特別休暇の定め方―どんな条件で何日取得可能?就業規則は?|申請書フォーマット付

社会保険労務士法人クラシコ

代表 柴垣 和也(しばがき かずや)【監修】

昭和59年大阪生まれ。人材派遣会社で営業、所長(岡山・大阪)を歴任、新店舗の立ち上げも手がけるなど活躍。企業の抱える人事・労務面を土台から支援したいと社会保険労務士として開業登録。講演実績多数。

特別休暇とは。従業員エンゲージメントや生産性向上に期待
法定休暇と法定外休暇の違い
特別休暇と有給休暇の違い
特別休暇は有給?無給?
特別休暇にはどのような種類があるのか?特別休暇の種類と日数
特別休暇を新設する場合の流れ
特別休暇、こんなときどうする?
【申請書フォーマットダウンロード可能】特別休暇の申請方法
特別休暇を新設する際に使える助成金

従業員への福利厚生の一環として、企業が独自に定めることができる「特別休暇」。従業員エンゲージメントの向上のほか、利用目的によっては従業員のスキルアップや生産性向上が期待できます。今回は、法定外の休暇である「特別休暇」の概要や種類、上限日数、取得条件、新設するときの流れなどをご紹介します。導入後、すぐに活用できる、特別休暇の申請書フォーマットもダウンロード可能です。ぜひご活用ください。

特別休暇とは。従業員エンゲージメントや生産性向上に期待

特別休暇とは、従業員への福利厚生の一環として、企業が独自に制定する休暇のこと。慶弔休暇や夏季・冬季休暇から、ボランティア休暇、アニバーサリー休暇まで、その種類は豊富です。英語では、「special holiday」や「special leave」と表現されます。実際にどのような種類・内容の特別休暇を設けるかは、企業によってさまざまです。特別休暇を取り入れることで、以下のような効果が期待できます。

特別休暇の効果①:ワークライフバランスの実現とメンタルヘルス対策

長期休暇を利用して家族や知人と旅行に出かけたり、記念日に休むことができたりすることから、従業員はワークライフバランスが実現しやすくなります。また、リフレッシュできる時間を確保できることにより、従業員のメンタルヘルス対策にもつながるでしょう。

特別休暇の効果②:モチベーションと従業員エンゲージメントの向上

休暇中に心身共にリフレッシュできれば、従業員は「明日からも仕事を頑張ろう」「会社のために頑張って働こう」と思うことができるでしょう。それにより、仕事へのモチベーションや従業員エンゲージメントを高めることが期待できます。
(参考:『エンゲージメント向上は生産性UPや離職防止に効果あり。概念や測定法、高め方を解説』『帰属意識、自社は低い?高い?すぐ実践できる「帰属意識を高める15の施策」-計測シート付-』)

特別休暇の効果③:業務効率化と生産性向上

特別休暇には、リフレッシュ目的で取得できるものだけでなく、スキルアップを目的としたものもあります。従業員の能力や技能を伸ばすために、主体的に学べる時間を確保できるような特別休暇を導入すれば、業務効率化や生産性の向上につながるでしょう。

特別休暇の効果④:企業のイメージアップ

特別休暇を設けることは、社内外からの企業のイメージアップにもつながります。「休暇の充実した、従業員を大切にしている会社」というイメージが学生や求職者に伝わることで、会社への興味や求人に対する応募が増え、結果的に人材確保にもつながるでしょう。

法定休暇と法定外休暇の違い

「休暇」には、法律で従業員への付与が義務付けられた「法定休暇」と、企業が任意で定めることができる「法定外休暇」があります。特別休暇は「法定外休暇」に該当します。法定休暇と法定外休暇の違いを、下の表にまとめました。

法定休暇 法定外休暇
取得日数・条件が法律で
定められているか

定められている

定められていない

種類

「年次有給休暇」「産前産後休暇」「生理休暇」「育児休暇」「介護休暇」「子の看護休暇」の計6種類

「リフレッシュ休暇」や「慶弔休暇」など、会社が任意で決定可能なため種類は豊富

所定労働日数に含まれるか

含まれる

含まれる

給料支払い有無

●「年次有給休暇」は支払う必要有
●その他の休暇については支払い義務がなく、企業が任意で決定可能

支払い義務はなく、企業が任意で決定可能

(参考:『【社労士監修】所定労働日数の計算方法・完全版。状況別に異なる計算の仕方を紹介』)

特別休暇と有給休暇の違い

上記を踏まえて、法定外休暇である「特別休暇」と、法定内休暇の中で企業・従業員にとって身近な「有給休暇」にはどのような違いがあるのでしょうか。

特別休暇 有給休暇
種類

法定外休暇

法定休暇

企業義務

任意

義務

付与条件・日数

企業が任意で設定可能

法律で定められている

給与の支払い

企業が任意で設定可能

支払う必要あり

休暇の利用目的

企業が決定した目的に限定できる

利用目的は決められていない

取得時季

企業が時季を指定することが可能

原則、従業員が自由に取得可能
※業務への影響を考慮し、取得時季の「時季変更権」が認められている

取得時、企業の承認が必要か

企業が承認の有無を決定できる

承認は不要

次年度への繰越

企業の決定による

繰越が必要

(参考:『リフレッシュ休暇とは―付与日数や条件は?企業義務なのか?有給休暇との違いについて』)

特別休暇は有給?無給?

