【面接質問集あり】注目の「レジリエンス」とは?「ストレス跳ね返し人材」の見抜き方

フリーランス人事/コンサルタント

佐伯叡一(さへき・えいいち)

IT・ウェブ・ゲーム業界に特化した人材紹介会社に新卒入社。その後は複数のスタートアップでエンジニア・デザイナーを中心とした採用業務全般、上流の戦略設計、採用ブランディングなどを担い、2021年にフリーランス人事として独立。特にスタートアップ企業の採用に強みを持ち、ペルソナ設定から募集の要件定義、母集団形成、ディレクションまで一貫して対応。

レジリエンスの高い人材=「変化を原動力にできる」人材
レジリエンスの高い人材が持つ6つの要素
レジリエンスの高い人材を見抜く「言葉の使い方」
レジリエンスの維持・向上は、現在の取り組みの延長線上にある

従業員同士のオンラインでのつながりを強化する動きが進む一方、メンタルヘルスに問題を抱える個人や、その対策に頭を悩ませる人事・採用担当者が増えています。

こうした状況を受けて、採用シーンで注目されている人材要件が「レジリエンス」です。フリーランス人事として数多くの企業の採用支援に携わる佐伯叡一氏は、レジリエンスを「さまざまなストレスを跳ね返す力」と定義。「ストレス要因が多様化する時代にあって、全ての企業が重視すべき人材要件」であると指摘します。

レジリエンスを備えた人材を採用し、活躍してもらうためには何が必要なのでしょうか。具体的な面接手法も含めて伺いました。

レジリエンスの高い人材=「変化を原動力にできる」人材

――なぜ今レジリエンスが注目されていると考えますか?

佐伯氏:私はレジリエンスを「さまざまなストレスを跳ね返す力」と定義しています。昔は「ストレス耐性」とも言われていました。外部から何らかの攻撃を受けたときに、それを吸収しながら跳ね返して成果を出す力です。レジリエンスの高い人材とは、変化を原動力にして高い成果を出す人材であると言えます。

レジリエンスという言葉が特に注目されるようになった背景には、ストレス要因の多様化があるのではないでしょうか。

――詳しく教えてください。

佐伯氏:かつてはストレスと言えば「上司や同僚との人間関係」「厳しいノルマ」など、その人が働く社内に起因するものが多かったと思います。

しかし昨今は違います。コロナ禍で先行きが見通しにくくなった社会情勢には誰もがストレスを感じているでしょうし、リモートワーク環境でのコミュニケーションにストレスを感じる人も増えているでしょう。社内でコントロールし切れないストレス要因が、私たちの周りには多数存在しているのです。

 

そんな時代に活躍できるのは、変化に対してポジティブな感情を抱ける人材です。不確かな情報もたくさん飛び交う世の中で、入ってくる情報をいちいちネガティブに捉えるのではなく、「気にすべきでないことは気にしない」という鈍感力も大切でしょう。

物事にはプラスもマイナスもありません。その人が「ポジティブに捉えるか、ネガティブに捉えるか」の違いがあるだけ。変化の激しい時代だからこそ、変化を原動力にして高い成果を出す人材が求められているのだと思います。

レジリエンスの高い人材が持つ6つの要素

――レジリエンスの高い人材は、どのような特徴を持っているのでしょうか。

佐伯氏:日本において長年レジリエンスの研究に取り組んでいるレジリエ研究所は、6つをレジリエンスの要素として挙げています。こちらを紹介しながら、私なりの認識と解釈について説明します。

①自分の軸
まずは「自分の軸」を持っていること。これがあることで自分の思考スタイルや行動スタイル、感情表現、持ち味などを把握し、思い込みではなく事実として情報を受け取って、物事を判断できるようになります。自分の軸がないと自分が置かれている状況がわからず不安になり、世間の言葉に左右されやすくなってしまいます。

②しなやかな思考
これは変化に対する柔軟性と言い換えることもできます。自分の考え方の癖を理解した上で、違う考え方の人の意見を適切に取り入れ、自分を変化させられる柔軟性です。器が大きいと言われる人の特徴でもありますね。

③対応力
これはすなわち問題解決力だと考えます。仕事において立ちはだかる問題には、自分の影響の範囲内で解決できるものもあれば、自分ではどうにもならないこともあります。事実を正しく捉え、自分がコントロールできる範囲内で適切に行動する力が求められます。

④人とのつながり
こうして行動を起こしても一人では解決できないことがあります。そのときに重要なのが「人とのつながり」です。上司や同僚とともに大きな課題を解決できる人材は、人とのつながりを重視しています。人と会話することで自分を客観視できるようになるという側面もあり、コーチングやメンタリングを適切に活用する力にもつながるでしょう。

⑤セルフコントロール
人とのつながりにおいては「セルフコントロール」も重要。変化が起きるときには往々にして人と人との衝突が生まれます。その際に感情のまま行動するのではなく、自分は何が原因で人と衝突しているのか、何にいら立っているのかを冷静に俯瞰することが大切です。

⑥ライフスタイル
そして、こうした要素を持てる根源には、良い「ライフスタイル」があるのだと思います。健全な精神は健全な肉体に宿ると言われるように、食事や睡眠、運動のバランスが取れていると余裕が持てますよね。ストレスを感じたときに、自分なりにリラックスするための方法を持っていることも重要です。

レジリエンスの高い人材を見抜く「言葉の使い方」

――これら6つの要素を踏まえて、レジリエンスの高い人材を面接で見抜くためには、どのような質問が適切でしょうか。佐伯さんの場合はどんな質問を採用候補者に投げ掛けますか?

