採用業務とは?基本的な流れから効率化するためのポイントまで解説
d’s JOURNAL編集部
採用業務は採用戦略の立案から始まり、採用計画の策定や人材の募集、選考を経て内定者をフォローするなど、採用活動における幅広い業務を担います。採用業務が滞れば、採用活動に大きな影響を与えてしまうので、業務をいかに効率化して採用活動をスムーズに進めるかが課題です。
この記事では、採用活動の基本的な流れや業務を効率化するためのポイントなどを詳しく解説します。
採用業務とは
採用業務を円滑に進めていくには、まず採用業務が企業においてどのような位置付けのものであるかを把握しておく必要があります。おもな業務内容も含めて解説します。
採用業務の概要
採用業務とは、新たな人材を採用するために必要となる業務全般を指す言葉です。採用業務では、学卒者を対象とした「新卒採用」と即戦力となる人材を対象とした「中途採用」に分けられます。
また、正社員だけでなく契約社員やパート・アルバイトといった雇用形態によっても採用業務として取り組む業務の範囲は違ってきます。しかし、採用業務を進める流れ自体はどのような人材を求める場合でも、基本的には変わりません。
採用業務の基本的な流れを押さえたうえで、募集する人材に応じた採用活動を進めていく必要があります。
採用業務が重視される理由
企業において採用業務が重視されるのは、どのような人材が確保できるかで企業の持続的な成長が達成できるかが左右されるからだといえます。明確な事業戦略や経営のビジョンがあったとしても、それらを実行に移すのは人材だからです。
また、どのような業種であれ一定の退職者は出てくるので、採用業務を行わなければ自社の現状を維持していくことが困難になってしまいます。事業活動において必要な人材数を維持するために、不足している人材を補充していくことが大切です。
日本では労働人口の減少から、競合他社との間で人材獲得競争が激しくなっています。他社に先を越されてしまわないために、採用業務を効率化して採用候補者への迅速なアプローチを心がけていく必要があるでしょう。
おもな業務内容
採用業務は少ない人数を採用する場合であっても、さまざまな業務に取り組む必要があります。おもな業務内容として、次のものが挙げられます。
・採用戦略の立案、採用計画の策定
・採用条件の設定(採用ペルソナ・評価項目など)
・採用サイトの構築、求人情報の公開
・会社説明会の実施、応募者のエントリー受付
・書類審査や適性検査の実施
・面接の実施
・選考と結果の通知
・内定者のフォローに取り組む など
上記のように採用業務は多岐にわたるため、担当者の確保やスケジュールの調整などをあらかじめ綿密に行っておくことが大事です。採用業務を円滑に行える体制が整っていないと、採用候補者に対するレスポンスが遅くなってしまい、せっかくの採用チャンスを逃す恐れがあるので気をつけましょう。
採用業務の基本的な流れ
採用業務を円滑に進めていくには、基本的な流れを把握しておくことが大切です。採用業務のおもなステップとして、次のような流れとなります。
1.採用計画の策定
2.採用戦略の決定
3.母集団に関するリサーチ
4.評価基準の設定
5.採用選考の実施
6.採用後のフォロー
各ステップのポイントを解説します。
採用計画の策定
採用活動を進めるためには、事業計画や経営方針などをもとにした採用人数や採用時期、必要とされる人材を決めておく必要があります。どのような方針で採用活動を行っていくかの指針となるのが採用計画であり、十分に時間をかけて策定してみましょう。
採用計画を策定する際は採用担当者だけで決めるのではなく、現場の意見や経営層の考えをうまく反映していくことが大切です。社内でのヒアリングを行ったうえで、どういったスキルや経験を備えた人材が必要かや、自社の企業風土にマッチした人材像といった点を明らかにしていきましょう。
採用のミスマッチが起これば、せっかく採用した人材の早期離職につながるケースがあり、かえって採用業務の負担が増加する恐れがあります。また、いつまでに人材を獲得する必要があるかによって、採用手法の検討が必要になるでしょう。
採用計画について、さらに詳しく調べたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
(参考:『採用計画とは|計画の立て方と事前準備・役立つテンプレートを紹介』 )
採用戦略の決定
日本においては労働人口の減少によって、企業間での人材獲得競争が激しくなっており、計画通りに人材を獲得できるとはかぎりません。そのため、採用計画を策定した段階で採用計画をどのように実施していくかの採用戦略を立ててみましょう。
