【添削例あり】応募獲得に差が出る「良い求人票の書き方」~営業職編~

パーソルキャリア株式会社

髙田海斗(たかだ・かいと)

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  • 母集団形成の課題における主な原因は、求人票における情報不足
  • 転職希望者がその会社で売れる営業パーソンになるイメージを持てるかが重要
  • 求める人物像はどのスキルセットがあれば活躍できるかで整理する

転職市場で特に求人件数の多い「営業職」。人事・採用担当者にとっても身近な職種であるように感じますが、応募獲得に苦戦をしている企業は増えており、その主な原因が求人票における情報不足であることも珍しくありません。

営業職を志望する転職希望者はどのような情報を求めているのでしょうか。また、人事・採用担当者は現場からどのような情報を収集・確認し、求人票にどんな内容を記載し発信すべきなのでしょうか。リクルーティングアドバイザーとして数多くの企業のコンサルティングに携わる、パーソルキャリアの髙田氏に聞きました。

求人票に書かれている情報の重要性がさらに高まっている

——営業職の転職市場について教えてください。

髙田氏:dodaが提供している2023年12月の転職求人倍率レポートによると、営業職の12月の求人倍率は3.58倍となっており、昨年比でも数ポイント伸びている状況で、営業職の採用はますます難しくなっていると言えます。
※出典:転職求人倍率レポート(2023年12月)より
※doda転職求人倍率の定義:「doda転職求人倍率」は、dodaの会員登録者(転職希望者)1人に対して、中途採用の求人が何件あるかを算出した数値。

IT業界やスタートアップなどで営業職の大規模採用が増えていることや、インサイドセールスやカスタマーサクセスなど、営業体制を組織化し、役割を細分化することで生まれた職種の募集も増加しました。また、メーカー各社の動きを見ても、1人の営業が担当する顧客数を減らすことで顧客へのアフターフォローを手厚くしようとする企業も多く、結果的に営業経験者のニーズが増えているのだと考えています。

——こうした状況を踏まえ、母集団形成において企業が取り組むべきことは?

髙田氏:転職希望者には転職先の選択肢が増え続けており、より経験を活かせる会社、より希望条件をかなえてくれる会社へと、以前と比べてもう一段深く検討するポイントを持って転職活動を進めています。募集する企業が独自の魅力を明確に示していかなければ、選んでもらえなくなるでしょう。

転職希望者が自分で検索した求人に直接応募をするケースが増えていることや、AIのマッチングを活用した人材サービスも出てきていることもあり、企業が発信する求人票の内容が、改めて重要な意味を持つようになってきたのです。

営業経験者は「商品・サービスを売る具体的なイメージを持てるか」を気にしている

——求人票で記載すべきことについて詳しく伺えればと思います。まず「職務内容」については、どのようなポイントを押さえるべきでしょうか。

髙田氏:営業職募集の求人票では、転職希望者自身が「その会社で売れる営業パーソンになるイメージを持てるか」がポイントだと考えています。

営業や顧客折衝業務の経験者は、転職先で自分がその商品・サービスを売れるのかを最重要事項として気にする傾向にあります。それを判断するための情報として、職務内容の欄には取り扱う商材の強みや受注までの期間、営業スタイル、競合優位性などを具体的に押さえておくべきです。以下のような観点で、内容が網羅できるとわかりやすいと思います。

 

——こうした情報を集めるためには、やはり現場へのヒアリングが重要になるのでしょうか。

髙田氏:はい。大切なのは求める人物像に合わせて情報を集めることです。営業部門の管理職候補を採用するなら部課長に、若手メンバーを採用するなら年齢が近い現場の先輩社員に聞くといった形で、ヒアリングの解像度を高めていただければと思います。

営業職で求める採用要件を6段階で整理

——「募集要件」をどう設定すべきかについても教えてください。

髙田氏:たとえば、法人向け営業経験者を募集する際の要件定義は、以下の6段階で整理すればわかりやすくなります。

上に行けば行くほど、採用難易度は高くなることを前提にして、採用背景にのっとって求める人物像を定めるべきでしょう。

たとえば新規受注を増やしたいという背景があるのなら、①や②などの業界経験豊富な即戦力だけでなく、まずは足を動かして確実に顧客先へ訪問できる④や⑤の採用候補者でも、自社が求める要件を満たしているかもしれません。採用候補者がより好条件を求めて転職することが多いことを踏まえると、どのスキルセットがあれば活躍できるかを整理することで、実際に採用すべき人材像を特定することができます。

——ただ、現場は経験者を歓迎する傾向があるなど、求める人物像の設定を事業部門と擦り合わせることに苦戦している人事・採用担当者も多いかもしれません。

髙田氏:人事の方にお話を聞くと、事業部門側に転職市場動向を理解してもらうことに悩んでいる人も多いです。

営業職はdodaをはじめとした各人材サービスで最も登録者数が多い職種ですが、実際に転職活動をしている転職希望者数よりも求人数がはるかに多い状況です。また、営業職求人に応募を希望する方は、営業経験者より販売・サービス職などの異業種から応募する方が多いです。そうした背景もあり、経験者採用は難易度が一気に跳ね上がる可能性もあるのです。こうした情報を事業部門に共有し、転職市場を適切に理解してもらうことが大切でしょう。

働き方を重視している営業希望者は増えている

——就業環境・働き方の面で、求人票で伝えるべきポイントはありますか?

