QMSとは?内容と目的・推進のポイントをわかりやすく解説
d’s JOURNAL編集部
安定した品質を保った製品を製造し、納品するために製造業の分野においてはQMS(品質管理システム)が重視されています。
品質を担保する規格として「ISO9001」があり、その関係性を理解しておくことが大事です。
この記事では、QMSの基本的な定義や目的、ISO9001のポイントなどを解説します。顧客満足度を高めるための取り組みとして、QMSが何かを押さえておきましょう。
QMS(品質管理システム)とは
QMSとは、品質管理システム(Quality Management System)を指す言葉です。日本産業標準調査会(JISC)によれば、品質マネジメントシステムは「品質に関して組織を指揮し、管理するためのマネジメントシステム」と定義されています。
マネジメントシステムというのは、組織運営のためのルールや仕組みのことを指す点を押さえておきましょう。したがって、QMSは組織が顧客に対して提供する製品やサービスの品質について、継続して改善していくための仕組みを決めているものだといえます。
QMSの考え方においては、顧客が求める品質を達成することによって、顧客満足度の向上を目的としているのです。QMSを推進していくためには、PDCAサイクルを回していくのが重要だといわれており、たえず改善を行っていくことが求められます。
QMSをわかりやすく理解するための3つのポイント
QMSを理解するためには、あらかじめ押さえておくべき3つのポイントがあります。それぞれの点について、詳しく見ていきましょう。
マネジメントシステムとは
マネジメントシステムとは、組織を動かすための仕組みのことです。その仕組みがどの程度定着し、運用されているかをきちんとチェックし、改善を続けていくことが求められます。
たとえば、出社時間に関するルールを設けた場合に、朝6時に出社するというルールを設けたとします。しかし、朝6時の出社では社員が十分な休息を取ることができずに、組織全体のパフォーマンスが低下するという結果が生じた場合、何らかの改善が必要です。
分析の結果、朝早くに仕事を開始すると社員の生産性が低下するという事実が判明し、出社時間を2時間遅らせて8時からにしたとします。生産性が高まった場合、始業時間は8時が良いという結論を導き出せます。
上記のように、特定の経営目標を達成するための仕組みをマネジメントシステムと呼ぶのです。
QMSが指す「品質」とは
QMSにおける品質というのは、単に優れた製品やサービスのことを指すものではありません。品質というのは、顧客が期待するレベルに達しているかどうかが問われるものです。
たとえば、製品を購入する顧客は、不良品が出ることを望んではいません。そのため、不良品を出さないことは顧客満足につながるものだといえるでしょう。
特にQCD(品質・価格・納期)に関して、顧客が要求するレベルに達していると、顧客満足度の向上につながるといわれています。そのため、QMSにおいては不良品率を低下させることによって顧客満足度を高めたり、顧客からの要望を製品やサービスに反映させたりする仕組みのことを指します。
どのように取り組めば、継続的に品質を高めていく取り組みとなるかをきちんと検証していくことが重要です。
QMSの目的
QMSにおいて主要目標として掲げられるKGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)は、顧客満足度の向上が該当します。その目的を達成するために、KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)として、品質目標を定めることになります。
したがって、QMSは一度定めれば終わりといったものではなく、顧客満足度を高めるための取り組みがたえず求められ続けるのです。KPIとしての品質目標を適切にチェックしていくことによって、どの程度顧客からの要求に応えられているかを分析し、改善していく必要があります。
具体的な結果を出していくためには、PDCAサイクルを適切に実行し、定期的に進捗をチェックしていくことが重要です。
QMSに関する規格
QMSにおいては製品やサービスの品質を向上させることによって、顧客満足度の向上を目的としていますが、その達成のために「規格」に沿った取り組みが欠かせません。特定のガイドラインを持っていなければ、何をどのように達成すべきかが見えてこないからです。
ここでは、QMSと規格との関係性や規格の種類について詳しく解説します。
規格に沿った取り組みが重要な理由
QMSをうまく機能させていくためには、漠然と品質を向上させようとするのではなく、一定の規格に沿った取り組みを進めていく必要があります。ガイドラインに沿って、QMSを構築することによって、品質や生産性の向上に結び付けていくことが可能です。
規格に基づいた取り組みを行っていけば認証を受け、製品やサービスの品質を対外的に保証することができます。規格の認証を受けることによって、自社のビジネスに対する信頼性が高まるでしょう。
QMSにおける規格のなかでも一般的なものとして、国際標準化機構(ISO)によって定められているISOシリーズが挙げられます。ISOは国際的な組織であり、本部のある位置はスイスのジュネーブです。
ISOなどの認証システムのことを「第三者認証」といい、QMSに関する規格はさまざまなものが存在しています。どのような規格があるのかを次に押さえておきましょう。
規格の種類
QMSにおける具体的な規格としては、主に次の3つが挙げられます。
QMSに関する主な3つの規格
・ISO9001
・JIS Q 9001
・SQF
ISO9001とは、QMSに関する国際規格であり、最も普及している規格であるため信頼性が高いのが特徴です。世界170カ国、100万を超える組織で利用されています。
