【テンプレート付】労働者名簿の書き方はこれでOK!効率の良い作成方法をご紹介

社会保険労務士法人クラシコ

代表 柴垣 和也(しばがき かずや)【監修】

昭和59年大阪生まれ。人材派遣会社で営業、所長(岡山・大阪)を歴任、新店舗の立ち上げも手がけるなど活躍。企業の抱える人事・労務面を土台から支援したいと社会保険労務士として開業登録。講演実績多数。

労働者名簿とは?
労働者名簿作成は義務?誰が書く?
労働者名簿の記載事項と書き方
労働者名簿は一覧で効率良く作成ができる
労働者名簿の保管方法
労働者名簿の保存期間
労働者名簿を作成・管理するにあたっての注意点

人事・労務の業務に欠かせない、従業員情報をまとめた「労働者名簿」。労働基準法により、企業が従業員を雇用する際に、作成・保管が義務付けられています。記載内容は情報が変更されるたびに改訂する必要があり、手間と時間を要します。この記事では、労働者名簿を効率的に作成するために、各項目の記載方法や記載例、保管方法、保存期間、管理上の注意点などについてご紹介します。労働者名簿を効率良く作成できるテンプレートのダウンロードも可能ですので、ぜひご活用ください。

労働者名簿とは?

労働者名簿とは、人事・労務に必要な従業員情報を集約した書類のこと。労働者名簿には、従業員の氏名や住所、生年月日など法律で決められた事項を事業所ごとに記載し、保管する義務があります。労働基準法では、「賃金台帳」「出勤簿」と並ぶ「法定三帳簿」の一つとされており、適切に整備していない場合は処罰の対象となります。

労働者名簿は、従業員の入社時に一人分ずつ作成する必要があります。また、内容に変更があればその都度改訂し、常に最新の情報にしておかなければなりません。
「法律で定められた義務を果たす」という目的に限らず、「従業員の通勤にかかる交通費を請求・支給する際の通勤経路の確認」「緊急連絡先の確認」など、人事や労務の面でも活用する場面が多く、重要な書類と言えるでしょう。

労働者名簿の対象者

労働者名簿が必要な対象者は、原則「雇用している従業員全員」です。労働基準法第9条で「事業または事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」と規定されているため、雇用形態に関係なく、パートやアルバイトなど短時間勤務の従業員も対象となります。一方、労働者名簿が必要ではない対象者とその理由について、以下の表にまとめました。

労働者名簿が必要ではない対象者 労働者名簿が必要ではない理由
日雇い労働者 労働基準法第107条に作成・管理義務の記載なし。
派遣労働者 派遣元が管理するため、派遣先には作成・管理義務はない。
代表者・役員 労働基準法上での「労働者」に値しないため、管理対象にならない。

なお、出向中の従業員については、「自社に在籍しているかどうか」で義務の対象となるかが決まります。在籍出向中の従業員の場合、出向先で指揮命令されると同時に、労働契約上の雇用関係も発生します。そのため、出向元・出向先の双方で労働者名簿の作成義務が発生します。一方で、移籍出向中の従業員の場合は、出向元との雇用関係がなくなり、出向先にのみ労働者名簿の作成義務が発生するため、出向中の従業員については「自社に在籍しているかどうか」を確認しておきましょう。

労働者名簿作成は義務?誰が書く?

労働基準法第107条により、従業員を一人でも雇用していれば、企業規模を問わず、全ての法人企業に労働者名簿の作成および整備の義務が発生します。個人事業主であっても、従業員を雇用している場合には労働者名簿の整備が必要です。

労働基準法第107条
労働者名簿は、各事業場ごとに、各労働者(日々雇い入れられる者を除く)について調製しなければなりません。また、記載事項に変更があった場合は、遅滞なく訂正しなければなりません。

労働者名簿を作成していなかったり、記載内容に不備があったりする場合は、労働基準監督署の是正勧告の対象となります。作成義務違反に該当する場合は、30万円以下の罰金を科せられる可能性があるため、注意が必要です。

