母集団形成に有効な施策とは?新卒・中途採用の課題ごとに他社事例を交えて詳しく解説

2022.06.30
d’s JOURNAL編集部
母集団形成とは?
母集団形成がうまくいかない原因
原因別の対処法
新卒採用・中途採用の母集団形成に有効な採用手法とは?
参考にしたい他社の「母集団形成」成功事例

母集団形成とは、自社の求人に興味を持っている採用候補者を集めることを意味する言葉です。

知名度の低い企業や、企業の規模にかかわらず有効求人倍率の高い職種では、母集団形成に苦戦するケースが少なくありません。

今回は、人事・採用担当者の共通の悩みとも言える母集団形成について、うまくいかない原因と対処法、母集団形成に有効な採用手法などを紹介します。

母集団形成とは?

採用活動において採用候補者となる人材を集めることを意味する「母集団形成」。「母集団」とはもともと統計学で用いられる言葉で、「調べたいデータ全体」を指します。採用活動では書類選考や筆記試験、面接などにより人材を見極めていくため、母集団を十分に形成できていないと採用計画の実現は難しくなります。

有効求人倍率の上昇により母集団形成は一層困難に

パーソルキャリア株式会社がdodaエージェントサービスの直近のデータを用いて発表した「転職求人倍率レポート」によると、中途採用における2021年7月の求人倍率は前月比+0.30ポイントの2.31倍。また同月の求人数は前月比105.8%、転職希望者数は前月比91.9%という結果でした。

一方、リクルートワークス研究所が発表した「第38回ワークス大卒求人倍率調査(2022年卒)」によると、2022年卒の大卒求人倍率は1.50倍。2021年卒の1.53倍から0.03ポイント微減しましたが、1.5倍台を維持しています。

中途・新卒採用ともに有効求人倍率は高い水準を維持しているため、母集団形成は一層困難になると予想されます。
(参考:パーソルキャリア株式会社「転職求人倍率レポート(2021年7月)」)
(参考:『【最新版】有効求人倍率とは?推移グラフから何がわかる?計算方法や傾向を簡単解説』)

母集団形成がうまくいかない原因

母集団形成がうまくいかない原因には、上述した有効求人倍率の上昇に加え、複合的な要素が影響していると考えられています。主な3つの原因について解説します。

原因①:採用ターゲットが定まっていない、市況感に合っていない

採用ターゲットが定まっていなかったり、市況感に合っていなかったりすると、母集団形成がうまくいきません。

「応募条件を高く設定し過ぎている」「必須条件が多過ぎる」など採用候補者を絞り過ぎてしまうと、対象者が市場に一握りしかいないという状況になってしまうことも。採用ターゲットが市況感に合っていないことで、母集団の「量」に問題が生じるのです。

一方、採用ターゲットを明確に定めず求人をかけた場合は、母集団の「質」に問題が生じる可能性が高まります。応募人数に対して選考通過者が少なくなる可能性もあるため、改めて母集団を形成しなければならなくなるでしょう。

原因②:企業の認知度、採用市場での認知度が低い

企業の認知度や採用市場での知名度が低い場合、母集団形成に苦戦する傾向があります。認知度の低い企業が採用活動を始めても、その情報が求職者に届く可能性は低く、結果として十分な人数を集められないためです。採用活動を成功に導くためにも、企業の認知度を高めるための工夫が求められるでしょう。

原因③:競合と比較をした際に条件面で劣後してしまっている

厚生労働省の資料によると、競合と比較した際に条件面で差が大きいことが影響し、中小企業は大企業よりも母集団形成がしづらい傾向にあります。

産業別・企業規模別欠員率(2016年)
(参考:厚生労働省職業安定局「人手不足の現状把握について」)

また、パーソルキャリア株式会社がdodaエージェントサービスの直近のデータを用いて発表した「転職求人倍率レポート」によると、職種によっても中途採用の有効求人倍率に差があることがわかります。中途採用の有効求人倍率が高い職種では、大企業でも採用に苦戦するケースが見受けられます。2021年7月のレポートでは、特に採用が難しいとされるのは「技術系(IT・通信)」で、求人倍率は9.68倍です。次いで「専門職」の求人倍率は6.12倍という結果でした。また、求人数の増加率が前月比で最も大きい職種としては「技術系(電気・機械)」や「技術系(建築・土木)」が挙げられます。
(参考:パーソルキャリア株式会社「転職求人倍率レポート(2021年7月)」)

