SHOWROOM、スープストックトーキョー、SmartHRが登壇。リファラル採用3.0へ

COO 唐澤 俊輔

取締役副社長 江澤 身和

執行役員 薮田 孝仁

社員のエンゲージメントを向上させる「ファンベース採用」とは
サービスやプロダクトへの愛で根っこをつなぐ。中長期を見据えたファンづくり

コネで入社するリファラル採用1.0、社員がリクルーターとなるリファラル採用2.0。そして今、リファラル採用3.0の時代が到来しつつあります。

リファラル採用3.0でキーワードとなるのが“社員のファン化”です。2019年12月10日、最先端企業の人事最高責任者がファンベース採用について語るイベント「Fanbase Recruiting MTG」が都内で開催。株式会社MyRefer代表の鈴木貴史氏が司会となり、SHOWROOM株式会社COOの唐澤俊輔氏、株式会社スープストックトーキョー取締役副社長の江澤身和氏、株式会社SmartHR執行役員の薮田孝仁氏が登壇しました。

「社員をファン化するなんて、今さらどんな取り組みをすればいいのだろう」-こう悩む採用担当者は多いはず。すでにファンベース採用へと取り組んでいる各社からは「どのように社員の“当事者意識”を醸成しているか」「採用で失敗したこと」などのリアルな話が飛び出しました。

社員のエンゲージメントを向上させる「ファンベース採用」とは

イベント前半では、MyRefer鈴木氏より、ファンベース採用の概念について説明がありました。

社員のエンゲージメントを向上させる「ファンベース採用」とは

鈴木氏:リファラル採用は、社員をリクルーター化するこれまでの「リファラル採用2.0」から、社員を自社のファンにする「リファラル採用3.0」へと切り替わっています。ファン化することで、社員のエンゲージメントは向上し、自発的に会社を紹介したくなる。その結果、採用へとつながっていく。その仕組みづくりから取り組む採用を「ファンベース採用」と呼んでいます。

ファンベース採用を成功させるために、人事・採用担当者は「自社の一番のファンであり、社員がお勧めしたい会社をつくるディレクター」でなければなりません。そして、「自社のことをよく理解し、自社を心からお勧めしたい」という応援大使のような社員を増やしていかなければならないのです。

自社の一番のファンであり、社員がお勧めしたい会社をつくるディレクター

(株式会社MyRefer 登壇資料より)

ファンベース採用の促進には、3ステップのメソッドがあります。まず、リクルーティング情報やリファラル採用制度の認知をいかに高めるか。次に、社員がファンになるよう、いかに動機付けするか。最後に、社員の行動負荷をいかに下げるか。特に、2つ目の「動機付け」がポイントです。

ファン化するための動機付けは、「共感」「愛着」「信頼」という3つの要素に細分化されています。採用活動に「共感」して取り組んでもらえるよう、自社をお勧めすることに自信が持てる環境を整える。自社のプロダクトや理念に「愛着」を持てるよう、背景にあるストーリーを伝え、巻き込んでいく。リファラル採用制度を「信頼」し、利用してもらえるよう、透明性をもって誠実にコミュニケーションを取る。

では、具体的にどのような取り組みをするべきなのでしょうか。ファンベース採用に取り組まれている3社に、自社の取り組みについてお話しいただきたいと思います。

3社が登場

サービスやプロダクトへの愛で根っこをつなぐ。中長期を見据えたファンづくり

イベントの後半では、リファラル採用に力を入れている企業3社のCHROが登壇。ファン社員をつくる組織づくり論について、Q&A形式のパネルディスカッションが繰り広げられました。

Q. 自社のミッション・バリューへの共感をどう高めていますか?

唐澤氏:SHOWROOMは第二創業期を迎え、経営陣でバリューを固めている最中です。社員の共感を高めるには、経営陣だけではなく、社員も巻き込んで固めるべきなのでは。そういった意見もあると思いますが、合議制にすると「売上を伸ばして、かつ従業員満足度も上げる」と多くを求めてしまいます。

社員も巻き込んで固めるべき

どちらも達成するのは不可能ではありませんが、まずは優先順位を付けることが大切です。絞られたメンバーで深く議論をしないと、今よりも先の目線に持っていくことが難しいので、トップダウン形式でバリューをつくっています。ただし、肝は経営陣で決めましたが、続きの議論はSlack(※)のオープンチャンネルで行っています。社員もその過程を自由に見られるようにしているのです。

