リファラル採用、社員は協力している?20代・30代の本音調査

d's JOURNAL編集部

人材の売り手市場が続く中、新たな採用方法として注目されている「リファラル採用」。自社の社員から人材を紹介してもらうことで、実際に獲得を試みる企業もあります。一方で、「制度を導入しても社員が積極的に紹介してくれない」といった悩みを抱えている人事・採用担当者もいるのではないでしょうか。リファラル採用を進めるためには、「なぜ社員は友人・知人を紹介したがらないのか」「どのようなことが紹介のハードルになっているのか」を知ることが重要です。

そこでd’s JOURNAL編集部では、現在正社員として働いている20代・30代のdoda会員288名にアンケートを実施。「友人・知人を自社に紹介した経験があるか」「今後リファラル採用が導入されたら協力したいか」など、リファラル採用についての社員の本音を探りました。

※構成比の合計は、四捨五入の関係で100%にならない場合があります。

自社に「リファラル採用」の制度はある?

自社の社員からの紹介により、人材獲得を図る「リファラル採用」。人材の売り手市場が続く中、注目されている新しい採用方法ですが、実際にどのくらいの企業が制度化しているのでしょうか。

リファラル採用を制度化している企業は4割弱

勤務先にリファラル採用や社員紹介といった制度があるか聞いたところ、38.9%が「ある」と回答しました。

自社に「リファラル採用」の制度はある?

「企業文化にマッチした人材を集めやすい」「採用コストを削減できる」といった理由から、リファラル採用を導入している企業も増えてきているようです。実際にリファラル採用に取り組んでいる企業事例はこちらに紹介していますので、ぜひご覧ください。(参考:『リファラル採用』)

リファラル採用を導入している企業の約7割がインセンティブを支給

リファラル採用を導入している企業は、友人・知人を紹介することでインセンティブをもらえるような制度を用意しているのでしょうか。リファラル採用が制度として「ある」と回答した112名に、具体的にどのような制度があるかを聞いたところ、「紹介した人が入社すると金銭的なインセンティブがもらえる」が67.0%で最多となりました。友人・知人を紹介したとき、紹介した人が実際に入社したとき、紹介した人が入社し▲カ月経ったとき…と、インセンティブ支給のタイミングはさまざまなようですが、人材を紹介してくれた社員に対して特別な報酬を支給している企業が多いことがわかります。一方、「紹介はできるが、特に何かもらえたりはしない」との回答も29.5%ありました。

リファラル採用を導入している企業の約7割がインセンティブを支給

実際に友人・知人を紹介したことがある人の割合は?

4割弱の企業でリファラル採用が制度化されていることがわかりましたが、実際にどのくらいの人が友人・知人を紹介したことがあるのでしょうか。

友人・知人を自分の勤める会社に紹介したことがある人は3割未満

現在の勤務先に限らず、経験として「今まで友人・知人を自分の勤める会社に紹介したことがあるか」を聞いたところ、「ある」が26.4%、「ない」が73.6%という結果になりました。紹介したことがある人は3割未満と少数であることがわかります。

友人・知人を自分の勤める会社に紹介したことがある人は3割未満

女性よりも男性の方が友人・知人を紹介している傾向にある

男女・年代別で見ると、女性よりも男性の方が友人・知人を紹介したことがある人の割合が多い傾向が見られました。男性は20代・30代ともに3割程度の人が紹介したことがある一方で、女性は年代を問わず紹介した経験がある人は2割程度にとどまっています。友人・知人との関わり方や、仕事とプライベートの考え方などにおける考え方の違いがこのような結果につながっているのかもしれません。

女性よりも男性の方が友人・知人を紹介している傾向にある

友人・知人を紹介したきっかけ・理由

<友人・知人を紹介したことが「ある」と答えた人の声(一部抜粋)>
●社風や希望就労条件、本音の点で合致すると感じたから(IT・通信/営業職/32歳男性)
●本人の要望や性質が職場の雰囲気に合うと思ったので(人材サービス・アウトソーシング・コールセンター/事務・アシスタント/32歳女性)
●友人が自分の勤める会社に適していると思ったのと、ちょうどその時期に友人も転職に関心があり、仲の良い人間と一緒に働ける機会をつくりたいと思ったから(IT・通信/企画・管理/36歳男性)
●知人が当時の自社が求めていたポジションにフィットすると思ったため(IT・通信/企画・管理/38歳男性)

「自社の社風や条件に知人が合っていると思った」という理由が最も多く聞かれました。この他、「有名企業である」「待遇や社内の人間関係も悪くないため」「インセンティブをもらえるから」といった声も聞かれました。友人・知人を紹介したいかどうかは、企業の雰囲気やポジション、組織状態、待遇によって決まるという一面もあるようです。

友人・知人を紹介しないのはなぜ?

