【人事・総務のスキルアップに有利な資格5選+α】異動・転職を目指す方も必見

d's JOURNAL編集部

人事・総務(人事総務)の仕事は、採用や人員配置、組織開発、教育・研修、人事考課・従業員満足、労務、働き方改革のための制度改革…など、会社によって多岐にわたります。変化の激しい昨今において、人事(総務)としてスキルアップしていくために、どのような資格・スキルを習得すればよいのでしょうか。今後、人事(総務)としてのキャリアチェンジを目指す方も必見です(本記事は、2018年5月初稿/2022年3月アップデートとなります)。

※2022年3月現在の情報です。必ず公式ページを確認ください。
※受験料に関して、別途かかる申込手数料や登録料は除いております。

資格と実務経験ではどちらが重要?人事(総務)のキャリアアップに資格は必要か

人事のキャリアアップに資格はあった方がいい?

人事(総務)の仕事とは、上記にも記載した通り、採用から教育、社員のキャリアアップ、社内整備まで幅広いスキルが求められます。そしてこれらの能力・スキルは、日々の業務の中で身に付けていくことがほとんどです。ですから、実務経験の中で様々な業務を通じてスキルアップしていくことが重要だと考えられます。

では、人事(総務)としてキャリアアップをするために、資格は必要になるのでしょうか。職種に関する資格取得において、最大のメリットは「資格取得するための勉強を通じて、知識が増えること」でしょう。ある程度ベースの知識があれば、いざその資格が必要となる場面でも、慌てず対応することが可能です。しかし、資格取得が目的となってしまうと危険です。それは、難易度が上がれば上がるほど、勉強時間や習得のための費用が多大にかかってしまうから。これでは元も子もありません。
また、「社会労務士」や「中小企業診断士」などの資格は、一から資格を目指してもいいですが、外部にアウトソースをすることだって可能です。つまり、「ご自身の会社の人事・総務部門はどこまでの業務範囲なのか」、その上で、「自分が現在どのような業務に携わっており、今後どのような業務に携わっていくのか」をしっかりと把握し、資格を取ることで、知識量が増え、業務に活かせることができると判断できれば資格取得を目指してもよいでしょう。資格取得が目的にならないようにしてください。

人事・総務関連の仕事に転職・異動したい場合、資格を取った方が有利?

では、異動や転職など「人事(総務)を目指したい」という人にとって、資格取得は有利になるのでしょうか。もちろん、加点の対象になることはありますが、「資格取得していることで採用されることはない」という認識を持つことは必要です。キャリア採用の場合、人事(総務)職で求められるのは、「採用や労務、制度改革などの経験があるかどうか」、そして「その経験を活かすことで自社の発展につながるのか」ということです。
実際、人事(総務)職で転職に成功した人の直前の職種は、「人材サービスの営業」や「総務」「経営企画/事業企画」、「コンサルタント」と、何かしら人事(総務)職の仕事に関わったことがあることが多いようです。

その経験をベースに、プラスとなる資格を習得していくことに、こしたことはないでしょう。ただし、転職の面接や異動希望面談などで、資格取得した理由を聞かれることもあるので、きちんと目的を語れることが大事になります。
(参考:『あの職種とはどんな仕事?doda職種図鑑』

人事・総務の資格取得する前に、今のトレンドをおさえておく

トレンド

今後、人事(総務)として求められることは何でしょうか。
1つに、“働き方改革”が浸透したことで、従業員満足度やエンゲージメントの向上を求められるようになりました。つまり、社員のキャリアやモチベーションに対して、方向性を示す能力が必要になってると考えられます。
また、別観点で言えば、“経営視点”があげられます。大量採用や終身雇用制度の崩壊により、全員が横に習えのではなく、企業毎の「経営戦略・経営判断に迅速に対応できること」、そして「経営陣と対応に人材戦略について話せること」が非常に高く求められるようになってきました。“戦略人事”という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。候補者に寄り添うことはもちろんですが、事業や経営をグロースさせるため、その企業にあった最適な採用・配置を行うことが今後必要なスキルとなるでしょう。また、HRtechの台頭により、書類選考や面接調整などの業務よりも、データアナリティクス要素が求められるようになると思われます(参照:日本で独自の進化を遂げるHR Tech。グローバルとは異なるトレンドに)。例えば、母集団や面接通過率、辞退率などの数値を分析しネックとなる部分を洗い出す、応募者のタイプ・志向を数値化し、入社後活躍者と照らし合わせる…などです。より経営・マーケティング・解析要素が強くなってきたと思われます。

