【ひとり人事×子育て】時間がない分見出せた“ママ人事”による業務効率化と採用方法

株式会社ピーエスシー

西日本HR課 谷野 ちひろ

プロフィール

「例えば、電車で座っている端から端までの人と話してみたいと思うんですよね(笑)」と話すのは、株式会社ピーエスシー西日本エリアの採用・教育を担っている谷野ちひろさん。

「人の経歴に興味があり、人の良いところを見つけるのが好きなんです」と話す谷野さんは、転職希望者にピンポイントでのアプローチができるdoda ダイレクト(dodaが提供しているダイレクト・ソーシングサービス)でも続々と採用決定を生み出しています。西日本支社の人事は1人にも関わらず、仕事と子育てを見事に両立。生産性高く、採用成功に至っているノウハウをお伺いしました。

谷野さんプライベート

「ちょっとした無駄なこと」を削減すれば、応募者対応の時間が増やせる

いまどの人事・採用担当者も、応募フォローや面接対応といった採用活動からSNSなどの広報活動まで、やるべき業務が本当に多いですよね。

谷野氏:そうですね。やることは本当に多いです。私の場合、子どもの保育園への迎えで“必ず帰らないといけない”リミットがあるので、時間管理には特に注力し、「時間をかけること・かけなくていいこと」はしっかり区別するようにしていますね。

時間管理ということですが、何か意識して行っていることはありますか?

谷野氏:日々、時間をかけるようにしているのはインプットですね。本や新聞だけでなく、興味があるセミナーにも積極的に参加しています。勤務時間内に参加することもありますよ。セミナー後は「こんな話を聞いたからやってみよう」と試してみたり、「確かにこの方がいいかも」とやり方を変えてみたり…。知識が増えると今よりも良い方法が見つかるので、インプット自体には時間がかかったとしても、結果的に業務効率化につながっていると感じています。

では、反対に、時間をかけないように意識されていることは何でしょうか?

谷野氏:「これ」という大きな業務ではなく「ちょっとした無駄なこと」を削減していきました。例えば、説明会やセミナーの参加者リスト。これを無くせば、毎回の作成時間だけでなく、当日の受付対応時間まで短縮できます。参加してくださる方にとっても、受付で待たせてしまうというストレス軽減にもつながりますよね。参加者管理はアンケートや提出物での確認で十分です。

その他に意外と時間が削減できたのは、来客対応や会議の時間です。1時間会議室をブロックしていたら、なんとなくダラダラと進めてしまい1時間経ってから「そろそろ…」と終わらせてしまいがちではないですか? そうではなく、本題が済めば会議は終わらせています。早めに用事が済むと取引先の方にも喜ばれますね。

採用活動において、時間短縮を意識できることはありますか?

谷野氏:電話での面接ですね。遠方の方や会う前に少し雰囲気を知りたいなという方には、まずは電話しています。もちろん、すべて方にお会いできるのが一番ですが、電話でも会話というコミュニケーションを通じて分かることが多いので、時間に制限がある中ではこれも大事なことだと思います。

このように少しずつ取り組んでいくことで、予定管理に余裕が出てくるようになりましたね。余裕が出てきた分、応募者への対応に時間をかけられるようになりました。私はdoda ダイレクトを積極的に活用しているのですが、1人1人のレジュメを読み込み、その方をイメージしてオファー文面を作ることに時間を充てられています。

採用で迷ったら、すぐに現場を頼ることも重要

谷野さんパソコン

もっとも人事として課題となる「採用」ですが、貴社ではどのように重きを置かれているのでしょうか。

谷野氏:おかげさまで、これまで求人を出すと一定の応募数をいただいていたのですが、有効応募は少なく、面接への進捗率が低かったんです。いま、どの企業様も抱えられていると思うのですが、「欲しい人からの応募」が少ないという課題がありました。

そこで取り組んだのは、「そもそも欲しい人」の具現化です。
弊社はエンジニア採用が主ですが、経験者と未経験者のどちらもターゲットとするとき、特に難しいのが未経験者ですね。経験者はある程度の経験・スキルを見て判断できるのですが、未経験者は“人柄のターゲティング”に苦労しました。当社ではITに興味がある方が活躍できると思うのですが、面接ではみなさん「興味があります」と言ってくださるんですね。その中でどのように興味があるかを、どう判断すべきかに悩みました。

たしかに、「IT」といってもかなり幅広いですよね。

谷野氏:そうなんです。そこで私が実施したのが「現場へのヒアリング」です。やはりここは現場の知見に頼ろうと。素直に「どんな質問をしたら、ITへの興味が図れると思いますか?」と、いろんな人に聞きました。すると、「PCやスマホを選ぶときの基準を聞いてみたら?」というアイデアをもらったんです。すごく良いなと思って。実際に面接で質問してみると「家電量販店自体が好きで、最先端の技術に興味があって…」や、「必ず搭載のCPUを徹底的に調べます」など、その人ならではの回答をいただくことができました。大きな判断基準になりましたね。