 

佐伯氏:「自分の軸」を例にとって考えてみますね。

まずは面接の質問で使う言葉そのものを深く考える必要があると思います。たとえば私は、「あなたの強みや弱みは何ですか?」という質問はしません。強みは「持ち味」、弱みは「課題や欠点」と言い換えて質問するようにしています。

強みを聞くと英語力などの具体的なスキルが返ってきますが、「あなたの持ち味は?」と聞くと、「人より深く考えられる」など抽象度の高い部分が出てくるのです。これが、自分の軸を持っている人かどうかを見抜く際に役立ちます。

――面接の場では「転職活動で大切にしている軸」を聞く人事・採用担当者も多いと思います。

佐伯氏:そうですね。ただ、「転職活動の軸」という言葉で質問をすると、事前に作り込んだ内容が返ってくることが多いと感じませんか?応募企業について調べた上で面接に臨んでいるわけですから、当然と言えば当然ですよね。

私の場合は自社(応募企業)についてではなく、現職や前職(採用候補者の在籍企業)について聞いています。たとえば「どんな要素があれば現職に残りたいと思いますか?」「現職や前職のバリューについてはどう思っていますか?」といった質問です。

現職や前職について聞けば、その人にとって足りているものは何で、足りていないものは何なのかがわかります。そこから、その人なりの軸が見えてくるんです。このように、6つの要素それぞれについて質問を工夫することで、面接の在り方が大きく変わると思います。

――面接で現職や前職について深く聞かれることを想定しておらず、意表を突かれてうまく答えられない人もいるのでは?

佐伯氏:自分自身の人生における話なので、みなさん答えてくれるんですよ。それに、うまく答えられないからといってNGとなるわけではありません。大切なのは、その人なりの思考や行動の特性を知ることですから。

私が採用支援に関わっている企業ではほぼ全て、面接の質問内容を事前に候補者へ提示しています。なぜなら面接の前に自分自身のことをきちんと棚卸ししてほしいから。こちらが聞きたいと思っていることについて、真剣に考えて面接に臨んでもらっています。

レジリエンスの維持・向上は、現在の取り組みの延長線上にある

――レジリエンスの高い人材を採用できたとしても、職場環境によってはレジリエンスが低下してしまうこともあると思います。そうならないために人事やマネジメント側が注力すべきことは何でしょうか。

佐伯氏:レジリエンスを低下させないためには「変化の量を減らす」か「本人が持つ変化への適応力を高める」しかないと考えます。

しかし、変化の量を減らすのは事実上不可能です。世の中の変化をコントロールすることはできませんから。社内の問題だとしても、部署異動などの大きな変化を食い止められないこともあるでしょう。ですから、実際にできるのは後者の「適応力を高める」ことに絞られます。

そのためには、日々のマネジメントの積み重ねこそが重要です。レジリエンスを維持していくためには自己効力感を持ち、自信を持って仕事を続けられる環境が欠かせません。マネジメント側が適切な目標設定を行い、適切なパスを出していくことが大切です。

昨今、多くの企業で重視されるようになった1on1にも工夫のポイントがあります。上司と部下のラインだけでなく、「普段は関わりのない部署の人と話す」など、ナナメの1on1を機能させている企業もあるのです。上司や人事には言えないことでも、利害関係のない別部署の人になら話せるもの。こうしたラインケアを通じて人間関係をサポートすることも重要だと思います。

「心理的安全性」や「健康経営」のための取り組みも、レジリエンスを高めていくことにつながります。そうした意味では、すでに社内で取り組んでいることの中にも、レジリエンスを大切にしていくためのヒントが詰まっているのではないでしょうか。

人事が、何か特別なことを苦労して始める必要はないと思います。さまざまなストレスを跳ね返し、変化を原動力にして高い成果を出していくにはどんな環境が望ましいのか。現在の取り組みの延長線上で考えてみてください。

 

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取材後記

取材の中で佐伯さんは「人事・採用担当者自身がレジリエンスの高い人材になることも大切」だと話していました。人事は営業などの職種とは違って数字で評価される場面が少なく、その割には現場から常に「人が足りない」と言われ続け、退職などのネガティブ情報もたくさん入ってくる仕事。

ある意味では「ストレスを浴び続けるポジション」だからこそ、レジリエンスの要素を強く意識するべきなのかもしれません。人事・採用担当者が自分のことを理解し、「なぜこの会社で働いているのか」「自分は何が持ち味なのか」を語ることができれば、面接の場で候補者から引き出せる言葉も変わっていくのではないでしょうか。

写真提供:佐伯叡一氏

企画・編集/海野奈央(d’s JOURNAL編集部)、野村英之(プレスラボ)、取材・文/多田慎介