内定者フォローの8つの手法。メール、SNS、イベント等いつどんな方法で実施する?


d's JOURNAL
編集部
新卒採用では「就活ルール廃止」が検討され、中途採用でも有効求人倍率は依然として高い水準にあるなど人材の獲得競争は激化しています。そうした状況の中、内定者/内定通知者のモチベーションを入社まで維持するために多くの企業が取り入れているのが「内定者フォロー」です。今回の記事では、内定者フォローの目的や手法などについてご紹介します。
内定者フォローの目的
内定者フォローとは、企業が入社前の内定者に対して、定期的に接触を持つ取り組みのこと。内定者フォローの目的を、新卒採用と中途採用に分けてご紹介します。
新卒採用:「就活ルール廃止」が検討される中、内定者/内定通知者のモチベーションを保ち続ける施策がますます重要に
2019年現在、新卒採用では「3月に採用広報開始、6月に採用選考開始」という就活ルールが経団連によって定められています。しかし、2018年10月に経団連は「2021年度以降に入社する学生を対象とする採用選考に関する指針を策定しない」という発表を行い、2021年度以降の就活ルールについては政府の関係会合で議論が行われることになりました。
これは「就活ルール廃止」を意味し、就職活動の早期化や通年採用が広がる可能性があります。そこで企業は、優秀な内定者/内定通知者をいかに入社までつなぎ止めるかが、これまで以上に重要な課題となることが想定されます。そこで、内定者フォローを行う必要があります。
中途採用:有効求人倍率が過去最高。中途採用でも複数社内定通知を受けているケースが当たり前に
dodaの算出によると、求人数(採用予定人数)を転職希望者数で割った『転職求人倍率』は、全体で2.48倍(2018年12月)と高水準を維持しています。売り手市場が続いていることから、転職者は複数の企業の面接を受け、内定通知をもらっている可能性があります。そのため、入社までの期間が比較的短い中途採用でも、辞退を防ぐためのフォローを行い、自社の魅力などを継続的に伝えていくことが必要です。
(参照:ダイレクトソーシングジャーナル『転職有効求人倍率と企業アンケートから見る2018年の採用課題【マーケットレポート】』)
内定者フォローを行う意味
内定者フォローを行う意味を、アンケート結果を交えながらご紹介します。
内定者/内定通知者は不安を持っている
新卒採用の場合、内定通知を受けた学生は、「社会人としての役目を果たせるか」や「就職活動を終えてよいか」といった不安を抱えています。また中途採用に関しても、dodaが20代~40代の転職経験者を対象に行ったアンケートによると、全体の77.4%が転職に不安を感じ、そのうちの27.6%が内定後から入社までの期間が最も不安だったと答えています。このことから、転職経験者全体では、5人に1人が入社前に不安を抱えていたということが分かります。内定者/内定通知者が不安を抱え続けると辞退につながる可能性があるため、不安を取り除くことが重要です。内定者フォローを通じて企業と内定者の相互理解を深めることで、内定者/内定通知者の不安を軽減し、辞退防止やモチベーションの維持につなげましょう。
(参照:『転職者の受け入れ準備は大丈夫?採用活動を台無しにする現場丸投げOJTの落とし穴』)
内定者/内定通知者は人間関係を深めたい
同アンケートによると、転職後まで最も不安に感じていることとして「人間関係」があがっています。新卒の場合は、初めての社会人生活になるため、上司や先輩社員といった会社での関係性をイメージしづらい可能性もあります。内定者フォローを通して、同じ不安を分かち合える同期や身近な先輩と事前にコミュニケーションを行うことで、安心感を与えるだけでなく、入社後も早めに職場に馴染むことができるでしょう。
内定者はスキルやマナーを身に付けたい
新卒採用であれば社会人としてのマナー、中途採用であれば入社後に必要なスキルなど新しい環境に入る上で最低限の必要となる情報を知ることで、心の準備をすることができます。内定者フォローの中にイーラーニングやグループワークなどを取り入れて、入社前にマナーやスキルを身に付ける機会を用意できれば、自信にもつながります。
目的・状況に合わせて取り入れたい内定者フォローの手法
内定者フォローを効果的に行うためには、目的や状況に合ったやり方を選択する必要があります。内定者フォローの手法をいくつかご紹介します。
SNSを使ったフォロー
内定者が悩みを周囲に相談しづらい、内定者同士や企業との関係が希薄といった状況であれば、若い世代にとって身近なコミュニケーションツールであるSNSのグループ機能を活用した内定者フォローが効果的です。SNSを利用することで、内定者は悩みを気軽に相談しやすくなり、コミュニケーションが促されます。また、企業側には、SNSを使うことで、内定者に一斉に情報を発信できる、SNSでの発言を通じて内定者の状況を把握しやすくなるといった効果があります。