採用戦略を立てるうえで重要なポイントは、まず採用ペルソナを明確にすることです。自社が求める人材像が明らかでなければ、応募者数が少なくなる原因になりますし、たとえ採用したとしても、企業風土と合わずに早期離職を招く恐れがあるでしょう。
労働市場や競合他社の動向などを踏まえたうえで、自社の魅力を一番アピールできる方法を見つけていきましょう。他社との差別化を図ることが、採用戦略を立てる際には重要です。
採用戦略について、さらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
(参考:『採用戦略を立てる5つのフロー|企業事例やフレームワークも解説』 )
母集団に関するリサーチ
採用計画と採用戦略が定まったら求人情報を公開していくことになりますが、母集団についてあらかじめリサーチを行っておくことが大切です。自社が求める採用ペルソナに沿った母集団が形成されていなければ、採用活動において十分な成果を上げることが難しくなるでしょう。
自社サイトの採用ページをはじめ、求人サイトやSNS、オンラインでの会社説明会などさまざまな採用チャネルでの母集団を把握する必要があります。近年ではただ応募を待っているだけでは人材の獲得が難しくなっているため、企業側が積極的にアプローチをかけるダイレクトリクルーティングなどの採用手法も注目されています。
採用業務を効率的に進めるには、自社が求める人材ができるだけ多くいる採用チャネルを活用することが大事です。複数の採用チャネルに求人情報を公開しながら、反応のよいものにリソースを集中させてみましょう。
母集団について、さらに詳しく調べたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
(参考:『母集団形成とは?重要性と実践の手順、効果を上げるためのポイントを解説』 )
評価基準の設定
よりよい選考を行うには、事前に評価基準を明確に設定しておくことが重要です。評価基準があることで、採用担当者ごとの判断のバラつきを抑えられますし、応募者側も評価に納得しやすくなるでしょう。
評価基準は新卒採用や中途採用といった採用手法ごとに設定し、チェックリストをあらかじめ作成するなどして、スムーズな選考が行えるように体制を整えておきましょう。評価基準について、さらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
(参考:『面接評価シートの作り方|評価項目や基準の決定方法を解説【テンプレート/サンプル有】』 )
採用選考の実施
求人情報を公開して応募があった場合は、応募者の選考を行っていきます。具体的な選考としては、書類選考や面接、適性検査・筆記試験・実技試験などが挙げられます。
評価基準を設定し、しっかりとした準備を行うことが確度の高い選考を進めるうえで重要です。また、選考は単に採用候補者を選ぶといっただけでなく、入社意思を高めてもらう機会になることも忘れてはなりません。
採用に直結する面接を実施する前に、企業によってはカジュアル面談を取り入れている企業も増えてきています。選考とは直接関係がない段階から、人材へのアプローチを行っていくことが大切です。
採用後のフォロー
採用候補者に内定通知を行い、承諾を得られたら、入社前・入社後のフォローを適切に行っていく必要があります。入社前の段階でフォローが適切に行われていなければ、内定辞退につながる可能性があるでしょう。
内定辞退を防ぐためには、積極的に自社の情報を開示していくとともに、従業員との交流の場を設けるなどして入社意欲を高めてもらうことが大切です。また、入社後においては職場環境や業務にきちんとなじめているかを確認するために、定期的な面談を行うようにしてみましょう。
採用後のフォローについて、さらに詳しく調べたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
(参考:『内定者フォローの8つの手法。メール、SNS、イベント等いつどんな方法で実施する?』 )
採用担当者に求められるスキル
採用業務を円滑に進めていくには、採用担当者のスキルも重視しておく必要があります。採用担当者に求められるスキルとして、以下のものが挙げられます。
・法令に関する正確な知識
・自社の業務についての知識
・調整力、交渉力
・市場動向への理解
・プレゼンテーションスキル
・面談スキル
採用担当者に求められるスキルについて、さらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
(参考:『採用担当者とは?役割や求められるスキル・向いている人の特徴をまとめて紹介』 )
法令に関する正確な知識
