【雛型テンプレ付】雇用契約書とは?記載事項と書き方、作成のポイントを解説
新たに労働者を雇い入れる際は、企業が定める労働条件に当人が合意したことを証明する「雇用契約書」を作成します。実際に作成する立場になると、細かな点でどのように記載すれば良いのかを悩むこともあるのではないでしょうか。
企業と労働者の間で結ばれる契約は、一歩間違えると大きなトラブルや労働争議につながりかねません。今回は、テンプレート(ひな型)をベースに、雇用契約書の正しい記載方法を詳しく解説していきます。
人事・採用業務を効率化できる「労働条件通知書 兼 雇用契約書」のひな形テンプレートを無料でダウンロードできます。Word形式で編集も簡単ですので、ぜひ下記よりご活用ください。
雇用契約書のテンプレート【無料】
雇用契約書は、「労働条件通知書」と呼ばれる書類とまとめて、「労働条件通知書兼雇用契約書」として作成することも少なくありません。
労働条件通知書とは、企業側が労働者に明示しなければならない事項を記載する書類のことです。雇用契約書とまとめれば、労働条件の通知と双方の合意を同一の書類で行えるため、雇用契約を円滑に進められます。
以下で労働条件通知書兼雇用契約書の無料テンプレートをダウンロードできますので、ぜひ活用してください。
労働条件通知書兼雇用契約書の記載例と作成ステップ【例文付き】
雇用契約書に記載する項目は各企業で自由に決められる一方で、労働条件通知書に記載する項目は、労働基準法によって定められています。
そのため、作成時には労働基準法に基づいて内容を精査する必要があります。
具体的には、以下の事項を記載します。
【労働条件通知書兼雇用契約書に記載する項目】
| 記載が義務付けられている項目 | 1.労働契約の期間 2.就業の場所・従事する業務の内容 3.始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、交代制勤務をさせる場合は就業時転換(交代期日あるいは交代順序など)に関する事項 4.賃金の決定・計算・支払い方法、賃金の締め切り・支払いの時期に関する事項 5.退職に関する事項(解雇の事由を含む) 6.就業場所・業務の変更の範囲 7.更新上限の有無と内容(有期雇用の労働者の場合のみ) 8.無期転換の申請機会(有期雇用の労働者の場合のみ)※契約更新時に必要 9.無期転換後の労働条件(有期雇用の労働者の場合のみ)※契約更新時に必要 10.昇給の有無(パート・アルバイトの場合のみ) 11.退職手当の有無(パート・アルバイトの場合のみ) 12.賞与の有無(パート・アルバイトの場合のみ) 13. 雇用管理についての相談窓口の担当部署名・担当者名等(パート・アルバイトの場合のみ) |
|---|---|
| 条件により記載が必要な項目 | ●昇給に関する事項 ●退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払い方法、支払い時期に関する事項 ●臨時に支払われる賃金、賞与などに関する事項 ●労働者に負担させる食費、作業用品などに関する事項 ●安全・衛生に関する事項 ●職業訓練に関する事項 ●災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項 ●表彰、制裁に関する事項 ●休職に関する事項 |
(参照:厚生労働省『労働契約等・労働条件の明示』、『令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます』、『パートタイム・有期雇用労働法の概要』)
上記を踏まえた上で、本項では雇用契約書を作成する手順を記載例とともに紹介します。
【雇用契約書を作成する手順】
1.入社日を記載する
2.労働契約の期間を記載する
3.就業場所を記載する
4.従事する業務の内容を記載する
5.始業および終業の時刻を記載する
6.休憩時間を記載する
7.所定労働時間を超える労働の有無を記載する
8.休日を記載する
9.休暇を記載する
10.就業時転換に関する事項を記載する
11.賃金を記載する
12.退職に関する事項を記載する
13.保険制度に関する事項を記載する
14.企業情報を記載する
15.内容に誤りがないかを、社内の複数人で確認する
16.企業欄に押印または署名する
17.雇用する労働者に、労働者情報と締結年月日を記載してもらう
