わかりやすい報告書の書き方とは?構成の仕方や例文を解説

d’s JOURNAL編集部

「営業報告書」や「研修報告書」など、さまざまなビジネスシーンで作成される報告書。読み手に簡潔にわかりやすく伝えるためには、目的に応じた構成にして、書き方のポイントを押さえながら記載することが重要です。

この記事では、報告書の用途や目的を解説するとともに、分かりやすい報告書の構成やシーン別の書き方を具体的にご紹介します。

報告書が使われる用途とは

報告書とは、特定の事柄について報告する内容を記載した書類のこと。「営業や出張の成果」「プロジェクトの進捗状況」「研修の実施状況」などを報告するために使用される他、トラブルやクレームがあった際に「調査結果」の報告と謝罪のために作成することもあります。

報告書を作成する目的は、「情報を共有し業務に活かすこと」および「取引先との信頼関係の構築や回復を行うこと」です。通常、仕事は部署内のメンバーや他部署などと連携しながら進めていきます。報告書の作成により情報を可視化できるため、「営業先の把握」や「業務の効率化」「課題点の把握」などに役立てることが可能です。

また、トラブルが起きた際、報告書を通じて取引先や顧客に速やかに状況報告と改善策を提示できれば、自社に対するマイナスイメージを最小限に抑えられるでしょう。

報告書を作成する際の構成要素

ここからは、報告書を構成する要素と内容を詳しく見ていきましょう。

報告書の形式

報告書の形式は、報告書の骨子となる重要な部分です。全体の構成は、下記のように、大枠からスタートし、読み進めるに従って説明が詳細になるようにします。

報告書の形式

・タイトル
・概要
・詳細説明
・所見、補足

記載すべき項目や文章量、所見の有無は、報告書を作成する目的と提出する相手によって異なります。ただし、長すぎると要点が伝わりにくくなるため、A4用紙1枚もしくは2枚に収まるように作成しましょう。

具体的な書き方については、後ほど詳しくご紹介します。

具体的かつ端的なタイトル

報告書のタイトル(表題)は、読み手が最初に目にする情報です。下記のように、15~25字程度で具体的かつ端的に記載します。

NG例
「出張報告」
OK例
「●●(商品名)開発に伴う▲▲社への出張報告」

NG例
「クレームについて」
OK例
「●月●日に発生した▲▲(商品名)の商品不良の件」

趣旨や日付、商品名などをタイトルに含めると、報告書の概要が一目で理解しやすくなります。また、書類の取り違えを防いだり、優先順位を判断したりすることにも役立つでしょう。

報告が必要な案件の趣旨や概要

趣旨・概要欄では、タイトルで示した内容について報告をする旨を記載します。「表題の件につき、下記の通りご報告いたします」とし、箇条書きで要点をまとめ、最後は「以上」で締めくくりましょう。なお、外部に提出する場合は、冒頭に「挨拶文」や「謝罪文」などを記載することもあります。

概要欄の項目は、報告書を作成するシーンや提出する相手によって異なりますが、「日時」や「場所」「対象者の属性や名前」などを記載します。詳細部分は後述するため、端的にまとめることが大切です。

検討事項、決定事項など詳細な内容

検討事項や決定事項など、概要で書ききれなかった内容を詳細に記載します。記載すべき項目が複数ある場合は、小見出しを立ててから詳細な説明をするなど、読み手に伝わりやすい工夫をしましょう。

所見や補足事項

「所見・所感」といった主観的な内容や、「今後の予定」「添付資料」などの補足事項は、報告書の最後に記載します。所見は、報告書の趣旨や提出する相手によって記入する場合としない場合とあります。数値化できない情報や意見を伝えた方がよい場合には、所見の項目を別立てして記載しましょう。

なお、「研修やセミナーへの参加報告」や「営業報告書」などの社内向けの報告書には、所見欄があることが多いです。所見欄を設けることで、参加者がどのような意識・意欲を持っているのかや、達成度などを測る効果が期待できます。