採用担当者は労働基準法をはじめとした各種法令の知識を正しく理解しておかなければなりません。法令に関する知識が不足していると、求人情報の文面や会社説明会などでの回答、面接などのやりとりでの場面で支障が出る恐れがあります。
求人をかける際の労働条件の明示や個人情報の取り扱いなどは、慎重に業務を進めていくものが多いでしょう。また、面接時においては本人の適性や能力と関係がない事項を質問することは就職差別と見なされる恐れがあるので、注意が必要です。
具体的には、出生地に関することや家族にかかわること、宗教・思想などに関することは厚生労働省の「公正な採用選考の基本 」というガイドラインで禁じられています。採用業務を進める際は、関係する法令やガイドラインでどのように定められているかをチェックしておきましょう。
自社の業務についての知識
採用担当者は応募者に対して、自社の業務や職種などについて説明する機会が多いため、日頃から内容をきちんと把握しておく必要があります。常に現場の従業員に同席してもらえるとはかぎらないので、職種ごとの業務内容や専門用語などを学んでおくことが大事です。
応募者が自社に対する関心を失ってしまわないために、素早く回答できる体制を整えておきましょう。
調整力・交渉力
採用業務に取り組んでいく中では、スケジュールの調整や他部署との交渉といった部分は日常茶飯事です。採用業務は人事部だけで完結するものではなく、いかに周囲と連携できるかが成否を分ける部分があります。
現場の意見や経営層の考えを柔軟に取り入れて採用計画を立てる必要がありますし、面談や面接においては他部署の協力が不可欠でしょう。また、スケジュールの変更なども頻繁に発生するので、臨機応変に対応していく姿勢が求められます。
市場動向への理解
採用計画に沿って人材が獲得できれば問題ありませんが、実際には思うように人材を採用できないといったケースは珍しくありません。内定辞退者が多かったり、そもそも応募が少なかったりする場合は、市場動向のリサーチ不足が原因ということもあります。
採用業務を進めるにあたっては、現在の求人倍率や競合他社の動向などを十分に把握しておくことが大切です。また、求職者が企業に対して何を求めているかというニーズも把握しておきましょう。
プレゼンテーションスキル
採用活動は企業側が一方的に応募者を選考する場ではなく、応募者のほうも企業を選ぶ場だといえます。そのため、受け身の姿勢で応募を待つのではなく、企業自らが積極的に情報発信していくことが必要です。
採用担当者においては、会社説明会や面接の場を通じて自社の魅力をわかりやすく伝えていくプレゼンテーションのスキルが求められます。採用候補者の入社意欲を高められるように、仕事への興味を持ってもらったり、不安の払拭につながったりするようなアピールを行っていきましょう。
面談スキル
面談や面接を通じて、応募者の考えを引き出し、しっかりと人材を見極めていく必要があります。応募者の話に丁寧に耳を傾け、自社によりよいイメージを抱いてもらうことが重要です。
採用担当者の主観で人材を判断してしまわないように、あらかじめ評価基準を明確にしておくことが大切ですが、形式的な面談や面接にならないように気をつけましょう。応募者が本音で話しやすいように、コミュニケーションを進めていくことが大切です。
採用業務において抱えがちな課題
採用業務は広い範囲で業務に取り組む必要があるため、さまざまな課題を抱えてしまいがちです。ここでは、採用担当者が特に抱えやすい課題を解説します。
母集団の形成が困難に感じる
採用業務は採用計画で定めたスケジュールや予算によって進めていく必要があります。しかし、採用チャネルや採用手法をよく検討しないまま進めてしまうと、母集団の形成に支障が出ることがあるでしょう。
求人を出したものの、思うように応募が集まらないといった場合は、採用チャネルが合っていないことが考えられます。採用チャネルを選ぶ前に、どれくらいの母集団を形成できるのかを十分にリサーチしておきましょう。
また、応募者数はそれなりにあっても、自社とマッチする人材が少なく、選考に多くの時間やコストがかかるといったケースもあります。この場合は、採用条件のハードルが低過ぎる可能性があるため、条件の見直しなどを行うことが大事です。
母集団について考えるときは、人数だけを重視するのではなく、人材の質についてもよくチェックする必要があります。母集団の形成について、さらに詳しく調べたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
(参考:『母集団形成と選考を改善し、ミスマッチ解消にも効く!「採用ピッチ資料の作り方」最前線』 )
人材の見極めが難しい
人材の採用を急ぎ過ぎてしまうと、入社後にミスマッチが生じ、早期離職につながるケースがあります。面接時の印象と入社後の働きにギャップが生じているときは、採用時の評価基準があいまいなことが原因となっているケースがあるでしょう。