18.双方の押印または署名がそろった書類コピーし、労働者に渡す
19.原本を企業で保管する
1.入社日を記載する
労働者と口頭やメールなどで合意した入社予定日を記載します。1日付入社の場合、仮に当日が休日の場合でも、1日を入社日としたほうが、期間の計算に齟齬(そご)が発生しにくくなります。
例:「2025年1月1日」
2.労働契約の期間を記載する
雇用期間に定めがあるのかどうかを、記載しましょう。契約期間に定めがある場合には、いつからいつまでの契約なのかを明示しましょう。試用期間がある場合は、その期間を明示するか、「入社後何カ月間」などと記載します。
例:(無期雇用の場合)「期間の定めなし」
例:(無期雇用で、試用期間がある場合)「期間の定めなし(試用期間:入社後3カ月間)」
例:(有期雇用の場合)「2024/10/1~2025/09/30」
例:(有期雇用で、試用期間がある場合)「2024/10/1~2025/9/30(試用期間:2024/10/1~2024/10/31)」
また有期雇用の場合には、契約更新に関する事項を、必ず明示する必要があります。更新の有無について、「自動的に更新する」「更新する場合がある」「契約の更新はしない」のいずれかを選択してください。
更新の判断基準について、「契約期間満了時の業務量」「勤務成績、態度」「能力」「企業の経営状況」「従事している業務の進捗(しんちょく)状況」のうち、該当するものを記載します。
なお、ほかに基準がある場合は、その旨を記載しても構いません。
3.就業場所を記載する
実際に就業する具体的な場所を、記載しましょう。本社以外での就業となる場合も、場所を正確に記載する必要があります。
転勤や配置転換により、就業場所が変更となる可能性があるかどうかの記載は必須ではありませんが、トラブルにつながりやすいため、併記しておくと安心です。
例:「本社 総務課」
「名古屋支店 営業部」
例:(変更可能性がある場合)「本社 総務課(ただし業務上の都合により変更する場合がある)」
4.従事する業務の内容を記載する
入社後に担当してもらう業務内容を、記載しましょう。
複数の業務がある場合には、全て記載してください。あまりに細かい業務内容を記載すると、柔軟な対応が難しくなってしまうため、ある程度広範囲の記載にとどめておくケースもあります。
例:「総務業務」、「経理業務」、「システム開発業務」など
5.始業および終業の時刻を記載する
労働開始時刻と終了時刻を、記載しましょう。シフト制や変形労働時間制など、決まった時刻での労働でない場合は、そのルールを記載します。
例:「9:00~18:00」
例:(変形労働時間制の場合)
「1年単位の変形労働時間制として、次の勤務時間の組み合わせによる。
9:00~18:00、15:00~24:00、21:00~9:00」
6.休憩時間を記載する
労働時間のうち、休憩時間を何分与えるかを記載しましょう。
具体的な時刻のルールを記載する必要はありません。
例:休憩時間 「60分」
7.所定労働時間を超える労働の有無を記載する
所定労働時間を超えて労働する可能性があるかどうかを、記載しましょう。
具体的な見込み時間を記載する必要はありません。
例:所定時間外労働 「有」
例:所定時間外労働 「無」
8.休日を記載する
労働する必要がない休日に関する事項を、記載しましょう。
例:(定例の場合)「毎週土・日・国民の祝日」、「年末年始(12月29日~1月3日)」
例:(非定例の場合)「週当たり2日」、「月当たり8日」
例:(1年単位の変形労働時間制の場合)「年間108日」
9.休暇を記載する
年次有給休暇の日数や付与条件、そのほかの休暇について、記載しましょう。
詳しい日数や条件は、「詳細は、就業規則を参照」と記載すれば省略できます。
例:(年次有給休暇)「6カ月継続勤務した場合、10日以降、労働基準法の定めに従う」
例:(その他休暇)「慶弔休暇」「傷病休暇」
10.就業時転換に関する事項を記載する
この項目は、労働者を2組以上に分けて就業させる、いわゆる交代制勤務がある場合にのみ記載します。記載する項目は、「勤務パターン」「交代期日」「交代順序」です。
例:始業時間および終業時間は、法定労働時間の範囲内で定めた勤務割により1か月ごとに定めるものとし、当該勤務割は、対象期間の起算日までに書面で通知する
11.賃金を記載する
賃金の決定方法や支払い方法、締め日や支払いの時期について、記載しましょう。基本給以外に手当を支給する場合は、その金額や決定方法についても記載します。