(※Slack:ビジネスコミュニケーションツール)

 
薮田氏:SmartHRのミッションやバリューは、自然と使えるわかりやすい言葉に落とし込んでいます。たとえば、「早いほうがカッコイイ」「一語一句に手間ひまかける」など。そして、日常的に使えるよう、Slackに絵文字を追加するなどの工夫をしています。

自然と使えるわかりやすい言葉

江澤氏:スープストックトーキョーでも、言葉の選び方にこだわっています。2016年に親会社から分社化したときに決めた「世の中の体温を上げる」という経営理念がありまして。毎日の仕事の中に組み込める“柔らかい”言葉にしようという背景からできたんです。「会社の理念は?」と聞かれたら、社員だけではなく、約1,500人(2018年3月時点)のパート・アルバイトも全員答えられるようになりました。

言葉の選び方にこだわって

経営陣はどのように組織づくりやリファラル採用に関わっていますか?また一方で、マネジメントメンバーや現場には、どうやって“当事者意識”を醸成させているのでしょうか。

唐澤氏:社員に“当事者意識”を持ってもらうため、経営陣が積極的にリファラル採用に取り組んでいます。私は毎日採用会食に行っていますし、その際は「採用会食行ってくる」と大声で出て行くようにしていますね。経営陣がそうすることで、リファラル採用に対してプラスの雰囲気が醸成されるんですよ。そして、社員が採用活動に取り組んでくれたら、社内で「●●さんが連れてきてくれました!」と取り上げる。このサイクルを回すことが重要だと思っています。

社員に“当事者意識”を持ってもらう

薮田氏:私は、採用に困っていることを社員も認識しておくことが大切だと考えていて。毎週行っている全社会で、募集ポジションや募集人数を発表しています。困っていることをストレートに伝えると、誰かが協力してくれる。その“誰か”を探すため、全社員に向けて定期的に細かく報告することが、結果的に実を結ぶと思っています。

江澤氏:採用の現状を伝えることは大切ですよね。ただ、意外とそれができていない企業も多い気がします。現状を知らない状態だと、採用活動に距離を感じてしまうので、「採用は人事・採用担当者や経営陣がやるもの」という意識が根付いてしまいます。自社の課題が伝わると、視野の広いメンバーは意識してくれるので、情報を共有することは本当に大事です。

Q. 組織のフェーズによって、社員をファンにする取り組みに変化はありましたか?

江澤氏:組織のフェーズという軸よりも、社員の入社時期の軸になるのですが、昔から組織にいる人は「前よりも良い環境になった」と、今と昔を比べるじゃないですか。確かに、昔と比べたら休みも福利厚生の種類も増えました。でも、最近入社した人は今の状況しか知らないから、今が基準になるんです。

今が基準になる

そのため、「今在籍しているメンバーにとって良い組織になれているか」という目線を持つことを大切にしています。メンバーの今の声を常に聞くことで、組織や制度をアップデートしていきたいですね。

薮田氏:組織のフェーズに合わせて変わるというよりも、どちらかというと「変えない」ことを見極めるほうが重要だと思っています。

たとえば、SmartHRでは週に1回、経営会議で話したことをすぐ伝える「全社集会」のような会を開催しているんですよ。人数が増えてくると開催が難しいこともあるので、とある会のときに社員に「残したいですか?なくしますか?」というアンケートをとって聞いてみました。すると、全員が「なくしてほしくない」と。社員の声を聞き、変えてはいけないものを知っておくことは、ファン化する上で大事なポイントだと思いました。

唐澤氏:社員が100名を超えてくると、経営陣が全ての決定権を握れなくなってきます。そんなとき、社員と経営陣との距離をつないでくれるのが、愛だと思うんです。サービスやプロダクトへの愛はあるか。また、それを使うユーザーに対しても愛があるか。どちらも好きだったら、絶対に会社に対しての愛もあるはずです。

愛がある社員を増やすためには、環境づくりにも注力するべきだと考えていて。SHOWROOMの社内にはスクリーンが付いており、エンドレスでSHOWROOMの配信映像を流し続けています。なんとなく目に触れる環境をつくることは、サービスやプロダクトへの愛を深めるために有効な手段だと思います。