特別休暇は企業が独自に導入できる休暇のため、期間中の給与を「有給とするか」「無給とするか」は企業の任意です。しかし、従業員の取得しやすさを踏まえて、休暇中の給与を支払う(有給とする)企業が一定数あります。では、実際に特別休暇中の給与を支払っている企業はどの程度あるのでしょうか。厚生労働省が行った『平成31年就労条件総合調査』を基に、特別休暇中の給与の支払い状況をご紹介します。

特別休暇は有給?無給?
(参考:厚生労働省『平成31年就労条件総合調査結果の概況 労働時間制度(p4、第7表)』)

「病気休暇」を除いて、特別休暇中の給与を全額支給しているケースが多いようです。従業員の心身のリフレッシュを目的とした「リフレッシュ休暇」については、全額支給が95.9%と非常に高い割合となっています。また近年、社会人の学び直しとして「リカレント教育」が注目されていることもあるためか、「教育訓練休暇」を取得中の給与を全額支給する企業が増えてきていることもわかります。
(参考:『リフレッシュ休暇とは―付与日数や条件は?企業義務なのか?有給休暇との違いについて』)
(参考:『リカレント教育とはいつどんなことを学ぶもの?企業が導入するメリットと取り組み事例』)

特別休暇にはどのような種類があるのか?特別休暇の種類と日数

特別休暇にはさまざまな種類があり、それぞれ取得できる日数も異なります。法定外休暇として取り入れられることの多い、特別休暇の種類や日数などを表にまとめました。

種類 内容 一般的な日数 給与の支払い有無
慶弔休暇

従業員や配偶者が「結婚」「出産」した際や、親族が「死亡」した際に取得できる休暇

●慶事の場合、1日~5日程度
●弔事の場合、1日~10日程度

有給となることが多い

リフレッシュ休暇

一定以上の勤続年数がある従業員が、リフレッシュ目的で取得できる休暇

3日~7日程度
※勤続年数の長さによって、日数が増えることが多い

有給となることが多い

夏季・冬季休暇

夏季(お盆の期間など)や冬季(年末年始など)に取得できる休暇

4日~6日程度

有給となることが多い

病気休暇

従業員が病気になった際、通院や治療などの目的で取得できる休暇

数時間・半日~90日程度まで、企業によって異なる

無給となることが多い

ボランティア休暇

従業員がボランティア活動をする際に取得できる休暇

1日~数年まで、活動内容や企業によって異なる

有給となることが多い

教育訓練休暇

従業員が仕事のスキルアップを目的に訓練を受ける際に取得できる休暇

数日~数カ月まで、企業によって異なる

有給となることが多い

裁判員休暇

裁判員に選出された従業員が、裁判員としての活動を行う際に取得できる休暇

3日~5日程度

企業によって対応が分かれる

バースデー休暇

従業員の誕生日または誕生月に取得できる休暇

1日~3日程度

有給となることが多い

アニバーサリー休暇

結婚記念日や子どもの誕生日など、従業員が設定した記念日に取得できる休暇

1日~1週間程度まで、企業によって異なる

企業によって対応が分かれる(手当を支給するケースもある)

上記のように定めるのが一般的ですが、特別休暇は法定休暇ではないため、実際にどのように規定するかは企業によってさまざまです。とは言え、「福利厚生の一環」であることを考慮すると、「従業員が特別休暇を取得しやすい制度」にすることが望ましいでしょう。

特別休暇を新設する場合の流れ

企業が特別休暇を新設する際のフローを、順を追ってご紹介します。

特別休暇を新設する場合の流れ

フロー①:新設する特別休暇の目的・内容の明確化

まず検討すべきことは、現状の課題を把握した上で、「どのような目的で」「どのような特別休暇を」新設するのかです。例として、「従業員がスキルアップできる機会が不足している」という課題を抱えている場合、「仕事に直結する知識を身に付けてもらう」ことを目的に、「教育訓練休暇」を新設するといったことが考えられます。従業員のニーズを踏まえた上で、企業として目指す方向性に合った特別休暇の導入を検討するとよいでしょう。その際、「対象者の75%以上が●●休暇を取得する」といった数値目標を設定しておくと、より目的が明確になり、効果が期待できます。

