1on1で話すことは?テーマ一覧と具体例、意識したいポイントを解説|テーマシート付

1on1で話すことは?テーマ一覧と具体例、意識したいポイントを解説|テーマシート付

doda人事ジャーナル編集部

上司と部下がマンツーマンで行う定期的なミーティングを意味する「1on1」。「部下と何を話せばよいかわからない」「部下の成長を促すには、どのようなテーマや質問が効果的なのか」といった悩みを抱えている管理者は多いでしょう。

この記事では、1on1で話すことや目的に沿ったテーマ例、実施時に意識することなどを人事目線で紹介します。

1on1のテーマや進め方を理解しても、実際の面談でどのように整理すればよいか迷うケースは少なくありません。面談内容の記録や振り返りにそのまま使える「1on1シート」を、下記よりダウンロードのうえご活用ください。

1on1で話すこと一覧【目的別テーマ整理】

1on1を形骸化させず実りある時間にするためには、話すべきテーマを事前に整理しておくことが重要です。話題を個人の裁量に任せ過ぎると、単なる進捗(しんちょく)確認や雑談に偏り、1on1の質がばらつく原因となります。

人事が目的に沿った標準テーマを提示し、部下が事前に話したい内容を選択できる仕組みを整えることで、運用はより安定します。ここでは、対話の質を高めるための7つのテーマ例をご紹介します。

【1on1で話すテーマの例】
●雑談で心理的安全性をつくるテーマ
●体調・メンタルの状態を確認するテーマ
●モチベーション・エンゲージメントを把握するテーマ
●業務課題を整理するテーマ
●目標設定と振り返りを行うテーマ
●キャリア志向・将来のビジョンを確認するテーマ
●方針・優先順位の理解度を確認するテーマ

それぞれのテーマについて、ポイントを解説します。

雑談で心理的安全性をつくるテーマ

1on1で、上司と部下の信頼関係を深めるために、雑談のテーマを含めておくことも大事なポイントだといえます。業務に関する話だけでなく、プライベートな話題も取り入れることで部下の緊張が和らぎ、穏やかな雰囲気で話が進むでしょう。

【雑談に関する質問の例】
●週末は何をして過ごしているか
●何をしている時間が一番楽しいか
●最近ハマっている趣味はあるか
●最近気になったニュースはあるか

何か特別なことを話すというより、休日の過ごし方や趣味といった何げない話題を取り入れることがポイントです。部下があまり話したがらないことは深掘りせず、話題をすぐに切り替えて興味のありそうな話題を尋ねるように上司へ共有しておきましょう。

こうした雑談は、1on1の場を和ませる効果があり、上司と部下の信頼関係の構築に役立ちます。

心理的安全性について詳しく知りたい方は、以下の記事で詳しく解説しています。
(参考:『心理的安全性とは|組織を活性化させるポイントを解説』)

体調・メンタルの状態を確認するテーマ

部下の体調やメンタルの状態は、業務を遂行する上で基礎となる部分です。そのため、人事は1on1で管理職側から部下の体調・メンタルについて話を聞く機会を設けさせましょう。

普段はなかなか話しづらいことであっても、1on1の場であれば心身に感じていることを話してくれるかもしれません。心身の健康状態について確認してもらう点としては、次のようなものが挙げられます。

【体調・メンタルに関する質問の例】
●業務量の過度な負担はないか
●業務外の時間はきちんと休めているか
●業務時間が不規則になっていないか
●睡眠時間をしっかり確保できているか
●体調やメンタルに変化を感じる部分はないか
●健康について、周囲に相談できる人はいるか

1on1で話すことは自由ですが、心身の健康は従業員にとって大切なテーマの一つのため、実施のたびに確認できるように人事で設計しておくことをお勧めします。

モチベーション・エンゲージメントを把握するテーマ

モチベーションの揺らぎは、本人ですら原因を正確に自覚できていないケースが少なくありません。1on1というクローズドな場での対話を通じて、意欲を阻害している要因を早期に特定し、エンゲージメントの向上へ導くことが重要です。

上司側には、モチベーション低下を防ぐための「現状把握」と、意欲を高める「ポジティブなフィードバック」の両面からアプローチするよう促しましょう。具体的には、以下のような話題が効果的です。

【モチベーション・エンゲージメントを高める話題】
●業務に対する普段の取り組みを褒める
●業務の成果にたどり着くまでのプロセスを評価する
●チームに良い影響を与えていることを伝える
●社内での評価が高まっていることを知らせる

