フォロワーシップとは?リーダーシップとの違い・5つのタイプを紹介

d’s JOURNAL編集部

強い組織には、リーダーの強力なリーダーシップが必要となります。しかし、それと同時に、リーダーをさまざまな形で支える「フォロワーシップ」を持ったメンバーの存在も、重要な役割を果たします。

フォロワーシップの概念は、急激に変化し続ける現代のビジネス環境において、特に重要性を増しているのが特徴です。今回はフォロワーシップの意味や組織に与える効果、5つのタイプなど、押さえておくべき基本的なポイントについて解説します。

そのうえで、フォロワーシップを育成できる組織づくりのポイントもあわせて詳しく見ていきましょう。

フォロワーシップとは

組織で働くメンバーに必要な資質として、「フォロワーシップ」という概念が注目を集めています。

ここではまず、フォロワーシップの基本的な定義やリーダーシップとの違い、現代のビジネスシーンにおいて注目される理由について解説します。

フォロワーシップの定義

フォロワーとは、組織やチームを率いるリーダーのもとで業務を遂行する従業員のことを示しています。フォロワーシップは、フォロワーが組織やチームについて主体的に考えて、行動することを意味する言葉です。

具体的には、自主的にリーダーを補佐したり、リーダーの手が回らない役割を担ったりする動きなどが該当します。また、リーダーと異なる意見を持ったときには議論を促したり、必要に応じて周りのメンバーのサポートに回ったりすることもフォロワーシップに含まれます。

このように、フォロワーシップを発揮するには、組織全体という広い視野が欠かせません。単にリーダーに付き従うのではなく、組織の成長や発展のためにできることを見つけ、積極的に支援していく意識が求められるのです。

そのため、フォロワーシップはリーダーを含む全社員に求められる資質と考えられています。

リーダーシップとの違い

リーダーシップとは、集団をまとめ、特定の目的に向かって導いていく機能のことを指します。具体的には企業や組織の方向性を指し示したり、必要に応じてメンバーを引っ張っていったりする働きが該当します。

一般的には組織やチームのリーダーに必要な資質とされているものの、状況に応じて各メンバーにも求められる場面があります。そうした意味では、「メンバー個人が全体へポジティブな影響力を与えること」と表現することもできるでしょう。

リーダーシップとフォロワーシップが同時に発揮されることで、組織にはさまざまな相乗効果が生まれていきます。

フォロワーシップが注目される理由

フォロワーシップという言葉は、1992年にアメリカのロバート・ケリー教授の著書で提唱されたのがはじまりであり、それほど古い概念ではありません。近年、フォロワーシップが注目されているのには、大きく分けて2つの理由があります。

1つめは、「人手不足による管理職の負担増加」です。現在では国内企業の多くが人手不足による課題を抱えており、なかでも管理職への過大な負荷は大きな問題となっています。

管理をしながら現場の業務を担うプレイングマネージャーも増えており、マネジメントにかけられるリソースは不足しがちです。そこで、各メンバーにはリーダーを支援していくフォロワーシップが期待されるようになっているのです。

そして、もう一つの理由は、「ビジネス環境の変化」です。現代は変化が激しく先行きの不透明な時代に突入しており、従来の上意下達型の組織では、環境の動きに対応するのが難しくなってきています。

そのため、各メンバーが自発的に行動し、建設的な意見や代替案を提示するといったフォロワーシップの機能が強く求められているのです。

フォロワーシップが発揮されることで得られる3つの効果

フォロワーシップが発揮されることで、具体的にはどのような効果が生まれるのでしょうか。ここでは、3つのポイントに分けて解説します。

組織やチームの活性化

フォロワーシップが発揮された組織やチームでは、メンバーが自然とリーダーと同じような目線に立ち、自発的に行動するようになります。その結果、メンバー一人ひとりが生き生きと仕事に取り組むようになり、生産性の向上や業績アップも期待できるという好循環が生まれます。

また、力強いフォロワーシップを持つメンバーが増えれば、リーダーもより柔軟に自身の役割を果たせるようになります。リーダーの成長は、周囲のフォロワーシップによる部分も大きいといえるでしょう。
(参照『組織活性化とは?目指すべき組織の状態と実現方法、取り組み事例を紹介』