また、「ここで活躍できる人ってどんな人だろう」と改めて考え、既存社員の適性テスト結果を洗い出し、傾向が高く出ている部分、逆に低い部分を分析しました。そうすると、驚くことに共通した特性が顕著に表れたので、選考の際の参考にしました。決して適性テストがすべてではないのですが、入社後のミスマッチ減少につなげられたと思います。

このように現場からどんどんアイデアをもらって、積極的に採用に活かしています。私ひとりで考えても、なかなか解決策が見いだせないですからね。

周囲を巻き込み、ひとり人事から“準採用チーム”誕生へ

谷野さんインタビュー1

人事を1人でやることは、ものすごく大変ではないですか?

谷野氏:たしかに1人だけでやることは大変かもしれませんが、視点を変えると「1人で全部ハンドリングできる」という大きなメリットがあるんです。変な気遣いをせず、自分の裁量でコントロールできるので良い意味でラクですよ。

ただ、自分ひとりではあるものの日々時間にはリミットがあり、その中で「生産性」を意識して大事にしているのは「周りを巻き込むこと」ですね。先ほどもお話ししましたが、アイデアや解決策を相談するという意味でも、巻き込み力は大事だと思っています。

人事以外のメンバーを、どのように巻き込んだのでしょう?

谷野氏:まずは“準採用チーム”といって、私以外にも採用に関われるメンバーを増やしています。理由としては2つあり、1つ目は面接のタイミングを逃さないため。
「7割近くの求職者が最初に内定が出た企業に入社する」というデータがある中、現職中の方が夜の面接を希望されており、私が保育園の迎えなどで対応できない場合もあるんです。そのときは、人事の1次面接と技術管理職の2次面接の順番を逆にしてもらうなど、とにかくスピード感は大事にしています。
もう一つは応募者に合った面接官をアサインするため。できるだけ前職の経験・得意とする技術領域や志向性などが同じ人と話せることで、応募者が少しでも悩みを解決してもらえる場にできたらと思っています。他にも事務処理などは営業事務や総務にお願いすることもあり、社内のメンバーが協力してくれるのは本当に嬉しいですよ。

最後に、パワフルに活動されている谷野さんの今後のビジョンとして、やりたいことなどお聞かせください。

谷野氏:社内と社外とあるんですが、まず社内としては、「採用プロセスコミュニケーション」と言って、応募から面接までの間にいかに動機を高められるかという部分にも注力したいのと、長期的な取り組みとして、候補者と定期的にコンタクトをとり、長期的にアプローチしていく、「タレントプール」ような仕組みを作りたいですね。また、Google人事、ラズロ・ボック氏が書かれた 「ワーク・ルールズ!」に書いてあったのですが、“人生で最高の一日を過ごしたような気分で帰ってもらえる”面接、そして採用活動を行っていきたいと思っています。

社外としては、具体的な動きは全く決まっていないのですが、「どこにいても楽しく働ける人」がもっと増えたら良いのに、と思っていて、環境に左右されない人材育成ができる場が設けられるような働きをしたいなと思っています。

採用が難しく大変な今だからこそ、企業としてだけでなく、人事である自分自身が得意なこと、できることは何だろうと考えながら進めていきたいですね。私であればそれが人への興味を活かしたダイレクト・ソーシングのような個人の方に向けた活動ですが、大人数の方に向けて話せる方は転職フェアや説明会など、自身の強みを活かすことが“勝ちにいける人事”だと思います。

【取材後記】

「子育て中」かつ「ひとり」だからこそ生まれた、必要ないものを見極め省く、周囲を巻き込んで協力をあおぐなどの、生産性をあげるための取り組みを実行されている谷野さん。「自分ひとりでは思いもよらないアイデアをもらえますよ」とイキイキと話す姿が印象的でした。

今回お伺いした削減すべき業務や現場へのヒアリングは、すぐに実践しやすいものが多いように感じます。「doda ダイレクトでの決定が出ているのは、人材紹介での経験が活かされているからですか?」と尋ねると、「それもあるかもしれないけど、やっぱり本や周囲から得た知識を使うことが多いですね。この人だったらこんなこと考えているかもと思いながら、個人の方へ文章を書くのは楽しいですよ」とのこと。

単に効率化だけにこだわるのではなく、インプットを大事にし、物事を楽しみながら取り組めることが、社内メンバーだけでなく応募者をも惹きつけ採用成功させる、谷野さんの魅力なのだと感じられました。

谷野さんインタビュー2
(取材・文/小西 直実、撮影/中屋 陽子、編集/齋藤 裕美子)