部下一人ひとりの意欲を引き出すには、できるだけポジティブな評価を上司側から伝えてもらうことが大切です。反対に、モチベーションの低下を防ぐためには、業務でストレスに感じることや人間関係で悩んでいることなどを聞いてもらう必要があります。

部下自身が自分の言葉で語ることで、新たな気付きを発見するきっかけになるはずです。

1on1をエンゲージメント向上につなげる考え方を整理したい方は、以下の記事で詳しく解説しています。
(参考:『従業員エンゲージメントとは|効果的な取り組みと事例・向上のメリットを解説』)

業務課題を整理するテーマ

1on1で取り上げられる機会が多いテーマが、業務上の課題や悩みについてです。現在関わっている業務のことや、何か業務で困っていることがないかなど丁寧に話を聞けるように、人事側でテーマを選定しておくことが大切です。

【業務や組織に関わる悩みに関する質問の例】
●メンバーやチームで困ったことやトラブルはないか
●今の業務内容で満足しているか
●組織として改善してほしいことはあるか
●仕事とプライベートのバランスは取れているか

特に人間関係で抱えている悩みや上司・企業に対する不満は、普段は聞きづらいものでもあるため、1on1の機会を通じて上司に話を聞いてもらうことが重要です。

真摯(しんし)な姿勢で話を聞いてもらうことで部下のモチベーションを高め、仕事の生産性をアップさせることにつながります。

目標設定と振り返りを行うテーマ

1on1という一対一の状況は、部下の目標設定や自己評価を行う場としても有効です。組織やチームが掲げる目標と部下が目標とする部分を、1on1を通じて上司とうまく擦り合わせてもらうことが大切です。

目標設定と自己評価のテーマとしては、以下のものが挙げられます。

【目標設定と自己評価に関する質問の例】
●現状の業務に対してどのような気持ちか
●これから関わってみたい業務はあるか
●どのような目標を目指したいか
●目標を達成して得られたことは何か
●業務への取り組みに対して自身をどのように評価しているか

1on1を通して、部下が会社やチームが掲げる目標をきちんと認識した上で、自身の目標を適切に設定できているかを上司に確認させましょう。

上司と部下が一緒に考えて設定した目標は、定期的に部下に自己評価してもらった上で、振り返りの時間を設けさせることも大切です。

キャリア志向・将来のビジョンを確認するテーマ

キャリアに関する対話は、部下のモチベーション維持や中長期的な定着に直結する重要なテーマです。一方で、将来像が漠然としている部下も多いため、上司側は「正解を求める」のではなく、本人の価値観や志向を共に「探索する」姿勢で臨むことが求められます。

具体的なビジョンを描くきっかけとして、以下のような問いかけを織り交ぜていくと効果的です。

【今後のキャリアに関する質問の例】
●自分の強み・弱みは何か
●自分の強みを活かせる仕事や部署はあるか
●現状の業務ではどのようなやりがいがあるか
●これから身に付けたいスキルはあるか
●5年後・10年後の目標はあるか

また、部下が普段の業務でやりがいを感じている点やこれから挑戦したいと思っている仕事などを尋ねてもらいましょう。

将来のキャリアがまだ漠然としているときは、部下自身が大切にしている価値観や生き方などを踏まえて、人事が適切にキャリアを支援していくことが重要です。

1on1をキャリア開発や人材育成につなげるには、対話の設計や進め方まで整理しておくことが重要です。キャリア開発を促す1on1の進め方や設計のポイントをまとめた資料を、下記よりダウンロードのうえご活用ください。

方針・優先順位の理解度を確認するテーマ

組織の方針が共有されていても、現場での解釈や優先順位には個人差が生じやすく、認識のずれが放置されると業務の停滞や不満の原因となります。1on1を通じて、早い段階で方針の受け止め方を確認し、認識を擦り合わせておくことが重要です。

単なる「伝達の確認」で終わらせず、部下が抱く違和感や疑問点も丁寧にくみ取れるよう、次のような問いかけを投げかけてみましょう。

【方針・優先順位に関する質問の例】
●方針で理解している点・あいまいな点はあるか
●自身の業務で方針に直結するものはどこか
●方針を浸透させるために必要なことは何か
●方針を踏まえてどのように優先順位を付けていくか

企業が掲げる方針に対して部下が感じている疑問は早めに把握した上で、必要に応じて補足の説明や優先順位の擦り合わせを行いましょう。

人事が明確にしたい1on1の目的

1on1は多くの企業で導入されていますが、その場を設ける理由は「各企業がどのような目的で1on1を実施しているのか」によって異なります。そのため、1on1で話す内容は目的に応じて考える必要があるでしょう。1on1の主な目的として、以下が挙げられます。