髙田氏:第一にリモートワークや在宅勤務ができるかどうか。営業職でもリモートワークを希望する人は非常に多く、働き方の柔軟性を応募時の判断材料にしている転職希望者は増えていますね。

実際にはフルリモートで働ける営業職求人は少ないものの、「週の半分はリモート勤務可」といった条件の求人が増えてきているのが現状です。転職理由や転職先への希望条件でもリモートワークという言葉を多く聞きます。仮に自社がリモート勤務不可だとしても、直行直帰を可能とするなど、営業職ならではの条件の工夫を考えていただきたいですね。

また、転勤の可能性についても転職希望者にとっては重要ポイントです。特に拠点数の多い大企業ではどうしても「将来的に転勤の可能性あり」といったあいまいな表記になりがち。もちろん転勤なしを確約することは難しいですが、「入社後3年間は可能性が限りなく低い」「希望勤務地をできるだけ考慮」など、過度に不安をあおらないように実態に即したフォローする情報はほしいところです。

——就業環境についてはいかがでしょうか。

髙田氏:doda登録者へのアンケート結果を見ると、研修や教育体制、キャリアアップ支援などへの注目度が高まっています。転職が当たり前になってきた時代に、「この企業で働いた自分はどんな市場価値を得られるのか」という観点が意思決定のポイントになってきているのだと思います。

営業職の求人に応募する人も、営業でこの先のキャリアを積み続けるとは考えていないケースもあるかもしれません。「マーケティングや企画などの他職種へ将来的に挑戦できる」といった情報があれば、求人内容をより魅力的に受け取ってもらえるのではないでしょうか。

求人票改善の基本方針は「できるだけ具体的に、詳細に」

——ここからは具体的な求人票の例を挙げ、改善案を添削していただければと思います。一見、良く記載されている求人票に見えるのですが…。

中小企業の機械商社(架空)を題材にした求人票のサンプル(添削前)

 

髙田氏:一般的な求人票としてよくあるケースですね。いくつか添削ポイントはありますが、まず仕事名称の欄に担当する商材や領域を明記したいですね。ここは求人広告のトップと同じように、転職希望者を引きつけるリードの意味があると考えてください。最初に目にする領域なので、どんなポジションなのか、どんな魅力があるのかを簡潔に記載することが重要です。残業時間が少ないなど就業環境に魅力があれば、仕事名称の欄でわかりやすく書いたほうがいいと思います。

また、上記でも触れたように、選考フローに関する情報も具体的に表記すべきです。特に営業職求人ではWeb面接ができることは大きなメリットとなります。

——職務内容の欄についてはいかがでしょうか。

髙田氏:ここでは「自分がその会社で売れるのか」を具体的にイメージしてもらえるように記載することが重要です。具体的に見ていくと、商材については「機械部品、各種工具」だけでなく、どういう顧客向けにどう販売するのかなど詳細に記載したいですね。製品ジャンルや製品の特徴、製品単価などを出せればベストです。

また、一日の流れや、営業目標・ノルマについても記載できれば、転職希望者がより具体的に働くイメージできると思います。

加えて、前述の「働き方」の要素も職務内容欄に記載しても良いと思います。残業時間の目安、リモートワークの可否、出張の頻度など営業職ならではのポイントを押さえておきましょう。キャリアパスについても記載があると、入社後のイメージもつきやすいですね。

「職務内容」を添削した求人票(具体的に、詳細に記載)

 

また、「応募資格/応募要件」についても、先述のとおり要件定義で整理することが大事です。採用背景を踏まえて、求めているスキルセットを定義しつつ、活躍している人材例なども書けるとより良いです。実際に活躍している社員の例があることで、働くイメージや活躍するイメージを持つことができます。

「応募資格/応募要件」を添削した求人票(採用背景から採用要件を再定義しながら求めるスキルを記載)

 

添削後の求人票は以下の通りです。添削前と比較して、この会社で働くイメージをより具体的に持ちやすいのではないでしょうか。重要なことは、求める人物像を明確にし、その方にとって必要な情報を記載すること。営業職求人であれば「その会社で売れる営業パーソンになるイメージを持てるか」を意識しながら求人票作成していくのが良いでしょう。

「仕事名称」「職務内容」「応募資格/応募要件」を添削した求人票(全体)

 

——多数の改善点を挙げていただきましたが、求人票の情報量が増えても問題はないのでしょうか。

髙田氏:問題ありません。最近ではどの人材サービスのプラットフォームでもアプリ上で求人票を閲覧でき、たくさんの情報があっても読みづらいと感じることは少なくなりました。むしろ求めている情報が少ないほうが、転職希望者にはネガティブに響いてしまうこともあります。

転職希望者がより働くイメージを持てる求人票を作成するには、事業部門との連携が必須になります。そのため、事業部門とコミュニケーションを取りながら、求人票を改善していただけたらと思います。

取材後記

専門性が高いエンジニアなどの技術職とは異なり、営業職の求人票は比較的つくりやすいと感じている人事・採用担当者が多いかもしれません。しかし髙田さんは「求職者が真に求めている情報が網羅されていない求人票は少なくない」と指摘します。募集する機会も多く、人材の獲得競争が厳しくなっている営業職だからこそ、商材・サービスの特徴に加えて、営業スタイルや働き方がイメージできるように求人票の内容を見直すことが大切なのだと痛感しました。

企画・編集/森田大樹(d’s JOURNAL編集部)、野村英之(プレスラボ)、取材・文/多田慎介

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