労働者名簿は、一般的に会社の労務を担当する部署が作成します。従業員が入社するときに、本人に別紙で必要情報を記入してもらうなどして、情報を取りまとめましょう。

労働者名簿の記載事項と書き方

労働者名簿は、労働基準法第107条・労働基準法施行規則第53条により、氏名や性別、住所などの必要事項の記載が義務付けられています。必要事項が記載されていれば様式は特に定められていませんが、頻繁に作成・変更する可能性があるため、テンプレートを使用することで効率的に作成ができます。ここからは、ダウンロードできるテンプレートに沿って、基本的な項目や記入例をご紹介します。

まずはテンプレートをダウンロード

労働者名簿の記載事項と書き方

●労働者名簿の必要記載事項と推奨記載事項

①従業員の氏名・性別・住所(必要記載事項)
②電話番号・緊急連絡先(推奨記載事項)
③生年月日(必要記載事項)
④雇入れ年月日(必要記載事項)
⑤従事する業務の種類(必要記載事項)
⑥履歴(必要記載事項)
⑦退職年月日およびその事由(必要記載事項)
⑧健康保険・厚生年金・雇用保険(推奨記載事項)

「②電話番号・緊急連絡先」と「⑧健康保険・厚生年金・雇用保険」は必要記載事項ではないため、記載義務はありません。しかし、人事や労務の手続き・管理を行う際に必要となる情報のため、従業員の承諾を得た上で記載しておくことが望ましいでしょう。

①従業員の氏名・性別・住所(必要記載事項)

企業に在籍している従業員の「氏名」「性別」「住所」を記載します。在職中に結婚・離婚などにより名字が変更になった場合は、名簿の氏名も変更しましょう。結婚後に社内では旧姓をそのまま使用している場合でも、記載するのは戸籍上の氏名です。
住所については、住民票の住所と現住所が異なる場合は、実際に居住している住所を記載します。転居などで住所を変更した場合はその都度更新しましょう。なお、従業員に交通費を支給する際は、この記載をもとに交通経路を確認します。

②電話番号・緊急連絡先(推奨記載事項)

必要記載事項ではないため、本人の承諾を得た上での記載となります。社外での連絡方法として、自宅もしくは携帯の電話番号を記載しておくと便利です。本人以外の緊急連絡先も記載できれば、万が一の事態でも迅速に対応することができるでしょう。

③生年月日(必要記載事項)

従業員の生年月日を記載します。

④雇入れ年月日(必要記載事項)

従業員の採用を決定した日ではなく、雇用を開始した年月日を記載します。この項目をもとに、年次有給休暇の発生日を明確にします。

⑤従事する業務の種類(必要記載事項)

「営業」「人事」「広報」など、社内での役割や業務内容を記載します。異動や配置転換があった際はその都度更新し、「⑥履歴」も更新します。なお、従業員数が30人未満の事業では、一人で複数の業務に対応するケースがあるため、記入は必須ではありません。

⑥履歴(必要記載事項)

記載範囲については、法的には明示されていません。基本的には「異動や昇進など社内での履歴」を記載します。異動や配置転換があった際はその都度更新し、同時に「⑤従事する業務の種類」も更新します。また必要に応じて学歴や社外職歴、保有資格なども記載するとよいでしょう。ただし、個人情報の取り扱いに伴い、記載する場合は従業員の承諾が必要となります。個人情報の取り扱いについては後述します。

⑦退職年月日およびその事由(必要記載事項)

退職の事由が解雇の場合、退職年月日とその理由を明記する必要があります。しっかり明記することで、退職後のトラブルを避けることにもつながるでしょう。従業員の都合で退職した場合は、特に理由を記載する必要はありません。また、従業員が死亡した場合は、死亡年月日と死亡の原因も記載します。

⑧健康保険、厚生年金、雇用保険(推奨記載事項)

必要記載事項ではないため、本人の承諾を得た上での記載となります。人事・労務の業務をスムーズに行うために、「健康保険」「厚生年金」「雇用保険」の事業所整理記号および事業所番号を記載するとよいでしょう。わからない場合は、以下の表を参考に確認してください。