【1on1の目的】
●部下の成長を支援するための対話である
●モチベーションを高める機会である
●組織の状態を把握する場である

1on1でどのようなことを部下から聞いたらよいのかを、実施目的ごとに見ていきましょう。

(参考:『1on1ミーティングとは?目的や効果、導入する方法と進め方を解説』)

部下の成長を支援するための対話である

部下の成長促進が目的の場合、部下の担当業務の話題を中心に話を聞き、助言やサポートを行います。部下は、業務での失敗体験や成功体験を上司に話すことで自身を振り返ったり、上司と一緒に考えることで取り組む課題を明確化したりできます。

上司としては、部下の話をしっかりと傾聴した上で、部下の能力を引き出すためのフィードバックを行い、成長促進につなげましょう。

1on1を部下育成につなげるための考え方や、タイプ別の指導方法を整理したい方は、以下の記事で詳しく解説しています。

(参考:『フィードバックとは?意味や目的、期待できる効果と5つの手法を解説』、『部下育成の課題と成功のポイント|タイプ別の指導法と失敗事例も解説』)

モチベーションを高める機会である

離職防止(モチベーション向上)が目的の場合、会社からの好評価を伝えたり、業務内外問わず不安や悩みを尋ねたりといった形で、部下のフォローアップを行います。

1on1は、部下のモチベーションの低下を早期に察知するための重要な機会の一つです。部下の変化や課題を把握した際には、できるだけ早く対応することでモチベーションの低下を防ぎ、離職防止につながるでしょう。

(参考:『【1分で解説】モチベーションアップには何が必要?従業員のモチベーションを上げる5つの方法』、『モチベーションマネジメントとは?従業員の意欲を引き出すポイントを紹介』)

組織の状態を把握する場である

組織・チーム力の向上が目的の場合、「チームメンバーとの関係で不和はないか」「様子が気になるメンバーはいないか」などを複数の部下にヒアリングし、組織・チームの状況を確認します。

上司自身が気付かなかった職場環境の問題点を聞き出すことで、チームの課題が把握できるだけでなく、職場環境の改善ポイントも見えてくるでしょう。

1on1で「話すこと」が設計されていない企業に起きるリスク

1on1では、「話すことがない」という状況がしばしば発生します。1on1でこうした状況に陥る原因として、どのようなことが考えられるのでしょうか。主に対話の設計が不十分な場合、以下のような要因が背景にあると考えられます。

【1on1で話すことがない状況に陥る原因】
●評価面談と混同される
●部下が本音を話さなくなる
●業務報告のみで終わる
●雑談のみで成果につながらない
●管理職ごとに対話の質がばらつく

1on1で話すことがない要因について、上司側・部下側それぞれの視点で解説します。

評価面談と混同される

目的を明確にしないまま1on1を始めると評価や自己評価の場と受け取られ、部下が身構えてしまいます。マイナスな評価につながる不安から、自分の弱みや課題を話すことがなくなります。

その結果、相談ではなく業務の進捗報告や成果のアピールといった内容がメインとなり、表面上の1on1になってしまうでしょう。上司側も、何をサポートするかがあいまいなまま時間だけが過ぎていくので、ただ1on1をしているだけの、意味のない時間になってしまうのです。

部下が本音を話さなくなる

上司と部下の信頼関係が構築できていないことも、大きな要因の一つです。心理的安全性が確保されていない状態では、部下が自分の状況を話すことに抵抗を感じたり、話したいことがあっても思うように話せなかったりします。

否定的なコメントや詰問調の質問が多いと、部下は自分の弱みを話すことが難しくなります。こうした安心できない状況が続くと、1on1そのものがストレスとなり、モチベーションの低下にもつながってしまうでしょう。

テーマを決めておくことは必須ですが、話題が見つからない場合には、上司の会話スキルや双方の1on1へのモチベーション、信頼関係に問題がないかを確認しましょう。

業務報告のみで終わる

上司が1on1の目的を理解していないと、1on1が形式的な場となり最低限の業務報告のみで完結してしまいます。

例えば、1on1が「進捗確認」や「事務連絡」に終始してしまい、定例会議の短縮版のような状態に陥っている場合、上司が「あの案件はどうなっている」「期限には間に合いそうか」といった質問を繰り返し、部下がそれに対して事実のみを回答するだけのやりとりがこれに該当します。