信頼関係の構築

リーダーと同じような視点に立てるフォロワーが増えれば、自然と組織内に強い信頼関係が築かれていきます。リーダーとフォロワーがお互いに相手を認め合い、それぞれの存在を尊重できるようになるため、組織としての団結力が強まるのです。

また、各メンバーが同じ目線を持って仕事に向き合えることで、お互いに建設的な意見を出し合いやすくなります。相手を尊重しつつも、無用な遠慮をせずにコミュニケーションを図れるため、従業員同士の信頼関係も深まっていくでしょう。

従業員のモチベーションアップ

組織全体として高いパフォーマンスを発揮するには、リーダー1人の力ではどうしても不十分な面があります。いくら強力なリーダーシップを持つリーダーがいても、1人ですべての従業員と丁寧に意思疎通を図ることはできません。

また、どれだけ冷静沈着なリーダーであっても、事実を誤って認識したり、非効率的な方針を示してしまったりすることはあります。そこで重要となるのが、リーダーとメンバーをつなぐフォロワーの存在です。

フォロワーシップを持つメンバーがリーダーの考えをくみ取り、各メンバーとの橋渡しを行うことで、組織の意思統一が可能となるのです。各メンバーの不安や疑問にもしっかりと耳を傾け、一つずつ丁寧に解消しながらビジョンやミッションを浸透させることで、組織全体としてのモチベーションアップも期待できるようになります。

従業員のモチベーションを向上させる具体的な方法については、以下の記事でも詳しく紹介されているので、参考にしてみてください。
(参照:『【1分で解説】モチベーションアップには何が必要?従業員のモチベーションを上げる5つの方法』)

フォロワーシップの5つのタイプ

フォロワーシップには、大きく分けて以下の5つのタイプがあります。

・模範的フォロワー
・孤立型フォロワー
・順応型フォロワー
・消極的フォロワー
・実務型フォロワー

これは、フォロワーシップの特性を「批判的思考」と「積極的関与」という2つの軸でとらえ、それぞれの度合いによって分類する考え方です。

批判的思考とは「リーダーが示す方針や指示内容を主体的にとらえ、建設的な批判や提言を行うこと」を意味しており、反対に、積極的関与は「リーダーが示す方針や指示内容をポジティブにとらえ、協力的な姿勢で向き合うこと」を意味しています。

ここでは、5つのフォロワーのタイプについて、それぞれの特徴を見ていきましょう。

模範的フォロワー

「模範的フォロワー」とは、いわゆる「腹心」や「右腕」のことであり、批判的思考と積極的関与の傾向がともに高いフォロワーを指します。模範的フォロワーはリーダーの意見や方針について、同じように主体的な考えを持ち、必要に応じて建設的な批判や提言を行います。

一方で、リーダーの意見が正しいと感じた場合には素直に受け入れ、積極的に取り組んでいくのも特徴です。また、単に個人のプレイヤーとして動くだけでなく、必要に応じてメンバーをまとめ上げたり、自らコミュニケーションを図ったりすることもできます。

そのため、模範的フォロワーは、組織の力を押し上げるもっとも理想的なフォロワーといえるでしょう。

孤立型フォロワー

「孤立型フォロワー」は、批判的思考の傾向が高く、積極的関与の傾向が低いタイプのフォロワーです。評論家のような鋭い批判力や建設的な提言が強みである一方、組織の動きや必要な業務に積極的に関与しようとする姿勢が不足しており、チームの輪を乱してしまうこともあります。

「問題児」や「頑固者」、「チームプレーには向かない」と評されることも多いものの、組織への貢献をきちんと意識させれば、実力のある理想的なフォロワーへと変貌を遂げるケースもあります。孤立型フォロワーに対しては、リーダーの方針やビジョンについて丁寧に説明し、納得が得られるまで向き合うことが重要です。

順応型フォロワー

孤立型フォロワーの逆で、批判的思考の傾向は低く、積極的関与の傾向が高いフォロワーを「順応型フォロワー」と呼びます。リーダーの意向や方針には忠実に従い、批判をせずにそのまま実行していくのが特徴であり、「真面目」や「素直」といった評価を受けることが多いです。

指示された業務を着実にこなしていくため、組織のなかでは安定した成果が期待される重要な存在となります。一方、自分の考えを持たずにリーダーの指示を絶対ととらえることから、周囲からは「イエスマン」として見られることも少なくありません。

