エンジニア採用に苦戦している担当者、必見!「女性エンジニア」が増えているワケと採用成功ノウハウ
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女性エンジニアが加わることで、組織が多様な人材を受け入れられる体制に進化している
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女性エンジニアに選ばれる企業の最低条件は、「リモートワーク環境」が整っていること
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リスキリングのハードルである「時間確保」を企業がフォローできれば、未経験エンジニア採用が進む
DX推進が多くの企業の共通課題となる中、エンジニアの採用競争は激しさを増し、母集団形成に苦労するケースも増えています。一方、日本のエンジニアにおける女性比率は22%(2021年/情報サービス産業協会調べ)とまだまだ低いものの、近年は増加傾向に。女性エンジニアの採用・育成が今後の鍵となることは間違いないでしょう。
業界未経験者が多い女性をエンジニアとして迎え入れ、活躍してもらうためには何が必要なのでしょうか。女性のためのコーディングブートキャンプ「Ms.Engineer(ミズエンジニア)」を運営し、多くの企業へ即戦力女性エンジニアを送り出しているMs.Engineer株式会社代表取締役のやまざき氏に、エンジニア未経験者のリスキリングへの課題や「女性エンジニアから選ばれる企業」になるための秘訣を聞きました。
同質性の高い組織は、開発力がいずれ低下してしまう可能性も
——日本ではエンジニアとして働く人の8割近くが男性で、男女でまだまだ大きな偏りがあります。やまざきさんはこの現状をどのように捉えていますか。
やまざき氏:エンジニアに男性が多いのは世界的な傾向ですが、日本の場合は特に、女性が理系に進む割合が低く、技術職は男性中心に発展してきた面があると思います。企業のエンジニア採用では即戦力の経験者が歓迎されることが多く、もともと女性比率が低い中で男性に偏り続けてきた現状があるのではないでしょうか。
ただ、日本でもここ10年はエンジニアの女性比率が高まりつつあります。エンジニアのジェンダーギャップをなくしていくことには、企業経営の視点から見ても、日本の技術力強化という視点から見ても悪いことは一つもありません。
——女性エンジニアが増えることによって、企業にはどのような好影響がもたらされるのでしょうか。
やまざき氏:人材の多様性を高めて組織をつくった方が良いのは開発組織でも同じです。ごく一部のサービス開発には女性ユーザーへのヒアリングを行わず、男性のみで開発することにより、偏りが生まれてしまう懸念があります。同質性の高い組織は、中長期的に見れば開発力が低下してしまう可能性もあるのです。
また、組織の在り方を考えても多様性は重要だと思います。私たちの下を卒業したエンジニアが数多く入社している企業では、女性比率が高まったことによって、フルリモート・フルフレックスなどの柔軟な働き方が定着したケースもあります。女性が加わることで組織自体の柔軟性が増し、変化に対応する力も高まっていくのではないでしょうか。
リスキリングの一番のハードルは「時間の確保」
——貴社が運営するコーディングブートキャンプ「Ms.Engineer」では、未経験から最短6カ月で即戦力のエンジニアを育て、輩出しています。高いスキルを持つエンジニアとして活躍する女性には、どのような素養・素質が求められるのでしょうか。
やまざき氏:受講者に共通しているのは女性という一点のみで、これまでの経験業界もバラバラ、年代も幅広く、さまざまな方が受講しています。その意味では、スキルや経験の面で重視すべき点はないと考えています。実際にMs.Engineerを卒業した方々は、それぞれ異なるバックグラウンドを持ちながらIT業界で活躍しています。
未経験の女性エンジニアを採用する際には、最低限の知識に加え、技術・スキルを磨き続けられる人かどうかを見て、あとは通常の採用と同じようにカルチャーフィットするかどうかを見極めていけばいいのではないでしょうか。
——「技術・スキルを磨き続けられるかどうか」を、やまざきさんはどのように見極めていますか?