FacebookやLINEなどの既存のSNSを利用する方法と社内SNSを利用する方法があり、費用で考えると既存のSNSの方が抑えられますが、セキュリティー面や個々のプライバシー保護の観点から考えると社内SNSの方が安全です。既存のSNSであれ、社内SNSであれ、新たにサービスを導入するのでなければ設置工数はかかりません。
メール(メールマガジン)によるフォロー
内定者/内定通知者が同期には相談しづらい悩みを抱えている場合、メールを使って個別に連絡を取るのが効果的です。メールを使うことで、内定者/内定通知者と人事担当者やメンターなどが一対一で連絡を取り合うことができます。内定者/内定通知者一人ひとりの状況に応じた対応が可能なため、不安を的確に取り除く効果が期待できます。
内定者フォローの際には、既存のメールアドレスをそのまま使うことができるため費用はかかりませんが、人数が多ければ、ある程度の工数は必要です。
通信教育やeラーニングでのフォロー
内定者の知識や、自ら学習する習慣が不足しているようであれば、通信教育やeラーニングで内定者フォローを行うと効果的です。内定者に学びの場を提供することで、入社後の導入研修を減らすことができる他、学習習慣を身に付けさせる効果が期待できます。通信教育やeラーニングは、ビジネスマナーなど社会人の基本となるものから、業界理解を深める専門的なものまでさまざまなため、内定者の状況に合わせたコンテンツを選べるというメリットもあります。
通信教育を使う場合、内定者の人数が増えるごとに教材費が増えます。通信教育やeラーニングの導入前には内容を比較検討する時間が必要ですが、実施時にはさほど工数はかかりません。
グループワークや研修形式でのフォロー
内定者の知識が不足している場合や、内定者同士の交流が不十分な場合、グループワークや研修形式でのフォローが効果的です。グループワークや研修には多くの内定者が集まるため、入社後すぐに必要になる知識を一斉に習得させることができます。また、内定者が協力してグループワークに取り組むことで、内定者同士の相互理解が進む効果も期待できます。研修内容は、通信教育やイーラーニングと同様に、内定者の状況に合わせたものにすることができます。
グループワークや研修形式でのフォローでは、教材費などが内定者の人数に応じて必要になる他、外部講師の費用や会議室費用などがかかるケースもあります。研修スケジュールの立案や研修時に使う備品の準備など、まとまった工数が必要です。
懇親会やイベントでのフォロー
内定者/内定通知者同士や先輩社員との交流が不足している、入社することに不安を感じているという状況であれば、懇親会やイベントを開催するのが効果的です。懇親会やイベントでは内定者/内定通知者や先輩社員と直接コミュニケーションを取ることができるので、不安軽減や親睦を深める効果が期待できます。
懇親会やイベントでのフォローでは、飲食費や会場費の他、場合によっては内定者/内定通知者の交通費を負担するケースもあります。規模の大きな会社であれば、複数会場で実施することになるため、費用も増すでしょう。実施に向けては、食事の手配やイベント立案、参加する先輩社員の選定など、まとまった工数が必要です。
内定者管理ツールによるフォロー
内定者が悩みを相談しづらい場合や、内定者の知識が不足している場合、SNSとイーラーニングが一体化した内定者管理ツールを活用するのが効果的です。内定者管理ツールを使えば、SNS同様に悩みを気軽に相談できたり一斉に情報発信できるといった効果の他、イーラーニングでの学習効果もあります。内定者の発言やイーラーニングの進み具合を確認することで、内定者の状況が把握しやすいという効果も期待できます。
内定者管理ツールはさほど費用がかからず、イーラーニングを使うので教材費も抑えることができます。また、採用管理システムの一環として実装されているケースも多いため、導入の際にはさほど工数はかかりません。
電話でのフォロー
同期には相談しづらい悩みを抱えている場合や、子供が入社予定の企業に対して親が不安を抱いている場合、電話でのフォローが効果的です。電話を使うことで、内定者/内定通知者と企業側が一対一で連絡を取り合うことができ、一人ひとりの悩みに応じた対応を考えることができます。また、携帯電話ではなく固定電話にかけることで、子供の入社に不安を感じる親に対しても、「誠実な対応をする会社だ」という安心感を与える効果もあります。電話でのフォローでは、人数が多い場合に人事の工数は掛かりますが、費用はほとんどかかりません。
手紙でのフォロー