初心者も必見!チェックしておきたい、役立つ人事・総務資格5選

では、これから人事(総務)職としてスキルアップを目指していくために、どのような資格の取得を目指すとよいのでしょうか。あくまでも実務を踏まえて必要な資格を取得するようにしましょう。

※2022年3月現在の情報です。必ず公式ページを確認ください。
※受験料ですが、別途かかる申込手数料や登録料は除いております。

役立つ人事・総務資格①:衛生管理者

労働安全衛生法で定められている国家資格です。職場環境の整備や改善、社員の過重労働や労働災害を防止することを目的としています。総務職はもちろん、人事職に携わる方の基本的な資格となっています。

概要 第一種衛生管理者は全業種で対応可能ですが、第二種衛生管理者の場合は、情報通信業や金融・保険業、卸売・小売業といった一部の業種においてのみ(有害業務と関連がないとされる業種のみ)、衛生管理者となることができます。
出題内容 試験科目は、第一種衛生管理者、第二種衛生管理者ともに、①関係法令(労働基準法、労働安全衛生法)、②労働衛生、③労働生理 の3つの範囲から出題されます。

※メンタルヘルス・マネジメント検定や社会保険労務士試験と出題範囲がかぶります。
合格率 第一種衛生管理者:43.8%
第二種衛生管理者:52.8% (2020年度実績)
受験料 6,800円(国家試験のため非課税)

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役立つ人事・総務資格②:メンタルヘルス・マネジメントⓇ検定

働く人たちのメンタルヘルス不調を未然に防止し、イキイキとした職場環境づくりを目的として生まれました。ストレスフルな現代社会において注目を集めている資格です。

概要 Ⅲ種は社員全般に向けた、自らのストレス状態に向き合うための内容が中心。
Ⅱ種はマネジャーなどの管理者に向けて、部門内・部下に対してのメンタルヘルス対策。そして、Ⅰ種は経営層や人事労務管理担当に向けた、社内全般のメンタルヘルス対策が中心となっています。受験資格は特にありません。
出題内容 出題内容は厚生労働省策定の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」を参考にされています。Ⅲ種はメンタルヘルスケアの意義や基礎知識、ストレスへの対処法などについて。Ⅱ種になると、管理監督者の役割や個人への配慮方法、相談への対応方法など。そしてⅠ種は、企業経営におけるメンタルヘルス対策の意義と重要性や、メンタルヘルスに対する方針・計画、相談体制や教育研修まで、幅広くなっています。
試験問題はマークシート形式ですが、Ⅰ種は実務を遂行するうえで必要な知識とその応用力、総合的判断力を問われる論述問題もあります。
合格率 Ⅰ種:19.8%
Ⅱ種:46.4%
Ⅲ種:71.2%(2021年第31回実績)
受験料 Ⅰ種:11,550円
Ⅱ種:7,480円
Ⅲ種:5,280円(税込/2022年4月時点)

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役立つ人事・総務資格③:産業カウンセラー

産業カウンセラーとは、様々な環境や職位で働く人が抱える問題を、心理学の手法で解決できるよう支える専門家のことを指します。最近では、メンタルヘルス・マネジメント検定とともに注目度が高まっており、産業カウンセラーの採用を行う企業も増加傾向にあります。受験資格のハードルが高いのが特徴です。