自ら考えを提案することはなく、リーダーの方針が誤っている場合でも、軌道修正のきっかけをもたらすことはできません。また、具体的な指示がなければ動けない「指示待ち」になってしまうことが多いのも弱点です。

順応型フォロワーに対しては、粘り強く積極的な発言を引き出すアプローチを続けることが大切となります。

消極的フォロワー

「消極的フォロワー」とは、批判的思考、積極的関与がともに低い傾向にあるフォロワーであり、模範的フォロワーとは対照的な存在です。リーダーの意向や組織に対する批判がない一方、積極的に関わる姿勢も持たないため、組織への貢献度は全体的に低いのが特徴です。

「主体性がなくおとなしい」と評されることも多く、目立たないため極端にマイナスな評価が行われないケースもあります。しかし、実際には積極性にも独自性にも欠けるため、組織への貢献度はもっとも低いフォロワーといえるでしょう。

そのため、消極的フォロワーに対しては、業務への希望や目標を聞き出し、じっくりとモチベーションを向上させていくアプローチが必要となります。また、職場の人間関係や業務に対する不満によって、消極的フォロワーへと変化してしまうこともあるため、定期的な1on1ミーティングなどで話を聞ける機会を設けるのもよいでしょう。

実務型フォロワー

これまで見てきたフォロワーのタイプとは異なり、批判的思考または積極的関与へ傾向が偏らず、中立的な立場を貫くのが「実務型フォロワー」です。自分の役割や仕事に徹し、着実に一定の成果を残せるものの、自分に関係する範囲以外の事柄には関心を持たない傾向があります。

そのため、「バランスがよい」と好意的に評価されることもある一方、「チャレンジ精神がない」といわれるケースも少なくありません。実務型フォロワーは高い能力を持っていることが多いため、あえて少し高めの目標を設定しておくと、本来の実力を発揮してもらいやすくなります。

フォロワーシップの具体的な行動例


フォロワーシップが高まると、ビジネスの現場にはさまざまな形でよい影響が生まれていきます。ここでは、フォロワーシップによって生まれる具体的な行動パターンについて見ていきましょう。

積極的に業務を引き受ける

積極的関与が高いメンバーには、自分自身が果たせる役割を自ら判断し、主体的に業務を引き受ける姿勢が生まれます。組織やリーダーのために何ができるのか、自ら考えて行動しようとするため、人一倍優れた成果を残せるようになるでしょう。

こうしたフォロワーシップに触れるなかで、周囲のフォロワーも自然と前向きな影響を受け、相乗効果によって組織全体が生き生きとしたものになっていくのも大きなメリットです。

自分の意見をしっかりと伝えられる

優れたフォロワーシップを持つメンバーは、組織としての成果を上げるため、日ごろから新たなアイデアを模索する姿勢が見られます。そして、何か優れたアイデアが生まれたときには、臆することなく積極的に発信できるのも特徴です。

そのうえで、異なる意見を持った相手に対しても客観的な提案を行い、十分な説得性を持たせた状態でプレゼンできます。また、批判的思考が高いメンバーは、組織やリーダーが誤った方向に進み始めたときに、気後れすることなく訂正できるのが特徴です。

たとえば、コンプライアンス違反の可能性を見落としたまま企画やアイデアが採用されそうになった場合でも、批判的思考を持ったフォロワーがいれば、客観的な倫理観に基づいて「待った」をかけてくれるでしょう。

全体への貢献を考える

フォロワーシップは、組織やリーダー、周囲のメンバーの利益を客観的に考えて行動できる資質でもあります。全体を見て的確な判断が行えるため、組織をよりよい方向へと導くことが可能です。

また、多くの人々の利益になるように行動することで、今まで以上に視野が広がり、結果としてリーダーシップも養われていきます。

自他の行動をきちんと検証する

フォロワーシップの軸となる資質のうち、批判的思考はリーダーや自分自身の行動を振り返り、冷静に評価できる能力でもあります。それぞれの行動が組織に対してプラスになっているのか、数字やデータなどから客観的に検証できるのです。

そのうえで、単にリーダーの方法や方針を否定するのではなく、異議や提案があれば、建設的な意見を述べられるのもフォロワーシップが高いメンバーの能力です。

未来思考で物事を考える

批判的思考に優れた従業員は、疑問や反省点が見つかったときにも、常に未来志向で物事を考えるのが強みです。未来に焦点を合わせられれば、過去の反省が未来を考えるベースとなり、失敗事例も組織の財産として活かせるようになります。

