名古屋のゲーム会社はなぜ急成長できたのか――。業界未経験者が集い、孤立させず、躍進できる、魅力の会社づくり

2022.01.07
ワンダープラネット株式会社

取締役CPO 鷲見 政明(すみ・まさあき)

1982年生まれ、岐阜県出身。2012年に創業メンバーの一人としてワンダープラネットにエンジニアとして入社。主要タイトル「クラッシュフィーバー」「ジャンプチ ヒーローズ」の開発時およびリリース時に事業責任者(プロデューサー)を務める。2016年に執行役員に就任。2018年から名古屋スタジオ長に就任(現任)。2021年11月に取締役CPOに就任(現任)。

ワンダープラネット株式会社

嘉村 飛勇(かむら・ひゆう)

1996年生まれ、愛知県出身。2019年にワンダープラネットへゲームプランナーとして入社。運営中タイトルでレベルデザイン、運営企画、マネタイズを経験した後、2020年にプランナーリーダーに就任。2021年からはディレクターを務める。

ワンダープラネット株式会社

後藤 明香(ごとう・さやか)

1994年生まれ、愛知県出身。2019年にワンダープラネットへゲームプランナーとして入社。運営中タイトルの運営企画プランナーとしてゲーム内の企画立案を担当した後、2021年から運営ディレクターを務める。

コロナ禍で再確認した「気軽な雑談」の重要さ
「心理的安全性」が確立されてこそ「挑戦」ができる
地方採用の母集団形成、実はゲームをつくりたい人材はたくさんいる

名古屋に本社をおくワンダープラネット株式会社は、スマートフォン向けゲームの企画・開発・運営を行うエンターテイメントサービス事業を展開している。2021年6月に東証マザーズに上場。創業10年目で、約200人の社員が在籍するまでに成長している。

愛知県名古屋市に本社を構える同社の特色は、業界未経験者を積極採用し、入社後は抜擢人事のチャンスも与えられている環境である。

このたび、同社プロダクトの企画・開発・運営に関する業務執行を統括する職位として、新たにCPO(Chief Product Officer)を設置し、国内市場のみならずグローバル市場をターゲットにゲーム開発・運営力の強化を進めていく体制に舵を切ったが、まさにこの抜擢で同役に就いたのが、今回取材した鷲見政明氏である。

同氏は、ゲーム業界未経験ながらもエンジニアとして創業期に入社して以降、主要タイトル「クラッシュフィーバー」「ジャンプチ ヒーローズ」の開発時およびリリース時に事業責任者(プロデューサー)を務めた経験を持つ。

ワンダープラネットの組織づくりの話題では、鷲見氏から「心理的安全性」というキーワードが盛んに聞かれた。社員が新しいことに挑みながらステップアップするための組織づくりについて、鷲見氏と新進気鋭のメンバー、嘉村飛勇氏後藤明香氏の3名にインタビューを敢行した。

コロナ禍で再確認した「気軽な雑談」の重要さ

――スマートフォン向けのアプリ・ゲームの企画・開発・運営を行っています。前年に引き続き、2021年もコロナ禍の影響が色濃く出た1年でしたが、業績や働き方に変化はありましたか?

鷲見氏:コロナ禍でゲーム業界全体の売り上げは活況です。当社も新型コロナウイルスによるダメージは抑えられています。働き方については、緊急事態宣言下にはフルリモートを導入していた時期もありましたが、現在は週1日出社・週4日任意リモートワークという形をとっています。

――名古屋を拠点に成長を遂げているスタートアップ企業として、組織づくりや人材の定着のために大切にしていることをお聞かせください。

鷲見氏:当社が特に大切にしているのは、「気軽さ」「雑談」、そして「心理的安全性」です。誰に対しても気軽に話しかけたり、相談したり、安心して気持ちを伝えたりできる組織づくりを心掛けています。

しかし、コロナ禍でリモートワークに切り替わったころには、「気軽に話しかける、相談する」ということ自体が難しくなった時期がありました。現在は試行錯誤をしながらも、コミュニケーション面の課題解決にむけた取り組みを続けています。

――具体的にはどのような取り組みでしょうか。

鷲見氏:いくつかありますが、1つは、あえて雑談のためのミーティングを持つことです。

週1日の出社日に対面で雑談のミーティングをするか、1日15分ほどオンラインで雑談をするかの選択肢を設け、各チームが、働き方やプロジェクトの特性に合わせて都合の良いほうを選択しています。

「ちょっと誰かに話しかけたいな」と思ったときに、気軽にメンバーに呼びかけられるツールとして「バーチャルオフィス」を活用しています。隣の席の人に話しかける感覚で、コミュニケーションを活性化させる環境を整えているわけです。

