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【弁護士監修】身元保証とは?採用における意味と意義、企業が活用する方法について

公開日:2017.12.25

PROFILE

メリットパートナーズ法律事務所(第二東京弁護士会所属)

木村 康紀(きむら やすのり)弁護士
【監修・寄稿】

労務を含む幅広い分野の企業法務を取り扱う法律事務所で5年半働いた後、3年間内閣府会計課へ出向。内閣府では他部局からの相談も多々受け、組織内での法務の難しさを実感。現在は「組織内で理解が得られるアドバイス」を心掛け、労務のほかM&A、知的財産、食品関係等様々な分野の案件に対応。また、ベンチャーからの相談は、面白いものであれば無償での相談にも応じている。

内定承諾後や入社のタイミングにおいて、入社(予定)者に身元保証書を提出させる企業は多いと思います。しかし、身元保証書が、法的にどのような意味を持ち、いざというときに会社を守る効力を発せられるようにするには、どのような内容にしておくべきかを完璧に理解している方は、少ないのではないでしょうか。

雇用時における身元保証契約とは、雇用される人物(被用者)が、将来、雇用主(使用者)に損害を与えてしまった場合、身元保証人がその損害を代わりに賠償するという意味をもった契約を指します。(身元保証ニ関スル法律第1条)
採用時に被用者の素性などを担保するだけの契約というわけではなく、実は企業にとっていざというときのためにしっかりとした準備が必要な契約の一つであると言えます。ただし、「きちんとした運用が必要」であるといったことは、そもそもあまり知られていないのではないでしょうか。そこで、今回は、身元保証契約の意味や意義、さらには、運用上の留意点についてご紹介していきます。

身元保証契約とは? 身元保証契約の意味と意義について

身元保証契約は、被用者が使用者に損害を与えてしまった場合、身元保証人がその損害を代わりに賠償する契約ですが、素性のわかりきっていない被用者を雇用するリスクを、被用者の身内や知人に分担してもらうための制度とも言えるでしょう。

身元保証契約とは? 身元保証契約の意味と意義について

では実際に、どのような場面で効力を発するのでしょうか。次のように、被用者が「わざと」または「ミス」によって会社に損害を与えた場合、身元保証人に対して代わりに賠償してもらうことができます。

会社への損害例

  • 会社のお金を使い込んだ場合
  • 会社が管理している個人情報を漏洩させてしまった場合
  • 会社のパソコンを紛失してしまった場合
  • 業務のために預かっていた会社の備品を壊してしまった場合
  • 故意的に経費を水増しして請求した場合 など

その他、身元保証契約の活用例とは

身元保証契約は身元保証人に賠償してもらう以外にも、身元保証契約を事前に締結しているからこそできることがあります。
例えば以下のような例です。

・本人とのみでは感情的になってしまう場合に、話し合いに立ちあってもらう
・無断欠勤で本人にも連絡がつかないような場合に連絡を取り、一緒に家に行ってもらう

このように、第三者となる協力者が必要となった段階で、直ちに連絡が取れることができます。同時に、本人にも「身元保証人になっているから連絡を取った」とは言いやすいことです。身元保証人には親や親族、被用者とつながりが深い方が立つことが多いため、協力してくれる傾向にあります。弁護士が前面に立つ前に、穏便な解決を目指せるでしょう。

ちなみに、私が関わった案件では、「メンタルヘルスの不調を理由に休職している被用者との窓口となってもらうため」や「退職後の生活に不安がある退職者の生活支援をお願いするため」に、身元保証人本人に対し、連絡を取ったこともあります。これは、休職中であっても安全配慮義務があることや、退職者であっても在職中の出来事を原因とした傷病については退職後に悪化した場合に企業側が責任を負う可能性もあることからです。