鈴木氏(司会):SHOWROOMは、サービスのヘビーユーザーを採用する取り組みもされていましたよね。

ヘビーユーザーを採用する取り組み

唐澤氏:そうですね。もともと配信者をやっていて、「SHOWROOMというサービスが好きで、次は配信者さんのために働きたい」と言ってくれた人がいまして。「ぜひ、お願いします」と入社してもらいました。想いが強い人を採用し続けることができたら、人数が増えて経営陣との距離が遠くなっても、奥深くの根っこでつながっていけるのではないでしょうか。

Q. 組織づくり・採用の取り組みで失敗したことはありますか?

唐澤氏:失敗だらけなんですよね。難しいですよ、本当に。その時は「イケる」と思って実行していますが、今振り返ると「あのとき、こうすればよかった」と思うこともたくさんあります。

たとえば、SHOWROOMに入社する前、メルカリで組織開発の責任者をやっていたときの話です。会社が勢いよく成長していたので、1年で人数が倍になるくらい採用しました。入社歴が浅い社員が半分の比率を占めた結果、いろいろな課題が発生したんですよ。現場の受け入れ体制も整えなければいけませんし、入社3カ月目くらいの社員が採用面接官になることもあって。メルカリのカルチャーが少しずつ薄まっていくのではと懸念する声も社内で上がりました。

人事・採用担当者は2〜3年先を見越した組織設計をして、採用に取り組まなければなりません。常に先手を打ちながら走り続けるのが、人事・採用の難しいところだと思います。

ボードに込められた思い

薮田氏:失敗した話というよりは、失敗しないための施策をご紹介します。SmartHRでは、2018年の夏頃に福利厚生や給与テーブル、昇給実績などの内部情報をまとめた会社説明資料をWebで公開しました。まずは、その資料でSmartHRの実情を理解してもらえていると思います。

一方で、採用広報の観点から見ると、自社の魅力的な部分だけを伝えたいかもしれない。でも、それでは入社してからのミスマッチが発生しやすくなり、お互いに不幸になってしまいます。採用で失敗しないためには、応募者の認識とのギャップをつくらないことが大切。そのため、弊社ではオファー面談に時間をかけているんです。採用に求められているのは、期待値を上げ過ぎず、リアルな部分もしっかりと伝えること。実際の声として、入社した社員からは「事前に抱えていたイメージ通りだったから、資料を見ておいてよかった」と言ってもらえています。

また他の施策で言いますと、リファラル採用においては、残念ながら採用に至らない方もいらっしゃるんですよね。リファラルだったとしても必ずしも採用基準を満たしているわけではありませんし、入社後に双方が失敗したと思わないような採用・選考をしています。ただ、紹介した社員とご本人が気まずくなったり関係性が悪くなったりするのは良くないので、それを防ぐために、不採用後にご飯に行ける「ごめんねご飯制度」があるんです。紹介してもらったら終わりではなく、その後のフォローまで行うことで、紹介の障壁を下げる役割も担っています。

江澤氏:私も、エントリーや面接前に確認してもらえるよう、自社が求めている人物像をはっきり出すことが重要だと感じますね。そもそもマッチしない応募者が面接に来ても、お互いにもったいない時間を過ごすことになってしまうので。

実際に、スープストックトーキョーではコーポレートサイトを新しくつくり、仕事の大変なところも隠さず記しています。面接に来る方には、「まずコーポレートサイトの文章を読んでから来てください」と伝えていて。その結果、マッチしやすい方が面接に来てくれるようになりました。

唐澤氏:採用は、従業員の人生を背負うので、事業で売上を伸ばすのとは責任の次元が違います。だからこそ、最初にリアルな部分も見せないといけないし、選考を受けてくれる人を冷静に見極めなければなりません。たくさん採用したいからといって、良いところしか見せないのは、一番やってはいけないパターンだと思います。

最後に

【取材後記】

社員をファン化し、その愛情を採用へと結び付けていく「ファンベース採用」。リファラル採用3.0の時代が来て、社員主体のリクルーティングがこれからの当たり前になっていくのだと感じました。

そんな背景の下、今回登壇した3社は一過性の取り組みではなく、中長期を見据えたファンづくりをされています。移りゆく時代の中で、常に最先端を走り続けられる企業。それは、愛という深い根っこでつながった組織ではないでしょうか。

(取材・文/柏木 まなみ、撮影/安井 信介、編集/檜垣 優香(プレスラボ)、齋藤 裕美子)