【弁護士監修】根拠のない噂で会社の評判が…。人事が知っておくべき風評被害対策とは
求職者が企業の情報を集める方法は、企業ホームページや求人サイト、人材紹介会社からの推薦などさまざま。特に近年では口コミやSNS上での評判など、第三者視点からの情報を確認して応募するという人も多いです。このような第三者視点の情報は企業側ではコントロールできないため、まれに真実ではない情報が広まってしまい、採用に影響を及ぼすことも…。意図していない風評被害に対して企業がとりうる対策について法的視点を交えてご紹介します。
そもそも風評被害とは何か
風評被害とは、根拠のない噂のために受ける被害のことです。例えば、社員がSNS上で、事実とは異なるネガティブな内容を発信し、その内容が他者に共感されることにより拡散、結果として会社のイメージが悪化することなどを言います。個人にとって会社への印象も転職先を探す際の重要な要素になるため、企業への風評被害はそのまま採用における風評被害となる可能性が高いです。同じような意味として「炎上」もありますが、不祥事や失言などについてインターネット上で非難が殺到することを言います。炎上の原因は事実であるかないかに関係がありません。
採用のおける風評被害の発生原因と未然に防ぐ方法
採用に関する風評被害は、会社やサービスに対する何らかの不満や反感が原因となって発生します。発生元は大きくわけて「現役社員」「面接対象者」「社外関係者」の3つに分類できます。風評被害を起こさないためには、社内外の関係者との関係に注意し、ケースによっては対策を講じる必要があるでしょう。
1.現役社員
ちょっとした行動や意見のずれによって会社への不平・不満が徐々に募り、我慢できない段階になったところで、会社に対してのネガティブな発信をしてしまう…。こうしたケースを防ぐには当たり前ですが、人事と現場社員が普段からコミュニケーションをしっかりと取っておくことが大切です。日々のコミュニケーションの中で、社員の不平・不満に気づき、大きくなる前に対策を打つことができるでしょう。また内部通報制度を構築するなど、社内の問題を社内で解決できるような仕組みを作ることも重要です。また社内情報を外部に公表した場合、守秘義務に違反するおそれがあることを周知しておくことも一つの方法です。
2.面接対象者
面接担当者が、まず心がけておくべきは会社の代表として、面接対象者に接しているということ。面接対象者のことを深く知りたいと考え、意図的に答えにくい質問をする場合もあるかと思います。だからと言って、横柄な態度や選考とは関係のない不躾な質問は悪い印象となるだけです。社会人としての節度を守り、面接対象者に対して丁寧に接していくことが必要になります。
※応募者の意欲が下がってしまう面接あるあるの記事はこちら
面接時には聞いてはいけない質問をあらためて確認しておくことも大切です。たとえば、支持政党や本籍についての質問は違法となります。その事実を面接対象者が口コミサイトやSNSで発信した場合、拡散され炎上することも考えられます。面接官として質問してよい内容と悪い内容はあらかじめ整理しておく必要があるでしょう。また面接での質問とそれに対する求職者の回答を記録として残しておけば、仮に根も葉もない風評被害にあった場合でも、根拠を示して対抗することができるでしょう。
※面接時に聞いてはいけないことに関する記事はこちら
3.社外関係者
社外関係者から発生する風評被害については、元社員、取引先などが考えられます。この点についても、退職時に丁寧な対応をする、取引先とのトラブルが生じた場合にも真摯に対応をするなど、そもそもの原因を作らないようにすることです。また元社員(退職者)については、退職時に守秘義務に違反する行為を行わないことを誓約させる書面(誓約書)を提出させることも有効となります。
実際に風評被害にあってしまったら
現状を知るために、まず取り組みたいのは調査です。「会社名」や「展開するブランド名」「社長の名前」など自社に関連のあるワードでインターネット検索をすると、自社の評判や口コミとしてどのようなものがあるかチェックできます。現在は特定のワードに関する書き込みがないか、常に監視するプログラムを提供する企業も出てきています。
調査によって自社に対する風評被害が発見された場合、次にとるべき対策は各サイトへの削除請求です。削除や訂正を求める場合、各サイトのルールにのっとって依頼申請をする必要があります。サイト上から行う場合もあれば一般用の問い合わせフォームから手続きを進める場合などさまざまです。対応してもらえるかどうかも各サイトの判断にゆだねられるので、求められる書類を提出するだけでなく、掲載されている情報が正しくないことを証明する書面を提出するといった工夫も必要となります。また、削除が認められた場合であっても該当する一部分のみが削除されてしまうと、前後の文脈からネガティブな書き込みがされていることがわかってしまうケースもあります。必ずどのような状態になるのか確認しましょう。注意しなければいけない点として、訂正の手続きができるチャンスが一回までというサイトもあります。自社で削除請求をする場合は、事前にどういったルールかを調査してから実施する必要があるでしょう。
弁護士に依頼するという方法もあります。一番のメリットは、自社に対応するためのノウハウがない場合でも、弁護士の実績・経験から最適な方法で対応をしてくれるという点でしょう。またサイトによっては自社からの要請については対応してくれない場合でも、弁護士からの要請には対応するというケースあります。さらに削除または訂正に応じてもらえない場合には、裁判所の手続を通じて対応を求めていくことになります。こうした場合にも専門家である弁護士に依頼することにより、円滑にかつスピーディーに、手続きを進めることができます。なお、弁護士に依頼をする際にも、どこのページに記載があったのか、その内容が正しくない証拠は何なのかが重要になります。そのため記載のあったページのURLをきちんと記録しておくことや実際のページを印刷するなどして保存しておくとよいでしょう。
【まとめ】
風評被害のリスクは、どの企業にも常につきまとうもの。日ごろから社内外問わず、関係者との接触に気を付けていたとしても、根も葉もない嫌がらせの書き込みなどをされてしまうリスクもあります。このようなケースは早期に対策を講じないと、風評が拡大し、炎上へとつながる場合も。また、削除をする対象が膨大となり、多額の費用や多くの時間が必要となる恐れもあります。風評被害につながらないように努めることはもちろん、万が一被害にあってしまった場合には、早期に策を打てるよう対応フローなどを整備しておくことが大切です。
(監修協力/unite株式会社、編集/d’s JOURNAL編集部)
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