内定通知書とは|書類の役割やメール文例・テンプレを紹介

2022.08.25

第一東京弁護士会労働法制委員会、日本CSR普及協会(雇用労働専門委員)、経営法曹会議等に所属。経営者側労働法を多く取り扱い、労働審判・労働訴訟等の係争案件、団体交渉(組合・労働委員会)、労災(行政・被災者対応)、労務DD対応を得意とする。
経営課題を抽出し、依頼者のニーズを踏まえたベストプラクティスの提案を心掛ける。
主著に『労働行政対応の法律実務』(中央経済社 共著)、『「働き方改革実行計画」を読む』(月刊人事労務実務のQ&A 2017年7月号 日本労務研究会 共著)など。

内定通知書の基礎知識
内定通知書と採用通知書の違い
内定通知書の記載内容
内定通知書のテンプレート・フォーマット
内定通知書を送付するタイミング
内定通知書に関するQ&A
まとめ

内定通知書とは、企業の内定の意思を応募者に示した書面のことです。

「内定通知書にはどのような役割があるのか」「内定通知書を発行する上で気を付ける点は何か」を知りたい人事・採用担当者もいるのではないでしょうか。

この記事では、内定通知書についての基本的な知識や採用通知書との違いなどをご紹介します。内定通知書のテンプレートもダウンロードできますので、ご活用ください。

内定通知書の基礎知識

「内定通知書」は、企業が応募者に対し、内定したことを通知するための書類です。

「内定」とは、企業と応募者の間で雇用契約の合意がなされた状態を指し、企業から内定者に対する「労働契約の承諾」として内定通知書を発行します。

まずは、内定通知書の基本的な事項を確認しましょう。

内定通知書の送付の意味

前提として、雇用契約は内定時に成立するという解釈が判例上は採用されています。

そして、企業には労働基準法第15条第1項および労働基準法施行規則第5条第1項により、「労働契約締結時における書面による労働条件の明示」が義務付けられているので、内定の時点において労働条件の明示が義務付けられるという理解になります。
もっとも、内定から実際に就労するまでの間にかなりの期間があることも少なくないので、例えば初任給は見込額で示すといった対応も認められています。

労働条件の明示の方法は、内定通知書に記載する方法のほか、内定通知書に労働条件通知書を同封する方法もあります。

内定通知書の法的な効力

「内定」は、労働契約法第6条に定められている「労働契約の成立」に該当します。

内定通知書により内定が通知されると、企業と応募者との間には「始期付解約権留保付労働契約」(契約の開始時期が決定しており、内定取り消し事由に基づく労働契約の解約権が企業に留保されていること)が成立すると解釈されます。

正当な理由のない内定の取り消しは、既に成立した労働契約の解約(解雇)に相当するため、労働契約法第16条に示されている解雇権の乱用にあたり、基本的に無効です。

ただし、内定通知書や誓約書に内定取り消しの事由が記載されているほか、企業と応募者の間で取り消し事由についての合意があれば、内定を取り消すことができます。内定取し消し事由として考えられるケースは、以下の通りです。

内定取り消し事由として考えられる事由

●学校を卒業できなかった場合
●就労までに必要とした免許・資格が取得できなかった場合
●健康を著しく害し勤務に重大な支障がでる場合
●履歴書や誓約書などに重大な虚偽記載がある場合
●破廉恥罪を犯した場合

など、客観的に合理的で、社会通念上相当であると認められるもの。

(参考:日本労働組合総連合会『労働相談 2.採用内定取消・延期』)

内定通知の承諾後でも内定辞退は可能

民法第627条1項では、「雇用期間に定めがないときは、解約(内定辞退)の申し入れから2週間が経過すると雇用契約が終了する」としています。つまり、内定者には入社の2週間前まで内定を辞退できる権利があるということです。内定通知書を発行したとしても、内定辞退の可能性があることに注意しましょう。

内定辞退を防ぐためには、「内定者フォロー」を行うことが大切です。「内定者同士の懇親会」や「既存社員との交流会」「必要な資格を取得するための勉強会」など、内定者の疑問や不安を解消する機会を定期的に設けましょう。

特に、新卒採用は内定から入社までの期間が長いため、企業には内定者の入社に対するモチベーションを維持する施策が望ましいと言えます。

(参考:『内定者フォローの8つの手法。メール、SNS、イベント等いつどんな方法で実施する?』)

内定通知書と同封する書類

内定通知書を発行する際に、「内定承諾書」と「労働条件通知書」を同封している企業も多いと思われます。

内定承諾書とは、内定が決定した応募者が企業に提出する書類のこと。企業から内定者に対する「労働契約の承諾」として発行する内定通知書に対し、内定者からも「内定承諾書」を記入・提出してもらうことにより、内定通知書に記載の労働条件に同意したという記録を残しておくために使用されます。

労働条件通知書とは、就業場所や従事する業務、休日休暇などの労働条件を記した書類です。労働基準法により、雇用形態にかかわらず、すべての労働者への発行が義務付けられています。労働条件通知書は労働契約の締結時に取り交わす書類であるため、「労働契約の成立」に該当する内定時に発行することが求められています。