また、産業別で見ると、厚生労働省の資料からもわかるように、産業によって、人手不足感や欠員率に差があります。特に、現場での作業が伴ったり、シフト制が一般的な業種、サービス業は、人手不足感や欠員率が高い傾向にあることがわかります。

産業別人手不足感(2017年)
(参考:厚生労働省職業安定局「人手不足の現状把握について」)

原因別の対処法

母集団形成がうまくいかない主な原因は、「採用候補者」「認知度」「競合と比較した際の条件面」の3つが挙げられますが、それぞれにどのような対策が求められているのでしょうか。原因別の対処法を見ていきましょう。

採用ターゲットに課題感があるケースの対処法

主な対処法は次の2点です。

採用ターゲットを定める

採用ターゲットが不明確な場合には、まずは採用ターゲットを定めることから始めましょう。募集しているポジションの要件を明確にし、関係者間での合意形成を行い「採用基準」を定めます。採用基準を基に必要な経験やスキルなどを挙げ、採用ターゲットを設定しましょう。採用ターゲット以外の応募割合が増え、不要な工数やコストがかかることがないよう、認識をしっかり擦り合わせることが重要です。

市況感に合わせて採用候補者を見直す

市況感に合っていない場合には、就活・転職市場のトレンドや競合の動きを確認した上で、採用ターゲットを見直すことが重要です。まずは全体の有効求人倍率や職種ごとの有効求人倍率を確認します。特に中途採用においては、競合企業がどのような要件で求人を出しているのかを確認するとよいでしょう。
(参考:『採用決定力が高い企業は実践している。ターゲット・ペルソナ設定ノウハウ【実践シート付】』『採用基準はどう決める?手順や基準にすべき項目とは?テンプレートや例を交えて詳しく解説』)

認知度に課題感があるケースの対処法

次に、認知度に課題感があるケースの対処法を見ていきましょう。

採用広報と採用ブランディングにより、企業の認知度を高める

知名度の低さに課題感がある場合、広報部などと連携しながら企業全体の認知度向上に取り組みましょう。そこで必要となるのが、採用広報と採用ブランディングです。採用広報では、自社で働くイメージを持ってもらうため、募集要項に加えて、具体的な仕事内容や職場の雰囲気、社員インタビューなどの情報を発信します。また、採用ブランディングでは採用ターゲットに対して「企業価値」や「企業が目指す在りたい姿」を知ってもらい、自社への入社意向を高めていきます。
(参考:『採用広報はなぜ必要なのか?採用広報を考える際に意識すべきポイントとは』『採用ブランディングの取り組み手順は?初心者向けにペルソナの立て方や他社事例などを紹介』『人材獲得競争に打ち勝つための採用ブランディング』)

就活生や転職希望者に求人を認知してもらえる工夫を行う

企業の認知度を高めるのはもちろん、就活生や転職希望者に自社の求人を認知してもらうことも重要です。自社サイトへの求人掲載だけでなく、ターゲット層の登録が多い求人媒体へ求人広告を掲載するなど、積極的に情報発信をしましょう。また、採用ターゲットの参加が見込めるような合同イベントへの出展などにより、採用を実施しているとの認知を広げる取り組みも効果的です。

競合と比較して条件面に課題感があるケースの対処法

条件面への課題に対しては、次の2点の対処法が有効です。

制度の見直しや改善策に取り組む

競合と比較して条件面に課題感がある場合、制度の見直しや改善策に取り組みましょう。給与に関しては「ジョブ型雇用」や「職務給」を導入するのも一つの方法です。また、労働時間に関しては「長時間労働の是正」や「特別休暇の創設」、勤務場所に関しては「在宅勤務の導入」などが挙げられます。制度の見直しや改善策は人事部だけでは判断・実行は難しいため、経営層や他部署などを巻き込む施策として取り組む必要があります。
(参考:『ジョブ型雇用は自社に合うのか?導入するべき?知っておきたいメリット・デメリット』『職能給と職務給どちらがよい?それぞれのメリット・デメリットと効果的な賃金制度とは?』『特別休暇の定め方―どんな条件で何日取得可能?就業規則は?|申請書フォーマット付』『【弁護士監修】在宅勤務の導入方法と押さえておきたい4つのポイント◆導入シート付』)

