【質問例付】第二新卒・中途も“人柄重視”採用が拡大。採用候補者の“人柄を引き出す”面接官とは

オーティファイ株式会社

HR 佐伯叡一(さへき・えいいち)

法政大学キャリアデザイン学部を卒業後、新卒でIT業界に特化した人材サービス会社に入社。その後、事業会社にてエンジニア・デザイナーを中心とした採用や、キャリアコーチングの事業開発を経て、2021年に独立。複数のスタートアップの採用やブランディング、事業開発に携わる。2022年4月に元々支援先だったオーティファイ株式会社にHRとして参画。並行して複数社の採用コンサルティングに従事。

「相性が合わない人柄」の人材を採用するリスクとは
わかったつもりになりがちな「人柄への認識」。実は目線が合っていないことも
「人柄を交わし合う面接体験」を実現する質問法
面接官自身がエピソードを魅力的に語るためのトレーニング

売り手優位が続く転職市場を受けて、母集団形成のために未経験者を歓迎したり、第二新卒層などのポテンシャル採用に踏み切ったりする企業が増えています。この流れの中で注目されるのが「人柄重視採用」です。

社会人経験のない人を対象とした新卒採用においては、採用基準で人柄を重視する人事・採用担当者は多いはず。では第二新卒などの中途採用では、どのように人柄を見極めるべきなのでしょうか。

転職希望者は選考を突破するために、面接では普段と違う自分を演じ、より良く見せようと振る舞っている可能性もあります。「いい人そうだ」と何となく感じて採用しても、現場ではうまくいかない…。そんな経験をしたことがある人事・採用担当者も少なくないのでは。

そこで今回は、以前にd’s journalで「レジリエンスの高い人材の採用手法」を伺ったオーティファイ株式会社の佐伯叡一氏に再取材。

佐伯氏の記事はコチラ▼
【面接質問集あり】注目の「レジリエンス」とは?「ストレス跳ね返し人材」の見抜き方

中途採用における人柄重視採用のポイントや、面接での具体的な質問の仕方などを聞きました。

「相性が合わない人柄」の人材を採用するリスクとは

——佐伯さんは、中途採用における「人柄」をどのように捉え、どれくらい重視していますか?

佐伯氏:人柄は採用における最重要項目の一つだと考えています。可変性が高いスキルと比べて、人柄は簡単に変わるものではありません。不足している知識や経験は採用後に習得してもらうことで補えますが、逆のパターンは難しい。どんなに知識や経験が豊富でも、その人の人柄と企業との相性が合わなければ、充分に能力を発揮してもらえない可能性が高いのです。

さらに言えば、相性の合わない人が在籍していることで組織風土に悪影響をもたらしてしまうこともあります。特に中小企業やベンチャーは少人数なので、1人の存在が組織に与える影響は大きいですよね。

——人柄重視採用を行う企業は以前よりも増加していると感じますか?

佐伯氏:間違いなく増えていると思います。背景にはさまざまな要素があります。

誰もが実感しているところでは、採用市場がレッドオーシャンとなっていること。求める人材を採用すること自体が難しいので、企業は募集の際の要件を自然と広げざるを得ません。同時に採用した人材の早期離職をいかに防ぐかも問われています。一昔前と比べて、現在は転職のハードルも低い。離職を防ぐために人間的なつながりを大切にしたいと考え、人柄重視の採用を行うのは当然の流れでしょう。

 

昨今のコンプライアンス重視の流れも人柄重視採用を加速させていると感じます。会社は人材をよりデリケートに扱わなければならなくなり、コミュニケーションコストの低い人材を採用したいと望むようになりました。

また、副業やフリーランスといった働き方が一般化したことで、企業側には「特定のスキルを求める際には外注で戦力を補えればいい」という考え方が広がっているようにも感じます。スキルは必要に応じて外部に頼り、内部の従業員は強いつながりを持てる仲間同士でありたい。そんな感覚で採用に臨む企業も増えているのではないでしょうか。