概要 受験資格として「協会が行う産業カウンセリングの学識及び技能を修得するための講座を修了した者」もしくは、「大学院研究科において心理学又は心理学隣接諸科学、人間科学、人間関係学のいずれかの名称を冠する専攻(課程)の修了者であり、指定された単位を取得している者」と、厳しい条件になっており、確認が必要です。
出題内容 学科試験Ⅰ・Ⅱ、および実技試験があります。受験資格によって免除されることもあります。難易度は高いようです。実技試験では、実際のカウンセリングをCO役・CL役を交代しながら実施します。
合格率 学科試験合格率:67.5%
実技試験合格率:72.4%
総合合格率:62.7%(2020年度実績)
受験料 31,500円(税込)

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役立つ人事・総務資格④:キャリアコンサルタント

2018年より国家資格となった、キャリアコンサルタントも注目されています。キャリアコンサルタントとは、キャリアプランに迷っている人に対し、1人1人の悩み・課題にそったアドバイスを行い、手助けできる資格です。人材サービス企業のキャリアカウンセラーだけではなく現在は人事・採用担当者の受験も増加している模様です。

概要 2016年、職業選択や能力開発に関する相談・助言を行う専門家として「キャリアコンサルタント」が職業能力開発促進法に規定、国家資格となりました。
ただし、受験資格は、以下いずれかを満たすことが必要です。
1.厚生労働大臣が認定する講習の課程を修了した者
2.労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力開発及び向上のいずれかに関する相談に関し3年以上の経験を有する者
3.技能検定キャリアコンサルティング職種の学科試験又は実技試験に合格した者
4.上記の項目と同等以上の能力を有する者
出題内容 職業能力開発促進法その他関係法令に関する科目、キャリアコンサルティングの理論やキャリアコンサルティングの実務に関する科目、キャリアコンサルティングの社会的意義や倫理・行動に関する科目などが出題されます。
実技試験では、論述50分に加え、実際のキャリアコンサルティングのシーンを想定したロールプレイ15分、および口頭試問が行われます。
合格率 学科試験:56.8%
実技試験:58.1%(第17回/2021年6月実績)
受験料 学科試験:8,900円
実技試験:29,900円(税込/2022年3月時点)

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役立つ人事・総務資格⑤:ビジネスキャリア検定

人事・人材開発や労務管理だけではなく、経理・財務管理、営業・マーケティング、企業法務・総務…など、自身の実務を評価することを目的とされています。労働省が定める職業能力評価基準に準拠した資格です。

概要 1級~3級があり、3級が実務経験3年程度(係長、リーダー相当職を目指す方)、2級が5年程度(課長、マネージャー相当職を目指す方)、1級が10年以上(部門長、ディレクター相当職を目指す方)を想定した内容になっています。受験資格は特になく、どの階級から受験することも可能です。
出題内容 「人事・人材開発」では、人事企画や、雇用・賃金管理などの人事業務に加え、OJTや自己啓発支援計画などの人材開発業務が出題範囲です。また、「労務管理」では、労使関係や就業管理、安全衛生、福利厚生などの内容になります。
※3級は4肢択一、2級は5肢択一、1級は論述式
合格率 2級人事・人材開発で38%、3級人事・人材開発で62%、2級労務管理で35%、3級労務管理で45%となっている。1級人事・人材開発・労務管理は12%(2018年度後期実績)
受験料 1級:11,000円
2級:7,700円
3級:6,200円
BASIC級:3,300円(税込/2022年3月時点)

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HRtechの波を受け、データ分析や解析のスキルにも注目

HRtechの波を受け、データ分析や解析のスキルにも注目

あらゆる人事情報をデータ化し、分析するという“ピープルアナリティクス”という言葉も誕生し、HRtechがスタンダードになりつつある昨今。いかに自社が持つデータを解析し、そこから仮説立てて戦略を練る必要があります。つまり、正しい数字分析および、その活用の仕方が求められる中で、「基本的な統計スキルを身に付けたい」と注目を集めているのが、「統計検定」になります。人事・総務としては一見遠い資格のように見えますが、今後の数値分析のために必要だと取得を検討する方が増えているようです。

