【テンプレート付】賃金台帳記入は義務!誰でもすぐに書ける項目例で解説/社労士監修

社会保険労務士法人クラシコ

代表 柴垣 和也(しばがき かずや)【監修】

昭和59年大阪生まれ。人材派遣会社で営業、所長(岡山・大阪)を歴任、新店舗の立ち上げも手がけるなど活躍。企業の抱える人事・労務面を土台から支援したいと社会保険労務士として開業登録。講演実績多数。2021年9月よりクリニック専門労務管理サービス「クラシコ メディカル」スタート。

賃金台帳とは法定三帳簿の一つ
賃金台帳は原則5年間保存しなければならない
賃金台帳が必要になるケース
賃金台帳は給与明細と何が違う?代用はできる?
賃金台帳の書き方は?テンプレートをダウンロード&見本を参考に実際に書いてみよう!
賃金台帳は源泉徴収簿と兼用できる
賃金台帳は従業員に開示する義務はない
賃金台帳がない場合は罰金が科せられる?

従業員への給与の支払い状況を記載した書類である「賃金台帳」。労働基準法により、事業主に対して作成・保存が義務付けられています。賃金台帳には必ず記載しなければならない項目が決められており、法律に定められた基準を満たしていない場合は罰則の対象となるため、注意が必要です。今回の記事では、賃金台帳の概要や保存期間、書き方などについてご紹介します。賃金台帳のテンプレートは、対象者別に「常用労働者」と「日々雇い入れられる者」の2種類がダウンロード可能ですので、ぜひご活用ください。

賃金台帳とは法定三帳簿の一つ

賃金台帳とは、「従業員に支払っている給与の計算根拠となる書類」のこと。「労働者名簿」「出勤簿」と並ぶ「法定三帳簿」の一つです。賃金台帳は、従業員の生活に直結する重要な事項である「賃金」の記録を正確に残すことを目的としています。労働基準法第108条により、従業員を雇用する全ての事業主に対して作成・保存が義務付けられており、事業部や事業内容が異なる企業の場合は「事業所ごとに作成・保存」し、「賃金の支払いのたびに作成」しなければなりません。英語では「wage ledger」「payroll book」などと表記されます。
(参考:『【テンプレート付】労働者名簿の書き方はこれでOK!効率の良い作成方法をご紹介』『【すぐに役立つ】労務管理とは?これだけは知っておきたい業務内容と効率化の手法を解説』)

記入する対象者は?

賃金台帳を作成する対象は、事業所で働く全ての従業員です。パートタイマーやアルバイトはもちろん、雇用期間が1カ月未満の日雇労働者も対象者です。出向者に関しては、賃金負担割合に関係なく、出向元と出向先の双方で作成・保存します。

役員の場合も必要

役員についても、賃金台帳の作成が必要となります。役員は従業員には当たりませんが、兼務役員の場合は「従業員としての立場」も併せ持っているからです。また、役員報酬がゼロでない限り「健康保険や厚生年金保険の被保険者となる」ことから、保険料の控除額を記録する意味でも、賃金台帳を作成するのが望ましいとされています。

個人事業主の場合は?

個人事業主の場合、従業員を一人でも雇用するなら、賃金台帳を作成しなければなりません。適切に労務管理を行うため、個人事業主であっても、基本的に従業員一人につき一部の作成が必要です。

賃金台帳は原則5年間保存しなければならない

労働基準法第109条により、賃金台帳の保存期間は「原則5年」です。ただし、現在は法案改正の経過措置として、「従業員の賃金を最後に記載した日から起算して3年」となっています。保存すべき賃金台帳を誤って廃棄してしまわないように、賃金台帳に更新日を記載しておくとよいでしょう。

電子保存も可能

電子画像情報を正確に記録し、必要な情報をすぐに印刷できる状態であれば、電子保存が認められています。保存期間は書面の場合と同じです。「故意や過失による消去、書き換え、および混同ができないようにする」「記録した日付や時刻などの情報も同一の電子媒体に記録する」など、取り扱いには一定の条件があるため、注意しましょう。

賃金台帳が必要になるケース

賃金台帳が必要になるケースについて見ていきましょう。

離職票など退職者関係の手続き

賃金台帳は、労働保険や社会保険の手続きに必要です。たとえば、被保険者が退職する際に離職票を交付するにあたり、確認書類として「離職前2年間分」の賃金台帳を「被保険者でなくなった事実があった日の翌日から起算して10日以内」に提出しなければなりません。この他、労働基準監督署や年金事務所での定期的な調査や、労務トラブル発生時など、さまざまな場面で必要になります。
(参考:『【社労士監修】離職票と退職証明書の違いと交付方法~人事向け離職票マニュアル~』)

賃金台帳は給与明細と何が違う?代用はできる?

