ヘッドハンティングとは?言葉の意味や導入するメリットなどを紹介

d’s JOURNAL編集部

ヘッドハンティングは、企業が優秀な人材を採用する際の選択肢として、比較的よく知られている手法です。しかし、一般的に持たれている「ヘッドハンティング=引き抜き」というイメージは、実際のビジネスシーンで用いられる意味合いとやや異なる面もあります。

この記事では、ヘッドハンティングの実際的な意味合いを解説したうえで、企業が導入するメリットと注意点、実行する際の手順などをご紹介します。

ヘッドハンティングとは


「ヘッドハンティング」とは、人材採用の分野で用いられるビジネス用語です。まずは、ヘッドハンティングの基本的な意味や注目されている理由、似たような意味で用いられる「引き抜き」との違いについて見ていきましょう。

ヘッドハンティングの概要

ヘッドハンティングとは、外部で活躍している優秀な人材を自社に引き入れる人材採用のことです。英語でヘッドハンティングは首狩りのことを意味しますが、ビジネスの分野ではそこから転じて「特定のスキル・能力を持った有能な人材をピンポイントで引き抜くこと」を意味するようになっています。

どのような人材がヘッドハンティングの対象になるかは、企業が属する業界や経営方針や状況によっても異なります。ただ、経営幹部や管理職などのハイクラス人材、あるいはエンジニアやトップセールスマンといった専門的な人材を指すケースが多いです。

いずれにおいても、「企業へ大きな利益をもたらす存在」や「即戦力としての活躍ができる存在」を対象とするのが特徴であり、その点において一般の人材採用とは区別されています。

ヘッドハンティングが注目されている理由

ヘッドハンティングはもともと海外の企業で盛んに行われていた手法であり、国内ではどちらかといえば外資系企業を中心に導入されてきました。しかし、現在では国内でもさまざまな企業が関心を寄せるようになっており、実際に導入されるケースも増えています。

その背景には、終身雇用制度の崩壊による「人材流動化の加速」が関係していると考えられます。一つの会社で定年まで勤め上げるといった考え方は必ずしも一般的ではなくなり、現代では優秀な人材も、新たな活躍の場を求めて転職を志すケースが増えました。

企業から見れば、高いスキルや経験を持った人材を獲得できるチャンスが広がったため、ヘッドハンティングの有効性も高まっているのです。また、企業の海外進出の活発化や、外国人雇用の一般化なども関係しているといえるでしょう。

海外の企業文化に対する抵抗感が薄まり、人材採用の手法も多様化していくなかで、ヘッドハンティングが自然と普及していったと考えることもできます。特にITなどの最先端技術産業分野では、専門的なスキルを持った人材の重要性が高まっており、一般的な求人ではニーズを満たせない場面も増えています。

こうした領域では、ヘッドハンティングによってピンポイントな人材獲得を狙うほうが、効率よく適切な採用活動が行えるのです。

引き抜きとの違い

外部の人材をピンポイントでスカウトし、自社に招聘(しょうへい)するという点では、ヘッドハンティングはいわゆる引き抜きと同じ手法であるといえます。しかし、両者の大きな違いは、専門の人材紹介会社を仲介するかどうかにあります。

一般的な引き抜きの場合は、自社や取引先の担当者が独自で実行するものです。そのため、対象者は同業や取引先といった関連のある企業の従業員が中心であり、採用にあたってはトラブルやリスクがつきまとうのも確かです。

一方、狭義のヘッドハンティングは専門のヘッドハンティング会社を経由して行うものであり、自社が独自で進めるわけではありません。間に専門の仲介会社を挟むため、トラブルやリスクが少なく、幅広い候補人材を対象にできるのが特徴です。

ヘッドハンティングの主な種類


広義のヘッドハンティングには、前述のように2つの種類があります。ここでは、改めて両者の違いについて確認してみましょう。

企業が直接ヘッドハンティングを行う

1つめは企業が自ら動いて有能な人材をヘッドハンティングする引き抜きです。昔から取引のある企業の従業員や取引先の従業員などを対象に行うケースがほとんどです。

この場合は、すでに実際の仕事ぶりを知っている点や、採用される側も自社について
ある程度の理解があるといった点がメリットとなります。しかし、前述のように、事前の連携が十分に取れていなければトラブルやリスクにつながりやすいのも事実であり、実行する際には慎重な対応が求められます。

ヘッドハンティング専門の会社に依頼する

2つめはヘッドハンティング専門の会社に依頼する方法であり、一般的にヘッドハンティングというとこちらを指す場合が多いです。具体的には、ヘッドハンティングを専門に扱う人材紹介会社に業務を委託し、対価を支払って人材の発掘や交渉、採用などを任せるという仕組みです。

専門の仲介会社に依頼することで、不要なトラブルやリスクを避けられるとともに、自社と直接的なつながりのない候補まで幅広くアプローチできるのがメリットとなります。

ヘッドハンティングを行うメリット


企業がヘッドハンティングを行うメリットにはさまざまなものがありますが、ここでは、ヘッドハンティング会社のサービスを活用する利点について見ていきましょう。

企業の都合に応じていつでも行える

ヘッドハンティング会社は、独自のデータベースや専門のノウハウを保有しているため、企業の都合に応じていつでも柔軟に対応してもらえるのがメリットです。一般的な採用では、特定のポジションや業種での採用ノウハウが限られてしまうため、狙った人材を見つけて結果が得られるまでにどうしても時間がかかってしまいます。