報告書の書き方のポイント

報告書を作成する際は、いくつかのポイントを押さえることで、必要な情報を漏れなく分かりやすく伝えることができます。ここでは、報告書の書き方のポイントをご紹介します。

PREP法を意識した構成にする

報告書の文章を記載する際は、PREP法を意識した構成にするとよいでしょう。PREP法とは、分かりやすく説明をするために用いられる文章のフレームワークです。

PREP法の構成

Point:結論」→「Reason:根拠、理由」→「Example:具体例」→「Point:結論」 の順で説明

冒頭で結論を伝えるため、読み手は要点を理解した上で文章を読み進められます。また、PREP法では具体例を提示するため、より説得力のある報告書にすることができます。

報告の目的を明確にする

報告書は、報告の目的と読み手を明確にしながら作成することが重要です。目的があいまいなまま書き進めてしまうと、作成に時間がかかるだけでなく、本来報告すべき内容と実際に記載した内容が乖離してしまう可能性もあります。

クレームやトラブルが発生した際の社内向けの報告書を例に、考えてみましょう。この場合、目的は「原因を追究するとともに改善策を提示し、再発防止を図る」ことにあります。改善策が書かれていなければ社内での情報共有や改善が行えず、問題が再発する可能性も否定できないため、改善策の記載が欠かせません。また、社内向けの報告書であるため、社外向けの謝罪文を記載するのは不適切です。

このように、「何のために報告するのか」「誰が読むのか」を意識して記載しましょう。

5W1Hを意識した文章を作成する

5W1Hは、情報を整理するために用いられるフレームワークです。報告書を作成する際は、以下の内容が漏れなく記載されているかも意識しましょう。

5W1Hの構成要素

・When:いつ
・Where:どこで
・Who:誰が
・What:何を
・Why:なぜ
・How:どのように

目的やシーンにより、「Whom(誰と・誰に)」「How many(どれだけ)」「How much(いくら)」を組み込むと、より具体的な報告書になります。

「ですます調」と「である調」を混同しない

報告書の文末表現は、「ですます調」(敬体)と「である」調(常体)のどちらかで統一しましょう。表現が混同していると読みにくいだけでなく、心証が損なわれる可能性もあるためです。

原則として、上司もしくは外部に提出する場合には「ですます調」、チーム内での進捗報告など事実記載がメインの報告書には「である調」を使用することが望ましいと言えます。

特に、取引先や顧客など外部に提出する際には事前に上司のダブルチェックを挟むなどして、文末表現の混同がないかをしっかり確認しましょう。

事実と所見を明確に切り分ける

報告書では、事実と所見を明確に切り分けることが大切です。これらが混在してしまうと内容がわかりにくくなるだけでなく、認識の齟齬が生じやすくなってしまいます。まずはデータや実際に起きたことなどの客観的な情報を記載した上で、所見を述べる場合は別に項目を立てて記載するようにしましょう。

また、説得力のある報告書にするには、具体的な数字を示すのもポイントです。「時間」や「価格」「数量」がわかっている場合は、事実を基に正確に記載しましょう。

NG例
●時ごろより対応し、しばらく経過した後、復旧しました。

OK例
●時●分より対応を開始し、▲時▲分に復旧しました。

NG例
多くの企業から関心が寄せられました。

OK例
●社から資料請求があり、うち▲社の利用申し込みにつながりました。

【シーン別】報告書の例

ここからは、報告書の目的や書き方のポイントを、シーン別に解説します。

営業報告書

営業報告書を作成する目的は、営業の進捗状況や成果を共有し、組織戦略に役立てることです。また、報告書の内容や成果を、社員のスキル把握や人事評価に役立てることもあるでしょう。

営業報告書の記載例

【表題】
●月●日(●)▲▲社における××システムの営業報告

【報告内容】
・営業担当者:鈴木
・日時:●月●日(●) 10:00~11:00
・訪問先:▲▲社
・応対者:■■部 田中部長
・訪問目的:××システムの提案のため