賃金台帳と似た書類に「給与明細」があります。給与明細とは、給与の支払額や控除額をまとめて記載した通知書です。従業員に支払われる給与や手当の他に、健康保険料や所得税など控除の金額と勤怠情報が記載されています。給与明細には、賃金台帳に記載が義務付けられている法定項目は記載されていないため、給与明細を賃金台帳として代用することはできません。賃金台帳と給与明細の違いを、下の表にまとめました。

賃金台帳 給与明細
目的 従業員への給与の支払い状況を記載し、管理する 給与の支払額や控除額をまとめて記載し、従業員に通知する
保存 企業は原則5年間保存しなければならない 給与支払いのたびに従業員に交付し、企業では保存しない
記載項目 労働基準法により、「賃金計算期間」「労働日数」「労働時間数」など、必須記載事項が定められている 給与の「支払額」「控除額」、勤務日数や欠勤日数などの「勤怠情報」を記載する

給与明細の役割

所得税法第231条では、「給与を支払う者は、給与の支払いを受ける者に対して、支払明細書を交付しなくてはならない」と定めています。給与明細は、給与の支払いのたびに従業員に交付するものです。「基本給や諸手当が正しく支給されているか」「給与の算出に関わる勤怠情報に誤りがないか」を確認できる、労使双方にとって重要な書類と言えるでしょう。

賃金台帳の書き方は?テンプレートをダウンロード&見本を参考に実際に書いてみよう!

賃金台帳の書式は特に決まっておらず、必須事項の記載を確認できればよいとされています。厚生労働省のホームページでは、基本様式として「賃金台帳(常用労働者)」と「賃金台帳(日々雇い入れられる者)」の2種類のテンプレートが紹介されています。

d’s JOURNALオリジナルのすぐに使える「賃金台帳」テンプレートは、こちらからダウンロードできますので、ぜひご活用ください。

まずは必須記載事項を見てみよう

賃金台帳フォーマット

賃金台帳では、以下の10項目について必ず記載し、管理しなければなりません。これらの項目は、企業が適切な労務管理を行っているかどうかを確認するために、労働基準監督官が重視するポイントです。

①労働者氏名
②性別
③賃金計算期間
④労働日数
⑤労働時間数
⑥時間外労働時間数
⑦深夜労働時間数
⑧休日労働時間数
⑨基本給や手当などの種類とその額
⑩控除の項目とその額

ここからは、項目の内容や記載例を見ていきましょう。

①労働者氏名/②性別

従業員の基本情報として、「労働者氏名」と「性別」を記載します。労働者氏名はまた、管理しやすいように「労働者氏名」と併せて当該事業所で使用する「労働者番号」を記載しても構いません。

③賃金計算期間

賃金計算期間とは、賃金の計算対象となる期間のこと。毎月末締めの場合は「2021年8月1日~2021年8月31日」、10日締めの場合は「2021年7月11日~2021年8月10日」などと記載します。なお、日々雇い入れられる者については記載が不要です。

④労働日数/⑤労働時間数

労働日数とは「賃金計算期間にその従業員が働いた日数」、労働時間数とは「賃金計算期間にその従業員が働いた時間数」のこと。タイムカードや出勤簿などの根拠書類を確認し、正確に記載しましょう。

有給休暇や特別休暇を取得した場合

有給休暇や特別休暇は、通常の労働時間に労働したものと見なします。休暇の日数・時間数を該当欄に記入、その日数および時間数は有給休暇取得とわかるようにしておくのがよいでしょう。

欠勤控除の場合

欠勤控除とは、もともと支払う予定だった賃金から、欠勤した分の賃金を差し引いて給与を支払うこと。終日休んだ場合だけでなく、遅刻・早退などで予定していた時間に働けなかった場合も対象となります。欠勤した際の控除額は、非課税です。欠勤があった月は「総支給額合計額」から欠勤控除額を引き、「課税合計額」を計算します。賃金台帳では控除項目ごとに控除額を書く必要があるため、「欠勤控除 ▲15,000円」といったように記載しましょう。
(参考:『欠勤控除とは?人事が知っておくべき基本知識~算出に含む手当一覧付~』)