例:
1.基本給 「月給200,000円」
2.通勤手当 「全額支給」
3.所定時間外、休日または深夜労働に対して支払われる割増賃金率
「A.所定時間外 25% B.休日 35% C.深夜 25%」
4.賃金締切日 「毎月月末」
5.賃金支払い日 「翌月25日」
6.賃金の支払い方法 「本人名義の銀行振込」
12.退職に関する事項を記載する
定年の有無や年齢、定年後再雇用制度の有無、自己都合退職の手続きについて、記載しましょう。
例:
1.定年制 「有(60歳まで)」
2.定年後再雇用制度 「有(65歳まで)」
3.自己都合退職の手続き 「退職する14日以上前に届け出ること」
13.保険制度に関する事項を記載する
「健康保険」「年金保険」「雇用保険」「労災保険」の加入有無について記載します。法律に基づき、適用除外対象者を正しく記載してください。
例:
健康保険、年金保険(厚生年金保険)、雇用保険、労災保険
※社会保険適用除外対象者
1.週の所定労働時間が20時間未満の場合
2.賃金月額が月8.8万円未満(年約106万円未満)であること(※)
3.雇用期間が2カ月以内で各条件を満たさないこと
(参照:厚生労働省『社会保険の加入対象の拡大について』)
14.企業情報を記載する
企業の「名称」「所在地」「役職」「氏名」を記載します。社内規定などにより、雇用に関する決定権限を持っている人物が、契約当事者となります。
例(記名押印の場合):
名称:「●●株式会社」
所在地:「東京都中央区▲▲-▲▲-▲▲ ▲▲ビル ▲▲階」
代表者名:「最高人事責任者 (氏名の印字) (印)」
例(署名の場合):
名称:「●●株式会社」
所在地:「東京都中央区▲▲-▲▲-▲▲ ▲▲ビル ▲▲階」
代表者名:「最高人事責任者 (自署による署名)」
15.内容に誤りがないかを、社内の複数人で確認する
労働条件と、企業情報の記載まで完了したら、内容に誤りがないかどうかを確認しましょう。万が一誤りがあった場合は、契約書の再作成や、労働者との調整などが必要になります。
作成担当者と確認担当者が別々にいると、多少なりともミスを防げるでしょう。
16.企業欄に押印または署名する
内容に誤りがないことを確認できたら、企業欄に押印または自署による署名を行います。押印欄には、役職印を用いることが一般的ですが、個人名の印でも問題ありません。
17.雇用する労働者に、労働者情報と締結年月日を記載してもらう
もう一方の契約当事者である労働者に、自身の住所、氏名、締結年月日を記載してもらいます。
氏名欄に、自署による署名を記入してもらった場合、押印はなくても構いません。事前に、企業側で住所や氏名を印字した状態で書面を提示した場合は、押印または自署による署名のいずれかをもらってください。締結年月日には、労働者が記入する当日の日付を記載します。
契約のために来社してもらうことが困難な場合、郵送によるやりとりも可能です。その場合は、確かに受け取ったかどうかの証拠があると安心です。配達状況を確認できる方法で発送しましょう。
18.双方の押印または署名がそろった書類をコピーし、労働者に渡す
双方の押印または自署による署名がそろったら、契約成立です。
契約内容がお互いの手元にある状態にしておくと、トラブルが発生した場合に確認しやすいため、労働者に保管用のコピーを渡します。PDF化したデータをメールで共有する形でも良いでしょう。
19.原本を企業で保管する
契約を結んだら、契約書の原本は企業側で厳重に保管しておきます。入社日順や氏名順など、取り出しやすい形での保管が必要です。
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労働条件通知書兼雇用契約書に記載する項目
先述の労働条件通知書兼雇用契約書に記載する項目は、「絶対的明示事項」「相対的明示事項」に分けられています。
●絶対的明示事項(記載が義務付けられている項目)
●相対的明示事項(条件により記載が必要な項目)
以下でそれぞれの詳細を見ていきましょう。
絶対的明示事項(記載が義務付けられている項目)
絶対的明示事項とは、労働条件通知書に必ず記載しなければならない項目のことです。
雇用契約書への記載は義務付けられていませんが、労働条件通知書兼雇用契約書を作成するのであれば、以下の項目を盛り込む必要があります。
●労働契約の期間
