「落ちたら気まずい」「方法がわからない」。リファラル採用の不安、どう乗り越える?

株式会社MyRefer

取締役 細田 亮佑 (ほそだ・りょうすけ)

2012年に株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア)新卒入社。中途正社員採用領域の採用コンサルティング事業部に配属。全社MVPなどを受賞後、営業マネジメントや商品開発マネジメントを経て、社内ベンチャーであるMIIDASにCMOMIIDAS編集長として参画。2018年よりCOOとしてMyReferに参画。

株式会社シンフィールド

社長室 田所 洋平(たどころ・ようへい)

金融・通信・SaaS・HR業界での営業や雀荘の運営などを経て、2019年にシンフィールド入社。現在は社長室に所属して採用や広報、マーケティングなどを幅広く担当する。就活応援マガジンJobManga®(https://jobmanga.com/)の編集にも携わっている。

リファラル採用の落とし穴と課題解決方法/MyRefer・細田氏
「インセンティブを出すから友達を連れてきて」は避けるべき
「4つのチェックポイント」をもとに自社の課題整理を
リファラル採用を成功させるコンテンツづくりのコツ/シンフィールド・田所氏
良いコンテンツには「拡散されやすい」「見られやすい」「行動につながりやすい」の3種類がある
コンテンツづくりに必要な「ストーリー」と「深掘り」

HR業界ではすっかり定着ワードとなってきた「リファラル採用」。社員が知り合いを誘い、自社に紹介する採用活動を指します。「入社後のミスマッチが起こりにくい」などのメリットから、最近では企業の取り組みとして整備を進めるケースが増えています。

リファラル採用を中心にHRテックのサービスを展開する株式会社MyReferは、「リファラル採用とコンテンツ作成」をテーマとしたウェビナーを開催。同社取締役の細田亮佑氏と、マーケティングツールとしてのマンガで企業の集客を支援し、マンガマーケティング®のパイオニアとして知られる株式会社シンフィールドの田所洋平氏が登壇しました。

リファラル採用を成功させるには、まず現場の不安を解消することが大切だと言います。そのための仕組みづくりや、情報の浸透など、具体的なノウハウにあふれた当ウェビナーをレポートします。

リファラル採用の落とし穴と課題解決方法/MyRefer・細田氏

ある調査によれば、企業のリファラル採用ニーズは急拡大しています。現段階で63%の企業がリファラル採用を導入しており、今後導入の予定がある企業を含めれば80%近くに上ります。実際にリファラル採用を行っている企業では、採用費用の削減や人事の採用オペレーションコストの削減、離職率低下、エンゲージメント指数や生産性向上などの結果につながっています。

(MyRefer作成)

一方で、リファラル採用を導入した全ての企業が、順調に結果を出しているわけではありません。「友人を紹介して採用されなかったら気まずい」「採用フローを知らないから友人に説明しづらい」「他部門の仕事内容まではわからないのでうまく説明できない」「求める人材のレベル感がわからない」といった理由で、社員が自社を紹介することをためらってしまうケースも多いと感じます。

「なかなかうまくいかない」の裏に隠された、5つの課題

私たちはこうした問題を、「コミュニケーション」「ゲーム性・感謝・賞賛」「信頼性・透明性」「面倒・手間」「追跡・分析性」の5つの課題に分けて考えています。これらの課題が邪魔をして、「リファラル採用をやってみたもののうまくいかない」という企業が非常に多いのです。

(MyRefer作成)

「インセンティブを出すから友達を連れてきて」は避けるべき

【課題1/コミュニケーション】空きポストや採用要件など、採用情報が浸透しない

コミュニケーションにおいては、継続的かつ質の高い情報を発信し続けることが重要です。たとえばある企業のイントラネットでは、社員紹介制度をトップページに掲載して全社員に伝えています。しかし1年後に社員へアンケートを取ったところ、空きポジションや採用要件を知っている社員は全体の2%程度でした。制度については内容を変えて定期的に伝えるとともに、新規求人情報だけではなく、社員の活動状況や気軽に参加できるイベントの情報など、社内広報に近いスタンスで発信し続ける必要があります

【課題2/ゲーム性・感謝・賞賛】従業員を継続的に動機づけできない

多くの企業では、友人を紹介して採用に至った場合の報酬制度を設けています。しかし私たちは、こうしたインセンティブだけではなく、背景やストーリーも重視するべきだと考えています。

(MyRefer作成)

ファラル採用が発生するシーンでは、社員のみなさんが友人をハンティングし声を掛けていくということよりも、プライベートな場でキャリア相談を受けたり、飲み会で会社の愚痴を聞いたりといった「相談型」の場面から多くがスタートしています。