懇親会への参加が難しい場合や、SNSや電話などのコミュニケーションツールをあまり利用していない場合、手紙でのフォローが効果的です。内定者/内定通知者との連絡や交流をできる機会が少ないという状況であっても、手紙であれば、重要な情報を確実に伝えることができます。また手紙はご家族や関係者宛も同報することができるので、さまざまな活用ができるでしょう。手紙でのフォローも人数が多い場合、人事の工数は掛かりますが、費用はほとんどかかりません。
内定者フォローのツール別比較
内定者の課題 | 効果 | 費用感 | 工数 | |
---|---|---|---|---|
SNS | ・悩みを相談しづらい ・内定者同士や企業との関係が希薄 |
・悩みを気軽に相談できる ・コミュニケーションを促す ・一斉に情報発信できる ・内定者の状況を把握しやすい |
無~小 | 少 |
メール | ・同期には相談しづらい悩みを抱えている | ・内定者/内定通知者と企業が一対一で連絡が取り合える ・一人ひとりの状況に応じた対応をすることで、不安を取り除ける |
無 | 中 |
通信教育・eラーニング | ・知識や自ら学習する習慣が不足している | ・入社後の導入研修が減る ・学習習慣を身に付けさせることができる ・内定者に合わせたコンテンツを選ぶことができる |
小~中 | 小 |
グループワーク・研修 | ・知識が不足している ・内定者同士の交流が不十分 |
・入社後すぐに必要な知識を一斉に習得可能 ・内定者同士の相互理解が進む ・内定者に合わせた研修内容を決めることができる |
中 | 大 |
懇親会・イベント | ・内定者/内定通知者同士や先輩社員との交流が不足している ・入社することに対して不安を感じている |
・内定者/内定通知者の不安が減る ・内定者/内定通知者同士や先輩社員との親睦を深めることができる |
大 | 大 |
内定者管理ツール | ・悩みを相談しづらい ・知識が不足している |
・ツール上で気軽に相談できる ・一斉に情報発信できる ・内定者の発言やeラーニングの進み具合により状況を把握しやすい |
小 | 小 |
電話 | ・同期には相談しづらい悩みを抱えている ・子供が入社予定の企業に対して、親が不安を感じている |
・内定者/内定通知者と企業が直に連絡を取ることで、一人ひとりの状況に応じた対応が可能 ・固定電話の場合、家族に誠実な会社だと印象付けできる場合もある |
小 | 中 |
手紙 | ・懇親会などへの参加が難しい ・SNSや電話などのコミュニケーションツールをあまり利用しない |
・重要な情報を確実に伝えることができる ・家族に誠実な会社だと印象付けできる場合もある |
小 | 中 |
内定者フォローをしない場合、どんなことが起こる?
内定者フォローを行わなかった場合、まず懸念されるのが辞退です。新卒採用でも中途採用でも、内定者/内定通知者は不安を抱えている場合が多く、売り手市場でもあることから、内定者フォローを十分に行わないと他の企業に流れてしまうことが懸念されます。また、フォローを行わないことで想定以上の辞退があり追加の人材募集が間に合わない、入社したものの企業への不安感が拭えず早期離職するといった事態が起こる可能性もあります。
内定者フォローはいつからどのくらいの頻度で行えばよい?
内定者フォローを行う頻度について、新卒採用の場合と中途採用の場合に分けてご紹介します。
新卒採用の場合
新卒採用の場合、内定後も学生はゼミや卒業論文などの勉学に励む必要があります。そのため、内定を出した後は、学生の勉学の妨げにならない頻度で内定者フォローを行うことが重要です。全く連絡がないと、「本当に内定しているのか」といった不安を抱くこともあるため、1カ月に1回など、学生の負担にならない程度に連絡を取るようにしましょう。また連絡の行き違いを防ぐために、事前に個別に連絡を取りやすいスケジュールを確認しておくのもおすすめです。
中途採用の場合
中途採用の場合、転職するまでは内定者の多くが現職中です。引継ぎなどにより業務が立て込んでいることが想定されるため、内定を出した後は内定者の業務の妨げにならない頻度で内定者フォローを行う必要があります。入社までの期間も短いため、入社前には面談を最低1回は行い、必要に応じて別のフォローも行うようにしましょう。
【まとめ】
入社式まで継続的に内定者との関わりを持つ内定者フォローには、内定者の不安を軽減し内定辞退を防ぐほか、入社後の期待度を上げる効果があります。SNSやグループワーク、懇親会などさまざまな手法の中から、目的や状況に応じたものを選ぶことが重要です。内定者の負担とならない頻度でのフォローを心がけながら、企業の将来を担う人材との信頼関係を築きましょう。
(制作協力/株式会社はたらクリエイト、編集/d’s JOURNAL編集部)
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