⑥時間外労働時間数/⑦深夜労働時間数/⑧休日労働時間数

労働時間数のうち、早出・深夜・休日に働いた時間数のことで、残業手当や深夜割増手当、休日出勤などの計算で使用する項目です。深夜労働の対象は、午後10時から翌日午前5時まで。時間外労働時間数と休日労働時間数については、個別に計算して記載しましょう。

⑨基本給や手当などの種類とその額

賃金台帳には、給与支給額の総額ではなく、基本給と各手当を分けて記載します。また、月給で働く従業員の場合は「基本賃金」を記載します。時給で働く従業員の場合は「時給単価×労働時間」で算出した割増率のない額を、月給制の従業員と別枠にして記載するとわかりやすいでしょう。「役職手当」「地域手当」「扶養手当」「通勤手当」といった諸手当は、別々に記載します。
なお、雇用調整助成金は休業手当として支払った額に対して支給されるため、賃金台帳には「休業控除」「休業手当」項目を支給項目欄に追加して記載しましょう。

●休業手当の記載例

「休業控除 ▲200,000円」
「休業手当  200,000円」

いったん休業による欠勤控除をマイナス表示した上で、その欠勤控除をカバーするために休業手当を支払った旨をプラス表示で示します。控除欄で引いてしまわないように注意しましょう。

⑨-1:臨時の給与、賞与

個人に支払われる臨時の給与とは、「一時金」や「寸志」のことです。一方、賞与とは定期給とは別に支払う「特別な給与」のことで、毎月支払われる賃金とは別に3カ月を超える期間ごとに支払われるものを指します。「臨時の給与」「賞与」がある場合は、何に当たるのかを選択し、項目に記載しましょう。
(参考:『【完全版】賞与とは?ミスしない社会保険料・所得税の計算方法、知っておくべき手続き』)

⑩控除の項目とその額

控除額の欄には、健康保険料や厚生年金保険料、雇用保険料など、給与から控除される金額を記載します。弁当代や親睦会費など、企業が独自に控除しているものも記載しましょう。

⑩-1:実物給与

賃金計算期間に支給された「報奨金」や「社宅家賃」など、現金で負担した課税対象のものを記載します。社宅は家賃の半額以上を会社が負担すると課税対象となるため、記載漏れに注意が必要です。

支給総額・賃金締切日・賃金支払日・領収者印

支給総額欄に加えて、賃金締切日や賃金支払日、領収者印の欄を設けることができます。これらの欄を設けることで、より管理しやすくなるでしょう。

修正したい場合

処理済みの過去月の給与計算で間違いが見つかった場合、次月の給与で調整を行います。賃金台帳には、給与を調整したことがわかるように、次月の給与で「支給した過去月分の給与額」や「修正後の控除額」などの記録を残すとよいでしょう。対象の従業員には事情を丁寧に説明し、次月の給与計算で精算する旨を伝えて理解してもらうことが重要です。

賃金台帳は源泉徴収簿と兼用できる

源泉徴収簿とは、年末調整を行う際に必要な情報を集約した帳簿のこと。賃金台帳と源泉徴収簿は、法律上はあくまで異なる書類ですが、賃金台帳を源泉徴収簿にも利用できるようなフォーマットにして、兼用している企業も多く見られます。なお、源泉徴収簿の保存期間は7年。賃金台帳の保存期間よりも長いので注意が必要です。

賃金台帳は従業員に開示する義務はない

賃金台帳の従業員への開示義務は、特に定められていません。しかし、従業員には過去に支給を受けた賃金について「知る権利」が当然あると思われるため、情報開示の重要性の観点からも要求に応じるべきでしょう。

賃金台帳がない場合は罰金が科せられる?

賃金台帳を作成していない場合や、法律に定められた基準を満たしていない場合は、罰則の対象となります。労働基準法に基づき、30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。賃金台帳に不備が見つかった場合、一般的には労働基準監督官から是正勧告書が交付され、それに従わない場合は、監督官の判断により「送検」「罰則の適用」となることも。そのような事態を避けるためにも、法律で定められた基準を満たす賃金台帳を作成しましょう。

まとめ

従業員を雇い入れる企業には、賃金台帳の作成・保存が義務付けられています。全ての従業員を対象に作成する必要があり、保存期間や必ず記載しなければならない項目も定められているため、注意が必要です。今回の記事を参考に、法律に定められた基準を満たす賃金台帳を作成し、労務管理を適切に行いましょう。

(制作協力/株式会社はたらクリエイト、監修協力/社会保険労務士法人クラシコ、編集/d’s JOURNAL編集部)