リファラル採用に協力した社員へのアンケートでは、「友人の課題を解決してあげたい」という動機で動いた人が大多数でした。一方でボーナス収入などのインセンティブに惹かれて動く人は少数です。「インセンティブを出すから友達を連れてきて」という呼び掛けは避けるべきだと思っています。インセンティブはあくまでもコミュニケーションや賞賛のきっかけに過ぎません。

私たちは、「自社のビジョンやバリューと合致する人を採用したいので、みなさんの力を貸してほしい。合致しそうな人を見つけてもらうことに協力してほしい。協力していただけたらインセンティブを出す」と、“流れ”で伝えることを大切にしています。協力を求めるときにはストーリーが大切だからです。「なぜ」「背景」がある話は、聞き手に納得感をもたらすだけでなく、長期記憶に残るというメリットもあります。

(MyRefer作成)

「4つのチェックポイント」をもとに自社の課題整理を

【課題3/信頼性・透明性】「採用されなかったら気まずい」という不安を払拭できない

「友人が採用されなかったら気まずい」という課題に対して、どう対応していくべきなのでしょうか。

答えは、透明性の高い情報を流通させることだと考えています。採用戦略や計画、募集ポスト、選考プロセスなどについて、人事以外の社員の多くは認識していません。しっかり情報として流通させることが、社員の当事者意識を生むきっかけにもなります。

(MyRefer作成)

「友人が落ちてしまったら気まずい」という不安に対しては、継続的に紹介が生まれるような情報を開示して、フォローする仕組みを整えることが人事の役割だと言えるでしょう。マッチしなかった場合のNG理由を共有するときには、丁寧に対応し、紹介してくれたことに対する謝意を人事側から伝えなければなりません。

恒常的に相談できるような窓口を人事に設置し、「こんな友人がいるんですけど、どうでしょう?」と気軽に社員が相談できるようにすることも大切です。

【課題4/面倒・手間】情報が散乱していてわかりにくい

社員が「面倒だ、手間だ」と思わないようにするために、情報拡散を促す仕組みをつくることも重要です。ありがちなのは、イントラネットに友人紹介制度の概要が記載されていて、具体的な募集ポストはホームページやWantedly、求人サイトなどに書いてあるケース。これでは情報が散乱していて、社員は何をどこで見ればいいのかわからない状況に陥ってしまいます。情報が散乱する前に、「ここを見ればすべてがわかる」という環境を整えるべきです。

同時に、紹介のハードルを下げるための活動も大切です。無機質な求人情報を出すだけではなく、自社を知ってもらえるイベントやカジュアル面談などの機会を設けて社員が大切な友人を連れてこられるようにする必要があります。

【課題5/追跡・分析性】現状が可視化されていない

リファラル採用がうまくいかないという現状を目の前にしながら、自社の課題がわからないという企業も少なくないでしょう。私たちは4つのチェックポイントを提示しています。

すなわち、「社員の協力率と制度の認知率」「紹介してくれる社員のユニーク数」「その社員が何人の友人を紹介してくれるのか」「そこから応募・決定に至るのは何人か」です。

(MyRefer作成)

KPIは企業によって異なるので一概には言えませんが、こうした数値が可視化されなければ、リファラル採用は促進しにくいままでしょう。

そして、社員の状況を可視化して対応していく必要があります。社員の中には、自ら積極的に友人へ声がけをしてくれる「アクティブ層」、人事に声をかけられたり周りに困っている友人がいたりすれば動く「パッシブ層」、自分からは動きたくないと考えている「ネガティブ層」がいるはずです。こうした層別に人事のアクションを考え、実行していることも重要だと考えています。

(MyRefer作成)

リファラル採用を成功させるコンテンツづくりのコツ/シンフィールド・田所氏

私たちは「マンガマーケティング世界一の会社」を自称しています。採用マンガの実績も多く、自社の採用説明会などでもマンガを活用しています。今回は、リファラル採用を成功させるためのコンテンツにはどんな視点が必要なのか。その知見をお伝えできればと思います。

リファラル採用を促進したいという想いが高じるがゆえに起きがちなのが、「口説く」というアクションです。そうではなく、ターゲットの方から興味を持って来てくれる状態が最高ではないでしょうか。

みんなが自発的に動く「最高」のリファラル採用を実現するために

そのためには、ターゲットとしている人たちに会社のカルチャーや仕事内容がわかるコンテンツを届け、「いいね」と思ってもらう必要があります。では誰がコンテンツを届けるのかというと、自社の社員です。社員が自らSNSなどで拡散し、ターゲットの目に触れて、行動につながる。それが今の時代にマッチしたリファラル採用の形ではないでしょうか。

(シンフィールド作成)

良いコンテンツには「拡散されやすい」「見られやすい」「行動につながりやすい」の3種類がある

では、社員が自ら進んで拡散したくなるコンテンツとは、どのようなものなのでしょうか。そのヒントとして、私自身のツイッターで分析した、今年5月以降の傾向をお伝えします。伸びたツイートには、大きく「拡散されやすい」「見られやすい」「行動につながりやすい」という3つの傾向がありました。コンテンツをつくる際、この視点を参考にしてみてください。

