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実名Twitterで共感を、採用PRのススメ-サイボウズ綱嶋氏×ガイアックス管氏

PROFILE

サイボウズ株式会社

事業支援本部 人事部 採用・育成グループ 新卒採用担当
綱嶋 航平

1994年生まれ。京都大学文学部に在学中、日本酒の魅力にハマり、日本酒メディア「SAKETIMES」のライターとして活動。大学卒業後、2017年にグループウェアや業務改善サービスを提供するサイボウズ株式会社に入社。現在は人事部の新卒担当として活躍している。
・Twitter:@tnsm0223
・note :https://note.mu/tsunashi

株式会社ガイアックス

ソーシャルメディアマーケティング事業部 事業部長
管 大輔

1989年生まれ。早稲田大学教育学部を卒業後、2013年にソーシャルメディアサービス事業などを手がける株式会社ガイアックスに入社。26歳(当時)という同社史上最年少で事業部長に就任。さらに同社が展開する採用PRメディア『CO-NECTAR』の編集長も務める。
・Twitter:@suga_neo
・note :https://note.mu/daisuke_suga

Webを使ってどのように採用情報を発信していますか? ―10年ほど前であれば、まずは自社Webサイトに採用情報をアップ、求人広告メディアを使って露出するといった手法が主流でした。しかし現在は、SNSが隆盛を極めており、情報を発信する手段や手法も無数に増えました。過去とは比べものにならないほど情報量も増え、求職者が得られる情報も格段に増えています。しかし、ただ単に、働きやすさやヤリガイを打ち出したポジティブ要素が満載の採用情報はどこか「嘘くさく」感じられてしまいます。―こうした中で、求職者により「刺さる」情報の発信方法の一つがTwitterです。ここ最近では、人事・採用担当者自らがTwitterの実名アカウントで採用PRを行うことも増えてきました。

そこで、実名アカウントでTwitterを活用している2名に登場いただき、具体的な運営方法などを伺いました。お1人目は、サイボウズの新卒採用担当であり、実名Twitterで積極的に情報発信を行う綱嶋航平氏。お2人目は、ガイアックスのソーシャルメディアマーケティング事業部長で、採用PRメディア『CO-NECTAR』編集長も務める管大輔氏です。じっくりと話すのは初めてとは思えないほど話題の尽きない両氏による対談から、前後編にわたって採用PRのヒントを探っていきます。

公式アカウントでは、共感を生み出しにくい

公式アカウントでは、共感を生み出しにくい

綱嶋さんが、サイボウズの新卒担当として、Twitterの実名アカウントで情報発信をスタートさせたのはどのような理由からでしょうか?

サイボウズ・綱嶋氏(以降、綱嶋氏):最初は実名ではなく、採用の公式Twitterアカウントの「中の人」からスタートしました。入社1年目から任せてもらったのですが、“暖簾に腕押し”感が半端なかったんです(笑)。―「○○職の募集を開始しました!」「説明会を○月に開催します!」といった内容を発信しても、全然反応が無くて。「このツイート、誰が見てるんだろう…」と、徐々にモチベーションが低くなり、月に数回しかつぶやかないアカウントになってしまいました。

ガイアックス・管氏(以降、管氏):わかります。企業の採用アカウントが発信する内容に対して「いいね」が押されづらくなっているんですよね。当社にもTwitterの公式アカウントがあって、以前は一定の影響力がありました。しかし近年、そうした企業の公式アカウント、特にBtoB企業のアカウントはフォローされづらい傾向にありますね。

綱嶋氏:そうなんですよね。でも、SNS発信はタイムリーに企業のリアルな内面を知ってもらうことができる、と可能性を感じていたのは事実でした。サイボウズを魅力に感じてくれる候補者の方は多いのですが、ちゃんと内面を知ってほしいという思いがあって。どうしようかなと考えていたときに影響されたのが2つの記事でした。1つは、“BtoB企業のソーシャルメディア活用は公式アカウントでなく人ベースに移行していく”という本田萌史(モエシ)さんの記事。もう1つの記事が、管さんが編集長をされている『CO-NECTAR』にあった“SNSを活用した採用戦略「ソーシャルリクルーティング」とは?” だったんです。

