:d’s JOURNAL編集部 齋藤 裕美子・荒木 翔子、イラスト:野村 沙矢)