脱・やらされ感!Schoo(スクー)に学ぶ「オンライン×みんな」による新たな研修のかたち

株式会社Schoo

法人カスタマーリレーション推進ユニット 竹原三貴(たけはら・みき)

2016年パーソルキャリア(旧インテリジェンス)へ新卒入社。人材紹介事業部のキャリアアドバイザーとして若手層のキャリアチェンジ支援に携わった後、コンサルティングファームや企画・管理部門の転職を専門に担当。2018年10月にSchooに入社し、企業向けのカスタマーサクセス、および800名が参加する「Schoo人事学びゼミ」のコミュニティマネージャーとして活躍。

コロナ禍やニーズの多様化で見えてきた人材育成・研修の課題
学び合う場が集合知を生み、組織を強くする
人事が与えるのではなく、社員を巻き込んで一緒に研修をつくる

働き方の多様化や技術の進展により社会が変わりゆく中、新たな職務に挑戦したり、将来求められる業務を遂行したりするために必要なスキルや知識を獲得する「リスキリング」(Re-Skilling)のニーズが高まりつつあります。

こうした状況下、2011年創設の株式会社Schoo(スクー)は、「世の中から卒業をなくす」をミッションに掲げ、インターネットによる社会人向けの学習サービスを展開。日々、生放送授業を配信するほか、企業向けの研修コンテンツ、さらに2020年からは大学や専門学校など高等教育機関向けのDX事業も展開しています。今や、導入企業実績が2300社超という同社の竹原氏に、従来型の企業研修が抱える課題や、リスキリングのメリット、効果的な実践手法について伺いました。

コロナ禍やニーズの多様化で見えてきた人材育成・研修の課題

──研修の成果や効果がなかなか感じられないという声も聞きますが、人材育成の課題をどのように見ていますか?

 

竹原氏:コロナ禍でオフラインの教育や研修の実施が難しくなる中、オンラインの研修が主流となり各社さまざまな試行錯誤をしてきたと思いますが、そのプロセスを経て課題が鮮明になっています。それは、育成を内製化する難しさ」「自走できない社員への対応」「人事だけが頑張る研修の限界」の3つです。

まず育成の内製化に関しては、DXの推進など、高度なスキルを持った人材を育成する人的リソースが社内にないという現状があります。また同時に、社員の価値観やキャリア志向も多様化しているため、画一的な研修では満足できなくなっているほか、キャリアに対する悩みも多様化しており、人事や現場がそれを見抜いてサポートをするのも難しくなっています。

次に、社員の自走ですが、オンライン研修が普及したことによって、自走できる社員と自走できない社員の差が浮き彫りになってきました。オフライン研修であれば人事の目が全体に届くので、セミナー参加者の様子を見てフォローし、集団の力をフル活用し、モチベーションを高めることが可能でした。しかし、オンライン研修になると、受講環境によってはやる気が上がらなくなる社員も出てきます。特に、仲間からの刺激を糧に頑張っていたタイプの人は、ダメージが大きくなっています。

最後の課題については、人事だけで全てを企画し、研修が終わったらそれでおしまい、というスタイルはもう通用しなくなっているということです。社員個人の意志が際立った時代に、最初から全て企画された研修だけでは「やらされている」と感じやすくなります。かといって、全ての悩みや課題を見抜き、ニーズに合わせて研修メニューを増やすのも現実的ではありません。

さらに、「4:2:4の法則」と言われるように効果を発揮するには、やはり研修前後が重要です。研修の成果を組織の力につなげるには、人事だけが頑張るのではなく、組織の受け入れ態勢や上司のフォロー、本人の能動的行動が必要になりますので、それを促進する“学び合い”の仕掛けも必要になってきます。

学び合う場が集合知を生み、組織を強くする

──上記のような課題に対して、具体的にはどのような取り組みを進めていけばよいのでしょうか?