これらの記事を読んで学んだことは、「SNS時代における情報収集手段の多様化」と「セルフブランディングの重要性」でした。これだけ情報が溢れている中で、一方向から情報発信していても受け入れられない。双方向のコミュニケーションが重要だと感じたんですね。また、企業というフィルターを外して個人として思ったことを自由に発信してみる。そうすればイチ社員が飾らないありのままを伝えられるし、共感の接点も増えるんじゃないかと、スタートしたのがきっかけです。

管氏:記事を読んでくださっていたとは、ありがとうございます(笑)。綱嶋さんがおっしゃる通り、企業の公式アカウントが受け入れられるハードルが以前に比べて、とても高くなっているんですよね。同時に、SNSが活発化していて個人がいくらでも情報発信できるようになったのも要因だと思ってます。やはり、人は人にしか共感できません。顔の見えない企業自体が発信するよりも、顔の見える人事や社長といった“個”が発信したほうが共感を得ることができます。私は、「採用こそソーシャル活用が重要」だと思っていまして、もっとその重要性を伝えたくて、採用PR/採用広報のオウンドメディアを立ち上げた次第です。
採用こそソーシャル活用が重要

そうだったのですね。確かに、顔が見えない公式アカウントはどこか義務的な印象があって、共感するのは難しいです。

管氏:もちろん、企業アカウントも大事な役割があります。既にファンになっている方に向けて正しく情報を届けることができるという利点です。「この企業に興味がある」「応募したい!」という顕在層にとっては必要なアカウントになりますよね。ただ、企業の看板を背負うが故にどうしても堅い文章になってしまう。そういう意味でも、特に採用目的であれば、個人アカウントでは「共感(親しみやすさ)」をつくり、企業アカウントでは「情報提供をする」という棲み分けが重要でしょう。
企業公式アカウントと個人アカウントの棲み分け

では、綱嶋さんはTwitterの実名アカウントで情報発信をし始めたことで、どのような変化がありましたか?

綱嶋氏:当初は地味にコツコツやっていこうと決めていたのですが、すぐに変化を感じましたね。「いいね」や「リツイート(他の人のツイートを再びつぶやく、拡散)」をされるのはもちろんですが、私のツイートが話題を呼び、そこから議論が生まれたりすることもありました。これは、公式アカウントでは得られなかった反応です。Twitterからつながりが生まれることも増えましたね。まだまだ試行錯誤しながらという段階ではありますが…。

Twitterの実名アカウントで情報発信をしたいと思っている人事担当の方は多くいらっしゃると思います。しかしながら、実際は「会社からNGが出るかもしれない…」、「コンプライアンス面でリスクが高い…」など、その最初の一歩が踏み出せないという方が大半という印象を受けます。実名アカウントで情報発信を行うためにすべきこととは何でしょうか?

綱嶋氏:そうですね。おそらく「実名アカウントで情報発信したらダメだ!って会社から言われてしまうだろう」という先入観をお持ちの方が多くいらっしゃるのではと思います。しかし、弊社でもよく言われますが、「会社がダメと言っている」の“会社”って誰?ということ。「会社さん」というのは抽象的な概念であって、実在する人ではありません。突き詰めれば、会社の中の誰かが、「ダメ」だと言っているはずなんです。社長が言っているのか、広報が言っているのか、ただ単に上司が言っているのかー。まずは、誰が「ダメだ」と言っているのかを明確にし、重要性を訴え、許可を得るように行動すべきだと思います。