人材の見極めは実際に業務を担当させてからではないと把握できない部分もありますが、採用担当者の主観的な判断で人材を評価してしまっている場合もあるため、注意が必要です。入社後のミスマッチが多く見られるときは、人材の評価基準を見直して採用担当者の間で共有し、できるだけ客観的な評価が行えるようにしましょう。
人材の見極め方について、さらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
(参考:『即戦力の定義とは?人材の見極め方や定着率向上のコツを紹介』 )
業務量が増えてリソースが不足しがちになる
採用を予定している人数が多かったり、ダイレクトリクルーティングなど一人の採用候補者に時間を多く割かなければならなかったりする場面では、何かとリソースが不足しがちです。常に人手が足りないという悩みは採用業務においてありがちなので、求人を行う前に必要な体制を整えておくことが大切だといえます。
また、採用担当者が他の業務を兼任している場合は、採用候補者への対応が不十分になる恐れがあり、採用業務がかえって非効率になることもあるでしょう。できるだけ専任の担当者を配置して、採用業務だけに専念できる環境を整えることが大事です。
採用業務を効率化するためのポイント
採用業務の負担を軽減するには、効率化につながる取り組みを進めていく必要があります。採用業務の効率化につながるおもな施策として、以下のものが挙げられます。
・業務フローや採用計画を見直す
・採用管理システムの導入を検討する
・オンライン選考の実施を考えてみる
・社内での理解を十分に深める
それぞれの施策について解説します。
業務フローや採用計画を見直す
採用業務の負担軽減を図るには、本当に必要な業務を見極めることが大切です。例えば、エントリーシートが必要であるかや面接の回数に問題がないかなど、業務フローを定期的に見直してみましょう。
不要な業務を削減すれば、その分だけリソースを確保できるので効率よく採用業務を進められるはずです。また、採用人数や採用条件に問題がないかという点についても、採用計画と照らし合わせて検討してみましょう。
採用管理システムの導入を検討する
採用業務は応募者へのメールの返信や書類の作成、スケジュールの調整など細かな業務が数多く存在します。すべての業務を手作業で行っていると時間や手間が大きくなってしまうため、採用管理システムの導入を検討してみるのも一つの方法です。
あらかじめ文面を作成しておけば、応募の受付やスケジュールの調整、結果の通知といった業務負担を軽減できます。リソースに余裕ができることで、面接や内定者のフォローなど、本来時間をかけるべき業務に専念しやすくなるでしょう。
オンライン選考の実施を考えてみる
採用予定人数が多い場合は、選考を行う作業だけでも膨大な業務量になることがあります。選考に負担を感じている場合は、オンラインで選考を行ってみることを検討してみましょう。
オンライン選考を行うことで、やりとりを録画できますし、応募者の評価を行える機能などが備わっているツールもあるので業務を効率化できます。面接内容の記録や管理を行いやすく、採用担当者の間での情報共有がスムーズに行えるでしょう。
オンラインでの選考について、さらに詳しく調べたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
(参考:『オンライン面接を徹底解明!メリット・デメリットや導入にあたっての注意点』 )
社内での理解を十分に深める
採用活動は競合他社との競争といった側面があるため、スピードを重視して進めていく必要があります。採用候補者への対応が遅くなれば、よい人材が他社に流れてしまい、必要な人材の確保が難しくなるでしょう。
採用スピードを高めるためには、社内でのコミュニケーションが円滑に取れる体制を整えておくことが大切です。現場の従業員や経営層の理解を得て、採用業務を進めるようにしましょう。
まとめ
企業が安定的に事業を行い、継続的な成長を遂げていくには、必要な人材を適切なタイミングで獲得していくことが重要です。採用の現場に直接かかわる採用業務を効率化していけば、競合他社よりも有利に採用活動を進めていけるでしょう。
また、円滑に採用業務を進めていくには、十分なリソースを確保しておくことも大切です。採用計画を立てる段階で、採用業務に無理が生じていないかを精査し、必要な人員を配置するようにしましょう。
(制作協力/株式会社STSデジタル、編集/d’s JOURNAL編集部)
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