友人・知人を紹介したことがある人が約3割いる一方、紹介したことがない人はその倍以上の約7割もいます。リファラル採用の制度はあるのに、どうして友人・知人を紹介しないのでしょうか。

自分の会社をオススメできない人が多数

友人・知人を紹介したことがない人に、その理由を選択肢の中から選んでもらったところ、「自分の会社をあまりオススメできない」(23.1%)、「そもそも社員紹介やリファラル採用の制度がない」(16.5%)、「自分の会社に合いそうな知人・友人が思いつかない」(16.0%)、「友人・知人の仕事の状況や転職活動の状況を知らない」(16.0%)という回答が多く寄せられました。

自分の会社をオススメできない人が多数

「自社への満足度が低いと、知人を紹介しようとは思えない」傾向にあることが見て取れます。また、自社に合う友人・知人が見つからなかったり、相手の仕事の状況などに詳しくなかったりといった事情もあるようです。

友人・知人を紹介しない具体的な理由

<友人・知人を紹介したことが「ない」と答えた人の声(一部抜粋)>
●自分の勤め先と同規模でもっと良さそうな会社があるので、紹介しようという気にならない(IT・通信/技術職(SE・インフラエンジニア・Webエンジニア/37歳男性)
●残業が多めの職場で、友人には紹介しづらいので(メーカー(機械・電気)/技術職(機械・電気)/35歳女性)
●実際にそういう経験はないけれど、自分よりも紹介した知人の方が先にキャリアを築いたら気まずくなりそうなので(メーカー(機械・電気)/生産管理/28歳男性)
●仕事上で何かあったときに、友人との仲が悪くなるのが嫌だから(メーカー(素材・化学・食品・化粧品・その他)/企画・管理/34歳男性)
●管理職の紹介で入社した人が3カ月足らずで辞めてしまい、その後プライベートでの関係もなくなってしまったという話を聞いて、紹介したくないと思った(メーカー(素材・化学・食品・化粧品・その他)/事務・アシスタント/26歳女性)

「待遇面などに不満があるためオススメできない」といった理由で、紹介することに消極的になっていることがわかります。「友人が先にキャリアアップしたら気まずい」「仕事上でトラブルがあったときに友人関係を維持できなくなる」といった不安を抱えている人もいるようです。

友人・知人を紹介する際にハードルになることは?

仮に友人・知人を自社に紹介するとなった場合、どのようなことがハードルとなるのでしょうか。

友人との関係性に影響が出ることを心配している

友人・知人を紹介するとして、どのようなことが心配かを選択肢の中から選んでもらったところ、最も多かったのは「自分の会社をあまりオススメできない」で34.0%でした。「紹介しない理由」でもこの回答が一番多いことから、リファラル採用を進める際には「会社に友人・知人を紹介したいと思えるだけの魅力があるか」を考える必要がありそうです。次いで、「友人・知人が選考で落ちたら気まずい」(32.6%)、「友人・知人が自分の会社に合うか不安」(30.2%)となっており、いずれも3割を超えています。

友人との関係性に影響が出ることが心配

友人・知人にオススメしたくなるような企業になることに加え、選考で落ちてしまった場合にどうフォローするかなどを事前に社員と話し合っておくことが重要です。それにより、万が一の場合に気まずい状況になるのを避けることができるため、友人・知人を紹介しやすくなるでしょう。

その他に不安に感じること

<不安を感じている人の声(一部抜粋)>
●友人が職場の同僚になってしまうと、純粋な友人関係が壊れてしまいそうで嫌だから(メーカー(素材・化学・食品・化粧品・その他)/企画・管理/35歳女性)
●活躍することを会社から担保として要求される気がして気が引けるので(IT・通信/技術職(SE・インフラエンジニア・Webエンジニア)/29歳男性)
●自分が辞めた後に、会社で友人が何かを言われるのではないかが不安(金融/金融系専門職/24歳女性)

「同僚になる(=一緒に働く)ことで、友人関係が崩れるのでは」と懸念する声が多く聞かれました。その他、「紹介した友人・知人の活躍を会社から期待されている気がする」との意見も挙がっています。そのような会社からの期待が、「能力の高い人を紹介しなければならない」という目に見えないプレッシャーになっている可能性があると考えられます。

友人・知人の仕事の状況は把握しているのか?