最もリツイートが多かったのはノウハウ系のコンテンツでした。自社のことを直接的に紹介するよりは、まず自社のノウハウを出すことが重要だと言えます。たとえば営業職がほしいのであれば、コロナ禍におけるオンライン営業のノウハウをエビデンスと共に発信していく。それによって「この会社はすごいな」と感じてもらえるようになるわけです。

(シンフィールド作成)

次に多くリツイートされていたのは「情報系」コンテンツ。ニュースなどの事実情報に、自分なりの考えや解釈を加えて発信したものです。

3番目に多かったのは「自己紹介系」でした。自分はもちろん、他人の紹介も行っています。たとえば私は以前にjobマンガという事業部に所属していましたが、そこで「就活生が使っているツール13選」という情報を出したところ、広く拡散されました。

この3つの系統の中でインプレッションの高いコンテンツを見ていくと、ツイッター上では情報系が最もインプレッションを獲得していました。リツイートはノウハウ系より少ないものの、インプレッションそのものは多かったということです。

(シンフィールド作成)

次にエンゲージメントの高いコンテンツを見ていきます。エンゲージメントが高いというのは、クリックして中身を見ようとしてくれたものを指します。これは、写真があるコンテンツがやはり強いのかなと感じています。Zoomが広く活用されるようになった時期にオンライン飲み会についてのコンテンツを写真と共に出したところ、エンゲージメントが大きく伸びました。当社のオフィスにはマンガがたくさんあるのですが、こうした風景を写真で紹介することでもエンゲージメントが伸びる傾向にあります。

(シンフィールド作成)

まとめると、「拡散されやすいのはノウハウ系」「見られやすいのは情報系」「行動につながりやすいものは写真付き」だと言えます。これらをまとめて一つのコンテンツに埋め込むのも有効でしょう。ツイッターでは140文字の制限がありますが、イントラネットやWantedlyなどのコンテンツでは情報量も多いので、写真を交えてたくさん紹介できるのではないでしょうか。

(シンフィールド作成)

コンテンツづくりに必要な「ストーリー」と「深掘り」

それでは次に、コンテンツ制作の中身について見ていきましょう。

よく採用コンテンツでは単なる社員紹介を書いてしまいがちですが、大切なのはその人の背景にあるストーリーを伝えることなのです。その社員はどんな想いで働いているのか。そこまで掘り下げることで人の心を動かすコンテンツへ近づきます。

人の行動の裏には、感情があります。たとえばみなさんがペットショップに行ったとします。そこに「子猫」と「フクロウ」がいたとしたら、あなたはどちらを飼いたいですか?

答えの裏側にはさまざまな理由があると思います。「猫のほうがかわいい」とか、「フクロウの方がかっこいい」とか。人の決断理由の背景には必ず感情があり、心理学では、感情が湧くからこそ人は行動すると言われています。

同時に、人が感情を動かされる理由としては「他の人の想いに影響される」要素が強いと言われます。そのためコンテンツ制作においては、人の心を動かす「想い」を重視するべきです。最近では、ツイッターで話題になったマンガ『100日後に死ぬワニ』にも、高視聴率を記録したドラマ『半沢直樹』にも、人の心を動かす想いが表現されていました。

(シンフィールド作成)

ストーリーがあることで共感されやすいコンテンツとなります。また、メンバーがストーリーに共感してくれていれば、その組織は強くなります。

おまけ:ストーリーをつくる最強のフレームワーク「神話の法則」

みなさんは「神話の法則」をご存じでしょうか? あのスティーブン・スピルバーグ監督作品やディズニー映画など、さまざまな物語で使われている法則です。この法則では最初に日常世界からスタートし、その後に異世界に踏み込んでいくことで物語が進行していきます。こうした法則は、採用や集客のストーリーでも活かせるものがあります。

(シンフィールド作成)

コンテンツのボリュームや用途によって、他にもさまざまな法則やノウハウを活用できるはずです。ぜひこうした知見にも目を向けていただければと思います。

編集後記

細田氏が語った「友人を紹介して不採用になったらどうしよう」という気持ちは、自分が友人を紹介する立場になれば痛いほどわかる不安ではないでしょうか。リファラル採用がうまくいかない企業では、こうした当たり前の感情に気づけないまま施策を走らせているケースも多いのではないかと感じました。

後半に田所氏から紹介されたコンテンツ制作の秘訣は、まさに明日から応用できる内容。人事は募集情報や社内リリースなどに関わり、日々大量のコンテンツと向き合っている立場だと言えます。忙しい中でも、手元から送り出されようとしているコンテンツに「想い」が込められているかどうか、今一度見返してみるべきなのだと思います。

取材・文/多田慎介、編集/檜垣優香(プレスラボ)・d’s JOURNAL編集部