目的を踏まえてテーマを準備している場合、1on1の回ごとに必要な質問が変わるはずです。本来の目的を十分に理解しないまま運用している上司では、業務の進捗確認や業務連絡といった質問を毎回繰り返すことになります。

1on1の質問が形式化すると、部下は「何のための時間かわからない」「1on1の時間で得られるものがない」と感じてしまうでしょう。

雑談のみで成果につながらない

質問を準備していないまま1on1を始めると、その場の思い付きの話題や雑談に終始するケースもよくあります。

例えば、1on1が「最近の出来事」や「趣味の話」といった世間話だけに終始してしまい、本質的な業務の課題や本人の成長に一切触れられず、「最近どう」「困っていることはない」といった漠然とした問いかけに対し、表面的なやり取りだけで時間が過ぎてしまうケースがこれに該当します。

適度な雑談は心理的安全性を高める上で有効ですが、それだけで終わってしまうと、部下が抱えている悩みやキャリア、成長に関わる対話が行われず、結果として、部下は「ただ世間話に時間を奪われている」「上司は自分の成長を真剣に考えていないのではないか」といった不満や不信感を抱く原因にもなりかねません。

特に部下が受け身の姿勢だと、上司主導の一方的な会話になりやすく、深い議論が行われづらい状況に陥ります。

管理職ごとに対話の質がばらつく

1on1を実施する側の上司側で意義や進め方が統一されていないと、部下は毎回違う期待値を持つこととなり、安定性が損なわれてしまいます。上司ごとに我流の1on1が行われている場合、準備の質にばらつきが生まれ、対話の質も安定しません。結果的に部下の不満にもつながるでしょう。

上司ごとに属人化した1on1ではなく、組織全体として1on1の目的や準備、テーマ決め、進め方といった基準をそろえることが大切です。

1on1は「査定の場ではない」と明確に定義する

1on1の質を安定させ、部下が本音を話せる環境を築くためには、「1on1は査定の場ではない」という定義を組織全体で共有することが不可欠です。

本章では、評価面談との具体的な違いや、両者を混同することで生じるリスクについて、心理的安全性を担保するための運用ルールを解説します。

1on1と評価面談の目的の違いを明示する

上司と部下の一対一の面談であるため、1on1と評価面談を同じものだと捉えるケースも少なくありません。しかし1on1は部下の成長を促す場であり、評価面談は部下の処遇や昇給を決める場であるため、開催する目的が大きく異なります。

その他、1on1と評価面談の違いを以下にまとめました。

【1on1と評価面談の違い】

1on1 評価面談
目的 部下の成長を促す場 部下の処遇や昇給を決める場
話す内容 プライベートからキャリアの支援まで幅広い話題 期初に設定された目標の達成度や評価に関する話題
頻度 週に1回~月に1回程度 四半期に1回~年に1回程度
必要なスキル 傾聴力やコーチングスキル 目標設定能力やフィードバック力

1on1と人事評価はいずれも重要なコミュニケーションの機会ですが、目的や実施頻度、上司に求められるスキルなどが異なります。

上司がこれを理解せず1on1を実施すると、双方にとってマイナスな時間となってしまいます。1on1の意義を上司が明確に理解した上で取り組めるよう、組織内での認識統一が重要です。

1on1を含む人事面談全体の整理をしたい方は、以下の記事で詳しく解説しています。
(参考:『人事面談とは|4つの種類と基本フロー・企業の実施事例を解説』)

査定と混同すると心理的安全性が損なわれる理由

部下が評価面談と1on1を混同すると、その場で話す内容が「評価に多少なりとも影響するかもしれない」という心情に陥ります。

そうした心理的安全性が低い状態では、部下の本音が引き出せなくなり、課題も確認できないでしょう。部下が安心して、業務の課題や悩みをさらけ出せるような1on1を実施できるよう、組織全体の認識を擦り合わせておくことが大切です。

評価の話題を扱う場合の運用ルールを定める

1on1と評価面談は異なるものであるため、それぞれを結び付けることはしてはなりませんが、完全に切り分けてしまうと1on1が形骸化する恐れがあります。

そのため、1on1と評価面談の軸を明確にした上で、評価に関わりそうな内容については、事前に運用ルールを定めておくことが重要といえます。

例えば、おのずと評価の話にひもづきやすい人事評価の時期には1on1を実施しない、あるいは評価の話をする場合には1on1とは別に面談を設ける、といったルールが挙げられます。ほかにも、1on1を実施していく中で、評価が関係する内容については、記録は明確に分けることも重要でしょう。

