組織活性化とは?目指すべき組織の状態と実現方法、取り組み事例を紹介

d’s JOURNAL編集部

組織活性化とは、共通の理念に基づいて構成員が主体的に活動できる状態をつくることを指します。

企業が継続的な成長を目指すうえでは、組織活性化を図り、仕組みのうえから力強い組織づくりを実現することが大切です。

今回は組織活性化の目的や重要性、実現に向けたフレームワークについて解説します。また、組織活性化に取り組む企業の事例もあわせて見ていきましょう。

組織活性化とは

組織活性化とは、端的にいえば所属する組織の理念やビジョンをメンバー一人ひとりが理解し、主体的に活動している状態を指します。組織が高い生産性を発揮するためには、所属するメンバーそれぞれが自発的に行動し、主体性を持って判断できる状態を築かなければなりません。

そのためには、従業員個人のレベルまで、理念やビジョンを浸透させる必要があります。そして、自身の役割や日々の業務の意味を前向きに理解したうえで、生き生きと仕事に取り組める状態を築くことが組織活性化の目的ともいえるのです。

そうした意味では、単に従業員が忙しく働いている状態や、数人のみに負担が偏っている状態では組織が活性化しているとはいえません。全員が同じ目的を共有し、相互にコミュニケーションを図りながら、生き物のように動ける有機的な組織づくりを行うことを組織活性化と表現します。

組織が活性化している状態とは


組織活性化は幅広い意味を含む概念であるため、自社に当てはめて考える際は、より具体的な観点でとらえることも大切です。ここでは、組織活性化によって目指すべき状態について、4つの視点から見ていきましょう。

経営理念や経営ビジョンが共有されている

繰り返しにはなりますが、組織活性化を目指すうえでは、全体に経営理念や経営ビジョンが浸透している必要があります。特に経営層と従業員の間でギャップが少なく、できるだけ同じ目線で目的を共有できていることが重要です。

理念やビジョンの共有には、「企業の価値観を分かち合い、意思決定のベクトルを合わせる」とともに、「顧客やステークホルダーに自社の事業目的と価値を伝えていく」という目的もあります。多くの場合、顧客と接点を持つ機会が多いのは現場で働いている従業員です。

従業員一人ひとりに企業理念が行き届いていれば、顧客や関係者にも自然と自社の価値が伝わっていきます。

従業員が自発的な行動を起こせる

組織が活性化すれば、従業員が組織の目標と自身の業務目標を的確にとらえ、両者をリンクさせながら自発的な行動を起こせる状態を築くことができます。上意下達型の指揮命令系統に依存せず、一人ひとりが自律的に活動し、必要に応じて協働できる組織づくりを実現可能です。

また、組織活性化には、人材育成のシステムを充実させるといった側面もあります。活性化した組織では、従業員がキャリアのビジョンを描きやすくなるため、離職率が低くなり人材の定着が期待できるのも特徴です。

円滑なコミュニケーションが図れる

組織が活性化している状態とは、社内で円滑なコミュニケーションが図れることも指します。具体的には、「組織内のコミュニケーションが循環している」「意見交換などを積極的に行える」といった状態が挙げられます。

個人間や部門間でスムーズに意思疎通が図れていれば、立場にかかわらず主体的な意見が生まれやすく、何か問題が起きたときにも迅速に対応することが可能です。また、個人や部署に蓄積されたノウハウも適切に情報交換できるため、組織全体としての能力も向上していくでしょう。

そのうえで、優れた組織に育てるためには、特に失敗事例をフラットに共有できるかどうかが重要な課題となります。日頃からコミュニケーションの仕組みが充実していれば、失敗を隠すことなく客観的に分析し、今後に活かせる財産として役立てられるようにもなるのです。

生産性が高い

活性化した組織では情報の行き違いが少なく、連絡手段も効率的なため、無駄な作業を大幅に削減できます。個人の力量だけに頼らず、組織全体として生産性を高める仕組みを構築できるため、従業員の負担を減らすことも可能です。

その結果、「残業が少ない」「理想的なワークライフバランスを実現しやすい」など、さまざまなメリットが生まれます。また、組織活性化には非効率的なシステムから脱却するという側面もあるため、情報やツールの取捨選択も進みます。

それにより、情報や資材の整理整頓が行き届き、必要なときに必要なものを速やかに取り出せる状態が保たれるのも大きなメリットです。

組織活性化に向けたフレームワーク

組織活性化を実現するためには、ゴールまでの全体像をイメージして取り組むことが大切です。以下の項目では、組織活性化に活かせるフレームワークとして、3つのポイントをご紹介します。

共通の価値観の定義

組織活性化の第一歩は企業理念の共有です。企業理念は組織における共通の価値観となるため、不明確な状態で活性化を目指そうとしても思うような成果は得られません。

したがって、まずは自社の企業理念をしっかりと見つめ直し、明確に定義することが重要です。そのためには、「ミッション・ビジョン・バリュー」と「パーパス」に着目し、それぞれについて検討する必要があります。