【詳細】
・営業内容:××システムの特徴やメリットを提案しました。
・応対者の発言:「他社からも、同様のシステムについて提案があった」「他社と比較検討した上で、考えたい」との発言がありました。
・課題や展望:競合他社も営業に行っている中、他社との違いをどう打ち出していくかが課題です。
・所感:興味はあるものの、あくまで選択肢の一つとして考えているように感じました。
・再訪問の予定:来月初旬に、計5社のコンペに参加します。

営業報告書を作成する際は、具体的な数字を用いて要点を整理するとともに、商品やサービス、体制などの課題点なども記載し、改善を図れるようにすることが大切です。

出張報告書

出張報告書は、出張先で行った業務の内容を報告するものです。「取引先との商談」「セミナーへの参加」など、さまざまなケースで使用されます。

出張報告書の記載例

【表題】
組織力向上セミナー参加のための▲▲県への出張について

【報告内容】
・出張者:池田
・同行者:金子課長
・出張期間:●月●日(●)~●月●日(●)
・出張先:■■株式会社(▲▲県▲▲市)
・出張の目的:組織力向上セミナーに参加し、リーダーシップの発揮の仕方を学ぶ

【詳細】
・出張先での活動内容
 ●月●日(●) 16時15分 ▲▲駅着 タクシーにてホテルに移動し宿泊 
 ●月●日(●) 10時00分 ■■株式会社到着 研修終了14時
 ●月●日(●) 15時00分 当社××オフィス訪問
・成果:セミナーにて組織におけるリーダーの役割やコミュニケーションの手法を学ぶことができました。
・所感:リーダーシップには複数の種類があることがわかり、自分や部下の特性や目的に合ったコミュニケーションを取ることが重要であると学びました。セミナー後、日頃オンライン上でのやり取りが多い××オフィスに訪問した際は、学んだことを意識しながらやりとりができたと感じています。組織全体の力を向上すべく、部下の成長を促せるようなコミュニケーションを心掛けたいと思います。

出張報告書では、出張先でどのような活動を行ったのかや、出張の目的が達成されたのかを記載することが求められます。日付や出張先ごとに内容を整理するなど、わかりやすい表記を心掛けましょう。

研修やセミナー参加の報告書

研修やセミナーに参加した際の報告書は、得た学びや業務に活かせる知識を再確認するために作成するものです。また、研修などで得た知識やスキルを共有し、従業員のレベルを高めるためにも活用されます。

研修やセミナー参加の報告書の記載例

【表題】
新入社員を対象としたビジネスマナー研修への参加報告

【報告内容】
・研修名:ビジネスマナー研修
・研修日時:●月●日(●) 13:00~14:00
・開催場所(場所の名称、もしくはオンライン):▲▲ホテル「竹の間」
・対象者:2024年4月入社の新入社員20名
・講師:■■社 ××××
・研修の目的:社会人に必要なビジネスマナーの基礎を身に付ける

【詳細】
・研修の内容:
①ビジネスマナーの重要性
②身だしなみ
③挨拶
④名刺交換
⑤来客対応
⑥電話対応
⑦文書作成
・所感:ビジネスマナーの基礎知識を学びました。所作についてはもちろんのこと、服装など外見が与える印象の重要性を認識しました。名刺交換や電話対応については、実際のデモンストレーションを通して、自身に落とし込むことができたと感じております。自身の言動が会社の印象に直結することを再認識しながら、日々の業務に努めたいと思います。

研修やセミナーの報告書では、学んだ内容や業務への活かし方を記載する必要があります。そのため、概要では研修の要点と内容を簡潔に記載し、所感の部分を厚めに述べるようにしましょう。当日の資料を添付すると、読み手の理解が深まりやすくなります。

クレーム対応後の報告書

クレーム対応後の報告書は、顧客から受けたクレームの内容とそれへの対応、今後の対策について共有することを目的とした書類です。社内向けに作成する場合と、社外向けに作成する場合とがあります。