フォロワーシップを高めるためのポイント

フォロワーシップは持って生まれた資質によるものではなく、後天的に身につけられる能力です。ここでは、組織のメンバーに対して、フォロワーシップを育成していくために意識すべきポイントを解説します。

自分の意見を持ってもらう

フォロワーシップのうち、批判的思考を養うためには、メンバーそれぞれに自分なりの意見を持つ習慣をつくってもらうとよいでしょう。リーダーが示した方針や意見に対して、単に絶対に正しいものとしてとらえるのではなく、客観的なクリティカルシンキングが行えるように訓練するのです。

そのために重要となるのは、「自分がリーダーと同じ立場であったらどうするか」という想定です。組織やチーム全体を見つめることで、リーダーの考えに見落としやミスがないかを見極められるようになります。

また、クリティカルシンキングを鍛えるうえでは、単に否定するのではなく、反対の理由を明確にしてもらうことも大切です。そのうえで、可能であれば代替案や解決策も同時に提案できるようになるまで取り組むと、より実践的な資質として鍛えられていきます。

積極的なコミュニケーションを促す

コミュニケーション能力は、フォロワーシップの基本的な資質です。従業員同士が日ごろから積極的にコミュニケーションを図れるように、組織としてふさわしい環境や機会を用意することが大切となります。

特にリーダーや上司といった目上の相手に批判的な意見を伝えることは、多くのメンバーが苦手でしょう。そこで、上司は部下に対して指示を出すだけでなく、意見を求め、出された意見は真摯に受け止める姿勢を持つことが重要です。

また、従業員が安心して自分の意見を主張できるように、リーダーや組織内の心理的安全性の構築にも目を向けるとよいでしょう。心理的安全性とは、気兼ねなく自分の意見を発したり、自分らしい考えを持ったりできる組織文化のことです。

組織の生産性や人材の定着率にも影響のあるポイントなので、まずはチーム内の雰囲気を振り返り、心理的安全性の確保が行えているかどうかを確かめましょう。

他者への積極的なフォローを意識させる

組織内に他者への積極的な支援が行える文化をつくることも、フォロワーシップを育成するうえで重要なポイントとなります。他者へのフォローを評価の基準に組み入れたり、適切な支援が行えているメンバーに注目が集まるシステムをつくったりと、仕組みのうえから見直してみるとよいでしょう。

また、他者を手助けするためには、それぞれが時間や心の余裕が持てるように気を配ることも大切です。リーダーは特定のメンバーに業務が集中していないか注意し、必要に応じて業務量の調整を行いましょう。

一方、リーダー1人の能力には限界があることも事実です。フォロワーシップはフォロワー同士だけでなく、リーダーに対しても発揮されるべき特性なので、各メンバーにはその点を念頭に置いてもらう必要もあります。

研修などを継続的に行う

フォロワーシップの育成には、ある程度の時間と労力が必要となります。単に心がけや習慣を学んでもらうだけでなく、研修などを継続的に行い、じっくりと資質を磨いていける環境を構築することも重要です。

たとえば、リーダーとしての視点を持ってもらうためには、フォロワーがリーダーの仕事をシミュレーションできる研修を実施するのが効果的です。実際にリーダーの仕事を経験することで、「フォロワーとしてどのように振る舞えば貢献できるか」が明確に見えてくるようになります。

まとめ

高いパフォーマンスを発揮する組織には、優れたリーダーシップを持つリーダーとともに、フォロワーシップを持ったメンバーの存在があります。フォロワーシップを発揮できる従業員がいなければ、リーダーの方針が全体に行き渡らず、団結して成長することはできません。

しかし、リーダーシップと比べると、フォロワーシップは目立ちにくい資質であるため、特に意識することがなければ自然と軽視されてしまう傾向もあります。まずは、フォロワーシップの重要性や組織へ与える影響を正しく理解しましょう。

そのうえで、もっとも理想とされるフォロワーは、批判的思考と積極的関与に優れた「模範的フォロワー」です。従業員を模範的フォロワーに近づけるために、フォロワーシップを効果的に育成できる組織づくりにも努めましょう。

(制作協力/株式会社アクロスソリューションズ、編集/d’s JOURNAL編集部)

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