ミッション・ビジョン・バリュー

ミッション・ビジョン・バリューとは、経営学者のピーター・ドラッカーによって提唱された企業理念を示す3つの要素です。

・ミッション:企業の存在意義や使命
・ビジョン:中長期的な目標
・バリュー:企業が大切にする価値観・行動指針

ミッションは企業が何のために存在するのかを決定する根本の要素です。ミッションを明確に示すことで、組織のメンバーは自身の仕事に意味ややりがいを見出せるようになり、組織への貢献意欲を高めます。

ビジョンはミッションに沿った具体的な目標のことであり、各部門や従業員が取り組む日々のテーマと密接なかかわりを持ちます。ビジョンは目標が達成された場合や、ビジネス環境、ビジネスモデルの変化によって更新されていくことが前提です。

バリューは組織が大切にすべき価値観のことであり、企業文化や風土と表現されることもあります。また、「顧客へ提供する価値」を具体的に示すものでもあり、現場での細かな意思決定にも大きな影響を与える指標となります。

従業員に自社の理念を深く理解してもらうためには、3つの要素の違いや目的を踏まえて、それぞれ具体的な言葉で設定することが大切です。

パーパス

パーパスもミッションと同じように企業や組織の存在意義を示す言葉ですが、厳密には少し意味が異なります。パーパスはどちらかといえば社会的な意義を意識したものであり、具体的にはサステナビリティやSDGsの推進に向けた取り組みが当てはまります。

パーパスを明確にすることで、従業員には自社がどのように環境や社会とかかわっていくのか、基本的な姿勢を示せるようになります。その結果、自分の仕事や役割に社会的な意義を感じてもらいやすくなるのです。

また、パーパスは顧客や投資家にとっても、商品購入や投資の判断基準となります。つまり、社会に広く共感を広げるためのブランディングにつながるポイントでもあるということです。

OKR

「OKR」とは、「Objectives and Key Results」の略語です。それぞれ「O」(Objectives)は達成すべき目標を、「KR」(Key Results)は主要な成果を示しています。

OKRの目的は、達成目標をできるだけ数値化し、定量的な目標に変換することにあります。1つのOを複数のKRに分解することで、より目標管理を容易にするのがOKRのプロセスです。

組織活性化に向けて企業理念を浸透させていくためには、OKRがとても重要です。なぜなら、企業理念はあくまでも定性的な目標であり、そのままでは具体的な業務に落とし込むのが難しいためです。

部門や従業員によってとらえ方が異なる場合もあるため、OKRによってロジカルに目標を共有することで食い違いを防ぎ、同じ方向を見ながら行動できるように情報を整理しましょう。

マッキンゼーの7S


「マッキンゼーの7S」とは、アメリカの大手コンサルティング会社「マッキンゼー・アンド・カンパニー」で提唱された理論であり、組織の重要な資源を「3つのハード」と「4つのソフト」に分けて管理・分析する考え方です。自社の現状を細かく分析し、組織活性化に向けて何から着手すべきなのかを明確にしたいときに活用できます。

ハード面の3S

ハード面の3Sは組織の構造に関する3つの要素を指します。

・Structure(組織構造)
・Strategy(戦略)
・System(システム)

「組織構造」とは、組織の形態や仕組み、指揮命令系統などを指す要素です。組織構造に問題があれば、いくら優れた理念や仕組みを整えても、組織が活性化する前につまずいてしまいます。

そのため、機能的であるかどうか、権限が明確化されているか、求められる労働環境や働き方に適しているかなどを一つずつ見直すことが大切です。続いて、「戦略」は事業の方向性や経営戦略を示します。

自社の目標を達成するための具体的な取り組みのことであり、前述したOKRによって管理するのも効果的です。また、組織が持つ強みや競争優位性に基づいて決められた行動方針や、資源配分の方法なども含まれます。

「システム」は企業の人事評価制度や規定、情報管理の仕組みなどのことです。決められた仕組みが正しく稼働するかどうか、効率的に設計されているかどうかが重要な観点となります。

ソフト面の4S

ハード面の3Sはいずれも目に見えるため、組織活性化に向けて手を加えやすいのが特徴です。しかし、理想的な組織づくりを行うためには、内面にあたるソフト面の4Sにも目を向けなければなりません。

ソフト面の4Sとは次の要素を指します。

・Staff(人材)
・Skill(スキル)
・Style(スタイル)
・Shared value(共通の価値観)

「人材」は従業員の能力を示す要素です。また、人材の配置や人事制度、人材育成の取り組みなども人材に含まれます。

「スキル」とは組織が持つ能力や競争優位性のことです。技術力やマーケティング力、営業力といった組織全体の能力を示す要素です。

「スタイル」とは組織文化や社風のことであり、企業全体としての雰囲気や従業員同士の目に見えない共通点などを指します。そして、「共通の価値観」とは、経営理念や経営方針などの組織全体で共有されるべき価値観のことであり、先ほどご紹介したミッション・ビジョン・バリューにあたります。

