「それNG?」入社決定者のフォローはバッチリ、のはずなのに…。辞退が減らない3つの失敗【学べる資料付き】

d’s JOURNAL編集部

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新型コロナウイルスの感染拡大を受け、採用の現場において、企業の担当者が採用候補者と対面する機会が大幅に減少しています。同時に増加しているオンラインによるWeb面接。あなたの所属する会社では、その対策は万全でしょうか。

また、せっかく面接などの選考が進み、無事内定を出せる採用候補者がいたとしても、従来のような対面によるコミュニケーションを図ることが難しいコロナ禍の中では、すでに入社決定を出した採用候補者であっても、辞退を申し出るケースも決して少なくありません。

ではなぜ辞退が起こってしまうのでしょうか。それは採用候補者のフォローを怠っているからなのです。

「そんなことはない!ウチは関連資料だって読み込んで、入社決定者フォローも完璧に行っているはずだ」

こうした声も聞こえてくるでしょう。

ですが、そのフォローは本当に入社決定者の気持ちを自社につなぎ止めておく行動でしょうか。実はフォローの仕組みが整っていないことと、間違えやすいNG行動をとっているがために、辞退は起こっているとも言えるのです。

そこで本稿では、新卒はもちろん転職領域でも参考になる、入社辞退を未然に防止するためのフォローのポイントについて解説していきます。文中には関連資料をダウンロードできますので、より深い理解を得ることができます。

入社決定者フォロー“だけ”で入社辞退を未然防止することは難しい

近年ではSNSや口コミサイトを通じて就労先企業の情報を得ることが容易になっています。こうした情報の中には、採用候補者にとってネガティブに感じるものもあるため、就労先企業に不安を感じてしまうおそれがあります。

加えて、採用候補者が親や友人から直接ネガティブな話を聞いて不安になるケースもあります。そして、ネガティブな情報を受け取った人はこのような不安を抱いてしまいます。

「人や風土が合わないかも…」
「仕事で活躍できるか不安」
「人事制度、報酬体系は整っているのか」――。

まずは入社決定者フォローにおいては、こうした不安を払拭(ふっしょく)することが不可欠。ですが、結論から言いますと、世にあるすべての情報や対策を押さえた上でフォローを行ったとしても、辞退を防げないケースもあります。そうしたケースを減らすためには、入社決定前の面談や面接の場で採用候補者と関係性を構築しておくことが重要なのです。

この事実を念頭に置いて、進めていきましょう。

面接と面談を使い分け、それぞれのNG項目を理解する

入社決定者フォローにつながる行動は、選考時に行う面接と面談を使い分け、それぞれポイントをつかんで適切に実施することが成功のカギ。では面接と面談にはどのようなポイントがあるのでしょうか。それは以下で説明します。

●面接編

面接に臨む候補者は当然ながら、その企業への入社意向が高い人材と言えます。しかし、中には面接の際に不用意な質問をしてしまうことで、候補者の入社意向を下げてしまうケースがあります。こうした場合、たとえ採用通知を出したとしても辞退につながるケースもあり、注意が必要です。

【面接時の主なNG項目】
・断定的な質問
・意図が不透明な質問
・的外れなフィードバック
・厚生労働省が定めるNG質問

時代は、ダイバーシティ&インクルージョンやポリティカル・コレクトネスなど多様な価値観や考え方が尊重されるようになりました。

初対面や選考初期など、お互いの信頼関係が浅い場合、断定的・主観的な発言は、相手に悪印象を与える可能性があります。とっさの対応を見たいという目的もあるかもしれませんが、本筋から外れた突拍子もない質問は、相手に不信感を与えてしまいます。

面接のフィードバックは、採用候補者の志望度を上げるうえで重要ですが、否定的な言葉や曖昧な表現は、相手の心象を悪くするおそれがあります。当然ですが、家族や宗教、結婚など、本人の能力とは関係がないプライベートに関する質問などは避けなければなりません。

こうしたNGな行動や質問をしてしまう企業や面接担当者は決して少なくありません。まずは自社で勉強会を開くなど、担当者全員の目線合わせやトレーニングなども機を見て行うべきでしょう。

●面談編

その後の入社辞退を防ぐためには、候補者との関係性を構築することが重要です。そこで面接とは別途面談の場を持つことが重要とされています。具体的には、面談時に次のようなステップを踏んでおくことが望ましいです。