竹原氏:従来のオンライン研修には学びが自己完結型になりやすい特徴があります。自己完結型では学ぶこと自体に満足して終わってしまい学習効果が出にくくなり、残念ながら組織力の向上にも繋がりません。大切なのは、学び合いの文化の醸成を重視し、他者への刺激を量産できるようなコミュニティ型の学び場を提供することです。講師だけが話して、受講者がそれを自分1人でインプットするというのではなく、「みんなで×能動的なアウトプット」という形ですね。

そのための仕掛けとして、当社が毎日生放送している授業では、画面の左側にタイムラインが出ていて、全国の受講者たちが授業への感想や疑問を投稿できるシステムにしています。放送終了後に録画授業として視聴する場合も、このタイムラインでのやりとりは残っているので、1人で受講していてもみんなのアウトプットを見ながら授業を受けることができ、授業内容に対する興味や理解も深まります。

オンラインかオフラインかを縦軸、1人で受講かみんなで受講かを横軸に取った4象限で言うと、リアル研修は「オフライン・みんなで」、書籍や資格取得は「オフライン・1人で」、そして一般的なeラーニングは「オンライン・1人で」のゾーンに入ります。それに対して、コミュニティ型の研修(コミュニティラーニング)を提供している当社は「オンライン・みんなで」の右上の象限に当たります。

Schooは「オンライン×みんなで」に位置する

 

──企業に対してはどのようなサービスを提供されていますか?

竹原氏:企業向けには、オリジナル研修パッケージを組むこともできますし、Schooの動画だけではなく、社内で制作された研修動画などをSchoo上にアップロードして、社員の皆さんに見てもらうこともできます。また、新たに追加された「オンライン集合学習機能」では、参加社員が同じ時間に研修を開始し、同じ動画を視聴することで、社員同士がリアルタイムにチャットでコミュニケーションを取ることも可能です。

お互いに意見交換することによってその場で疑問を解消でき、相乗効果で一層学びが深まりますし、参加者で共感・共有することで集合知に変えられます。組織のメンバー全員で成長し、組織力を高める上で、みんなで学び集合知を生み出すことは重要なポイントだと思います。

──企業からはどのような要望があり、それに対してどんなコンテンツを提供されていますか?

竹原氏:研修体系を変革をしたいが、何から手を付ければよいかわからないといった悩みや、どうすれば学びに対する社員のモチベーションが上がるのかといったご相談はよくいただきますね。それに対して、社員の多様なニーズに応えられるようにさまざまなコンテンツを取りそろえておくことはもちろんですが、社員が思わず見たくなるような授業動画をつくることが必要です。

たとえば、ビジネス理論やスキルの授業を受ける前に、まず何をどう学んだらいいかがわからない人も多いので、「学び方を学ぶ 」という授業や、「Re-Skilling~人材市場で高い評価を得るために学ぶべきこと 」という授業も用意しています。

「学び方を学ぶ」では、いろいろな業界で活躍されている方に、「自分はこういう学び方をしてきたから今のキャリアを築けた」という話をしていただいています。それによって、ロールモデルも見つけやすくなるので受講者の人気も高く、連載授業になっているんです。

──受講者からの人気が高いオススメのプログラムにはどんなものがありますか?

竹原氏:Schooには、自分の市場価値の高め方や、社内で活躍するためのノウハウを学ぶなど幅広いキャリア系の授業もそろっています。

たとえば、どういう仕事の進め方をすれば評価が上がるのかわからないという人のために、「部長から評価されるマネージャーの立ち回り方 」という授業を用意しています。また、同期がどんどん成果を上げているのに、自分はなかなか成果が出せないといったような悩みは人には打ち明けづらいと思いますが、そういう人のために「20代のための同期に負けないキャリアアップ戦略 」という授業もあります。この授業は、YouTubeチャンネル「ハック大学」のぺそさんという人気YouTuberが講師を務めていて、単にキャリア形成の理論を解説するだけではなく、実践で使える内容にしています。

他に、上司との人間関係についての授業も人気ですね。上司と1on1をしているときに、たとえば面と向かって「何を言っているのかわからないです」とは言えないと思います。そういう人のために上司とのコミュニケーションのコツを学べる「上司が何を言っているのかわからないあなたへ 」という授業を公開しています(笑)。社内で打ち明けられない悩みも、Schooを開けば解消できる。まずはそんな第三の居場所のような環境、学び場を用意することが会社としてできることではないかと思います。

──面白いですね(笑)。タイトルを見ただけでも引きつけられます。社員(個人)の「リスキリング」へのニーズの高まりについて、どう見ていますか?

