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社内制度をメディアで発信。DeNAの人事プロジェクト「フルスイング」の思惑とは

PROFILE

株式会社ディー・エヌ・エー

執行役員/ヒューマンリソース本部 本部長 崔 大宇

2010年、株式会社ディー・エヌ・エーに新卒入社。 エンジニアとしてキャリアをスタートし、ソーシャルゲームの開発に携わる。その後、社長室所属に異動し、事業のグローバル展開における海外向け戦略の立案・実行や、中国など海外拠点での組織開発を担当。さらにエンタメ事業やメディア事業、AI領域での新規事業立ち上げを経て、2018年4月から現職。

2017年10月、株式会社ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)は「フルスイング」と題した大規模な人事プロジェクトをスタートさせました。社会全体で働き方改革が注目を集める中、社員と他部署の本部長が合意すれば直属の上司を通さなくても異動が実現する「シェイクハンズ制度」や、他部署の仕事を兼務できる「クロスジョブ制度」、さらに社外での業務機会を実現する「副業制度」など、社員ニーズをとらえた新たな人事制度を多数構築。多くのメディアにも取り上げられ話題になったことは、記憶にも新しいのではないでしょうか。
さらに特徴的なのが、社内向けの仕組み作りだけでなく、あわせてオウンドメディア『フルスイング』を立ち上げ、社外に向けたPRやブランディングにも注力している点。最近では自社内のオウンドメディアを運営する企業も多い中で、戦略と絡めているところが興味深いところです。そこで、この取り組みの背景や約半年経ての効果について、同社のヒューマンリソース本部長・崔 大宇氏にお話を伺いました。

「DeNAらしさ」の根幹は、社員の熱量にあり

「DeNAらしさ」の根幹は、社員の熱量にあり

2017年10月から「フルスイング」プロジェクトをスタートさせましたが、この新たな取り組みの背景には人事・採用面でどのような課題意識があったのでしょうか?

崔氏:おかげさまで、DeNAは企業として着実に成長し、事業領域の拡大についても攻めの姿勢で多角化できている実感があります。ただし、こうした状況だからこそ、我々はある意味での“DeNAらしさ”をきちんと持たなければいけないなと感じていまして。さらなる発展に向けて、人事制度の変える部分/変えない部分の意思決定をする必要がありました。

事業拡大によって組織文化が薄れてしまうというのは、多くの企業に見受けられる課題です。

崔氏:組織開発のポイントは、当然現場のメンバーがすべてだと考えています。実際に「社員一人ひとりのポテンシャルが最大化されているか?」「パフォーマンスを最大限に発揮できているのか?」そうした実態を知るために、当社では毎月1回、全社員を対象にキャリアマネジメントアンケートというものを実施しているんですね。

そこで、「能力を発揮できている」と「仕事にやりがいを感じている」という2つの質問に対して、双方YESと回答した社員は約6割でした。この数字が高いのか低いのかの判断は難しいのですが、見方を変えれば4割は満足できていない現状だと分かる。つまり明確に「成長の伸びしろがある」と感じたわけです。そこで、そうしたメンバーたちの熱量が高まり、より一層気持ちよく働ける環境づくりに着手しようと、ヒューマンリソース本部、いわゆる人事で始動したのが、「フルスイング」プロジェクトというわけです。

新たな社内制度の整備なども、社員の熱量が高まる環境づくりの一環ということですね。

崔氏:そうですね。例えば「シェイクハンズ制度(※)」で言えば、本来は直属の上司に「こういう部署に行きたい」と相談するのが基本的なルートだと思います。しかし、さまざまな理由から上司には言い出しづらく、自分の想いにブレーキをかけているケースは、極論ゼロではないでしょう。そういったメンバーの希望を叶える機会を設けることで、本来の自分の力を最大化してもらうのが我々の目的です。

(※社員と希望先の部署の本部長が合意すれば、直属の上司を通さなくても異動が実現する制度。2017年8月より開始)

