中小企業の人事・採用担当者必見!“ぼっち人事”でも効率的に進められるダイレクト・ソーシング

株式会社ランドテクト

取締役副社長 岡野有紗(おかの・ありさ)

プロフィール
パーソルキャリア株式会社

クライアントサクセス 村上真奈美(むらかみ・まなみ)

プロフィール
この記事の要点をクリップ! あなたがクリップした一覧
  • ダイレクト・ソーシングにおける採用見込み対象者像の設定では「どんな人が向かないのか」を明確にする
  • スカウトメール送信時は、採用見込み対象者の経験や得意領域に基づき、スカウト内容を具体的に記載する
  • 選考中に職場体験を実施したり、採用決定後には決定理由を伝えたりして、丁寧なフォローをし続ける

中途採用の難度が高まり続ける中、自社にマッチした人材を効率的に採用するためにダイレクト・ソーシングに取り組んでいる、あるいは検討している企業も多いのではないでしょうか。しかし、人事・採用担当者のマンパワーが限られている中堅・中小企業からは「スカウト配信のための時間が取れない」「配信対象者をどのように要件設定すればいいかわからない」「自社の魅力をうまく伝えられず、結果的に応募が来ない」といった悩みも多く聞かれます。

そこで本記事では、人事・採用担当者1名のみでありながらダイレクト・ソーシングで中途採用に成功している株式会社ランドテクトの岡野氏と、同社を支援するdoda ダイレクトでカスタマーサクセスに従事する村上氏にインタビュー。少人数でも結果を出せるダイレクト・ソーシングのノウハウをお届けします。

左から、株式会社ランドテクト 岡野氏、パーソルキャリア株式会社 村上氏

静岡県に本社を置く株式会社ランドテクトは、地質・土質調査や各種工事の設計・施工などを手がけており、専門職を求める中途採用では採用見込み対象者の絶対数が限られることから苦戦続きだったといいます。同社はいかにしてダイレクト・ソーシングで成果に結び付けているのでしょうか。

経験者募集の限界を知り、「現実的なダイレクト・ソーシング」へ

——岡野さんは、従来の中途採用にどんな課題をお持ちだったのでしょうか。

岡野氏:当社は地質・土質調査、測量、地すべり・急傾斜地の対策工事などの専門分野で事業展開しています。そのため中途採用では「技術士(応用理学部門)」などの有資格者を募集することが常でした。ただ、こうした有資格者は市場に少ないため、応募を集めること自体に苦戦していたんです。

また求人票や求人広告をつくるのも簡単ではありませんでした。私は中途入社しているのですが、このニッチな仕事をどう伝えていけばいいのか苦労していましたね。

それでも2016年ごろまではハローワーク経由で採用できることもあったそうですが、以降はほとんど若手人材を迎えられていませんでした。

——ダイレクト・ソーシングに取り組み始めた経緯は?

 

岡野氏:doda ダイレクト の村上さんに出会って、ダイレクト・ソーシングのサポートを得られるようになったことがきっかけです。少しでも採用が前に進むなら、という思いで取り組み始めました。

私1人では、どんな人を採用見込み対象者に設定すればいいのか、どんな内容のメッセージを送ればいいのかなどわからないことだらけ。なので、村上さんのサポートは本当に大きかったです。ほぼ同時期にはAIによって半自動でダイレクト・ソーシングを進められるサービスも使ってみたのですが、まったく活用できませんでした。

——村上さんはランドテクト社の状況や課題をどのように捉えていましたか?

村上氏:従来のまま、有資格者に絞って採用を進めるのは厳しいかもしれないと感じていました。

実際に該当する有資格者をデータベースで検索しても、対象者はごくわずか。そうした現状を率直に岡野さんへ共有し、「有資格の経験者を探しつつ、未経験者を育成していく枠も設ける」方針を提案しました。この方針に共感していただけたので、その後の幅広い提案がしやすくなったように思います。

岡野氏:業界自体がニッチであり、私も有資格の経験者だけを求めるのには限界があると感じていたんです。現場では人員不足によって社員のみんなが苦労しています。その様子を見ているからこそ、現実的な採用方針を打ち立てなければならないと考え、「みんなが本当に来てほしいと思う人材」のイメージをヒアリングしていきました。

採用見込み対象者の明確化のコツは「向いていない人」のイメージ

——育成枠の未経験者について、求める人物像を具体的にどのように設定していったのでしょうか。

村上氏:未経験といっても、当然誰でもいいというわけではありません。静岡県在住の人に一斉にスカウトメールを送ったとしても、伝えたいメッセージは誰の心にも届かないでしょう。

そこで、業務内容について詳しく伺いながら、「地質調査業務を未経験から学んでいける可能性があるのはどんな人か」「積算業務で活躍しそうな未経験者はどんな人か」といった採用見込み対象者の具体的なイメージを岡野さんと擦り合わせていきました。

岡野氏:たとえば積算業務の場合は、設計書を見ながら専用ソフトを使って積算したり、入札関連の業務を担当したりといった仕事を任されることになります。そのため「数字に弱い人」は過去の経験にかかわらずマッチしないのではないかと考えました。また、作業着で現場へ行く機会も多いので、完全内勤の仕事を希望する人は除外したほうがいいという話もしましたね。

——「向いていない人」を明らかにすることで、採用見込み対象者像が明確化されるのですね。

 

