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2017.11.14

採用後に経歴詐称が発覚した場合の対応法。解雇は可能?【弁護士監修】

PROFILE

米澤総合法律事務所(東京弁護士会所属)

米澤 章吾(よねざわ しょうご)弁護士
【監修・寄稿】

「企業のうつ病対策ハンドブック」 「新・労働事件法律相談ガイドブック」(共著)
「労務管理のツボとコツがゼッタイにわかる本」(監修)など、企業の労働問題に関する執筆・講演多数。
企業法務、とりわけ企業側の労働問題を中心に取り組み、その他、不動産問題(建築紛争含む)、家庭内問題(離婚相続)を三本柱として、さらに契約トラブル、交通事故、消費者問題等、個人・法人問わず多種の案件を取り扱っている。住友不動産やあいおい損保などの上場企業でのセミナー講師も数多く受け持つ。さらには、足利事件、横浜事件などの再審事件弁護団の経験あり。「弁護士業はサービス業である」をモットーに良い意味で「弁護士らしくない弁護士」を目指し、24時間以内に法律相談に回答する「光速弁護士」を標ぼうしている。

会社のさらなる発展のために、より良い人材が欲しいのはどこの会社も同じです。自社が希望する条件にあった人材なのか否かを判断するうえで、まず目を通すのは履歴書や職務経歴書ということが多いでしょう。しかし、中にはどうしてもその企業に入りたいがゆえ、経歴を過剰に記載する人もいるようです。選考フェーズで気がつかずに、採用後事実が異なることが判明したら…。
今回は、採用した社員が経歴を詐称していた場合、どのように対応すればよいのか、また経歴詐称を事前に防ぐ方法があるのか、紹介します。

経歴詐称があった場合、解雇はできるのか

結論から言うと、解雇できる場合もあればできない場合もあります。一口に経歴詐称といっても、軽微なものから重大なものまであり、全てのケースで解雇が可能とすることは合理的ではないからです。解雇ができるケースは、「重要な経歴」を詐称されたときに限られます(重要な経歴とは何を指すのかは下記で説明します)。

重大な経歴詐称にあたるか否かは、まず、労使間の「高度な信頼関係」を破壊するか否かという観点から判断されます。そのため、職務の遂行に支障がある、事業を運営していく際に必要な会社内のルール(事業秩序)を乱す、というような場合には、「高度な信頼関係」を破壊することとなり、重大な経歴詐称にあたると判断できます。
また解雇できるか否かは、経歴詐称が事前に判明していたら「採用をしなかった」か「同一の条件では雇用しなかった」といえる程度のものである必要があります。

要確認!経歴詐称で解雇ができる具体例とは

では、解雇ができる“重要な経歴”とは何か。具体的にいうと、「学歴」「職歴」「犯罪歴」の3つが該当するとされています。
経歴詐称で解雇ができる具体例

学歴に関する経歴詐称

一般的に学歴詐称は多い傾向にあります。学歴を詐称された場合、使用者は労働力を適正に配置することができず、結果として企業秩序を損なってしまう恐れがあります。また、企業によっては、給与体系を変えているケースもありますので、学歴に関する詐称は、重大なものであると判断できる可能性が高いでしょう。本来は大卒だが、「自分は高卒である」と低く偽った場合も、重大な経歴詐称にあたることがあります。
過去の判例では、日本精線事件と呼ばれるものがあり、本当の学歴を知っていれば採用していなかったと、懲戒解雇が認められるとされています。(大阪地決 昭和50年10月31日 判例時報807号99頁/判例タイムズ334号347頁)

ただし、学歴に関する経歴詐称であっても、そもそも会社が採用の条件を明示していなかった場合や、当該学歴が労働力の評価に影響がない場合(特に学歴不問)では解雇が認められないこともあります。例としては、三愛作業事件という港湾作業員が大学を中退したことを隠し、高卒としていたケースで懲戒解雇は無効であると判断されました(名古屋地決 昭和55年8月6日 判例時報983号122頁)。※いずれも仮処分事件。厳密には保全手続となります

職歴に関する経歴詐称

職歴を詐称していた場合は、採用後の仕事の内容、賃金に直接影響を及ぼすもののため、重要な経歴を詐称していると判断される可能性が高いと言えます。
判例では、グラバス事件(東京地判平成16年12月17日 労判889号52頁)があり、プログラミング能力がなかったにも関わらず、あたかもスキルがあるかのように経歴書に記載。採用面接でもそのように説明して、ソフトウェア会社に採用されたが、経歴詐称を理由とする懲戒解雇が認められたという事例があります。
ただし、職歴に関する詐称は全てが「重要な経歴」にあたるかというと、そんなこともありません。例えば、求人票に「未経験者歓迎」や、「〇〇業務の経験不問」などの記載があった場合は、職歴に詐称があったとしても、重要な経歴を詐称したと認められないケースもありますので注意が必要です。

犯罪歴に関する経歴詐称

学歴や職歴の詐称が労務提供の評価に誤りを生じさせる可能性がある一方、犯罪歴の場合は、内容により実際の業務や企業秩序に直接影響を与える可能性があります。犯罪の内容によって、業務や企業秩序に影響を与えうるかどうかで、重要な経歴詐称なのかを判断されることになります。