懸念を解消するような情報を積極的に伝える

条件面での課題感に対しては、懸念を解消するような情報を積極的に伝えることも効果的です。例として、斜陽産業で今後の業界全体の成長が不安だという課題があれば、新規事業の取り組みを発信します。男性比率が高く、女性が活躍できる場があるか不安だという課題に対しては、女性の管理職登用比率の向上や職域拡大といった「ポジティブアクション」の取り組みを紹介するなどしましょう。情報の伝え方としては、求人票への記載や採用サイトでの記事化などが有効です。
(参考:『【弁護士監修】ポジティブアクションとは?女性活躍のための取り組み方や事例について解説<求人票の書き方資料付き>』)

新卒採用・中途採用の母集団形成に有効な採用手法とは?

母集団形成がうまくいかない原因別の対処方法について見てきましたが、採用コストが限られる中で母集団を形成するためには、どのような採用手法を選択するとよいのでしょうか。母集団形成に有効な採用手法の特徴を解説します。

また、採用ツール比較表が付いた「母集団形成の基本」も下記よりダウンロードできますので、併せてご活用ください。

「【採用ツール比較表付】母集団形成の基本」はこちらからダウンロードできます。

●母集団形成に有効な採用手法の特徴
母集団形成に有効な採用手法の特徴

ハローワーク【中途のみ】

ハローワークとは、行政機関が運営する公共職業安定所のこと。事業主なら誰でも無料で求人広告を出せ、中途採用のみで活用されているのが特徴です。求人の申し込みは事業所の所在するハローワークで行うため、地域に特化した人材採用に強みがあります。外部コストを抑制できる反面、求人票の作成や選考に伴う事務作業などの工数が生じます。

求人広告

求人広告とは、新卒採用や中途採用向けの就職・転職サイトや求人情報誌などの求人媒体に、企業の求人募集の広告を掲載し、応募者を集める手法です。費用は求人媒体への掲載料のみのため、複数人を採用できれば、1人当たりの採用コストを抑えられます。採用ニーズに応じて料金プランのカスタマイズが可能で、上位プランになるほど「掲載できる情報量が増える」「掲載順位が上がって応募者の目に付きやすくなる」仕組みとなっています。

媒体別で見ると、求人サイトは「誰でも」「どこでも」閲覧できるため、潜在層を含む幅広い人材からの応募が期待できます。求人情報誌の場合、エリアごとに発行されるため地域採用に向いています。

合同企業説明会

合同企業説明会とは、さまざまな企業がブースを出展し、転職希望者に直接企業の理念・事業内容・業務内容を伝えるイベントのこと。来場者は求職意欲のある層が中心のため、応募先を検討中の就職希望者と接点を増やしたいときに有効です。出展の際には出展料が発生します。また、事前準備・当日対応に工数がかかったり、来場者に足を止めてもらう工夫が必要となったりするため、採用担当者の負担は比較的大きいと言えるでしょう。

人材紹介サービス

人材紹介サービスとは、専任の担当者が応募者対応や面接の日程調整などの採用業務を代行するサービスのこと。採用担当者の工数を抑制でき、人材紹介会社が間に入ることで応募者の「質」を担保できるのがメリットです。採用の可能性が高い応募者とだけ面接できるため、採用のミスマッチが起こりにくいと考えられています。成功報酬型のため、初期費用はかからないものの、採用決定後には採用人数分の紹介手数料を支払う必要があります。

ダイレクトリクルーティング

ダイレクトリクルーティングとは、人材データベースやSNS、社員の交友関係などのあらゆる手段を活用して、企業が自ら採用ターゲットにアプローチする採用手法です。採用ターゲット一人一人に合わせて自社や仕事の魅力を発信できるため、入社意欲を高めやすく、採用要件にマッチした人材の採用が期待できます。スカウトする人材を探したり、スカウト文を作成・送付したりするなどの対応が必要となるため、採用担当者の工数が増える場合があります。