フロー②:取得条件や申請手続きなどの明確化

新設する特別休暇の目的・内容が決まったら、取得条件や申請手続きなどの詳細を決めます。決めておきたい項目は以下の通りです。

特別休暇を新設する際に決めておくべき項目

●対象者:「入社何年目以降から取得可能か」など
●取得条件:「どのような場合に取得できるのか」
●取得日数:「何日間取得できるか」「翌年度に繰越できるか」
●取得制限:「結婚の前後●カ月以内」など
●申請手続き:「いつまでに」「誰に対して」申請する必要があるのか
●給与の支払い有無:特別休暇中の給与を「有給」とするのか「無給」とするのか

特別休暇の種類ごとに、上記の項目を明確にしておくとよいでしょう。

フロー③:就業規則への記載

「休暇」に関する項目は、就業規則に必ず記載しなければならない「絶対的必要記載事項」に該当します。そのため、特別休暇を新設する際には、その内容を就業規則に記載する必要があります。就業規則を変更したら、労働基準監督署へ届出を行いましょう。
(参考:厚生労働省『就業規則を作成しましょう』)

特別休暇の就業規則への記載例

第●●条 
1. 従業員が次の事由により休暇を申請した場合は、次の日数を限度として特別休暇を与える。この休暇を取る場合は、原則として事前に所定の様式により「申請先(所属長・人事部など)」へ届け出なければならない。

①結婚休暇(本人が結婚するとき):5日
②配偶者出産休暇(配偶者が出産するとき):2日
③忌引休暇
実養父母・配偶者・子(実子・養子を問わず)の死亡:7日
実祖父母・配偶者の父母・孫・実兄弟姉妹の死亡:3日
④バースデー休暇:1日
⑤リフレッシュ休暇:10日
⑥夏季休暇:4日
⑦冬季休暇:6日
⑧ボランティア休暇:7日
⑨裁判員休暇:5日
⑩●●●休暇:▲日

2. 特別休暇の期間中に休日がある場合には、特別休暇日数に含めないものとする。

3. 第1項▲番目の●●●休暇については、「取得条件(入社●年目以降、特別休暇が取得可能な事案が発生後▲日以内など)」に取得するものとする。

4. 会社は特別休暇取得者に対して、事前又は事後速やかに事実を知るに足る書類又はこれに代わるものの提出を求めることがある。

5. 第1項に記載の●●●休暇と▲▲▲休暇については無給、その他の特別休暇については有給とする。

就業規則への記載方法に迷った場合には、弁護士や社会保険労務士といった専門家に相談するとよいでしょう。

フロー④:従業員への周知

特別休暇は、従業員に利用してもらってこそ価値のあるものです。従業員に特別休暇の取得を促すため、メールや社内報、掲示板、社内SNSなどさまざまなツールを活用して、従業員への周知を行いましょう。また、特別休暇を取得後にアンケートを実施し、「特別休暇を取得したことで、こんなことができた」といった従業員の生の声を社内に伝えることで、特別休暇の取得率アップが期待できます。

フロー⑤:特別休暇を取得しやすい環境づくり

従業員に特別休暇の利用を促すためには、特別休暇を取得しやすい環境づくりも重要です。「引き継ぎの実施」や「業務マニュアルの作成」といったフォロー体制の確立や、上司が積極的に特別休暇取得を促すことなどにより、職場を「休暇が取りやすい」雰囲気に変えるとよいでしょう。それでも特別休暇の取得率が上がらない場合は、「年に最低何日以上は特別休暇を取得しなければならない」と取得を義務化したり、「特別休暇取得時には、●万円を別途支給する」と手当を支給したりするといった対応を検討するのも、有効な手だと言えそうです。

特別休暇、こんなときどうする?

実際に特別休暇を導入する際、法的に定められた休暇でないからこそ、「どのように対応すべきか」に悩む場面もあるかもしれません。人事担当者が対応に迷うことが多いケースと、そのときの対応方法についてご紹介します。

特別休暇を使った場合、皆勤手当は支給すべき?

「年次有給休暇」を従業員が使った場合に、皆勤手当を必ず支給しなければならないという法律の定めはありません。次のように、労働基準法附則第136条で、年次有給休暇を取得した場合の給与に関する取り扱いが定められています。

労働基準法第136条(一部抜粋)

使用者は、有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他取不利益な扱いをしないようにしなければならない。

「有給休暇を取得した従業員に、皆勤手当を支給しない」場合、年次有給休暇の取得促進とはなり難く、社員の士気に影響するかもしれません。皆勤手当ては可能な限り支給すべきでしょう。

一方、特別休暇に関しては、同様の規定がありません。そのため企業が任意で決定することができます。従業員とのトラブルを避けるために、特別休暇の導入時には皆勤手当の取り扱いについてどうするかを検討し、就業規則などに記載しておくべきでしょう。

繁忙期、時季変更権は使える?