一方でマネジャー層は、新制度の運用スタート以降、これまで以上にチームビルディングの意識が高まっている状況です。競争環境で言えば、社内異動だけでなく転職という選択もあり得る。つまり、そうした外部環境に近いシビアな状態にさらされたことで、自分たちの部署・チームのビジョンやそこにかける想いを常に発信して、マネジメントを強化する方が増えていますね。組織にとって健全な状態と言えるのではないでしょうか。

妥協なき採用には、“情報発信の術”が不可欠

妥協なき採用には、“情報発信の術”が不可欠

今回のプロジェクトでは、さまざまな社内制度改革に加え、同名のオウンドメディア「フルスイング」を立ち上げるなど、社外向けの情報発信にも力を入れている意図を伺えますか?

崔氏:我々は以前から、「企業文化や環境に合う人材でなければ採用しない、妥協は一切しない」という姿勢を貫いてきました。そうした中で、これまでは採用マーケットにおける「優秀な候補者」との出会いはエージェント様からの紹介が主流でしたが、これが少しずつ変わってきた。候補者の方からの自己応募やリファラル採用が増え、エンジニアの優秀層ほど情報を自分でリサーチする時代になってきています。

ネットとツールの双方が発展したことで、積極的に情報収集する候補者は確かに増えていますね。

崔氏:こうした中で、「いかにDeNAの魅力を知っていただく機会を増やすか」、というのは極めて重要な課題でした。フルスイングプロジェクトの肝は、「社員をより一層輝かせること」にあり、そのための制度づくりと並行して、輝いている社員を取り上げるオウンドメディアをつくろうと考えました。そして「挑戦する、成長する、成功する」という組織文化や、それを応援する仕組みがDeNAにあることを、広くマスに対して発信するための土壌になっていけばベストだと思っています。

フルスイングTOP画面

採用ブランディングを目指した情報発信について、不足している感覚があったのでしょうか?

崔氏:いい意味でも悪い意味でも、当社のメンバーは「武士的」と言いますか、仕事の質は高いもののちょっと内向きだなと感じていたのは事実です。いいスキルを持っていて、いい取り組みもしている。しかし、当の本人にとっては普通のことだと思っているんですね。
また、現在当社はオートモーティブやヘルスケアなど事業もさまざま広がっており、各分野でトガった事例が増えている。それにも関わらず、“DeNA=ゲーム会社”というイメージは根強く、なかなか世間には知られていない。これはもったいない、もっとスポットを当てていきたいと考えていました。

オウンドメディア「フルスイング」を拝見すると、社内で培ってきたノウハウなども惜しみなく記事にされている印象です。

崔氏:メイン読者としては、採用ターゲットとなるハイポテンシャルな人材を想定していますので、まずは「こういう人がいるんだ」「社内の人はこういう考えで働いているんだ」「こんな仕組みがあるのか」といった気づきを提供し、「ここで一緒に働きたい」と思っていただきたいです。ただしそれだけで終わらず、世の中にとって価値ある情報や、社会に貢献できるようなものを私たちが持っているのなら、広く発信していこうというのも、編集方針のひとつにしています。人事が主体でメディア運営することでブランディングになりますし、全社的なレバレッジにもなりますから。

こうした情報発信は、現場の協力や密なコミュニケーションが不可欠だと思いますが、その点についてはいかがですか?

崔氏:おっしゃる通り質の高い記事づくりには、事業部のメンバーとのコミュニケーションが欠かせません。ですから、オウンドメディア編集チームが事業部に対して積極的に働きかけを行い、事業部サイドからも「そういうテーマなら、このプロジェクト事例がいいかも」「その技術よりも、業界的なトレンド技術はこれ」などアイデアをもらいながら、一緒にブランディングに取り組んでいます。自分たちをどう世の中にアピールするのか、熱量をもって考えることは、ある意味「フルスイング」であるとも言えます。

採用ブランディングに対して、現場の熱量が高いというのは大きいですね。

崔氏:DeNAでは、主力事業部それぞれに「組織開発部」という事業部所属の人事チームを設けていまして、採用ニーズや人事制度へのリクエストなど、現場サイドから声が上げやすい仕組みができているのも影響していると思います。また、HR部門の面々も約6割が事業部経験者ですので、これまでのキャリアで培った肌感覚というのも人事に活かせていると思いますね。

半年経過し、オウンドメディアは既にたくさんの記事が公開されていますが、反響はいかがでしょうか?