わかったつもりになりがちな「人柄への認識」。実は目線が合っていないことも

——人柄重視採用を進める上では、どんな手順を踏むべきでしょうか。

佐伯氏:一口に「人柄重視採用」といっても、自社に合う人柄は企業ごとに異なります。まずは会社として、最低でも部署やチームとして、「こんな人柄の人がほしい」という人材要件を定義すべきです。それが難しければせめて、「こんな人材は採用しない」と決めておくべきでしょう。当たり前に感じるかもしれませんが、普段の職場ではこうした会話が意外とできていないケースも多いのではないでしょうか。

なぜなら、これは自社の行動指針を明確化するようなシビアな会話だからです。社内で「どんな人がうちに合っていると思う?」と問い掛ければ、「誠実な人」「スピード感のある人」といったキーワードがどんどん出てくると思います。ただ、1時間程度のミーティングで社内の目線を合わせるのは難しいかもしれません。

人柄に関する言葉の捉え方は一人一人違うもの。特に「誠実」「スピード感」といった、よく使われる言葉ほど注意して認識を擦り合わせていくべきです。

——何をもって誠実というのか、スピード感があるというのか。こうした会話を社内で繰り返していくことが重要であると。

 

佐伯氏:はい。人事部内でも、人柄については「わかったつもり」で言葉を使いがちかもしれませんね。結果的に、同じ採用候補者なのに、1次面接と2次面接で面接官が交代すると評価がまったく異なるといった事態が起きることもあります。

面接はブラックボックスになりやすく、面接官の対応も属人化しやすいもの。そこで私がコンサルティングに入っている会社では、全ての面接をレコーディングし、他の面接官がそれを見て学んだり、他の人の意見を聞いたりすることができるようにしています。現在の面接の状況を客観的に見ることで、ズレが生じている人柄への認識を合わせていくことにつながるんです。

「人柄を交わし合う面接体験」を実現する質問法

——面接者自身のパーソナリティーに偏ることなく、採用候補者の本当の人柄を見抜くためには何が大切なのでしょうか。

佐伯氏:私は前提として、人柄を「見抜く」のではなく、人柄を「引き出す」ことが大切だと考えています。どんなに頑張っても、私たちは採用候補者の心情を透視することはできません。でも採用候補者の話の中から素の人柄を引き出すことはできます。

では、どうすれば採用候補者に素の自分を出してもらえるのか。ここで意識するべきなのはまず面接官自身が自己開示することです。いわゆるアイスブレイクから始めて、「この場に来てくれたことが本当にうれしい」と感じていることを伝え、緊張しなくてもいいのだという場の空気をつくる。その上で面接官が自己開示し、人柄をさらけ出して自分自身のストーリーや体験談を話してみてください。

一般的に面接では「採用候補者が話す時間の割合を高めること」が重視されますが、私は全体の1〜2割くらいの時間なら、面接官が積極的に話してもいいと思っています。面接官の人柄が伝わることで採用候補者も話しやすくなり、互いの「人柄を交わし合う面接体験」をつくっていけるはずです。

——その上で、採用候補者の人柄を引き出すためにどんな質問を投げ掛けるべきでしょうか。

佐伯氏:いくつか具体例を挙げてみますね。

 

私が面接をする際には、「強みと弱みの粒度がそろっているか」を重視しています。誰しも自分の得意なことや強みについては冗舌になり、高い粒度の言葉で表現できるもの。一方で弱みを話す際には「緊張しやすいこと」など、漠然とした表現になりがちです。それは、自分の弱みを深く考察できていない、自己分析しきれていないことが原因なのかもしれません。そこで、強みと弱みを聞いて粒度がそろっていないと感じたときには、具体的に何が苦手なのか、何を弱みと感じているのかを深掘りして聞くようにしています。