ハードとソフトの7つのSを見直すことで、現状の課題が浮き彫りになり、組織活性化に向けた施策を検討しやすくなるのが狙いです。ソフトの4Sはハードと比較して表面化しにくいため、じっくりと時間をかけて分析しましょう。

7Sを見直すステップ

マッキンゼーの7Sを活用するためには次の4つのステップを意識することが大切です。

1.現状分析
2.問題点の明確化
3.改革案の作成
4.改革案と現状との比較

まずは7Sのそれぞれについて分析を行い、組織の強みと課題を探ります。「専門性の高い人材がそろっている一方で部門間のつながりが弱い」など、自社の現状を客観的に評価し、課題を洗い出すことが大切です。

現状分析で明らかになった課題はさらに深く分析・検討を行い、具体的な問題点をピックアップします。そして、組織活性化に向けてどの問題から着手すべきであるか、優先順位を話し合いましょう。

続いて、問題点を克服するための改革案を作成し、現状と比較しながら有用性をチェックします。このときには、7Sの視点に立ち返り、そのほかの要素とのバランスを考慮することが大切です。

7Sはそれぞれが相互に作用し合っているため、ほかの要素にどのような影響を与えるかも考えておく必要があります。

組織活性化を実現するための取り組み例


組織活性化を実現するうえでは、コミュニケーションの仕組みに注目してみることも大切です。以下の項目では、社内の人間関係を活性化させるための取り組み方法として、4つの具体例をご紹介します。

上司との定期面談、ななめ面談

若手のメンバーや新入社員に対しては、上司との1on1による面談を定期的に行い、こまめに状況を把握することが大切です。各メンバーがありのままに本音を話せるように、上司はなるべく途中で口を挟まず、丁寧に耳を傾ける姿勢が大切です。

そのうえで、直属の上司が担当するだけでなく、部署や職種を超えた「ななめ面談」も併用していくのもよいでしょう。ななめ面談は、距離の近い相手ではかえって話しにくいようなデリケートな問題にも触れやすくなるのがメリットです。

他部署のマネージャーなどのななめの関係性にある相手なら、現在の業務に関する悩みや不満、上司との人間関係のトラブルなどの話題も自然と話しやすくなります。また、異なる業種に就く相手の話に触れることで、自然と仕事そのものに対する視野も広がるのが利点です。

ACHIEVEミーティング

ACHIEVEミーティングとは、個人とチーム、会社の目標についてチーム全体で語り合える場所のことです。半年に1~2回ほどの頻度で開催し、1日かけてじっくりと目標を共有し合えるのが理想とされています。

ミーティングの具体的な流れは次のとおりです。

1. 会社やチームの目標について自由に話す
2. 個人の目標について発表し合う
3. 目標をカテゴリ別に分ける
4. チームの目標に落とし込む

ACHIEVEミーティングの大きな特徴は、会社やチームの目標を従業員の目線から自由に語り合えるところにあります。周りの素直な意見に触れるなかで、企業理念やビジョンにさまざまな角度から向き合い、より深く理解できるようになるのが狙いです。

また、個人の目標と重ねて考えることで、組織と個人の目的が一致しやすくなるのもメリットです。

マルチ担当制

マルチ担当制には、「一人が複数の部門をまたぐ」「一つの業務に複数人の担当者がつく」という2つの意味があります。一人が複数の部門を担当することで、全社的な視点が身につき、自身の業務の位置づけを客観的にとらえられるようになるのがメリットです。

また、一つの業務を複数人で担当することで、負担が増えてしまうのを防ぎます。複数人で協働することで意思決定の幅が広がったり、引き継ぎが不要になったりするのも利点です。

ただし、担当者が増えることにより、主体性が損なわれてしまう可能性にも目を向けておく必要があります。各業務にメイン担当とサブ担当をつけて、責任と権限を上手に配分するとよいでしょう。

ITツールの導入

コミュニケーションを円滑に図るためには、ITツールを適切に活用することも大切です。まずは、日常業務で使う基本的なツールを全メンバーが使いこなせているかをチェックし、必要に応じて学習できる仕組みをつくりましょう。

そのうえで、既存の連絡手段として紙ベースや電話、口頭が中心になっている場合は、チームの規模やスタイルに合ったチャットツール、SNSツールを導入することが大切です。チーム全体でツールを使えるようになれば、管理の負担は大幅に軽減され、社内連携の密度も高くなります。

まとめ

組織活性化は自社の人材が思う存分に能力を発揮できる環境を整え、組織全体としての生産性を向上させるための取り組みです。適切に実施できれば、自社の競争力を高められるとともに、従業員満足度も向上させられるようになります。

まずは活性化に向けた取り組みとして、ミッション・ビジョン・バリュー・パーパスの検討から企業理念を明確化することが大切です。

そのうえで、OKRやマッキンゼーの7Sなどのフレームワークを活用し、組織活性化の具体的な計画を立ててみましょう。

(制作協力/株式会社アクロスソリューションズ、編集/d’s JOURNAL編集部)