概要 統計検定は、2011年に発足された、統計に関する知識や活用について評価する全国統一試験です。中高生から社会人までを対象に、各レベルにあわせて統計活用能力をはかることができるようになっています。
出題内容 4級はデータや表・グラフ、確率に関する基本的な知識と具体的な文脈の中での活用力について問われますが、準1級は、統計学の活用力(データサイエンスの基礎)、1級は、実社会の様々な分野でのデータ解析を遂行する統計専門力が出題されます。
合格率 1級「統計数理」:25.8%
1級「統計応用」:24.0%
準1級:23.6%
2級:34.1%
3級:75.6%
4級:72.8%(1級は2021年11月実績、残りは2021年6月実績)
受験料 1級(統計数理および統計応用):10,000円
1級(統計数理のみ):6,000円
1級(統計応用のみ):6,000円
準1級:8,000円
2級:7,000円
3級:6,000円
4級:5,000円(税込/2022年3月時点)

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国際的な活躍や戦略人事(HRBP)を目指すなら、MBAも

国際的な活躍や戦略人事(HRBP)を目指すなら、MBAも

MBAとは -MBAの概要と取得方法-

経営者のビジネスパートナーとして寄り添ったり、グローバル企業(外資系や海外採用など)での人事として国際的な活躍をしたり、さらなるキャリアアップしたいと考えている方であればMBAの取得を視野に入れることもおすすめです。MBAとはMaster of Business Administrationの略で、日本では経営学修士とも呼ばれています。経営学の大学院修士課程を修了すると授与される「学位」であり、資格ではありません。働きながらビジネススクール(大学院)に通い長きに渡って勉強しなければならず、それなりの覚悟と努力が必要です。

MBAを取得するメリット

MBA取得のメリットには以下があげられます。

メリット①:経営者の立場として、ビジネス全体を捉えられる

経営戦略や人事戦略はもちろんのころ、マーケティング、アカウンティング、金融、経済学…など、経営における総合的な知識を身に付けられることが一番の特徴でしょう。単に経営学を学ぶだけならビジネス本を読めば十分です。MBA取得で得られるものは、「直面する課題に対し、俯瞰的に考え、迅速に意思決定を行う力」。経営や思考のフレームワークや自信・誇りは、ビジネスリーダーとして生きていくために無くてはならない重要スキルであり、それを高めるための場所になります。

メリット②:他業種・グローバルに広がる、人的ネットワークが構築できる

MBA取得にはビジネススクール(経営大学院)に通う必要があり、そこには世界中から数多くの人材が集まります。普段関わることができない、活躍するビジネスパーソンが集まり、人脈形成できることはメリットであると言えます。ビジネス上のつながりはもちろんのこと、生涯を通じてのチームメイトとして関係を築けるかもしれません。海外のビジネススクールであれば、英語でのコミュニケーションは必須となり、語学力の向上にもつながるでしょう。

【まとめ】

変化の激しい中、バックオフィス職が求められることも日々変わっていきます。人事(総務)としてスキルを高めていくためには、その中で自分自身はどうなりたいのか、きちんと見定めることが何よりも重要です。資格取得は「目的」になりがちですが、決してそうではありません。その資格を得るとどうなるのか、どのように業務に活用できるのか、自分の中で明確にした上で、資格やスキル取得に取り組むようにしてください。
それに、人事(総務)業務は実務経験を積むことが、一番のスキルアップとなります。大量の勉強時間に費やすのであれば、社内課題に向き合い経営陣と喧々諤々したほうが、将来のキャリア形成に有益になることも多いでしょう。いずれにしろ、まずはきちんと業務を行い、自身のキャリアアップの補足として資格取得を目指すことをおすすめします。

 

(監修/パーソルキャリア株式会社 加賀美 文久、文・編集/齋藤 裕美子)

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