竹原氏:今はジョブ型雇用が増えたり、転職が当たり前になって中途採用市場が拡大したりしているので、自分より社歴の浅い人が上のポストに就くというケースも少なくありません。そのため「雇用され得る能力」を自分で磨かなければという危機感が強くなっているのではないでしょうか。また人事も、社員が自主性を発揮して、自ら学びの機会をつくることを促すようになってきました。

さらに、コロナ禍もその流れを後押ししています。リモートワークで通勤がなくなると、可処分時間が増えますし、自宅にいると、自分の将来についていろいろ考えるようにもなります。会社で仲間とワイワイやっていたときは、そういうことをあまり気にせずに済んでいたのが、こういう状況になって、自分はこのままでいいのだろうかと、悩む人が増えてきているのではないでしょうか。

人事が与えるのではなく、社員を巻き込んで一緒に研修をつくる

──これまでにSchooを導入して成果を上げられた企業の事例を教えてください。

竹原氏:事例の一つに、サントリーホールディングスさま があります。同社は、酒類業界最大手で、社員の定着率も高いですし、愛社精神の高い社員がそろっています。一方でその裏返しのように、自分の力で学びの機会を取りに行ったり、外部の人や情報に触れに行ったりする社員が少ないという課題をお持ちでした。人事の方としては「危機感が薄いのではないか」と考えられていて、「健全な危機感の醸成」のためにSchooを導入いただきました。

具体的な展開としては、同社が社内で運営されている学びのプラットフォーム「寺子屋」とコラボして授業をつくっているのですが、人事から社員にリスキリングしましょうと呼び掛けると、指示されている感覚が強くなってしまうのに対し、寺子屋+ Schooの発信だと、押し付け感が薄くなって、社員が学びの機会を能動的に手に取るようになったと伺っています。寺子屋に参加する社員は年間3万人(延べ人数)、「祭」と呼ばれる学習イベントに参加するのが当たり前という雰囲気が醸成されているようです。

また、あるスタートアップ企業では、新入社員研修として使っていただいている事例もあります。ご要望は、「人事の工数をかけずに研修の効果を最大化させ、自走できる社員を育てたい」ということでしたが、新入社員が自ら学びたいテーマを探し、各自が毎日Schooの動画を見て、それを1枚の資料にアウトプットし、Teamsに貼り、みんなでフィードバックし合うという「毎日プレゼン」というのをやってみたそうです。

その新入社員たちはそのワークを3カ月間毎日続けたことで、他の年の新人に比べてプレゼン力や資料作成スキルが格段に高くなったそうです。最終的には、「この先生の教え方はこうだから分かりやすい」など企画者目線の意見も出てきて、外部講師だからこそ自由に分析できる面白さもあると仰っていました。

 

──学び合う場をつくることで、学習効果もアップするということですね。最後に、社員のリスキリングを促進させるためのポイントを聞かせていただけますか。

竹原氏:ポイントは二つです。一つは「人事で全て決めない」こと。人事が研修メニューや実施方法などを全て決めてしまうと、やらされ感が出てしまいます。先ほどのスタートアップ企業の「毎日プレゼン」の例にも見るように、社員に任せれば自分たちなりの工夫をしてくれますので、研修は一緒につくっていくものだと捉えた方がいいと思います。

もう一つは、「社員が研修を受けたいと思うような提供方法を考える」ことです。人事の役割も時代とともに変化し「コミュニティマネージャー」のような役割がより期待されていると感じます。いくら完璧なカリキュラムをつくっても、まず受講しようという動機が生まれなければ意味がありません。たとえば、リレー方式で、オススメの学習動画をシェアするのもいいでしょう。順番を決めて、それぞれ自分が面白いと思った動画を紹介してみんなに見てもらい、社内チャットなどで感想や意見を交換するんです。

社員が自走してくれるのを待つのではなく、まずは協力的な社員から巻き込み、ポジティブに刺激し合える場をつくっていくことが重要です。

資料提供:株式会社Schoo

取材後記

変化の激しい現代において、社員のリスキリングは企業の競争力を強化する上で不可欠な取り組みになりつつあります。しかし、企業の望むように社員のモチベーションを高めるのは簡単なことではありません。その難題にコミュニティの視点から切り込もうとしているのが、Schooです。

同社が重視するキーワードは、「みんなで学び合うこと」。社員たちがコミュニケーションしながら学び合う環境をつくれば、モチベーションが上がり、学習効果が高まると同時に個人知が集合知に変わり、それが組織の力となっていきます。そのような場をいかにしてつくり出すかが、リスキリングを促進するためのカギになるのではないでしょうか。

企画・編集/白水衛(d’s JOURNAL編集部)、野村英之(プレスラボ)、取材・文/森 英信(アンジー)、撮影/中澤真央