リファラル採用を進めるためには、「友人・知人の仕事の状況に興味を持ち、把握できているか」もポイントになります。

約半数が友人・知人の仕事の状況を知らない

友人・知人の仕事の状況などを知っているかを聞いたところ、「知っている」が53.8%、「知らない」が46.2%という結果が出ました。「知っている」人の方がやや多いものの、「知らない」人も一定数いることが見て取れます。

約半数が友人・知人の仕事の状況を知らない

「知っている」または「知らない」理由について聞いてみたところ、「知っている」と回答した人からは、「定期的に会っていて、お互いに近況報告や仕事の相談をするから」といった理由が挙げられました。一方、「知らない」と回答した人からは、「仕事内容や給与などに差があるので、具体的な話は避けている」「SNSでのやりとりが主なため、仕事のことを話しにくい」といった意見が寄せられています。友人などと事細かに仕事の話をしない関係にある場合、リファラル採用は話題に上りにくいと考えられるでしょう。

20代女性は「知っている」割合が高いものの、紹介までに至っていない

また男女・年代別で見ると、「知っている」と回答した割合が最も高かったのは「20代女性」で66.7%でした。30代女性と20代・30代男性については、いずれも「知っている」「知っていない」が約半数ずつとなっています。20代女性は、友人・知人の仕事の状況を知っていながらも、自社に紹介するまでには至っていないようです。

20代女性は「知っている」割合が高いものの紹介に至っていない

会社にリファラル採用制度があれば、積極的に協力したいか?

現時点でリファラル採用の制度がない企業が導入に踏み切った場合、どのくらいの社員が協力してくれるのでしょうか。

約3人に1人が「協力したい」と回答

仮に、自社で友人・知人の紹介制度があった場合に協力したいかどうかを聞いたところ、「協力したい」との回答は35.8%でした。「どちらともいえない」が42.4%で最多ではあるものの、約3人に1人がリファラル採用に協力したいと考えていることがわかります。

約3人に1人が「協力したい」

男女・年代別で見ると、男性がより高い数値に

男女・年代別で見ると、女性に比べて男性の方が「協力したい」人が多い傾向が見られました。特に顕著だったのが20代男性で、「協力したい」が46.8%と約半数を占めています。一方、20代女性は「協力したい」が25.0%と、他の年代・性別よりも低い結果となっています。

男性の方が協力したいと考えている

リファラル採用に協力したい理由とは?

<「協力したい」と答えた人の声(一部抜粋)>
●知人であれば、相手の実力や性格などをある程度は把握できているので(メーカー(素材・化学・食品・化粧品・その他)/企画・管理/33歳男性)
●自分の勤務先で戦力になってくれる能力やスキルのある友人がいれば、ぜひ一緒に仕事をしたいから(メーカー(素材・化学・食品・化粧品・その他)/事務・アシスタント/33歳男性)
●相手のことも自分の会社のことも知った上での紹介なので、会社にマッチしそうだし、離職率も抑えられそうだから(医薬品・医療機器・ライフサイエンス・医療系サービス/企画・管理/31歳男性)

「自社に合う人を紹介できる」「離職率を抑えることにもつながりそう」といった意見が挙げられました。また、「より良い組織に変えていくために、パフォーマンスの高い人材が必要だと思う」といった声が聞かれるなど、友人・知人を紹介することは企業にも社員にもメリットになることだと感じている人もいるようです。

リファラル採用に協力したくない理由

<「協力したくない」と答えた人の声(一部抜粋)>
●友人が自分と同じ職場で働くことに抵抗があるため(金融/事務・アシスタント/29歳女性)
●自分が紹介した人の仕事のレベルが低かったり、早期退職したりした場合に責任を持てないため(人材サービス・アウトソーシング・コールセンター/企画・管理/26歳男性)
●転職は他人の人生を左右することなので責任を伴うが、その責任を最後までは負えないので(IT・通信/企画・管理/36歳女性)

「友人・知人が同じ職場で働くことに抵抗を感じる」「紹介した人のスキルが会社の期待値に満たない場合、責任を持てない」といった意見が多く寄せられました。こうした社員の負担感を軽減するためには、「社員任せにせず、会社としてフォロー体制を構築する」「無理して紹介する必要はないと伝える」といった対応が求められるでしょう。

自社の採用活動についてどのくらい把握している?