また、「第三者から見た自分を説明してください」といった質問をして、素の自分の人柄をどのように認識しているのかを語ってもらうことも多いですね。

時には、あまり考え過ぎずにダイレクトに聞くのもアリだと思います。たとえば主体性を持っている人なのかを知りたいときは「最も頑張ったこと」や「リーダーシップを発揮したエピソード」などを聞きがちですよね。そこで、一周回ってシンプルに「あなたはリーダーシップがある人ですか?」と聞いてもいいと思います。なぜリーダーシップがあると思うのか、あなたにとってのリーダーシップとは何なのか。こうした本質的な質問をすることで、採用候補者の素の人柄が見えてくることもあります。

面接官自身がエピソードを魅力的に語るためのトレーニング

——人柄重視採用を行う際に、面接官が陥りがちな落とし穴はありますか?

佐伯氏:人柄重視採用で「あるある」だと感じるのは、面接官の経験や担当してきた職種によって、採用候補者の評価にバイアスがかかってしまうことです。

これは面接の過程で人事・採用担当者以外のメンバーが関わる際に顕著に表れます。わかりやすい例は、営業職の人と技術職の人で「コミュニケーション能力の捉え方」が違うこと。営業としてはハキハキと明るく話し、質問に対して積極的に答えてくれる人に魅力を感じるかもしれません。一方でエンジニアは、じっくりと考え言葉を選びながら答える人に好感を持つかもしれない。こうした職種ごとのばらつきが人柄の評価にも影響することを理解しておくべきだと思います。

これは人事部にも当てはまるんですよ。人事・採用担当者は、営業系の人となら気持ち良くコミュニケーションできるかもしれませんが、法務や経理などのコーポレート系、システム系、クリエイター系の人と話す際にはバイアスがかかりやすい傾向にあります。それを認識した上で、採用候補者本人の人柄を引き出すことが大切です。

その意味では、採用候補者の人柄を引き出すために同時に複数部署から面接に関わってもらうことも有効でしょう。その上で各部署の面接官に「一緒に働きたいと感じたか」を聞き、それぞれが捉えた人柄を擦り合わせていくことで、より客観的な評価ができるようになっていくはずです。

 

——人柄を引き出していける面接官になるために、オススメのトレーニング方法があれば教えてください。

佐伯氏:先ほどもお伝えしたように、採用候補者の人柄を引き出すためにはまず面接官自身が自己開示し、自分のことを語る必要があります。その意味では「自分のエピソードを魅力的に語れるようになる」ためのトレーニングが重要だと思います。

たとえば私が関わる会社では、面接に関わるマネージャー全員が「自社にどんな魅力を感じて、どんな決め手で入社したのか」を採用候補者にプレゼンできるようトレーニングの場を設けていました。もちろんプレゼンの内容は画一的ではなく、それぞれがその人らしい、素の自分を語れるように意識してもらいました。

こうしたトレーニングを行った上で、面接官同士で面接のロールプレイングをしたり、実際の面接の様子を共有し合ったりすることも大切です。採用候補者の視点に立ったとき、誰の面接が最も気持ちよく話せるのか。そうした「良い面接体験」を共有して、ブラックボックスとなりがちな採用現場を変えていただければと思います。

取材後記

取材の中では、佐伯さんが何度も「面接体験」という表現を使っていたことが印象的でした。これは企業が単に商品・サービスを売るだけでなく、購入までの過程や購入後のフォローにも気を配って良質な顧客体験を提供できるように努めていることと同義ではないでしょうか。面接の段階から素の人柄をさらけ出し、自分らしく語れる。そんな面接体験を提供することが、入社後の離職率低下やエンゲージメント向上にもつながる、人柄重視採用の真の意義なのではないかと感じました。

企画・編集/海野奈央(d’s JOURNAL編集部)、野村英之(プレスラボ)、取材・文/多田慎介、撮影/中澤真央