今、選考スピードアップは必須。どう現場を巻き込む?他社事例やデータを活用して社内協力を得る方法

パーソルキャリア株式会社

都山翔吾(つやま・しょうご)

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堀江こころ(ほりえ・こころ)

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池田武司(いけだ・たけし)

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  • 転職希望者が一度に面接を受けられるのは3〜5社。書類選考が遅い企業は、最初の段階で忘れ去られてしまう
  • 選考プロセス自体を変えられなくても、新しいルーティンをつくることで選考スケジュールを大幅に短縮できる
  • 人材紹介サービスと連携し、他社事例やデータを活用して社内のキーパーソンを説得

過熱する転職市場。他社や現職との比較で揺れ動く転職希望者の心をつかむため、選考スピードアップに取り組む企業が増えています。大手企業では1〜4次までの面接を1週間以内に行う例もあるほどです。

一方で人事・採用担当者側はスピードアップの必要性を感じているものの、どうすれば現場責任者や経営層に「選考スピードを早めなければならない」という理解を深めてもらえるのかと悩む方も多いのではないでしょうか。

選考スピードアップの具体策について、製造業を中心に、中小企業から数万人規模の大手企業まで、さまざまな組織の採用を支援するパーソルキャリアのRA(リクルーティングアドバイザー)3名に聞きました。

選考スピードが遅い企業は、最初の絞り込みにも入れない現状

 

——皆さんは、現在の転職市場における選考スピードの重要性をどのように考えていますか。

池田氏:職種によっては1人の転職希望者を数十社で取り合っている状況です。面接前後の辞退も増えており、選考スピードは現在の採用活動で最重要ポイントだと考えています。

都山氏:最近では転職活動を開始した後に、現職からの強い引き留めに遭うケースも増えてきました。一度情報を取りにきていた転職希望者が、その後アクティブに動かなくなることも少なくありません。転職希望者の動きが鈍くなる一方で求人数は増え続けているため、選考スピードアップは以前にも増して重要になっていますね。

堀江氏:以前から選考スピードは重要だと言われていましたが、最近はそれが顕著に採用成功に直結していますよね。そのため当社では、さまざまなデータを基に「エントリー書類が届いてから20日で採用決定にたどり着けるようにしましょう」と提案しています。

——採用スピードが遅いことによって、実際に転職希望者が他社へ流れてしまうこともあるのでしょうか。

都山氏:頻繁にあります。転職希望者は現職の仕事と並行して転職活動をしていることがほとんどで、一度に面接を受けられるのは3〜5社程度。一方でエントリーしている企業はおおむね20社ほどあります。書類選考が遅い企業だと、最初の3〜5社の絞り込みにも入れずに忘れ去られてしまうんです。

堀江氏:選考スピードは転職希望者の心象にも影響します。選考結果を早く伝えることで転職希望者は「高く評価されている」と感じ、入社意向が高まることも。逆に選考が遅いと「他者と比較されている」「吟味されている」と感じて心が離れていってしまう可能性もあります。

池田氏:大手企業やブランド力のある企業が欲しい人材に全速力で対応している中で、転職希望者から見るとスピードの差は際立ちますよね。私の担当企業では、書類選考や面接の結果を即日で出しているところもありました。

「最初から役員の日程を押さえる」「1週間で4次面接まで」。スピードアップに向けた実例

 

——皆さんが支援している中で、選考スピードアップによって採用成功につながった企業の事例を教えてください。

都山氏:ある中小企業では、最終面接を行う役員の日程がなかなか押さえられず、選考期間が延びてしまうことが課題になっていました。このパターンは意外と中小企業に多いんです。「最終決裁者の面接は絶対に必要、そうなると手前の段階で1〜2回は担当者面接を挟まなければ」という形式をなかなか変えられず、結果的に選考スピードが遅くなるパターンです。

この場合も、面接回数を変えずにいかにスピードアップするかが課題でした。そこで書類選考終了時点でまず役員の日程を押さえてしまい、そこに合わせて逆算しながら1次面接を組むというやり方に変更。結果的に転職希望者を待たせてしまっていた期間が大幅に短縮され、採用成功につながっています。

堀江氏:私も近い観点で顧客企業へ提案しています。役員が多忙で選考期間が延びてしまうケースが多いので、「毎週○曜日の△〜△時」など、役員のスケジュールを定例の面接時間として固定していただくこともありますね。

また、「書類選考は3日以内に結果を出しましょう」と提案することも多いですね。設定した期間内に返答がなければその転職希望者は見送るなど、企業の中でルーティンをつくることが大切。割り切れずに引きずってしまうと、選考期間が長引いてしまいますから。

池田氏:ある大手企業では、1〜4次までの面接を1週間以内に完結したこともあります。ITエンジニアの採用を進める中、1次面接が終わった段階で、有力な転職希望者が他社の最終選考まで進んでいることがわかったからです。