業種や業態を問わず、さまざまな組織が利用することができ、一定の要件を満たせば認証が得られます。「一貫した製品・サービスの提供」と「顧客満足の向上」を実現するために、いくつかの要求事項が定められているものです。
JIS Q 9001は、ISO9001を日本語に訳したものであり、日本の規格として発行されています。ISO9001の規格を日本において円滑に運用するために設けられているものだと理解しておきましょう。
そして、SQF(Safe Quality Food)は安全で高品質な食品に関するマネジメントシステムであり、食品限定で発行される規格である点に特徴があります。主に食品の衛生管理を行うための規格ではありますが、同時に品質を管理する規格である点を押さえておきましょう。
ISO9001の要求事項
ISO9001の要求事項は、組織の状況やリーダーシップ、計画・支援・運用など多岐にわたっていますが、主なポイントをまとめると次の5つが挙げられます。
ISO9001の主なポイント
・PDCAサイクルによる継続的な向上
・取り組み内容の文書化
・経営層の関与
・製品・サービス提供業務の明確化
・定期的な内部監査
各ポイントについて、どのような内容であるかを解説します。
PDCAサイクルによる継続的な向上
ISO9001では、PDCAサイクルによって製品やサービスの品質を向上させていくことが重要です。PDCAサイクルとは、Plan(計画)・Do(実施)・Check(点検)・Act(改善)の頭文字を取った仕組みのことであり、継続的な改善が求められます。
組織内部に抱える課題や外部環境なども考慮したうえで品質目標を定め、顧客とのコミュニケーションを通じて企画・設計・開発・製造などを行い、その経過を記録として残していきます。
定めた計画や目標と、実行した結果を検証し、うまく取り組めていない部分の原因を分析して、改善案を立てていく一連の流れがPDCAサイクルです。定期的なチェックと改善が求められるものであるため、部門や事業部全体の取り組みとなります。
取り組み内容の文書化
業務を行う手順を標準化できたとしても、それを誰にでもわかるように「見える化」することが欠かせません。手順を可視化しなければ、人によって取り組み方が違ってきてしまい、品質がバラバラになってしまいます。
取り組みそのものを均質化するためには、「手順の文書化」が必要です。手順を明確に定めておくことによって、チェックや改善に結び付けられるでしょう。文書や記録に関する要求事項としては、ISO9001における4章で取り上げられています。
経営層の関与
ISO9001に基づいたQMSは経営そのものにも深く関わる部分であるため、経営層の積極的な関与が必要です。この点については、ISO9001の4章・5章・7章の要求事項として取り上げられています。
4章では「外部と内部の課題」と「利害関係者のニーズ及び期待」を適切に把握し、適用範囲を定めることが要求されています。5章では、経営者の責任と実施すべき事柄について取り上げられており、経営層が関与していく姿勢が求められているのです。
そして、7章においては経営資源に関する要求事項があり、自社のリソースを最適化していくことが必要になります。
製品・サービス提供業務の明確化
ISO9001の8章では「運用」について取り上げられています。製品の製造過程やサービスを提供するために必要な作業の流れをまとめたマニュアルや記録など、運用にあたって必要な項目が以下のように列挙されています。
ISO9001における8章の項目
・運用の計画及び管理
・製品及びサービスに関する要求事項
・製品及びサービスの設計・開発
・外部から提供されるプロセス、製品及びサービス
・製造及びサービス提供
・品質マネジメントシステム及びサービスのリリース
・不適合なアウトプット管理
それぞれの項目を自社の業務に合わせてルール化し、製品の製造やサービスの提供に関する業務を明確化していくことが必要です。
定期的な内部監査
ISO9001においては、組織の管理能力を適切に働かせるために、内部監査の実施を求めています。製品の製造過程やサービス提供時のそれぞれの作業をチェックするというよりも、マネジメントシステムがどのように運用されているかを組織内でチェックするためのものです。
自社で定めた計画やルールに適合しているか、ISO9001の規格に沿っているかなどを確認していきます。定期的な内部監査の取り組みによって、QMSの運用を形骸化・陳腐化を防ぐことができます。
QMSを推進するために重要なこと
QMSの実施を徹底するうえで重要な点は、「設備保全」について重視することです。製造やサービス提供が円滑に回っていくためには、一定の品質で生産していくための生産設備が何よりも欠かせません。
また、生産設備だけでなく、設備保全を担う専門的な人材の必要性も高まっています。必要な人材が不足していると、QMSを徹底させることが難しくなってしまうので、自社の状況をきちんと把握したうえで対応していくことが大事です。
人材不足に陥っていても、定期的なメンテナンス業務をアウトソーシングし、業務に優先順位を付けることで社内の人材をコア業務に充てられるでしょう。限られたリソースを最大限に活用していくことも、QMSにおいて重視しておきたい点です。
まとめ
QMSは品質管理システムのことを指し、製品やサービスの品質を高めることによって、顧客満足度の向上を目的としています。ただし、漠然と品質向上に取り組むのではなく、ISO9001など信頼度の高い第三者認証の規格に沿って、取り組みを行っていくことが重要です。
また、QMSをうまく機能させるには中長期的な実施が必要になるため、PDCAサイクルをしっかりと回して、継続的に改善していける環境を整えましょう。
顧客のニーズに応じて品質向上に努めていくことで、ビジネスそのものの信頼性を高められるはずです。
(制作協力/株式会社アクロスソリューションズ、編集/d’s JOURNAL編集部)
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