事業所整理記号 事業所番号(確認先)
健康保険

健康保険被保険者番号

会社が加入している保険機関

厚生年金

基礎年金番号

年金事務所

雇用保険

雇用保険被保険者番号

ハローワーク

労働者名簿は一覧で効率良く作成ができる

労働者名簿は、労働基準法で定められた必要記載事項をすべて網羅していれば、一人一枚ずつ作成する必要はありません。そのため、氏名や性別、住所などの必要項目をまとめて、一覧化して作成することも可能です。一覧タイプのテンプレートもダウンロードできますので、自社で使いやすい様式を選択してください。

テンプレートをダウンロード

労働者名簿の保管方法

労働者名簿の保管方法について、労働基準法では明確に定められていません。「紙」もしくは「データ」いずれの方法でも構いませんが、業務のペーパーレス化やリモートワークなどを考慮してデータ保管に切り替えている企業も増えているようです。労働者名簿は「遅滞なく更新すること」が重要であるため、情報の検索や内容を変更する際にも、電子データで保管するほうが利便性は高いでしょう。ただし、労働者名簿を電子化するには以下の条件を満たす必要があります。

<労働者名簿の電子化条件>
●事業所ごとに労働者名簿を画面に表示し、すぐに印刷できる環境にあること(印刷機が事業所内にあること)。
●労働基準監督署による調査などで労働者名簿の閲覧・提出などが必要になった場合、ただちに必要事項が明らかになっている写しを提出できるようにしておくこと。

上記を踏まえて、いずれの方法が自社に合っているか、検討してみましょう。

労働者名簿の保存期間

労働者名簿は、労働基準法第109条により3年間保存することが義務付けられています。保存期間の起算日は「従業員の退職や解雇、または死亡日から起算して3年」です。この保存期間を守らずに廃棄や紛失など義務に違反した場合、労働基準法第120条によって30万円以下の罰金を科せられる可能性があります。紙の書類で保存する場合には、在籍中の従業員と、退職した従業員の名簿を分けてファイリングして管理すると、日常業務でも使いやすく、両者が混同するのを防げるでしょう。

労働者名簿を作成・管理するにあたっての注意点

労働者名簿を作成・管理するにあたって、考慮しなげればならない3つの注意点を見ていきましょう。

①内容を更新・変更したい場合

労働基準法施行規則第53条により、労働者名簿の更新は「遅滞なく」と定められています。記載内容に変更が発生した場合は、速やかに名簿の記載内容を修正し、更新しましょう。労働者名簿を紙で管理している場合は、変更になった記載項目に二重線を引き、訂正印を押して新たな情報を記載します。

②事業所ごとに作成する

労働基準法により、労働者名簿は「事業所ごとに作成しなければならない」と定められています。「事業所」とは、企業全体ではなく「支社」「営業所」「店舗」「工場」のように一定の場所で継続的に作業が行われる場所を指します。そのため、労働者名簿は本社で一括して全従業員分を作成・保管するのではなく、支社や工場ごとに作成し、それぞれで保管しなければなりません。本社以外に該当する事業所がある場合は、それぞれの事業所にて労働者名簿を整備しましょう。

③個人情報の取り扱い

労働者名簿に記載される内容は、従業員の氏名や住所、生年月日など個人のプライバシーに関わる情報が多く含まれるため、個人情報保護法の対象となります。そのため、労働者名簿の作成にあたり従業員から個人情報を得る際には、本人の同意が必要となります。また、マイナンバーを労働者名簿に記載しておけば便利なように思われますが、マイナンバーは具体的な用途に限定して収集する個人情報のため、他の目的で使用する可能性がある帳簿に記載するのは適正な管理とは言えません。マイナンバーは、労働者名簿とは別に管理するようにしましょう。

まとめ

労働者名簿は、従業員を雇用する場合に「作成」「整備」「保管」が義務付けられている大切な書類です。人事・労務に欠かせないさまざまな情報を集約しており、日常業務でも使用します。従業員それぞれの作成や管理は大変ですが、テンプレートを活用して、効率的に作成を進めましょう。

(制作協力/株式会社はたらクリエイト、監修協力/社会保険労務士法人クラシコ、編集/d’s JOURNAL編集部)