1on1を実施する管理職の社員が対応に困らないように、できる限り具体的に設定しておくことが理想的です。

1on1の内容を評価資料に転用しない方針を設ける

1on1の内容をそのまま査定に使うと、部下は評価への影響を恐れ、上司が望む模範解答に寄りやすくなります。査定と結び付くほど「減点されない話」だけが残り、課題の早期発見も遅れがちです。

その結果、部下から悩みや失敗の話題が出にくくなり、安心して話せる場(心理的安全性)も揺らぐでしょう。

こうした1on1を防ぐためには、「1on1記録は育成目的で、評価資料へ転用しない」と明文化し、全社に周知することが重要です。共有が必要な場合は本人同意を前提にし、閲覧範囲も限定すると安心感が高まるはずです。

1on1と人事評価を切り分けて設計する際には、制度上の違いや運用ルールを整理しておくことが重要です。評価制度との違いや設計時のポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。
(参考:『人事評価とは?意味や目的、課題と対応策を解説』)

管理職が迷わない1on1の進行ルールを設計する

1on1を意味のある場にするためには、工夫が必要です。1on1を実施する際に意識したい以下のポイントを見ていきましょう。

【1on1の進行ルールの設定ポイント】
●基本進行フローを標準化する
●本音を引き出す質問テンプレートを共有する
●ヒアリング中心とする原則を明文化する
●フィードバックの扱いを定義する

基本進行フローを標準化する

1on1は進め方が管理職ごとに異なると、部下側の期待値がそろわず「雑談で終わる」「進捗確認だけになる」など成果がばらつきます。こうした結果を防ぐべく、人事は1on1を再現可能にするための最小フローを定義し、ガイドとテンプレートに落とし込む必要があります。

1on1の基本的なフローは、「導入→対話→振り返り→次回アクション」の4つです。
まずはいきなりメイントピックに入るのではなく、アイスブレイクを通じて場を和ませることで、部下が自由に意見を述べられるようになります。

部下がオープンな感情になってから、直面している課題や悩み、得た学びなどを中心に対話を進めていきます。上司が一方的に話すのではなく、部下が考えていることをできる限り引き出せるように、自己反省を促すようなテーマを設計しておくことが大切です。

最後に、部下が次の具体的なアクションプランを自主的に目標設定できるよう、サポートできる内容に設計するとよいでしょう。

本音を引き出す質問テンプレートを共有する

1on1で「何を聞くか」が管理職任せになると、経験の差がそのまま面談の質の差になります。部下も話題を選べないことで沈黙しやすく、本音が出る前に時間が終わってしまいがちです。

そこで人事は、傾聴とオープンクエスチョンを前提にした「問いの型」を用意し、全社で同じ入り口を持てる状態を整備する必要があります。

ここでは、人事が現場に共有したい「問いの型」として、代表的な質問テーマごとに、質問の狙いやポイント、具体的な会話例を紹介します。

最近あったうれしかったこと

部下の人となりをある程度知っていたほうが話は弾み、本音を引き出しやすくなります。価値観や性格を知るため、まずは「最近あったうれしかったことは?」といった、本人がどういったことに喜びを感じるのかがわかる質問をしましょう。

内容としては、「仕事でもそれ以外でも、話せる範囲で大丈夫」といった任意性を明確にして、「何が一番良かったか」「うれしい理由が何か」程度にとどめ、プライベートまで深掘りし過ぎないように設計するとよいでしょう。

会話例
上司:最近、うれしかったことを話せる範囲で教えてください。
部下:家族で、最近オープンした●●に出かけました!
上司:何が一番よかったですか?
部下:「▲▲ができてよかった!」と、子どもが楽しんでいる姿を見られたことです。

最近困っていること

通常の「報・連・相」では、「業務に直結する緊急の事柄について話をする」ということも多いでしょう。しかし、部下は「緊急性は低いけれど、実は重要な課題」を抱えていることもあります。1on1では、そうした部下の抱える悩み・課題を聞き出す質問をすることが大切です。

会話例
上司:最近、何か困っていることはありますか?
部下:新入社員Aさんへの業務の教え方が正しいのかわからず、悩んでいます…。
上司:不安が強い場面はどこですか?
部下:人に何かを教えるのは、私にとって初めての経験です。自問自答しながらAさんに教えていますが、今の教え方でAさんがちゃんと理解できるのか、自信がないんです。

成功・失敗から得た学び

出来事を「経験」で終わらせず、学びを言語化し次の行動につなげる目的として、成功・失敗にまつわる質問も設計しましょう。ただ単に事実だけでなく、理由やそこから何を得たのかに気付いてもらえると、部下の成長が見込めます。

掘り下げる質問は「うまくいった(いかなかった)要因は何でしょう?」「次は何を試しますか?」といったことを聞くとよいでしょう。

会話例
上司:最近成功したことはありますか?
部下:3社が競合したB社のコンペで、我が社を選んでいただけました!
上司:その結果につながった理由は何だと思いますか?
部下:B社が現在抱えている▲▲の課題を理解した上で、言語化できたからだと思います。
上司:次は何を試すと再現できそうですか?

