マネジメント層にはコーチングが必要。「人を生かし、育てる人」を育てる

株式会社コーチェット

代表取締役社長 櫻本 真理(さくらもと まり)

モルガン・スタンレー証券、ゴールドマン・サックス証券を経て、2014年5月にIT×メンタルヘルス領域でサービス開発を行う株式会社cotreeを設立、代表取締役に就任(現任)。2020年1月、「人を生かし、チームを育てるリーダーを育てる」マンツーマンプログラムの株式会社コーチェットを設立、代表取締役に就任(現任)。NPO法人soar理事。株式会社CAMPFIRE社外取締役。起業家向けのエグゼクティブコーチ・システムコーチとしても活動。

「人を生かし、育てる人」を育てる理由
マンツーマンコーチングプログラムが必要な理由

“「人を生かし、育てる人」を育てます”――。

2020年1月に誕生した株式会社コーチェット(CoachEd)が掲げるミッションです。同社は設立と同時に、マネジメントを担う人が「チームを育てる力」を学べるマンツーマンプログラムを開始しました。

コロナ禍の行く先が見通しきれない現状で、企業では新しく入社したメンバーの定着と育成を図るオンボーディング施策の重要性がますます高まっています。「人を生かし、育てる人」になるために、マネージャーやリーダーはどんなことに取り組むべきなのでしょうか。代表取締役の櫻本真理氏に伺いました。

「人を生かし、育てる人」を育てる理由

 

――2020年1月、新たにコーチェットを設立した背景を教えてください。

櫻本氏:私が経営する、個人向けのカウンセリングやコーチングサービスを手がける会社、cotree での事業を通じて、二つの気付きを得ました。

一つは、カウンセリングを受けにくる人の多くが「人間関係に悩んでいる」ということです。特に上司や親、教師といった、自分にとって重要な他者から認められていない、あるいは個性を尊重されていないことに悩み、自分らしさを出せずに苦しんでいる人が多いと感じています。

苦しんでいる人にカウンセリングを提供することはもちろん大切です。でも本質的には、そうした悩みを抱える人を「生み出す人」こそ変えていく必要があるのではないかと考えるようになりました。人の個性を大切にし、育てていく力を、誰かに影響を与える可能性のある立場の人に持っていただくことが必要なのだと。

経営者は「強くて優秀」な人が多い。だからこそ、人を大切にすることが後回しになるケースも

もう一つの気付きは、cotreeで行っている経営者向けコーチングから得られたものです。経営者の中には「強くて優秀な人」が多いんですよね。だからこそ、人を大切にすることが後回しになるケースもあると思いました。

――具体的にどういうことでしょうか?

櫻本氏:事業を拡大する過程で、結果的に社内の人間関係が後回しになってしまうのはよくあることです。また、「事業を前に進めるためなら人間関係は後回しで構わない」と確信的に考えている経営者もいます。

事業を大きくするための方法は、本を読んだり、セミナーに参加したりして学べますが、人を大切にするための方法を学べる場所はなかなかありません。人とのかかわりには、ロジックだけではうまく処理できないこともたくさんあります。「方法がわからないからあきらめてしまった」と話す経営者とも実際に出会ってきました。

でも、そうした経営者の話を聞いていると、決して「従業員みんながハッピーになること」を否定しているわけではないんです。誰も、従業員を不幸にしたくて人間関係を後回しにしている人なんていない。適切にかかわる方法を知らないだけなんです。それに、複雑な問題をクリエイティブに解決しなければならない時代には、個人の可能性を最大化することが不可欠です。そうした認識を持つ経営者は増えています。

このような背景から、マネージャー層やリーダー層はもちろん、経営者も対象とした「人を生かし、育てる人」を育てる事業を立ち上げました。

マンツーマンコーチングプログラムが必要な理由

 

――リーダー育成や管理職育成、あるいは経営塾など、世の中にはすでに多くの研修やコンサルティングが流通しています。この中で、新たにマンツーマンコーチングプログラムの提供に至った理由は何だったのでしょうか?

櫻本氏:研修での学びが大きな意味を持つことも多いと思います。一方で、「人とのかかわり方」などを伸ばすヒューマンスキルの分野は、一人一人で課題が異なるもの。基本設計が最大公約数的にならざるを得ない集合研修では、「研修を受けたけど何も変わらなかったね」という結果になってしまうことも少なくありません。

個別形式で向き合う形のトレーニングでも、一人一人の現場での課題に即したメニューを提供できなければ、現場の仕事で生きる成果につながらないことも多々あります。

そこで私たちのプログラムでは、3カ月にわたって2人の担当者が付き、スキル習得だけでなく人格的成長に向けて寄り添っていく体制としました。まずはアセスメントを実施し、「感情のコントロール」「人間理解」「他者へ意見を伝える力」など、その人特有の課題を明らかにします。毎回のセッションでは現場での出来事をベースとした振り返りと目標設定を行い、実践的な経験学習を行っていきます。

このプロセスを3カ月繰り返していくことで、自分自身の課題を発見して対処し、成長へとつなげるサイクルを体感してもらっています。

自身の課題解決に向けた「1on1」を受けることで、メンバーとのかかわり方が変わる

――マネージャーやリーダーにとっては、自身の課題と向き合いながら現実の世界でのメンバーとのかかわり方を見直していけるわけですね。

櫻本氏:そうですね。マネージャーやリーダーにとっては、一連のプロセスがマネジメントスキルを高める上での貴重な学びとなるはずです。

マネージャーやリーダーの中には、1on1に苦手意識を持つ人も少なくありません。メンバーとどう接していけばいいかわからないまま1on1を実施し、結果として互いに苦痛な時間を過ごしているだけ、というケースもあるのではないでしょうか。自分自身の課題解決に向けた1on1を「受けてみる」ことは、大きな意味があると思います。

 

後編は9/28(月)公開予定です。
「メンバーの弱みや本音と向き合うオンボーディング。異質性のあるチームは強い」

取材・文/多田慎介、撮影/安井信介、編集/野村英之(プレスラボ)・d’s JOURNAL編集部