クレーム対応後の報告書の記載例

【表題】
▲▲(商品名)のクレーム対応結果のご報告

【報告内容】
・受付日:●月●日(●)11時46分
・事象発生日時:●月●日(●)11時30分ごろ
・お客さま情報:30代女性、毎月の定期便を新規申し込み
・クレームの概要:▲▲の定期便の発送に際し、キャンペーン内容が反映されていなかった

【詳細】
・クレームの詳細:●月●日(●)~●月●日(●)に新規で定期便申し込みしたお客さまには▲▲を2本納品しなければならないところ、通常の1本しか発送されなかった。

・クレーム発生の原因:キャンペーン内容の社内周知が徹底されていなかった。また、発送時のダブルチェックも実施されていなかった。

・クレームへの対応内容:
①指摘いただいた内容を受け、お客さまに謝罪。
②本件について確認したところ、新人スタッフがキャンペーン内容を把握しておらず、通常通りの内容で発送をしたことが発覚。また、当日欠勤スタッフがいたことで業務がひっ迫し、通常行われているダブルチェックを実施できていなかったこともわかった。
③お客さまには本来発送されるべき▲▲1本と謝罪文を●月●日(●)17時付けで発送。

・改善に向けた施策:
①新人スタッフには必ずベテランスタッフをつけ、キャンペーンについては出勤時に都度確認を行う。
②必ずダブルチェックを実施するよう、チェックシートを設ける。
③欠員が出て発送遅延の可能性がある場合は、■■オフィスにサポートを依頼する。

クレームに対する報告書で重要となるのは、客観的な事実を記載することです。必要に応じて、写真や資料などを添付するとよいでしょう。

顧客へ提出する報告書では、スピーディな対応と誠実な姿勢、原因や改善策の具体的な提示が欠かせません。謝罪や状況説明だけでなく、同じクレームを発生させないための対応策をしっかりと示しましょう。

社内システムトラブル対応後などの報告書

社内のシステムトラブルの発生が発生した場合、「システムを活用しての業務が進行できなくなる」「製造ラインが停止した際には、生産スケジュールに遅れが生じる」といった状況に陥る可能性があります。状況や影響を可視化するため、トラブル後は速やかに報告書を作成しましょう。

社内システムトラブルの報告書

【表題】
▲▲システムのトラブルによる納期遅延について

【報告内容】
・事象発生年月日:●月●日(●)
・事象発生期間:●月●日(●)14時05分~15時16分
・システム名:▲▲システム
・関係する製造ライン:■■(商品名)
・関係する取引先:株式会社××

【詳細】
・現状:●月●日(●)16時00分時点での納品遅延は100個
・経過:
●月●日(●)14時05分~15時16分 ■■システムの停止、不良品の発生10個
●月●日(●)16時00分 本日予定納品量の5割である100個を納品
・原因:サーバーダウンによるシステム停止
・今後の対策:サーバー容量の拡大、データのクラウド化
・今後のスケジュール:●月●日(●)までに遅延分100個を全て納品予定

現状では「●月●日●時時点での納品遅延:▲個」「不良品の発生数:●個」というように、具体的な数量や損失金額などを記載します。経過は時系列に沿って記載し、製造スケジュールへの影響やリカバリーの程度などにも言及しましょう。

なお、取引先に影響がある場合は、「経緯報告書」として謝罪の意を伝えるとともに、原因や経過、対応策、今後のスケジュールを具体的に記載します。

まとめ

報告書は、情報を共有し業務に活かすために作成します。正確な情報を簡潔に伝えられるよう、「PREP法に応じた構成にする」「5W1Hを意識した文章にする」などのポイントを押さえることが重要です。

今回紹介した書き方を参考にしながら、目的に応じた報告書を作成しましょう。

(制作協力/株式会社mojiwows、編集/d’s JOURNAL編集部)