ただし、企業として知っておきたいポイントがあります。それは、刑が確定していない場合に限り、履歴書やエントリーシートなどに、「賞罰記載欄」があったとしても、本人は申告する義務がないということです。また、確定していたとしても、その執行を終えてから長い時間が経過していたり、過去犯した罪で相当の期間が経過していたりする場合は申告をしていなくとも経歴詐称にはあたらないと判断されることがあります。判例でも、採用の18年前にあった犯罪歴を隠していたが、わざとではないだろう(=秘匿についての作為性は薄い)と判断がなされたため、懲戒解雇が無効とされた事例があります。(豊橋総合自動車学校事件 名古屋地決 昭和56年7月10日 判例時報1023号123頁)

経歴詐称を事前に見抜くポイントとは

経歴詐称を見抜くポイント
経歴詐称を完全に見抜くのはなかなか難しいのは事実ですが、選考時に実施しておいた方がよいことはあります。実施する内容を大きく分類すると、次の3つに分けることができます。

1. 提出してもらう書類の整備
2. 面接時のヒアリング内容
3. 第三者やインターネットからの情報収集

1つ目は、提出してもらう書類の整備です。原則、求職者側は選考前の応募時において、経歴や経験をアピールすることができるにとどまるのであり、必ず○○は申告しなければならないという義務はないのです。つまり、選考に関わる重要事項は企業側から聞き取りにいく必要があります。したがってどのような書類の提出を求めるのかということについても、社内で決めておく必要があります。

提出してもらう書類の具体例とチェックポイント

●退職証明書、雇用保険被保険者証・・・在職の有無や期間や退職日、退職理由もわかるケース
(退職理由の記載がない場合は解雇されている可能性あり)
●源泉徴収票・市区町村が発行する課税証明書・・・職歴や年収に関する情報を収集することができる
●資格を証明する書面、卒業証書・・・保有する資格の真偽、学歴など

※また、身元保証書を提出してもらうことも有効です。身元保証は、求職者の身内や親しい間柄に署名・捺印してもらうため、安易な詐称を防ぐことができるでしょう。

2つ目は、ヒアリング内容についての工夫です。「なぜですか?」と、少ししつこいぐらいに掘り下げることがポイントです。たとえば、「前職では、職場のチームワーク向上に注力しました」という自己PRの求職者がいた場合、チームワーク向上させることで、どのような成果を求めようとしていたのか? そのために、どのような施策をうったのか? 何人を巻き込むことができたのか? どのくらいの期間で実施できたのか?その行動の結果はどうだったのか?…、など、具体的な数値レベルにまで落とし込んでヒアリングをすることで、虚偽の経歴を申告しているかを見抜くことができ、さらに求職者自身の能力についても推し量ることができます。ポイントは数値レベルまで掘り下げてヒアリングをすることです。
仮に、絶対に聞いておきたい内容を、各採用担当者に任せてしまった場合、採用基準にバラつきが発生し聞き取れる内容に過不足が生じる恐れがあります。したがって、絶対に聞いておきたい項目は、事前に洗い出し必須ヒアリング項目として設定しておくことが望ましいでしょう。
ただし、犯罪歴については業務の目的の達成に必要な範囲内でのみしか、その情報を収集・保管・使用できないとされているため注意が必要です。

3つ目は、第三者からの情報収集をすることです。簡単に取り組むことができることと言えば、インターネットでの検索が挙げられます。万が一、事件になるようなことをしていれば、その情報は出てくるでしょうし、SNSを見れば、どのような交友関係があるのかといったことを推し量ることができます。また、管理職クラスの採用など会社の根幹にかかわる採用をする場合には、前の職場へのヒアリングを実施させてもらう(本人から事前に同意を得ておくとよいでしょう)。また、求職者がいた業界に詳しい人物へのヒアリングをすることも、効果を発するケースがあります。

選考の前段階で以上3つを実施すれば、あらかじめ多くの詐称を見抜くことができ、リスクヘッジができるでしょう。他にも、試用期間や有期雇用を活用する方法もあります。特に職歴については、企業がイメージしていた職務能力を保持しているかがわかりづらいこともあるため、このような制度を利用するのも有効です。

【まとめ】

求職者は少しでも良い条件で働きたいと考えますしそれは自然なこと。無意識に誇張してしまうこともあるかもしれません。しかし、企業側は、それを安易に受け入れるのではなく、選考フェーズでどのようなことが起こりえるかリスクを想定し、想定したリスクに細やかに対策を打っておく必要があります。
雇用契約を締結した場合、解雇をすることは非常に難しいですし、内定の通知段階であっても同様です。可能な限り、内定通知前に経歴詐称があるかどうかを見抜くことが重要になるでしょう。

【弁護士監修|法律マニュアル】
01. 試用期間の解雇は可能?本採用を見送る場合の注意点とは
02. 入社直後の無断欠勤!連絡が取れなくなった社員の対処法
03.途中で変更可能?求人票に記載した給与額を下げたい場合
04.試用期間中に残業のお願いは可能?残業代の支払いは?
05.炎上してからでは遅い!採用でSNSを使う際の注意点
06.求人票に最低限必要な項目と記載してはいけない項目
07.採用後に経歴詐称が発覚した場合の対応法。解雇は可能?

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