意外と知らない身元保証に関する留意点

意外と知らない身元保証契約

身元保証契約は、企業のリスクヘッジのために必要不可欠な契約であることは理解いただけたでしょう。しかし、身元保証契約を締結しているからといって、いつまでも損害の全額を身元保証人に請求できるのかというと、そうではありません。
身元保証契約は、将来の損害を賠償する契約であり、契約時は損害額がわからないため、身元保証ニ関スル法律や判例により、身元保証人が賠償責任を負う範囲が制限されています。この制限を知らないまま運用をしてしまうと、いざというときに、身元保証人に賠償を求めることも、協力を求めることもできなくなる可能性があります。

そこで、見落としがちな身元保証契約の運用上の留意点についてご説明します。

身元保証契約が有効な期間とは

身元保証契約の有効期間は、契約書で期間を定めなかった場合は原則として3年とされます(身元保証ニ関スル法律第1条)。また期間を定める場合でも5年が上限です(身元保証ニ関スル法律第2条)。さらに自動更新はできないとされています(札幌高判昭和52年8月24日)。
したがって、身元保証契約を有効なものとして維持するためには、契約書に5年の有効期間を明記するなど有効期間を適切に管理し、期間満了時に更新契約を締結し直していく必要があります。
就業規則などで「会社が必要と認めた場合、身元保証の期間延長を求めることがある。延長する場合は、新たに身元保証書を提出しなければならない。」旨定めておくことを検討しても良いでしょう。

雇用主(使用者)の通知義務とは

使用者は、①被用者に業務上不適任や不誠実な事柄があった場合、②被用者の任務や任地を変更があった場合には、遅滞なく身元保証人に通知する義務があります(身元保証ニ関スル法律第3条)。
従って、これらの通知をしていなかった場合は、身元保証人に損害額を賠償させることができなくなる可能性があるので注意が必要です。

責任の限定

身元保証人は、被用者の発生させた損害について代わりに賠償する責任を負うことになりますが、通常は全額の賠償が命じられることはありません。軽微なものや、そもそも使用者が負うべき責任であるときには、損害賠償を請求できないというケースも十分にありえます。事案にもよりますが、使用者としては損害額の2、3割程度の賠償を求めることしかできないという相場観でいた方が良いでしょう。

採用時に身元保証契約の提出を拒否されたら?

仮に、身元保証書の提出を拒否された場合はどうなるのでしょうか。採用自体を取りやめることができるのでしょうか。
この点、採用後に、身元保証契約を締結しないこと(身元保証書を提出しないこと)を理由として解雇することも可能となる余地があるとされます。

過去の裁判例では、身元保証書の提出を拒否したことを理由に解雇された者が、予告なく解雇されたとして解雇予告手当金及び遅延損害金を請求したケースにおいて「身元保証書を提出しなかったことは従業員としての適格性に重大な疑義を抱かせる重大な服務規律違反又は背信行為というべき」などとされ、即時解雇すら有効とされています(東京地判平成11年12月16日)。この裁判例からすれば、解雇自体が争われても有効となる余地があるものと考えられます。

もっとも、この裁判例は、①身元保証書の提出が採用の条件とされていたこと ②企業側が金銭貸付けなどを業とする会社であり身元保証書が重要な書類であること を確認した上での判決ですので、企業側の事情によっては異なる判断となる可能性があるので、注意したほうがよいでしょう。例えば、内定を出す段階から、身元保証書の提出が採用の条件であることを書面で十分に周知しておくなど、事前に対応しておくことも大事です。

【まとめ】

盲点になりがちですが、身元保証契約は被用者から提出されることが多く、架空の氏名により署名押印されているケースや身元保証人の了解なく被用者が勝手に作成しているケースがありますので、できることならば、身元保証契約書は身元保証人自身による署名、実印による押印に加え、印鑑証明書の提出まで求められれば安心です。
軽視しがちですが、実は大切な身元保証契約書。身元保証契約とは、素性などについてのみ保証をしている契約であると間違えた認識の方も散見されます。いざというとき企業の自衛のためにも、正しく理解し運用していきたいところです。
 
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