「時季変更権」とは、従業員が有給休暇を取得することにより事業の正常な運営が妨げられる場合、有給休暇の取得時季を企業が変更できる権利のこと。特別休暇には、有給休暇を取得する際に使われる言葉である「時季変更権」という概念がありません。その代わり、特別休暇の場合には「企業が事前に取得時季を決めておく」という対応が可能です。あらかじめ繁忙期が予想できる場合には、その時季以外に特別休暇を取得するように定めておきましょう。また、就業規則に「業務の状況によっては、特別休暇の取得を認めない」といった旨を記載しておけば、「業務が忙しい」という理由で、従業員に特別休暇の取得自体を取りやめてもらうこともできます。特別休暇の導入時には、取得時季についても十分に検討することが望ましいでしょう。

【申請書フォーマットダウンロード可能】特別休暇の申請方法

特別休暇を取得する際には、申請書の提出が必要なケースもあります。特別休暇の申請書を作成する際には、「名前」「部署名」「取得期間」「特別休暇中の連絡先」などを記載する欄を設けましょう。
特別休暇の申請書フォーマットは、こちらからダウンロードできます。

なお「リフレッシュ休暇」の申請書についてはは、こちらの記事をご確認ください。

特別休暇を新設する際に使える助成金

特別休暇を新設する際に利用したいのが、「時間外労働等改善助成金(職場意識改善コース)」です。生産性の向上などを図ることで、所定外労働の削減や年次有給休暇の取得促進に向けた環境整備に取り組む中小企業を支援する目的で設けられたこのコースでは、一定の条件を満たした場合、最大100万円の助成を受けることができます。「時間外労働等改善助成金(職場意識改善コース)」の概要を下の表にまとめました。

「時間外労働等改善助成金(職場意識改善コース)」の概要

条件・内容 詳細
支給対象となる事業主

労働者災害補償保険の適用事業主であり、右記のいずれにも該当する「中小企業事業主」

①交付決定日より前の時点で、全ての事業場の就業規則などに、「病気休暇」「教育訓練休暇」「ボランティア休暇」のいずれかの特別休暇が明文化されていないこと
②前年における、労働者の月間平均所定外労働時間数が10時間以上であること

支給対象となる取り組み

右記のいずれか1つ以上の実施が必要

①労務管理担当者に対する研修
②労働者に対する研修、周知・啓発
③外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など) によるコンサルティング
④就業規則・労使協定などの作成・変更(計画的付与制度の導入など)
⑤人材確保に向けた取り組み
⑥ 労務管理用ソフトウェア、労務管理用機器、デジタル式運行記録計の導入・更新
⑦テレワーク用通信機器の導入・更新
⑧労働能率の増進に資する設備・機器などの導入・更新
(小売業のPOS装置、自動車修理業の自動車リフト、運送業の洗車機など)

成果目標

①年次有給休暇の取得促進
②所定外労働の削減

「病気休暇」「教育訓練休暇」「ボランティア休暇」のいずれか1つ以上の特別休暇を、全ての事業所に新たに導入

支給額

成果目標①、②ともに達成した場合

補助率:支給対象となる取り組みの実施に要した経費の「4分の3」(1企業当たり上限100万円)

支給額

成果目標①を達成、成果目標②は未達成の場合

補助率:支給対象となる取り組みの実施に要した経費の「2分の1」(1企業当たり上限50万円)

(参考:厚生労働省『「時間外労働等改善助成金」職場意識改善コースのご案内』)

特別休暇(病気休暇、教育訓練休暇、ボランティア休暇)を就業規則に定め、実際に導入することで、助成金を受け取ることができます。受給するためのハードルは低いとは言えませんが、特別休暇を新たに導入する予定の中小企業は、「時間外労働等改善助成金(職場意識改善コース)」の申請を検討してみてもよいでしょう。

【まとめ】

特別休暇は法定外休暇のため、「取得条件」「日数」「給与の支払いの有無」などを企業が任意で決めることができます。特別休暇を新設する際には、まず目的や内容・詳細を決め、就業規則への記載や従業員への周知などを行いましょう。今回ご紹介した申請書フォーマットや助成金を活用して、従業員への福利厚生の一環として特別休暇を新設し、従業員エンゲージメントや生産性の向上を図ってみてはいかがでしょうか。

(制作協力/株式会社はたらクリエイト、監修協力/社会保険労務士法人クラシコ、編集/d’s JOURNAL編集部)