やりがいを感じる瞬間

部下が「どういったキャリアを目指しているのか」がわからなければ、キャリア形成をサポートすることは困難です。

そのため、1on1では管理職に部下一人ひとりが将来どのように活躍したいのかを明確にしてもらう必要があります。まず「どんなことにやりがいを感じているのか」を聞き、そこから徐々に話を掘り下げましょう。

会話例
上司:最近、仕事でやりがいを感じた瞬間はいつですか?
部下:自分の考えた企画が成功したときに、やりがいを感じます!
上司:それを踏まえて今後増やしたい経験はありますか?
部下:要望を引き出すのが得意なので、個人のお客さまに関わる仕事にも挑戦してみたいです。

ヒアリング中心とする原則を明文化する

1on1が上司の指示・助言中心になると、部下は評価を意識して自己開示を控え、課題の早期発見や学びが起きにくくなります。上司主導にならないために、傾聴を制度原則として明文化することが必要です。

人事は、面談の目的を「状況の理解と内省支援」と定義し、進行手順(部下のテーマ提示→質問→要約→次回までの整理)と発言比率の目安を規定化します。沈黙を許容し、結論を急がないことも原則に含めると運用が安定します。

加えて、アドバイスは終盤に限定するなどを推奨、記録様式はヒアリング項目中心、集計は実施率などプロセス指標にとどめる設計が有効です。

フィードバックの扱いを定義する

フィードバックの目的があいまいだと、1on1が評価面談の延長と受け取られ、部下は防衛的になり振り返りが浅くなります。評価としてのフィードバックは処遇判断に関わる「結果の通知」で、成長を支援するフィードバックは行動を振り返り次の挑戦を促す対話です。

人事は両者を制度上分離した上で、評価は期末などの正式面談で実施し、1on1では事実ベースの学びと次回アクションに焦点を当てるルールを定義します。

具体的には、1on1内のフィードバックは直近の行動に結び付け、評価や査定コメントは持ち込まないと明確にします。記録の利用範囲や共有先、注意喚起の扱いまで決めておくと運用がぶれません。

1on1を形骸化させないために人事が講じる具体策

1on1は導入しただけでは定着せず、話題の固定化や準備負荷の増大で「形だけ」になりがちです。継続的な対話を再現するには、管理職個人の工夫に頼らず、共通のツールと運用サイクルを人事が用意することが重要になります。

ここでは、全社で実装しやすい具体策を整理します。

【1on1を形骸化させないために人事が講じる具体策】
●標準テーマとアジェンダを全社共有する
●1on1シートで記録と振り返りを仕組み化する
●管理職向け1on1研修を設計する
●実施状況を可視化し定期的に運用を見直す

標準テーマとアジェンダを全社共有する

話すことが毎回場当たり的だと、面談が雑談か進捗確認に偏りやすく、部署ごとに体験品質がばらつきます。特に新任管理職ほど準備負荷が高く、継続の障壁になります。

人事は、目的別の標準テーマ(業務・状態・キャリア等)と質問例をライブラリー化し、部下が事前に選べる運用にします。「必須のチェックイン+選択式テーマ+次回の合意事項」の最小アジェンダを定義し、時間配分の目安も添えると迷いません。

評価や詰問に流れない注意点、職種別に追加できる枠、テーマ更新のルールまで全社共通で整備すると、いっそう浸透しやすいでしょう。

1on1シートで記録と振り返りを仕組み化する

1on1の記録が残らないと、前回の合意が次回に引き継がれず、同じ話題の反復や「やった感」だけが増えます。担当上司が変わった際に支援履歴が断絶し、本人の学びも可視化できません。

人事は、「事前入力→面談中メモ→面談後の次アクション更新」までを一枚で回せる1on1シートを標準化すると良いでしょう。項目は「話したいテーマ/事実・感情/気付き/次回までの行動」など最小限にし、箇条書きで5分以内に書ける前提にすると仕組みとして続きやすくなります。