●就業の場所・従事する業務の内容
●始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、交代制勤務をさせる場合は就業時転換(交代期日あるいは交代順序など)に関する事項
●賃金の決定・計算・支払い方法、賃金の締め切り・支払いの時期に関する事項
●退職に関する事項(解雇の事由を含む)
●就業場所・業務の変更の範囲
●更新上限の有無と内容(有期雇用の労働者の場合のみ)
●無期転換の申請機会(有期雇用の労働者の場合のみ)
●無期転換後の労働条件(有期雇用の労働者の場合のみ)
●昇給の有無(パート・アルバイトの場合のみ)
●退職手当の有無(パート・アルバイトの場合のみ)
●賞与の有無(パート・アルバイトの場合のみ)
●雇用管理についての相談窓口の担当部署名・担当者名等(パート・アルバイトの場合のみ)
(参照:厚生労働省『労働契約等・労働条件の明示』、『令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます』)
これらの記載を怠ると、労働基準法違反で30万円以下の罰金が科される可能性があります。労働条件通知書兼雇用契約書の作成時には、記入漏れがないよう入念に確認しましょう。
また労働条件通知書の絶対的明示事項は、法改正によって変更されることもあるため、最新の情報を常に把握しておくことが大切です。
相対的明示事項(条件により記載が必要な項目)
一方の相対的明示事項は、「企業が相当する制度を設けている場合」にのみ明示が義務付けられる項目です。
その具体例は以下の通りです。
●昇給に関する事項
●退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払い方法、支払いの時期に関する事項
●臨時に支払われる賃金、賞与などに関する事項
●労働者に負担させる食費、作業用品などに関する事項
●安全・衛生に関する事項
●職業訓練に関する事項
●災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
●表彰、制裁に関する事項
●休職に関する事項
(参照:厚生労働省『労働契約等・労働条件の明示』)
上記の項目は、労働条件通知書に記載せず、口頭で説明するだけでも問題ないとされています。とは言え、労働者との認識のずれやトラブルを防ぐためにも、書面で通知することをお勧めします。
雇用契約書の法的効力と電子化の可否
ここでは、雇用契約書の法的効力と電子化についてお伝えします。
●雇用契約書の法的効力
●電子契約でも雇用契約は有効
雇用契約書の法的効力
雇用契約書に記載されている内容は、労使双方が合意することで法的効力を持ちます。
ただし、内容が労働基準法に違反している場合は例外です。実際に、労働基準法第13条には以下の記載があります。
(この法律違反の契約)
第十三条 この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、この法律で定める基準による。
(引用:e-Gov『労働基準法 第13条』)
例えば、「1日8時間を超える労働を行ったとしても割増賃金を支払わない」という条件は、労働基準法に違反しているため無効となります。雇用契約書の作成時には、記載する内容が適正かどうかをしっかりと確認しましょう。
電子契約でも雇用契約は有効
雇用契約書は、紙と電子データのどちらで交付しても問題ありません。これは、労働条件通知書兼雇用契約書も同様です。
ただし労働条件通知書兼雇用契約書を電子化するには、労働基準法施行規則第5条にのっとり、次の全ての要件を満たす必要があります。
【労働条件通知書兼雇用契約書を電子化する要件】
●労働者が電子化を希望している
●プリントアウトできる形式で送付する
●第三者に情報が漏れないようにする
労働条件通知書兼雇用契約書を電子データで交付する際は、労働者からの承諾を得た上で、メールやチャットなど上記の要件を満たせる手段を用いてください。
(参照:e-Gov『労働基準法施行規則 第5条』)
【雇用形態別】雇用契約書を作成する際の注意点
雇用契約書を作成する際には、いくつか気を付けなければならないことがあります。
●正社員の場合
●契約社員の場合
●パート・アルバイトの場合
本項では、上記ケースに分けてそれぞれの注意点を紹介します。
正社員の場合