そもそも自社の採用活動について知っていなければ、友人・知人を紹介することはできません。では、自社の採用活動について社員はどのくらい把握しているのでしょうか。

自社の採用活動への興味・関心が高い人は3割弱

自社の採用活動に興味があるかを聞いたところ、「興味はあるが、自分が関わることではないと思っている」が37.5%で最多でした。次いで、「自社の採用活動には興味がない」(33.3%)、「興味があり、貢献したい」(27.8%)となっていることから、約4人に3人は自社の採用活動を「自分ごと」としては捉えていないことが見て取れます。

自社の採用活動への興味・関心が高い人は3割弱

男女・年代別で見ると、男女共に20代よりも30代の方が「興味があり、貢献したい」傾向にあることがわかります。特に30代男性は「興味があり、貢献したい」が34.5%と、他の年代・性別よりも10~15%ほど高い結果となりました。一方で、20代女性は「自社の採用活動には興味がない」が44.3%と、興味が薄い傾向が見て取れます。「友人・知人の仕事の状況を知っている」割合が最も高い20代女性に、自社の採用活動に関心を持ってもらうことができれば、リファラル採用の活用にもつながると推測できるでしょう。

男女・年代別で見ると、男女共に20代よりも30代の方が「興味があり、貢献したい」傾向

募集している職種・ポジションを理解している人は4割弱

友人・知人を紹介する上では、自社が募集している職種やポジションを知る必要があります。自社の採用活動について、募集している職種やポジションを知っているか聞いたところ、「自社の全般的な採用活動の状況や募集職種を知っている」が37.2%で最多でした。一方で、「採用活動をしていることは把握しているが、募集職種やポジションは知らない」(29.5%)、「自社が採用活動をしているかどうかも知らない」(16.0%)といった、自社の採用活動に関する理解が不足している人が一定数いることもわかります。「自社や募集ポジションへの理解が深い」ことが紹介につながるため、人事・採用担当者としては、まず社員に自社の採用についての理解を深めてもらい、募集ポジションを知ってもらうことから始めるとよいでしょう。

募集している職種・ポジションを理解している人は4割弱

自社の採用状況を知ることのできるサイト・ツールを見たことがある人は4割弱

自社の採用活動の状況を知ることのできるサイトやツールはあるか聞いたところ、「どこを見ればいいか把握しており、見たこともある」が37.2%で最多でした。一方、「採用活動に関する情報は社内でオープンにされていない」(28.5%)、「どこかに情報はあると思うが、知らない」(22.2%)といった回答も多く寄せられました。採用活動に関する情報を社員が確認できないことが、友人・知人を紹介しないことにつながっている可能性があります。社員に対する情報開示が不十分な場合には、改善を図ることが望ましいでしょう。

自社の採用状況を知ることのできるサイト・ツールを見たことがある人は4割弱

リファラル採用を進めるために大切なのは、社員の負担を軽減すること

リファラル採用の推進においては、紹介する側の心理が課題の1つであると言えるでしょう。

「選考で落ちてしまったら」「同僚になることで友人関係が壊れてしまったら」といった不安を抱えている社員にとって、自分の大切な友人・知人を勤務先に紹介するのは簡単なことではありません。紹介した友人・知人が会社の期待値に満たなかった場合や早期退職した場合などに、会社から責任を問われるのではないかという懸念も、リファラル採用に協力したくない要因となっています。

紹介された側の友人・知人に対してだけではなく、紹介してくれた側の社員に対しても真摯に向き合うことが人事・採用担当者には求められるでしょう。具体的には、社員との事前の擦り合わせの実施やフォロー体制の構築が重要です。「人事の判断で採用を決めたものであり、入社後の責任は人事が負う」と明示することも、社員の負担を軽減することにつながるでしょう。

オススメしたい会社にするための社内制度の改革や、紹介者にとってメリットのあるインセンティブの検討に加え、フォロー体制の確立や社員への採用に関する情報発信も、リファラル採用を進める上でのポイントとなります。社員が一丸となってリファラル採用に取り組めるよう、必要なサポートを検討し、社員の負担軽減を図ってみてはいかがでしょうか。

(制作協力/株式会社はたらクリエイト、企画/d’s JOURNAL編集部 齋藤 裕美子)