また、新しいメンバーが入社する際には、オンボーディングに力を入れています。週1の出社日に合わせて実施しているチームビルディングも内容はさまざまで、その中にはほかのメンバーとボードゲームやカードゲームをすることもあります。ゲーム開発を行う上での、発想の柔軟性や創造性を養う目的もありますね。

いずれにしても、リモートワークを行う中で、新しいメンバーがほかのメンバーと顔を合わせないまま仕事を進める不安がないようにと、会社として最大限一緒に働く上での心理的安全性を心掛けた環境づくりを進めています。

――人材の定着・育成のためには、コミュニケーションの密度がキーワードになると考えているのでしょうか。

鷲見氏:クリエイティブの領域において、よりよいアウトプットをするためには、たくさんのインプットが必要です

もちろん「雑談」というインプットの中からアイディアが生まれることがあり、そのアイディアをたたき台として、新しいサービスが形づくられることもあります。その話題もさまざまで、例えば流行のゲームをプレイした感想や、好きなアニメ、おすすめのアプリなどですね。

フルリモートワークに切り替えても、目の前の業務はこなせるでしょう。しかし、5年後10年後と中長期的な視点で見据えたときに、こうした取り組みは実るものがあるのではないかと感じています。

「心理的安全性」が確立されてこそ「挑戦」ができる

――「心理的安全性」が、組織づくりで重要な理由についてお聞かせください。

鷲見氏:今でこそ、「楽しく、真剣に働こう」という雰囲気ができあがっていますが、以前からそうだったわけではありません

過去には、失敗した社員が怒られる、怒られたくないから委縮する、その結果言われたことしかやらなくなる、という悪循環が生じていた時期もありました。

そんなメンバーの様子を見ていて、組織において「挑戦」と「心理的安全性」は密接な関係があると身をもって感じたので、社員が挑戦しやすい土壌を作るために試行錯誤をしました。

その結果、現在では、挑戦した結果の失敗を寛容に受け止めようというマインドが形成されて、社内では「もし誰かが挑戦して失敗をしたら拍手をしよう」と啓発しています。

もう1つ、私が考える心理的安全性の基本は「リーダーがいつも笑顔でいること」だと思います。いくら仕組みや制度を作っても、リーダーが不機嫌でいると空気が悪くなりますから。

こうした経緯もあり、例えばあるプロダクトチームでは、人事的な役職ではありませんが、「CFO(チーフ雰囲気オフィサー)」という役割をチーム内で独自につくり、現在は後藤明香が務めています。

(※)「ジャンプチ ヒーローズ」…同社開発タイトル(IP)のスマートフォン向けゲームアプリ。累計ダウンロード数は1,900万ダウンロード(2021年11月時点)達成。週刊少年ジャンプを中心とした人気漫画キャラクターが多数登場するパズルRPG
――後藤さんに伺います。雰囲気づくりの役割を担うようになってからどんなことを心掛けていますか?

後藤氏:小さなことですが、チーム内で「ありがとう」の言葉を意識的に増やすように努めています。忙しかったり、納期がタイトだったりするとどうしても「ごめんね」という言葉を使いがちになってしまうので。

また先ほど鷲見が話した通り、雑談を大切にすることも注力しています。

私がチームに入る前から雑談文化があり、今でもそれを受け継いでいます。1週間の成果報告をしあう時間にも雑談が生じ、笑顔が生まれ、他のチームから「雰囲気がいいね」と言われるまでになりました。

プロダクトが成長したのも、よいチームワークの賜物だと思います。

さらに、積極的に感謝を伝えるための制度として、お礼のメッセージと共にポイントを送り合う「ピアボーナス制度(社内呼称:ワンダーチップ制度)」という制度もあります。

日常の行動や貢献に対し、感謝を送り合うことで可視化され、ポジティブなコミュニケーションが増えて良い雰囲気づくりにつながっていますね。

地方採用の母集団形成、実はゲームをつくりたい人材はたくさんいる

――名古屋という土地での人材を集める母集団形成のノウハウがあれば教えてください。

鷲見氏:新卒採用と中途採用で母集団形成の方法は変わると思いますが、数少ない「“名古屋にある“スマホゲームの会社」という点は、当社にとって1つの強みです。

当社には「ゲームをつくりたい」という明確な意思をもった人と、首都圏に就職したけれどUターンしなければならなくなった人が集まりやすい会社であるという特徴があります。

それは母集団形成のために、ゲーム業界未経験だけれども「ゲームを作りたいという熱い思いを持ち、ポテンシャルがある人」や、ゲーム業界経験者やUターン予定者とのタッチポイントの機会を逃さないようにしたためです。

また、広報がSNS(note)で会社のカルチャーを発信する仕組みもつくりました。カルチャーや働き方などについての発信を継続的に行うことで、応募者への動機づけになったり、会社理解を深められたりと、効果が出ているのを実感しています。

ありのままの情報を自分たちで正しく発信することで、応募者の方が知りたいワンダープラネットの情報がリアルに伝わるのではないかと考えたのです。

――経験者だけでなく未経験の人材も採用して成長を続けています。社員の育成のために力を入れていることはありますか?