雇用期間の定めがない正社員は、長期勤務を前提として採用することが一般的です。
そのため、在職中に転勤や人事異動、業務内容の変更などを命じる可能性が高いと考えられます。正社員の雇用契約書を作成する際は、その旨を明示して認識の相違をなくし、労働条件を巡るトラブルを未然に防ぐことが大切です。
契約社員の場合
企業側は有期雇用契約を結ぶ契約社員に対して、雇用契約書などで「契約期間」「更新の有無」「更新の条件」などを明示することが義務付けられています。
また、契約を更新する場合は労働条件が変わるため、新たな雇用契約書の作成が必要です。
パート・アルバイトの場合
パート・アルバイトの労働者を雇う際は、昇給・退職手当・賞与の有無について、書面で明示することが義務付けられています。
(労働条件に関する文書の交付等)
第六条 事業主は、短時間・有期雇用労働者を雇い入れたときは、(中略)厚生労働省令で定めるもの(次項及び第十四条第一項において「特定事項」という。)を文書の交付その他厚生労働省令で定める方法(次項において「文書の交付等」という。)により明示しなければならない。
(引用:e-Gov『短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律 第6条』)
また、事業主は、短時間・有期雇用労働者からの相談に対応するため、雇用管理に関する相談体制を整備する義務があります。
(相談のための体制の整備)
第十六条 事業主は、(中略)短時間・有期雇用労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制を整備しなければならない。
(引用:e-Gov『短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律 第16条』)
相談窓口の明示については、【相談担当者の氏名・役職・担当部署】などを明らかにすることが望ましいと、厚生労働省の資料でも示されています。
相談窓口の明示の具体例としては、相談担当者の氏名、相談担当の役職、相談担当部署などが考えられます。
(引用:厚生労働省『3.パートタイム労働法の概要(3P)』)
ほかの雇用形態とは記載しなければならない項目が異なる点に気を付けましょう。
雇用契約書の内容を変更したい場合の対処法
雇用契約書の内容を変更するのであれば、その理由と必要性を従業員に説明し、合意を得た上で行いましょう。以下に示す労働契約法第8条では、雇用契約の内容は労使双方の合意があれば変更できると定められています。
(労働契約の内容の変更)
第八条 労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。
(引用:e-Gov『労働契約法 第8条』)
またその際は、「労働者にどのような説明を行ったのか」「確かに労働者から合意を得たのか」を証明できるよう、覚書を交付することが重要です。覚書を交付すれば、合意を巡るトラブルを未然に防げます。
雇用契約書に関するよくある質問
最後に、雇用契約書に関する疑問にお答えします。
●雇用契約書と労働条件通知書の違いとは?兼用しても問題ない?
●雇用契約書に収入印紙は必要か?
●労働者に渡す書類はコピー?それとも2部作成する?
●雇用契約書の内容に違反した場合はどうなる?
●雇用契約書の再発行は可能?
●雇用契約書の内容に誤りが発覚した場合はどうする?
●雇用契約書を作成するタイミングと保管期間は?
●口頭での雇用契約に効力はある?
雇用契約書と労働条件通知書の違いとは?兼用しても問題ない?
雇用契約書と労働条件通知書には、以下のような違いがあります。
| 雇用契約書 | 労働条件通知書 | |
|---|---|---|
| 目的 | 労働条件への合意を証明する | 企業から労働者へ労働条件を明示する |
| 交付のタイミング | 入社承諾後から入社日までの間 | 入社承諾後から入社日までの間 |
| 交付の方法 | 労使双方の署名または記名押印 | 企業からの提示のみ |
| 法律上の要否 | 義務なし | 義務あり(労働基準法第15条第1項) |
| 作成・提示しなかった場合 | 罰則なし | 罰則あり(30万円以下の罰金) |
2つの書類は、労働条件通知書兼雇用契約書としてまとめても問題ありません。
ただしその際は、両者の違いを理解した上で、過不足がないように作成する必要があります。
雇用契約書に収入印紙は必要か?