ヘッドハンティング会社のサービスを活用すれば、実績のある経験者と確かな接点が築けるため、スピーディに狙った効果を期待しやすいのがメリットです。

あらゆる労働市場からスカウトできる

候補者からの応募を待つ一般的な採用と異なり、ヘッドハンティングでは企業側からアプローチをかけられるのもメリットです。ヘッドハンティング会社のデータベースを活用すれば、実際に転職活動をしていない「転職潜在層」にもアプローチできる場合があるため、採用の可能性を大きく広げられるのです。

特にハイクラス人材や専門職人材は、一般的な転職市場に存在していないことも多いため、ヘッドハンティング会社を活用するメリットが大きいといえるでしょう。

ヘッドハンティングの注意点


ヘッドハンティング会社を利用した採用活動には、いくつか注意しておきたいポイントもあります。ここでは、主な注意点を2つに分けて解説します。

求める人材を得るまでに時間がかかる

ヘッドハンティングでは、企業が本当に必要とする人材を見つけるため、ときには転職潜在層まで含めた広範囲を設定します。求める職種や人材像によっては、条件にピッタリ合う人材が見つかるまでに長い時間がかかってしまうこともあります。

そのため、急な欠員補充や新規プロジェクトのための時限的な人員確保には、あまり適していない採用手法といえるでしょう。あくまでもエグゼクティブ層を獲得することを目的とした手法であるため、導入に適しているかどうかは自社の事情を踏まえて考慮することが大切です。

採用コストがかかる

人材紹介サービスを用いる際には、採用時にコストがかかります。ヘッドハンティング専門会社では、一般的な人材紹介サービスにおける成功報酬に加えて、契約金がかかるケースもあるので注意が必要です。

エグゼクティブ層の人材を探すためには、通常の人材紹介よりも多くの労力と時間が発生してしまうため、ある程度の契約金は必要経費として捉えておくことも大切です。

採用にかかる費用の相場や削減方法については、以下の記事で詳しく紹介されているので参考にしてみてください。

(参考:『採用コストの平均相場は?コスト削減の施策や計算方法を解説 』)

ヘッドハンティングを行うときの手順


ここからは、ヘッドハンティングを行うときの手順について解説します。自社で行うケースと、ヘッドハンティング専門会社に依頼するケースの2パターンに分けて見ていきましょう。

自社で行うケース

まずは自社の状況や今後の見通しなどを踏まえて、採用したい人物像を明確にします。このときに重要となるのが、「採用ペルソナ」の設定です。

採用ペルソナとは、自社が求める人物像を細かなポイントまで設定し、実在のキャラクターのように描き出したものです。年齢や性別、スキル、経験といった基本的な事柄はもちろん、仕事の価値観や転職に対する考え方、情報収集・コミュニケーションのスタイルなども具体的に設定します。

採用ペルソナを固めるのは、社内の関係者でもイメージを共有できるようになり、マッチした人材を探しやすくするためです。その後は、採用ペルソナに沿って条件に合致する候補者を探します。

求人広告やSNSの運用、ダイレクトリクルーティングやリファラル採用など、自社に合った採用手法で最適な人材を見つけましょう。対象の候補者が見つかったら、採用担当者から具体的なアプローチを行います。

候補者の気持ちを動かすためには、自社がオファーする理由や入社後の展望、会社の将来性などを丁寧に伝えることが大切です。また、候補者の能力やスキルを存分に活かせるようなポジションを特別につくっておくのも一つの方法です。

その後、候補者の意思を確認したうえで、面談・内定・入社へと話を進めていきます。入社の時期や条件などは、行き違いがないよう丁寧にすり合わせましょう。また、入社後にはスムーズに自社の組織へ合流してもらえるよう、事前に情報の共有や明確な役割の提示を行っておくのが理想です。

ヘッドハンティング専門会社に依頼するケース

ヘッドハンティング専門会社に依頼する場合も、まずは自社でしっかりと採用ペルソナを固める必要があります。どのような人材を求めているかを具体的に説明できなければ、外部のサービスを活用しても思うような結果は得られません。

採用ペルソナが明確になったら、ヘッドハンティングを扱う会社を複数比較し、費用や実績などからふさわしいと判断できる依頼先を見つけます。依頼先と委託契約を結び、採用ペルソナのすり合わせを行うと、ヘッドハンティング会社は独自の母集団から要件に合う候補者を洗い出します。

その後、複数の候補者を対象にしたリストを作成すると、メールや電話などで具体的なスカウトの開始です。アクションのあった候補者とは、まずヘッドハンティング会社が面談を行い、企業が求める要件に合致するか、移籍の可能性があるかなどを確認します。

そして、推薦できると判断した候補者がいれば依頼元の企業へ紹介し、面談へつなげるというのが一連の流れです。その後は自社でヘッドハンティングを行う場合と同じように、入社時期や条件のすり合わせを行い、内定、入社へと進んでいきます。

なお、依頼先によっては、内定時や内定後のフォローもセットで行ってくれるところがあります。

まとめ

ビジネスにおけるヘッドハンティングは、主に経営層や管理職層、高度な専門職といったハイクラスな人材の獲得に用いられる手法です。広義では自社が主導して動く「引き抜き」もヘッドハンティングに含まれますが、ヘッドハンティング専門会社を間に挟んで動いてもらう方法が一般的といえます。

ヘッドハンティング専門会社では、独自のノウハウやデータを用いて、通常ではアプローチできないようなエグゼクティブ層の候補者にもコンタクトを取れるのが強みです。まずは自社が採用したい人材の条件を明確にし、相性の合うヘッドハンティング専門会社を探してみるとよいでしょう。

(制作協力/株式会社STSデジタル、編集/d’s JOURNAL編集部)

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