STEP1 面談の目的を伝える
STEP2 就活軸をヒアリングする
STEP3 軸を一緒に考える
STEP4 他社選考状況をヒアリングする
STEP5 自社の魅力を訴求する
STEP6 人間関係をヒアリングする

面談の目的は「辞退を防ぐためのフォロー」であるため、候補者に対する理解を深めることを意識しましょう。そのためには、候補者を評価せず、お互いが対等な立場で話をすることが重要です。

入社決定者フォローで失敗しがちな3つのNG事例

ここからは、入社決定者が抱える不安を払拭(ふっしょく)して、安心して入社してもらうためのフォローでも、失敗しがち、あるいは見落としがちな項目をNG事例とともに紹介します。

事例1:入社決定者に対して、自社の特徴や仕事の内容について魅力を訴求しきれていない

「選考中、説明会や面談・面接を通して、十分に自社の特徴や仕事の内容は伝わっているはず――」

採用担当者の中には、入社決定者に対してこのように考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

一方で、前ページで解説したように、入社決定者は入社承諾後にもSNSや口コミサイト、家族や友人を通じてさまざまな情報を収集します。そのため、選考中に企業から説明された内容について、不安や疑問を抱いてしまうケースも少なくありません。

そこで、こうした不安や疑問を解消するためには、人事制度や報酬体系といった社内制度に関するオンラインセミナーや、仕事内容に関する面談の機会を設けます。こうした機会を通じて、入社決定者自身が歩むキャリアのイメージを具体化し、入社の意向を醸成できるからです。

事例2:縦(社員)や横(同期)のつながりを軽視する

入社決定者の不安をさらに払拭(ふっしょく)するためには、企業から魅力を発信するだけではなく、個々人に寄り添うような対応も求められます。その点で、事例1で解説したような取り組みだけでは、企業から入社決定者への一方的な発信に終始してしまうおそれがあります。

そのため、縦(社員)や横(同期)とのつながりを感じてもらえるような取り組みが重要です。具体的には、入社決定者と社員を集めたレクリエーションやチームビルディングワーク、入社決定者同士での交流会や部活動紹介といった取り組みです。

こうした取り組みを実施することで入社決定者の心に社員や同期との仲間意識をつくることができます。そして自発的なコミュニケーションが生まれ、「企業の環境や社内制度に関してエージェントや先輩社員に相談してみよう」 「入社前の悩みを同期に共有してみよう」といった行動をとりやすくなります。結果として入社辞退の未然防止にもつながります。

事例3:面接や内定後に、継続的なコミュニケーションをとらず放置状態にする

現在は、アフターコロナを見据えて、さまざまな企業が採用活動を活発化させています。当然、入社決定者も自社以外に採用通知をもらっていたり、選考の途中というケースも想像に難くありません。

一度は決めた入社への意思が揺らいでしまったり、採用で競合する企業の方を魅力的に感じてしまったりといった心情の変化が生まれるおそれがあります。そのため、企業は入社決定者に対して、電話やLINEといったSNS、オンラインコミュニケーションツールなどで連絡をとるなどのコミュニケーションを継続し、最近の状況や入社への不安をヒアリングし、入社決定者の心理状態を把握しておくことが大切です。

その際に、入社決定者の言動から辞退見込みが懸念されるようであれば、辞退防止に向けて適切にフォローを行いましょう。現在はコロナ禍ということもあり、コミュニケーションの不足に悩む入社決定者や求職者も少なくありません。ちょっとした気遣いや配慮が、入社決定者の入社の意志を固くすることもあります

入社決定者フォローを手厚くして、入社決定者から「あの時は嬉しかった」と言っていただけるケースもありますので、最後まで気を抜かずにフォローを徹底させましょう。

まとめ

入社決定者フォローについては、採用活動全体を設計する際に併せて設計しておくことが効率的です。その際には、次のようなコツを意識することで、辞退をより少なくすることにつながります。

・昨年までの辞退理由や辞退発生時期を振り返る
・辞退される場合のシナリオも想定しておく
・入社までの過ごし方を把握する

こうした全体の設計も併せて、細部まで拘って行いたいものです。

ただし、本稿でもっとも訴えたいのは、採用活動の相手はもちろん人対人のコミュニケーションであることを忘れてはいけません。採用候補者のこれまでの人生や歩みを尊重したうえで、配慮の行き届いたフォローを行ってほしいと思います。

文/鈴政武尊、編集/鈴政武尊・d’s JOURNAL編集部

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