鷲見氏:新メンバーに対しては、トレーナーが業務を教え、メンターが1対1でケアするほか、既存のメンバーになじんで早期戦力となるための「オンボーディング」にも力を注いでいます。

メンターとトレーナーの質によって育成スピードが左右されるということが起こらないように、新メンバーの短期的な育成ロードマップをメンターとトレーナーが作り、育成の状況を定期的に確認できるようにしました。とにかく、新メンバーを孤立させない環境を醸成しているわけです。

――取締役CPOに就任された鷲見さんは、過去に「新しく面白いゲームをつくってヒットさせるから、俺に投資して欲しい」と経営陣に直談判して、主要タイトルのプロデューサーを歴任するに至ったと「note」につづられていました。「抜擢人事」は、御社のユニークなポイントだと思います。現在、後藤さんは運営ディレクター、嘉村さんはディレクターの役職に就いています。今のポジションに抜擢されてどのように感じましたか?

後藤氏:自分が携わっているチームのメンバーが好きなので、「チームをより良い雰囲気にするために、私がもっと頑張っていいんだな」と感じてワクワクしました。

当社は挑戦が受け入れられる職場だと感じています。たとえ自分の職域外の仕事でも、「自分がやりたい」と思うことには挑戦して、職能を伸ばすことができます。いろんな挑戦を続けてきたからこそ、今のポジションを任せてもらえたのかもしれません。

「CFO(チーム雰囲気オフィサー)」になったことで、サービスを利用してくださっているお客様に加えて社内のチームメンバーのことをより見るようにもなりましたね。

嘉村氏:私はとにかくゲームが好きだったので、就職の際はゲーム会社に入ろうと当初から考えていましたが、未経験でしたし、専門知識がないと難しいと思っていました

単純作業でもいいから現場の空気を少しでも学べればと探していたところ、未経験からチャレンジできるワンダープラネットと出会ったんです。

ゲーム開発のことはわからないことだらけでしたが、さまざまな業務を担当させてもらうことでようやくひと通り理解できるようになりました。

ただひたすら目の前のことを頑張ってきたタイミングで、現在のポジションに就つことができました。「任せてもいい」と思ってもらえたことがうれしくて、期待に応えたいと思いました。

――引き続き、後藤さんと嘉村さんに伺います。人が集まる魅力的な会社の条件はどのような会社だと思いますか?

後藤氏:ずっとその場所で努力ができる環境がある会社だと思います。努力をするのは気持ちと身体のエネルギーが必要です

上司やメンバーから「この人に負けないようにがんばりたい」という刺激が得られ、自分の努力を見てくれる人がいる環境があると、なお理想的です。当社では、1人1人のがんばりを見てもらえる社風だと思います。

嘉村氏:楽しいけれど、楽しさの中でもやりたいことを思い描くことができて、そこに向かって真剣に楽しく進むことができる会社です。

名古屋スタジオの場合、会社での成長とは別軸で、個人的な「野望」を設定する機会があります。自分のやりたいことを応援してくれる会社でなら、もっともっと挑戦し、成長していけると思います。

――最後に鷲見さんに伺います。御社の今後の展開、特にアフターコロナを見据えてどのような取り組みを展開していくのか教えてください。

鷲見氏:「心理的安全性」を高めることは、会社の土台づくりだと考えておりますが、もちろん土台だけでは成果をあげることはできません

単に仲が良いというだけでなく、目標を定め、自分の担当分野を超えてプロジェクト全体に目を向けてもらうこと。各メンバーのナレッジを高め、高い専門性を持つゲームづくりのプロとして育てていくことが必要です。

一方、リモートワークに移行したことで、トレーナーによるティーチングが不十分という課題が表面化してきたように感じています。

アフターコロナを見据え、リモートワークやコミュニケーションを円滑にする取り組みを継続しつつも、ナレッジやノウハウの継承がなされるような仕組みを整えていきたいと考えています。

取材後記

「雑談」を辞書で調べると「とりとめもない話」とある。しかし実際には日々の会話を「雑か、雑でないか」と線引きするのは、とても難しい。ワンダープラネットのメンバーが行っている「雑談」では、日々さまざまなテーマを扱い、自分の関心外の情報を自然とインプットする機会になっている。また、なんでも気軽に話せる土壌が、一歩踏み込んだ意見を伝える雰囲気にもつながり、結果的に心理的安全性にもつながっているようだ。コロナ禍で失われた「気軽な雑談」を取り戻すことが中長期的な視点で有益という鷲見氏の言葉は示唆に満ちている。

取材・文/鈴政武尊・北川和子、編集/鈴政武尊・d’s journal編集部

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