リファラル採用

リファラル採用とは、社員の紹介経由での採用のこと。縁故採用とも呼ばれています。リファラル採用では紹介した社員に対してのインセンティブを導入している企業もありますが、求人媒体や人材紹介サービスと比較すると、コストは抑えられます。自社を理解している社員経由のため、活躍できそうな経験を持つ人材や社風面でもマッチする人材の採用が期待できるのがメリットです。一方で、母集団の「質」に重きを置いているため、母集団の「量」という観点では効果を感じにくい手法と言えます。

学内セミナー【新卒のみ】

学内セミナーとは、ターゲットとなる大学に訪問し、自社説明会を開催する採用手法です。新卒採用でのみ実施されます。採用コストを抑えてターゲット人材と出会えることが最大のメリットです。ただし、人気のある大学では企業からの出展依頼も多く誘致してもらえない可能性もあるため、大学との関係性の構築が重要となります。

参考にしたい他社の「母集団形成」成功事例

母集団形成に有効な採用手法を見てきましたが、実際の企業ではどのように母集団形成を図っているのでしょうか。母集団形成に成功している3社の企業事例を紹介します。

株式会社ハートビーツ:ダイレクトリクルーティングをいち早く導入し、「増やすのではなく絞り込む」母集団形成を実現

MSP事業と開発事業を展開する株式会社ハートビーツは、「増やすのではなく絞り込む」母集団形成に取り組んでいます。採用候補者を絞り込むため、求人広告からダイレクトリクルーティングへと採用手法を変更しました。採用候補者には自社の課題を率直に伝え、「だからあなたのこんな経験が活かせる」と具体的に伝えています。母集団の数ではなく、中身を重視することで採用成功につながっています。
(参考:『3年間で社員を3倍に!元“ぼっち人事”が伝授する中小企業の「母集団形成」と「採用文化づくり」』)

株式会社ベイジ:日報を社外に発信!自分たちなりの情報伝達経路を持つことで、母集団形成に成功

BtoBに特化したWeb制作会社の株式会社ベイジでは、自分たちなりの情報伝達経路を持ち、情報を発信していくことで母集団形成を図っています。「会社を知ってもらうこと」を目的に、社員が書いている日報を社外に発信。「仮に1年で1人にしか読んでもらえなくても、その1人が当社にとって最高な人材かもしれない」との思いが根底にあると言います。飾ることなく素直に情報発信を続け、外部メディアやエージェントには一切頼らずに採用活動を進めています。
(参考:『コロナ禍でも社員が倍に!採用・エンゲージメントに効く「ベイジの日報」とは【隣の気になる人事さん】』)

クラスメソッド株式会社:エンジニアによるエンジニアのためのオウンドメディアを開発!「転職潜在層」からの応募が増加

AWS総合支援や内製化支援サービスなどを提供しているクラスメソッド株式会社では、自社のエンジニアが学んだことを定期的にアウトプットできる場として、オウンドメディアの「DevelopersIO」を立ち上げました。「DevelopersIO」の特徴は、エンジニアが純粋な思いでエンジニアのために書くメディアであること。当メディアをきっかけに同社に興味を持ち、求人に応募してきた転職潜在層が8割近くに上ります。発信を続けることで母集団形成に良い影響を与え続けています。
(参考:『「働きたい!」エンジニア転職“潜在層”から逆オファーが来るほど!採用~定着に効いている最強⁉オウンドメディアとは【隣の気になる人事さん】』)

まとめ

母集団形成は、「採用候補者が明確ではない」「企業の認知度が低い」といった理由から、うまくいかないケースがあります。効果的な母集団形成を行うためには、「採用候補者」や「認知度」、「競合と比較した際の条件面」に関する課題をクリアにすることが重要です。併せて、現在行っている採用手法が自社に本当に合っているものかも見直し、母集団の担保を図りましょう。

(制作協力/株式会社はたらクリエイト、編集/d’s JOURNAL編集部)

中途採用の課題をマンガで解説します!