保存期間と閲覧権限を当事者中心に規定し、評価コメントの入力は禁止しておくと安心です。集計は実施有無などのデータに限定すれば、振り返りに集中できます。

管理職向け1on1研修を設計する

1on1は台本通りに進まない対話で、上司の聴き方・問い方が部下の自己開示量を左右します。スキル差が大きいと、助言過多や評価口調が起き、制度全体が「やらされ面談」に見えがちです。

人事は新任管理職を中心に、以下のように演習込みの研修を設計します。

●目的の理解:評価面談との違い、期待する効果
●傾聴:要約・沈黙の扱い、遮らないルール
●質問の仕方:オープン質問で内省を促す型
●フィードバックの仕方:事実→影響→次の試行を短く伝える

ケース演習と相互フィードバックを組み込み、半年後を目安にリマインド学習も入れると定着しやすくなります。

実施状況を可視化し定期的に運用を見直す

実施状況が見えないと、多忙な部署から優先度が下がり、1on1が「あるはず」の制度で終わります。継続運用には、回数の把握と定期レビューが不可欠です。

人事は、カレンダー予約やツールログで実施回数を集計し、KPI(実施率など)を部署別にダッシュボード化しましょう。内容は追わず実施有無などのデータを中心にして、半年ごとに、「実施率」「課題の洗い出し」「テーマの見直し」を精査して、支援策までセットで更新します。

1on1を制度として定着させる設計ポイント

人事として、1on1を制度化して組織内で定着させるためには、以下で紹介するポイントがあります。

【1on1を制度として定着させる設計ポイント】
●年間計画に正式に組み込む
●実施率を人事が可視化する
●管理職育成とセットで設計する

詳しく見ていきましょう。

年間計画に正式に組み込む

1on1を任意運用にすると、繁忙期に後回しになり「空いたらやる」状態へ流れます。結果として実施頻度が部署でばらつき、部下側も準備ができず対話が浅くなりがちです。年度の節目(目標設定・異動・オンボーディング)に合わせた対話設計もできません。

こうした状況を防ぐには、年間計画に「対象者・最低頻度・標準時間」を正式に組み込み、期初に通年の面談枠をカレンダーへ固定する運用を設計します。キャンセル時の振替期限、繁忙期の短縮版、例外条件まで規定化すれば継続性を守りやすいでしょう。

また、評価面談の時期には意図的に1on1の実施を避けるなどの工夫も欠かせません。こうした年間計画を「推奨」ではなく、「前提」とする設計であることを周知することが重要です。

(参考:『オンボーディングとは?5つのメリットと2つの導入事例【施策シート付き】』)

実施率を人事が可視化する

先にも触れましたが、実施状況が見えないと、忙しい部署から1on1がなくなり、形骸化の兆しを早期につかめません。形骸化した状態をそのまま放置すると、部下が成長せずモチベーションも下がってしまいます。

そのため、一定期間未実施の組織には要因ヒアリングと支援策(枠の再設定、テンプレ配布、研修案内)を紐づける運用が有効です。内容は当事者のみ閲覧とし、集計は頻度・継続率・キャンセル率などプロセス指標に限定すれば、安心感を保ちながら改善に活かせます。

このように実施率を可視化することで、1on1の形骸化を防ぐ仕組みになるのです。

管理職育成とセットで設計する

先述の通り、1on1は同じ制度でも、上司の傾聴・質問・フィードバックの癖で体験が大きく変わります。実態調査では導入後の課題として「上司の面談スキル不足」が挙がっており、個人任せでは品質がそろいません。

人事は、管理職育成と一体で、1on1の「目的理解→傾聴→質問→成長支援」のフィードバックを演習中心で学ぶ研修を設計しましょう。新任管理職の受講は必須とし、半年後のフォロー研修やケース共有会を組み合わせると、再現性を高める上で効果的です。

加えて、質問例やNG例のガイドやセルフチェック、相談窓口を用意すれば学習が継続し、現場で迷いにくくなります。研修を終えたあとも継続的なフォローを続けることで、上司のスキルも向上し続けるでしょう。

1on1で話すテーマに関するよくある質問

最後に、1on1に関してよくある質問の回答をまとめました。話すテーマについて迷う場合には、改めてこちらを参照してください。

Q1:1on1と評価面談の違いは何ですか?