やまざき氏:リスキリングの一番のハードルは時間の確保だと考えています。Ms.Engineerへの参加を希望する方々の場合は、現在の仕事を続けながらハードな学びに取り組む人も多いんです。だからこそ学ぶ意思があるだけではなく、実際に学ぶための時間を確保することが大事。仕事を早く終える、お子さんを預ける先を見つけるなどの工夫がどうしても必要になってきます。
企業側がリスキリングをバックアップする際にも、「勉強時間をいかに確保してもらうか」を徹底的に考えるべきですし、転職希望者にもその覚悟を求めるべきだと思います。
女性は、リモートワーク可能な環境を切実に求めている
——意欲的な女性エンジニアから選ばれる企業の特徴についてもお聞きしたいです。
やまざき氏:単純に口先だけで女性を採用しようとしているのではなく、多様な人材が活躍できる環境をつくることが理念にも表れている。そんな企業が選ばれていると感じます。多様な人材がもたらす合理的な効果を経営陣が理解し、ダイバーシティを本質的に推進しようとしている企業は、働く環境づくりのアクションにもその思いが表れていますよね。
わかりやすい例では、リモートワークができる環境になっているか。東京在住の女性の1日の平均通勤時間は90分だと言われていますが、諸々の準備などを含めればゆうに120分前後は通勤に割かれているという人も多いでしょう。週単位で考えれば1営業日分を超える時間です。もしフルリモート勤務が可能なら1営業日分の時間と体力を削減でき、その分を子育てや家事に向けることもできます。結果的にワークライフバランスが向上し、従業員エンゲージメントの向上にもつながるはずです。
実際に、リモートワーク可能な環境を求める女性はとても多いです。この要望は簡単にスルーできるレベルではないと感じています。
——オフィスにいなくても活躍できるエンジニアだからこそ、とも言えますね。
やまざき氏:そうですね。エンジニアは時間も場所も、性別も年齢も、本質的にはまったく関係のない仕事だと思います。マネジメントの難易度は高まりますが、リモートワーク中心の制度設計を考えることで採用の幅は一気に広がるはず。女性だけでなく、さまざまな属性の人にリーチできるようになるのではないでしょうか。
働く女性の視点で見ても、エンジニアほど時間と場所の融通が利く仕事はそうそうありません。エンジニアなら、結婚や出産、介護などでライフステージが変わっても長く活躍できるはず。だから私は、女性こそエンジニアになってほしいと思っています。
まずは「理想の女性比率」を組織内で議論することから
——今後、女性エンジニアを積極的に採用していきたいと考えている人事・採用担当者へアドバイスをお願いします。
やまざき氏:今の時代は、男性ばかりの組織体制を続けていること自体がリスクと捉えられることもあります。だからまずは、理想の女性比率を組織内で議論することから始めてみてはいかがでしょうか。それがこれからの時代にフィットした組織をつくる第一歩だと思います。
Ms.Engineerの卒業生を受け入れてくださった会社の中には、女性エンジニアが初めて働く会社もありましたが、その際に受け入れ体制や制度設計が一気に進化しました。組織全体が合理的な方向に大きく変化していける。これこそダイバーシティの良さでしょう。
——やまざきさんがある企業のエンジニア採用担当者だったら、どんなことに取り組みますか?
やまざき氏:新卒採用で設けているような中長期の育成プログラムを、未経験エンジニアの中途採用に応用したいですね。それによって未経験者を幅広く受け入れ、育てられる体制をつくります。
現在は未経験でも、正しく技術・スキルを学び、高められる環境があれば、エンジニアとして活躍できる可能性を秘めている人はたくさんいます。また、リスキリングはゼロリセットではなくかけ算。営業経験のある人がエンジニアスキルを学べば、「コミュニケーションに長けたエンジニア」として大活躍してくれるかもしれません。そんな変化の意義を多くの企業に実感してもらえるよう、私も尽力していきたいと思っています。
取材後記
Ms.Engineerの受講者の中には、自身のキャリアの持続性に不安を感じて入校する人が少なくないそうです。将来的なライフステージの変化などを踏まえ、「現状の働き方のままでは仕事を続けられない」と不安を抱えている女性が多い現実。一方、厳しい学びを通じて短期間でのスキルアップを目指すMs.Engineerに飛び込んでくる人は、キャリアアップへの主体性や目的意識も高いのだとやまざきさんは話していました。単に採用目標を満たすだけでなく、また外面的なダイバーシティを達成するためでもなく、企業として本当に求めている人材と出会うためにも、女性エンジニア採用に取り組むことには大きな意義があるのではないかと感じました。
企画・編集/海野奈央(d’s JOURNAL編集部)、野村英之(プレスラボ)、取材・文/多田慎介、撮影/中澤真央
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