崔氏:オウンドメディアについては、投資対効果では測りにくい部分もありますが、面接にいらっしゃる候補者様から「フルスイング見ました」という声が徐々に増えていますし、動機形成にもつながっていると感じています。それに、社員自らTwitterやFacebookなどで記事をシェアするようになり、大きな反響を呼ぶ事例も生まれているようです。社員がリファラル採用の情報源として活用してくれているといった話も聞きますし、今後は応募数の増加にも一役買えれば理想的ですね。

当初の狙い通り、候補者となりうる層にDeNAの魅力を知る機会の拡大につながっていると。

崔氏:以前は「DeNA」で検索しても、コーポレートサイトやニュースなどが大半でしたが、それだけでは伝えきれなかった「DeNA社内の等身大の姿」を伝えられているなという手ごたえは感じています。既にDeNAに興味を持ってくれている層以外にもアプローチできるようになったのは大きいですね。また社内的にも、記事に登場したメンバーが、ある種当たり前に感じていた仕事のやり方や創意工夫というものが、インタビューや記事の効果を通して「社会的にはすごいことで、プロフェッショナルなものだったんだ」という仕事への誇りやプライドの醸成につながっています。つまり、「DeNAで働く」というマインドも高まっていると確信しています。

第2、第3フェーズへと、フルスイングし続ける

第2、第3フェーズへと、フルスイングし続ける

新たにスタートした人事制度の活用状況はいかがでしょう?

崔氏:個別の施策ごとの実績で言いますと、「シェイクハンズ制度」は、2018年4月末で40件以上の申請が出ています。また「クロスジョブ制度」は10件以上、「副業制度」については50件以上の申請が出ており、今後も手を上げるメンバーは増えていくと予想しています。DeNAで可能性を高められると認識してもらえてることは嬉しいですね。

他にも新制度づくりを進めていまして、現在は社内でテストマーケティングを行っている段階。スモールスタートでやってみたものの失敗したこともありますが、人事チーム自身もフルスイングすることが大切ですから。ニーズの確認と精度の向上ができた段階で、フルスイングプロジェクトとして展開していく計画です。

フルスイングプロジェクトは、今後さらに進化していくわけですね。

崔氏:おっしゃる通りで、フルスイングプロジェクトはまだまだ試行錯誤の段階です。オウンドメディアを含めたブランディングについても、HR本部内で個別に分かれていた「キャリア採用グループ」と「ブランディンググループ」を統合し、より採用に直結したメディア展開を目指し連携強化に取り組んでいます。

また、プロジェクト始動に合わせて、あらゆる人事データを収集・分析して制度設計に活かす「人事戦略室」というチームも立ち上げましたので、採用ブランディングとの協業をさらに加速できればと考えているところです。社内的な仕組みの整備や活用調査も、社外に向けたPRやブランディングの強化や分析も、まだまだやるべきことは多い。全社を巻き込んで、さらにフルスイングしなければなりませんね。

【取材後記】

DeNAでは、オウンドメディアの展開以外にも社員のイベント参加・登壇を奨励するなどさまざまな形で採用ブランディングの強化を図っています。崔氏の言葉にもあったとおり、優秀層ほど積極的に情報収集する時代です。業種・業界を問わず、自社独自の「等身大の魅力」を発信し、入社前から企業理解を深めてもらう努力は、採用においても、その後の組織定着という面でも、今後ますます重要性を増していくことでしょう。
フルスイングプロジェクト
(取材・文/太田 将吾、撮影/石山 慎治、編集/齋藤 裕美子)

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