評価面談は目標設定や達成度の確認、評価結果のフィードバックが目的で、実施は四半期・半期などが一般的です。一方1on1は、成長支援と信頼構築を狙い、業務の進捗や課題、キャリア、体調など幅広い話題を定期的(週に1回~月に1回程度)に扱います。

進め方も、評価面談は上司からの説明が中心になりやすいのに対し、1on1は対話形式で部下の意見や悩みを聴くことが前提となります。

制度設計で両者の目的・頻度・記録の扱いを規定で分け、1on1シートの内容は評価資料にしないことまで定義することが重要です。

Q2:新人と1on1するときに話すことは何ですか?

新入社員との1on1では、業務の進捗・詰まりに加え、社内ルールの理解、関係者とのコミュニケーション、体調などを早めに拾うことが大切です。

新人が話題を出しやすいよう、質問例を事前共有しておくと沈黙が減ります。人事は入社後3か月など期間限定の標準アジェンダを用意し、「今困っていること/助けが必要なこと/次回までの一歩」を毎回記録するシートを配布します。

頻度も週次→隔週へ移行する段階設計にしておけば、準備負荷を抑えつつ定着しやすいでしょう。

Q3:1on1で部下側が話さなければならない内容は何ですか?

部下が「報告だけ」になると、1on1は進捗会議に置き換わり、学びや課題の早期発見が弱まります。

例えば、「今困っていること・支援が必要なこと」「業務の優先順位」「今後やってみたいこと」「体調やはたらき方への不安」などを話す内容として整理しておくことがお勧めです。

人事は、部下向けの事前入力欄をシートに用意し、「テーマ選択→事実→気付き→次の一歩」の型で提出できる仕組みにすると、対話が自走するでしょう。

Q4:1on1で避けたいNG例は何ですか?

1on1を形骸化させないために、運用ガイドでは以下をNG例として明記し、研修で共通理解を取っておくことが重要です。

【1on1で避けたいNG例】
●評価や査定コメントをその場で付ける
●上司が一方的に指示/指摘し続ける
●報告だけを求めて詰問する
●他者比較や人格否定に触れる
●結論を急いで助言を連発する

また、面談内容を本人の同意なく共有する、シートを評価資料に転用する運用も避けたいところです。

こうしたNG行動を防ぐには、「評価は別面談」「指示・指摘は必要最小限」といった禁止事項と守秘範囲をガイドに明記し、研修で周知する必要があります。

1on1シートを無料ダウンロード

確認事項や話した内容などを記録する「1on1シート」を用意しておくと、より1on1が実施しやすくなります。1on1シートに記入したほうが良い項目を簡単に紹介します。

1on1の記録に使える「1on1シート」のテンプレート

本人の中長期目標をベースに、毎回の1on1のテーマや実際に話した内容などを記録します。
人事は、次回までのToDoと進捗欄を設け、合意事項の継続性を担保します。

キャリア開発の促進「1on1シート」のテンプレート

これまで社内でどのような業務を担当してきたか、1on1を通じてわかった部下の「特性」や「キャリアビジョン」を記録します。1on1記録を付けたあとに、キャリアに関する情報だけを整理し直すことで、本人のキャリア形成につなげられます。

※このほかにも、部下の基本情報や日ごろの様子をメモしていくことも有効です。上司からのフィードバックが必要な内容は、次回の1on1の際に伝えられるように設計しておきましょう。

まとめ

1on1は導入しただけでは、雑談や進捗確認に偏ったり、評価面談と混同されたりして形骸化しやすい施策です。制度として機能させるには、人事が目的を明確化した上で、標準テーマ・質問テンプレ・基本進行フローを共通化し、記録の範囲と評価への転用禁止を明文化する必要があります。

さらに、1on1シート(入力導線)の整備、管理職向け研修、実施率の可視化と定期的な見直しをセットで設計すれば、運用のばらつきを抑えながら継続的な改善につなげられます。

今回の記事で紹介しているテーマ(話題)例や、部下の本音を引き出す質問例などを参考に1on1を実施し、「部下の成長促進」「組織・チーム力の向上」「離職防止(モチベーション向上)」につなげてみてはいかがでしょうか。

1on1に対する現場の受け止め方や課題感も知りたい方は、以下の記事で詳しく解説しています。
(参考:『1on1に対するはたらく側の本音。調査から見える「あるべき姿」とは』)

記事で紹介したポイントを実務に落とし込むには、面談内容を整理・記録するためのツールと、キャリア開発の観点で1on1を設計するための考え方をあわせて整備することが重要です。すぐに活用できる「1on1シート」と、キャリア開発を促す1on1の進め方をまとめた資料を、下記よりダウンロードのうえご活用ください。

(制作協力/株式会社eclore、編集/doda人事ジャーナル編集部)

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