その企業では見極めを重視しており、面接回数自体を減らすことがどうしてもできなかったため、現場の関係者を巻き込んで急ピッチで日程を組み、4次までの面接とオファー面談を一気に進めて採用成功に至りました。転職希望者としても、スピーディーにさまざまな人と会って情報収集できるのがありがたいと感じてもらえたようで、入社意向が高まっていきました。

採用活動の前に取り組んでおくべき「スピードアップの秘訣」

 

——選考スピードアップのための具体策についてお聞きします。採用活動の事前準備において留意すべきことは何でしょうか。

堀江氏:同時に複数職種の採用に動いている企業の場合は、現場から採用ニーズが上がってきたときに、人事・採用担当者から「採用熱度」を確認し、リスト化することをお勧めします。たとえば職種ごとにS・A・B・Cの4段階でラベリングし、至急の採用希望ならS、3カ月以内の採用希望ならA、半年以内の採用希望ならB、良い人がいれば欲しいというレベルならCといった具合です。

採用職種が多いと人事・採用担当者はつい慌ててしまい、「全てをスピードアップしなければならない」と思い込んでしまいがち。優先順位を明確にすることでどこに力を割くべきかがわかり、余裕を持てるはずです。

都山氏:中小企業の場合、部署によっては数年ぶりに中途採用を行うようなケースもあると思います。この場合は、人事・採用担当者から現場に対して最新の転職市場の市況感を丁寧に伝えておくべきでしょう。現場が過去の経験から「この職種ならたくさん応募が集まるだろう」と思い込み、のんびりと選考に臨んでしまう可能性があるからです。状況によっては採用要件の緩和を検討することも必要かもしれません。

——仕組みやツールの面で整えておくべきことはありますか?

池田氏:応募があった際に、関係者へ同時に情報共有できる仕組みがあると強いですね。

人材紹介サービスを介して採用活動を進めているときは特にそうです。応募があった際に、私たち人材紹介サービスから人事・採用担当者へ、人事・採用担当者から現場へ…と共有の階層が増えると、その分だけ選考のリードタイムが延びてしまいます。人材紹介サービスから人事・採用担当者と現場へ同時にダイレクトに紹介できたほうが間違いなく早いので、現場の理解を得ておいていただきたいところです。

また、書類選考や面接を終えた後の評価内容を人材紹介サービスへ詳細にフィードバックしていただくことも大切。「この人はここがいいけど、ここが気になって…」などの評価内容がわかれば、人材紹介サービスからの紹介精度を上げていくことができ、結果的に選考のスピードアップにつながるからです。場合によっては、社内で使う申し送りのフォーマットを見直すことも検討していただければと思います。
■関連記事:面接官同士をつなぐ、精度の高い「面接申し送り」ノウハウとは -申し送り例フォーマット付-

——選考スピードアップのためには社内で幅広く連携することも大切だと思います。ただ実際には、「現場責任者や役職者などのキーパーソンにスピードの重要性を理解してもらえない」と悩む人事・採用担当者も少なくないようです。転職市場の現状や、スピードアップが必要であることをうまく説明する方法を教えてください。

都山氏:人事・採用担当者が課題に感じていても、なかなか現場が動いてくれないことは多いですよね。ある企業では、パーソルキャリアの担当者による「中途採用の市況感を知る勉強会」を開催し、経営層や現場のキーパーソンたちに参加してもらったことも。第三者が客観的に伝えることで納得してもらえることが多いですし、人材不足への課題意識は現場も強く持っているので、学びの場や資料を展開することは有効だと思います。

池田氏:選考スピードと採用決定率の相関関係を示すなど、データに基づいて説明するのも効果的です。たとえばパーソルキャリアの調べでは「書類選考に2日以上かかると採用決定率が大幅に下がる」というデータも。こうしたインパクトのある数字を伝えることで現場キーパーソンや経営層の意識が大きく変わることもあります。

堀江氏:私たち人材紹介サービスからは、今回お伝えした内容以外にも、選考スピードアップによって採用活動が大きく好転している他社事例からのエッセンスをたくさん伝えることができます。人材紹介サービスとのコミュニケーションの機会を有効活用し、自社での取り組みにつなげていただければと思います。

取材後記

選考スピードをなかなか改善できない企業は、新卒採用のやり方に縛られているケースも多い。取材の中ではそんな指摘もありました。学生が一斉に動き出す新卒採用であれば、多少時間をかけても大きな影響はないかもしれません。しかし中途採用は事情が大きく異なります。転職希望者にはさまざまな事情と背景があり、他社はもちろん現職とも比較され、企業はもはや選ぶ側ではなく「選ばれる側」になっているのです。人材紹介サービスからの情報を活用してこうした現状認識を共有することも、選考スピードアップには欠かせないと感じました。

企画・編集/田村裕美(d’s JOURNAL編集部)、野村英之(プレスラボ)、取材・文/多田慎介

【中途採用成功ノウハウ】選考スピード化と意向上げ

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