村上氏:ランドテクト社のように、対象の職種が世の中に少ない場合は、「数字に強い人」のイメージがなかなかつきづらいと思うんです。しかし逆のアプローチで「どんな人が向かないのか」を追求していくと、採用見込み対象者像が明確になることもあります。

私が人材業界で蓄積してきた知識と、岡野さんが社内でヒアリングしてくださった業界専門知識を掛け合わせることで、イメージが具体化されていきました。

経験者・未経験者それぞれに対するスカウトメールの工夫点

——スカウトメール送信の量や内容についてもお聞きしたいです。

村上氏:有資格者の採用を1つの軸とし、数十人の採用見込み対象者へラブレターを贈るつもりでスカウトメールを配信していただきました。それだけでは対象者が限られるので、前述の通り未経験者であっても、私たちが求める採用見込み対象者にもスカウトメールを送信しました。

——有資格者へのラブレターでは、どんな内容を意識しましたか?

岡野氏:採用見込み対象者が登録している情報を丁寧に見た上で文面に反映し、「私たちはあなたの職務経歴や強みに注目している」ということが伝わるよう意識しました。採用見込み対象者の経験や得意領域に基づいて「この経験は当社で活かせます」といった具体的な内容を添えています。

アクティブに転職活動を進めている採用見込み対象者には、いろいろと状況変化も起こるはず。そのため1通目のスカウトメールを送ってから、文面を変えて3〜4週間後に2通目のスカウトメールも送りました。結果的に「熱心にメールをいただいたので、話だけでも聞いてみようと思いました」という応募もありましたね。

——未経験者の採用見込み対象者への送信内容は?

岡野氏:こちらは文面自体の工夫というよりは、まずは求人票を見てもらうことを意識して送信しました。求人票では仕事内容をわかりやすく説明しつつ、「こんな大変さもある」などのデメリット情報も伝えています。オープンで誠実な内容を心がけ、未経験者でもランドテクトで働くイメージが持てるようにしました。

——少人数、あるいは1人で採用活動を行っている企業からは「スカウトメール送信などの時間を捻出できない」といった悩みも聞かれます。

岡野氏:たしかに時間を確保するのは大変ですよね。有資格者に向けて個別のラブレターを作成するのは時間がかかりましたが、数十人規模という上限が見えていたのでやり切れました。一方の未経験者に対してはほとんど同じ内容を送信しているので、苦労を感じることはあまりなかったですね。

ダイレクト・ソーシングによって向上した採用力

——現在までのダイレクト・ソーシングの手応えはいかがでしょうか。

 

岡野氏:村上さんに伴走してもらいながら、「技術事務」「積算」「重機オペレーター」の3つの職種で採用に成功しました。いずれも未経験者の採用です。

技術事務の方は人柄が当社とマッチして採用。積算の方は、面接時に前職での売上や利益などの数字が明快に出てきて、数字に強い面を評価し決定しました。また重機オペレーターの場合は、特別教育や技術講習で比較的容易に取得できる資格が多いので、外の現場での仕事を厭わず、機械を触ることが好きな方に来てもらいました。

——採用決定後のフォローで工夫した部分はありますか?

村上氏:重機オペレーターの方は、前職の都合で採用決定から入社まで約半年の期間がありました。そこで岡野さんには「あなた(採用見込み対象者)に入社してほしい理由」をA4に1枚ほどの分量でお手紙としてまとめていただき、採用決定時にお渡ししてもらったんです。その後も毎月メールを送り、「最近は寒くなってきましたがお変わりありませんか?」などのやり取りを続けていただきました。結果的に無事入社に至っています。

岡野氏:技術事務の採用見込み対象者は前職がエステ業界で、事務経験がまったくなかったので、面接時に当社での業務をプチ体験する機会を設けました。その場を通じて「自分にもできそう」という感触をつかんでもらい、入社に至りました。

——ダイレクト・ソーシングの一連の取り組みを通じて、採用活動に対する岡野さんの考え方に変化はありましたか?

岡野氏:もはや中小企業は、待ちの姿勢では人材に来てもらえないのだと痛感しましたね。事実、doda ダイレクトと同条件の求人をハローワークに出しても応募は1件もありません。採用への熱意を持ち、人事・採用担当者が能動的に動かなければ採用成功にはつながらないのだと感じています。

個人的には、ダイレクト・ソーシングに取り組むことでさまざまな採用ノウハウを学ぶことができました。これも大きな成果ですね。

村上氏:なかなか応募が集まらない職種についても、岡野さんと一緒に課題を見つけ、解決策を話し合う機会が増えました。私から見ても、ランドテクト社の採用力は着実に高まってきていると感じます。

関連お役立ち資料

取材後記

採用活動に1人で向き合っていた以前の岡野さんは、多忙な中でタイムリーに動けず、転職市場の相場観もよくわからなくなっていたそうです。しかし村上さんとダイレクト・ソーシングに取り組み始めてからは、「自分たちがどんな仕事をしていて、どんな人材がほしいのかを言語化できるようになった」と話していました。この感触こそが、採用手法や予算規模以上に大切な「採用力の源」になっているのかもしれません。

企画・編集/海野奈央(d’s JOURNAL編集部)、寄森楓子、野村英之(プレスラボ)、取材・文/多田慎介

【マンガで解説】doda ダイレクトサービス資料

資料をダウンロード