なお、内定通知書と労働条件通知書は、兼ねることも可能です。兼用する場合は、労働条件通知書に明記すべき項目を確実に記載し、内定者からの署名押印をもらい、合意内容を明らかにできる形式にしましょう。

(参考:『【記入例・雛型付】労働条件通知書とは?雇用契約書との違いや書き方をサクッと解説』)

内定通知書と採用通知書の違い

採用通知書との違いは、通知する内容が「内定」であるか「採用」であるかです。どちらの書類も企業の雇用意思を伝える書類ですが、いずれも発行義務はありません。なお、労働条件の明示と併せて行う場合は、これらの発行義務が生じる点には注意が必要です。

どのような採用プロセスを踏むのかも企業によって異なるため、「内定通知書」と「採用通知書」を別々に発行している企業もあれば、兼用して「採用内定通知書」としている企業もあるのが実情です。

内定通知書の記載内容

内定通知書の様式に決まりはありません。しかし、採用の決定を通知する書類として、以下のような項目を記載するのが一般的です。

内定通知書の主な項目

●日付
●応募者の氏名
●社名
●代表取締役の氏名
●採用試験への応募のお礼
●採用決定のお知らせ
●入社日
●就業場所
●入社までに提出してもらう書類
●内定承諾書の送付期限
●内定取り消し事由
●担当者、連絡先

労働条件通知書を兼ねる場合には、上記のほか、就業時間や休日休暇、給与などの労働条件を明示する必要があります。

また、「入社までに提出してもらう書類」「内定承諾書の送付期限」「内定取り消し事由」については、内定通知書もしくは添え状に記載しましょう。

内定通知書のテンプレート・フォーマット

内定通知書はテンプレートを活用すると、スムーズに作成できます。ぜひご活用ください。

内定通知書のテンプレート(Word)

内定通知書のテンプレートは、こちらからダウンロードいただけます。

内定通知メールの例文

内定通知メールの例文

メールで内定を通知する場合は、内定者に提出してもらう書類を別途郵送する旨を伝えます。件名は、「【採用に関するご案内】株式会社●●」「【株式会社●●】内定決定のご連絡」のように、簡潔でわかりやすい表現にするとよいでしょう。

内定通知書を送付するタイミング

内定通知書を送付するタイミングに決まりはありませんが、最終面接の1週間から10日後までに送付するのが一般的です。

複数の企業から内定を受ける候補者も多いため、迅速に通知をすることで、応募者の意思決定が自社に優位に働く可能性が高まるでしょう。

ただし、政府からの要請により、新卒採用については内定通知時期の決まりがあります。2022年時点では、新卒採用の内定を通知できるのは「卒業・修了年度の10月1日以降」と定められています。

例として、「2023年3月に卒業予定」の学生に内定通知書を発行できるのは、「2022年の10月1日」以降です。
(参考:内閣官房『就職・採用活動に関する要請』)

内定通知書に関するQ&A

内定通知書を作成する際には、どのような点に注意するとよいのでしょうか。人事・採用担当者が気になることの多いポイントをまとめました。

内定通知はメールか郵送か

内定決定の通知方法には決まりがないため、企業が選択することが可能です。メールの場合は、「いち早く内定を伝えられる」「手間やコストを削減できる」といったメリットがある一方で、「提出書類を後日郵送する必要がある」「迷惑メールに埋もれてしまうリスクがある」という懸念点があります。内定通知書をメールで発行する際は、選考時に「内定通知はメールで送信する」旨を伝えておくとよいでしょう。

郵送の場合、「応募者が通知を確認するまでに時間を要する」「手間やコストがかかる」というデメリットが挙げられますが、「配達の記録を残すことができる」「提出書類を同封できる」というメリットもあります。

どちらの場合でもメリットとデメリットが存在するため、企業や応募者の状況によって使い分けましょう。

契約社員にも内定通知書は発行すべきか

正社員と同様、双方の意思疎通を確実かつ円滑に行うためにも、ごく短期間の契約である場合や、内定通知から採用までの期間が短期間である社員のほかは、雇用形態にかかわらず内定通知書を発行する方が望ましいと言えます。

内定通知書には押印が必要か

民法上の解釈では、雇用契約は口頭のみでも成立するとされており、内定通知書を作成したとしても、押印までは必要ないと考えられています。

ただし、「企業が実際に発行した書類であると証明しやすい」「悪用の可能性が考えられる」といった点から、押印するのが望ましいでしょう。
(参考:経済産業省『押印に関するQ&A』)

まとめ

内定通知書には法律上の発行義務がなく、様式や内容、発行のタイミングも企業によって異なります。ただし、「内定」を通知すると法的効力が発生するため、正当な理由のない取り消しは無効となる点には注意が必要です。

今回ご紹介したテンプレートを活用しながら内定通知書を準備し、スムーズな採用活動につなげてみてはいかがでしょうか。

(制作協力/株式会社はたらクリエイト、監修協力/弁護士 藥師寺正典、編集/d’s JOURNAL編集部)

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