雇用契約書は、印紙税法で言及されていない不課税文書のため、収入印紙の貼り付けは不要です。
労働者に渡す書類はコピー?それとも2部作成する?
どちらでも問題ありません。
対面で契約を取り交わす場合、原本1通に双方の署名を行い、コピーを取って労働者に渡す方法が便利です。郵送などにより遠隔地間でやりとりする場合には、同じ契約書を2部作成し、労働者が押印または署名した後、1部のみ返送してもらう方法もあります。
雇用契約書の内容に違反した場合はどうなる?
交わした雇用契約書に記載されている労働条件を、企業が守らなかった場合、どのような事態が想定されるでしょうか。特に「休日を減らす」「手当を支払わない」など、労働者の立場から見て不利な違反があった場合は、トラブルになる可能性が高くなります。
明示した労働条件が事実と異なっていた場合、労働者は即時に労働契約を解除できます。場合によっては、労働基準監督署なども巻き込んだ争議につながるかもしれません。
そして、「そのような体質の企業だ」という評判が広まることは企業ブランドの毀損にもつながり、その後の採用活動にも影響する可能性があります。
念頭に置く必要がある原則は、契約書の内容と異なる労働条件ではたらいてもらうためには、労働者の合意が必要だということです。また、その変更内容には、合理的な理由がなくてはなりません。万が一、労働条件の変更が必要な場合は、事前に労働者へ打診して合意を得ましょう。
雇用契約書の再発行は可能?
労働者が雇用契約書を紛失したことを理由に、再発行を求めてきた場合には、契約を結ぶときと同様、企業が保管している雇用契約書の原本をコピーして渡すことで対応できます。
雇用契約書の内容に誤りが発覚した場合はどうする?
雇用契約書の記載に誤りがあった場合は、すぐに労働者に謝罪しましょう。そして、内容を変更する旨とその意図をしっかりと説明し、合意を得てから該当部分の変更を行ってください。
内容の変更は、「雇用契約修正合意書」「覚書」などの書面を作成し、双方の押印または署名で合意を証明することで成立します。
雇用契約書を作成するタイミングと保管期間は?
雇用契約書は、労働者の入社承諾後から入社日までの間に作成します。入社の直前は社会保険の手続きや備品の準備などで時間を取られることが考えられるため、可能な限り早めに作成しておくと良いでしょう。
また雇用契約書の保管期間は、労働基準法第109条によって5年間と定められています。
(記録の保存)
第百九条 使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。
(引用:e-Gov『労働基準法 第109条』)
違反すると30万円以下の罰金が科される可能性があるため、労働者が退職または死亡した日から5年間、厳重に保管してください。
口頭での雇用契約に効力はある?
雇用契約書の作成は義務ではないため、口頭契約でも問題はありません。民法上、労使双方の合意があれば口頭での雇用契約が成立します。
とは言え、多くの企業では、労働条件を巡るトラブルを避けるために雇用契約書を作成しています。書面に契約内容を残しておけば、万が一労働条件に関する訴訟を起こされても、合意の証明が可能です。
まとめ
雇用契約には、さまざまな法律が関連しており、一つひとつの項目にはルールがあることをご理解いただけたでしょうか。労働者との良好な関係を保つためにも、労働条件を明らかにすることと、合意を得ることが不可欠です。
人事・採用業務にすぐ使える「労働条件通知書 兼 雇用契約書」のWord形式ひな形テンプレートを無料でご用意しました。雇用条件の明確化とトラブル防止に、ぜひ下記からダウンロードしてご活用ください
(制作協力/株式会社eclore、編集/d’s JOURNAL編集部)
労働条件通知書 兼 雇用契約書テンプレート【Word版】
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