管氏:これに関しては、今話題のリモートワークや複業(副業)と同じ議論ですよね。会社は、リスクに過敏すぎるし、見えないリスクを怖がりすぎていると思います。しかし、その会社が採用した社員は、経営者や所属部門の上司が一定の信用があって採用したはずです。リスクを防ぐ前に、まずはTwitterなどのSNSを利用した情報発信に関するガイドラインやレギュレーションを整備する、インプットしてもらえるような説明会を開く…など実施することが重要です。個人名を出して発言するわけですから、メチャクチャな発信をする人はいないはずですよ、とクライアントにもアドバイスしています。

温度感のあるリアルなツイートが共感を生む

温度感のあるリアルなツイートが共感を生む

管さんは、SNSなどを活用した採用PR(採用ブランディング)に関するコンサルティングを数多く手がけていらっしゃいます。実名アカウントによる情報発信について、クライアントにどのように提案されていますか?特に大企業や中小企業など、ブランド力の有無によって発信する内容も異なってくると思います。そのあたりを踏まえ、お聞かせください。

管氏:大企業の場合は、やはりブランド力があるので、TwitterなどSNSを活用しなくても募集をかければある程度応募が集まると思います。だからこそ、大企業の人事・採用担当者に向けては、応募のスキームなどを含めて求職者との関係性構築を強化するように伝えています。一方で、中小企業は、SNSなどで情報発信をしなければ求職者からの認知を獲得できません。以前は求人サイトに出稿することで一定の認知を獲得できましたが、情報過多の今はそれだけでは不十分と言えます。また、情報発信する内容についてですが、特に中小・ベンチャー企業のクライアントには「経営者を前面に打ち出しましょう」とよく提案しています。

「経営者を打ち出す」というのは、具体的にどういうことでしょうか?

管氏:情報発信をする際に、一番強力なコンテンツになるのは実は経営者なんです。というのも、経営者は現実のビジネスの世界で、深く思考し、一般的なビジネスパーソンではできないような経験をし、さまざまな知見を体得しています。そうして日々得たものや考え方をTwitterやSNSなどを使ってアウトプットすることが、強力なコンテンツになるんです。経営者は“コンテンツの宝庫”と言えますね。

なるほど。経営者は成功から失敗まで多様な経験を積んでいると思いますし、そこから培ってきたノウハウやスキルはビジネスパーソンにとっても大きな知見になると思います。おっしゃる通り、まさに”コンテンツの宝庫”ですね(笑)。次は綱嶋さんにお伺いしたいのですが、実名アカウントで情報発信する際、具体的にどのような内容のツイートをしていますか?

綱嶋氏:やはり、私がリーチしたいターゲットは求職者です。サイボウズはBtoBサービスのため特に学生からの認知は少ない。ですから、まずは「この企業って面白そう」「こういう考えっていいなぁ」と興味を持ってもらうことを第一に考えています。例えば、「パフォーマンス高く働ける環境」「会社の勢い」など、ターゲットに何を伝えるのかをまず考え、情報発信するようにしています。

実名をだしてTwitterをやると決めて、最初にやったことは「どのような情報を発信するか、テーマを決める」ということですね。自分の強みは採用しかない!と思っていたので、「#人事」「#就活」「#サイボウズ」など採用に関するハッシュタグ(#をつけることで、自分の投稿をカテゴライズし検索を容易にするもの)をつけるようにしていました。

では具体的にどのような内容を発信していたのか…ですが、サイボウズの人事制度の仕組みやその背景、働いているときの感情、応募してくれた学生さんとのやり取りなどです。単純に人事制度を紹介するのではなく、それに対して「綱嶋はこう思っている」という考えを付け加えるように意識していました。あとは、人事系のニュースや話題にも自分の考えを添えて、発信するようにしています。

サイボウズという会社の中が見えるような内容を、綱嶋さんのフィルターを通して情報発信しているんですね。企業の公式アカウントだと、少し温度感が伝わりにくそうな気がしますが、綱嶋さんが発信することで共感の接点が生まれてきそうです。

綱嶋氏:「自分が発信する」ということは、常に意識していますね。ただの情報発信だけでは意味がない。時事ネタをツイートする際にも、必ず感じたこと、受け取ったことを付け加えます。それを実践していくことで、「こういう考え方には共感する」「こういう考えの人が働いている会社いいな」と思ってもらえるのではないかと。
「自分が発信する」ということは、常に意識

管氏:まさに人との「共感」を意識されているんですね。個人アカウントで発信する際に大切なのは、「見えづらいことを書く」ということなんです。私が経営者こそTwitterやるべきと言ってる理由もそこにあります。想いや理念はもちろん、どんな考えで働いているのか、日々どんなことを話されているのか…、採用HPや求人情報だけでは見えないことを伝えることが重要です。

採用PRとはまさに「候補者(ユーザー)との関係づくり」だと考えているんですね。「あなたのために」というスカウトメールを送るのも大事ですが、求職者が本当に知りたい部分を開示して伝えることも大切です。透明性を高めることは、求職者に信頼や安心感を抱いてもらうことにつながり、結果として関係性を築きやすくなりますよね。これからの時代、SNSをやらない選択肢はないと思っています。

管さんがおっしゃる「関係づくり」を考えるにあたって、綱嶋さんがツイートする時間帯など意識していることはありますか?

綱嶋氏:通勤/通学時間帯である朝7時〜9時頃が多いですね。自分自身もサッとつぶやけるから、というのもありますが。あと、ランチ時などに見ている方もいると思うので、それに合わせて少し柔らかい情報発信をすることもありますね。

例えば、どのような内容でしょうか?

綱嶋氏:この前は、サイボウズ社内の「麺’s倶楽部(メンズクラブ)」という部活の活動内容をツイートしました。

管氏:麺’s倶楽部ですか…? 確かに、それは気になりますね(笑)。

綱嶋氏:麺’s倶楽部というラーメンを作る部活があるんですよ(笑)。人事マネージャーの最近の趣味がラーメン作りだったことが発端になってスタートした部活です。社内にあるキッチンでラーメンを作って、みんなに振る舞う様子をツイートしたら、「いいね」が数十件きましたね。採用HPにはない、サイボウズのリアルな社風を求職者にアピールできる一つの具体的なエピソードになったと思います。

ただ一方で思っていることがあります。サイボウズで働いているのは楽しいし、実際にいいことばかりつぶやきたくなる。でも、そればっかりやっていると、「内輪感」が出てしまうんですね。逆に嘘っぽくなってしまうというか、フォロワーが置いてきぼりになるというか。良い距離感を出さないといけないと常々思っています。

管氏:そうですね。言いづらいことを発信するというのはそういう側面もあって、良いことばかりではなく、「ここは課題です」とフラットに出すことも必要です。これって、企業アカウントでは難しいことですよね。

「ここは課題です」とフラットに出す

【取材後記】

終身雇用の時代は徐々に終わりを迎え、転職することが当たり前の社会に変わってきています。それに合わせて、求職者は給与や待遇よりも、会社のビジョンやカルチャー、さらにはどんな人と一緒に働けるかを重視する傾向が見えます。そうした採用市場のなかで、採用PRを通して積極的な情報発信を続けていくことが、今後はより重要になっていくでしょう。人事担当者や経営者による実名Twitterであれば、求職者との共感を生み出すリアルな情報発信をしやすくなります。特に、求職者から見つけられにくい中小企業やベンチャー企業は、実名Twitterの積極的な活用が、認知拡大の強力な武器になるはずです。
対談の後編では、情報発信するためのコンテンツの集め方から今後の採用PRの考え方まで語っていただきました。是非ご覧ください。

(取材・文/眞田 幸剛・齋藤 裕美子、撮影/石山 慎治、編集/齋藤 裕美子)

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