【2社事例・設計シート付】新採用メソッド「ミートアップ」活用術

d’s JOURNAL 編集部

最近よく耳にする「ミートアップ」。手軽に集客でき、採用ブランディングを行えることから、新たな採用メソッドとして取り入れる企業も増えています。しかし、時流に乗って実施してはみたものの、「思うように人が集まらない」「欲しい人材にリーチできない」といった悩みもあるようです。

本記事では、採用におけるミートアップとは何なのか、そのメリットや種類、さらにはミートアップで高い採用実績を持つキャディ株式会社とHeaR株式会社の活用・運用ノウハウをご紹介します。

※ページ下部より、「即戦力を採用できる!ステップ別 採用ミートアップ設計シート」をダウンロードできます。ぜひご活用ください。

新たな採用メソッド「ミートアップ」とは?

企業がさまざまな採用手法を模索する中、2015年ごろからミートアップが採用にも取り入れられるようになりました。手軽に集客でき、参加者に直接自社の魅力を伝えられることから、注目を浴びています。

採用ミートアップのメリットは、大きく下記の4つ。

・「ファンづくり」「社風の認知」:社員が参加者と直接交流することで、自社の事業はもとより、サイトの情報だけでは伝わりづらい社風も理解してもらい、ファンになってもらいやすい。

・「採用率向上」:リラックスした雰囲気の中で行われるため、参加者が打ち解けやすく、採用につながる可能性が高まる。

・「低コスト」:社員に登壇してもらい、社内で開催することで多くのコストを抑えられる。

採用ミートアップの主なタイプは、参加者同士が交流する「交流会型」、エンジニア採用などに効果的な「勉強会型」、企業説明ができる「説明会型」の3つになります。開催時には、LT(ライトニングトーク)と呼ばれる5分程度のプレゼンを行いますが、ミートアップは継続的な実施が求められるため、トークテーマの設定や登壇者の選定など、それなりの手間がかかるのも事実です。それでは、実際はどうなのか、採用ミートアップを活用している2社の事例をご紹介しましょう。

会社や社員のリアルな空気感を伝えられる

2017年創業のキャディ株式会社は、独自の見積もりシステムによる受発注プラットフォーム「CADDi」を提供し、売上高が昨年比で6倍となるなど成長著しい企業です。同社は人材拡充に向け、2019年に年間約40回のミートアップを開催し、応募総数が1,000件に達しました。同社の人事担当・梅木道子氏が語るミートアップ運営のノウハウとは――

キャディ株式会社 人事担当 梅木道子氏。同社ではEmployee Success(人事)に配属。

 

梅木氏:当社は、2021年8月までに99億円を超す資金調達を行い、これを機に一層の採用強化・認知度向上を図ってミートアップに力を入れるようになりました。現在は、転職希望者向け・応募者向けの2本立てで実施しています。転職希望者向けでは多くの企業と共催し、さまざまなテーマでディスカッションを行うなど、多彩なコンテンツを提供しています。参加者は、当社単独開催で1回につき50人ほど、共催では100人を超えるほどとなっています。

準備段階では、タイトルと日時・会場だけを決めて告知開始。TwitterとFacebookをメインに、Wantedlyやnoteも使って情報発信していきます。イベントの詳細は集客しながら詰めていき、応募が伸びないようなら広告やSNSでの告知のアクションを追加します。開催にあたって注意しなければならないのは、設定したペルソナとテーマの間にズレがないこと。そこが一致していないと、採用したい人材が集まってくれないからです。

転職希望者向けミートアップの終了後は、参加者に選考に進んでいただけるよう、応募者向けのミートアップのご案内をします。このミートアップは2部構成で、代表のLTがあった後に当社社員を交えた3~4人ほどのグループに分かれ、現在はオンラインでのブレークアウトセッションを20分×2回行っています。応募者向けのミートアップでは、事業や仕事の説明は行いません。当社のカルチャー、会社や社員の空気感など、テキストでは伝わらないものを感じ取ってもらうようにしています。

それによって、参加者にとって当社が合うかどうかが実感として伝わり、合わないと感じた人は応募に来ないので、ミスマッチを防ぐことができます。終了後のアンケートでは、満足度が毎度90%以上と高く、アンケート回答者の半数ほどは選考に進んでいただいています。

1~2回で諦めないこと。回数をやり切ってノウハウを蓄積しよう

梅木氏:オンライン開催では、参加者にとって堅苦しく感じることも少なくありません。そのため、質問もなかなか出てこない場合もあります。そんなときのために、事前に質問を参加者から集めておきます。

また、ブレークアウトセッションでは、途中の休憩時間中もマイクを切らずに私たち人事・採用担当者から当社の社員に話し掛けるようにしています。参加者が画面をオフにしていても、ラジオのように社員同士の会話が流れているので、「社員さんのやり取りを見てキャディのことが好きになりました」と言ってくれる参加者もいてうれしいですね。自社のファンになってもらうには、こういうエモーショナルな部分が大切なのではないかと考えています。

ミートアップを企画するときに心掛けたいポイントは、最初にある程度の回数を実施すると決めて、それをやり切ってみることです。初めから100点満点が出なくても、どんどん改善していけばいいものだと思います。当社の場合、開催後のアンケートで運営側が気づかなかった問題点を参加者から指摘いただくことで、開催のたびに改善を図ることができました。1~2回の開催だけで、期待するような結果を得られずにミートアップの開催を諦めていたら、社内にノウハウが残っていなかったでしょう。

「あわよくば採用リスト」で欲しい人材を集客

2018年設立のHeaR株式会社は、採用コンサルティング事業やキャリアトレーニング事業の「シゴトレ」などを展開しています。これまで、数々のミートアップの企画・開催を支援してきた同社採用コンサルタントの田島彩名氏が語る、採用ミートアップを成功させる秘訣とは――

HeaR株式会社 採用コンサルタント 田島彩名氏。同社では人事・マーケティングなどを担当後、現在採用コンサルタントとして採用戦略の設計などに従事。

 

田島氏:私が中途入社した2020年当時、予算の少ない中でどのように人材を採用するかが大きな課題でした。最適な人材にアプローチするためには、求人広告やエージェントなどを使ってもなかなかリーチできないことがあります。そこで、SNS経由で知り合った人たちとコネクションをつくるためにミートアップを開催し、求める人材を獲得できるようになったんです。

ミートアップの集客が難しいとよく聞きますが、当社では社員全員がTwitterに取り組み、日ごろからさまざまなツイートをチェックし、当社と価値観が合いそうな人をリストアップしています。この「あわよくば採用リスト」を基に、ミートアップの募集をかけています。

転職希望者向けのミートアップには、交流会、勉強会、説明会などがあり、採用見込み対象者の会社への関心度などに合わせて選択しますが、当社がよく実施するのは、勉強会と交流会のミックスパターンです。

たとえば、マーケターに来てもらいたいなら、「当社のマーケティング手法をお教えします」という勉強会を開き、その後の交流会で社員がお話しさせていただき、当社とマッチしそうな人がいたら個別に面談のお誘いをする。ハイクラス人材が欲しければ、少し高度なテーマの勉強会を設定するなどして、ミスマッチを防ぐ工夫をしています。

選考がある程度進んでいる応募者には、私たちが金曜日の夕方に飲み物やお菓子をつまみながら行っている全体会議に参加してもらっています。そこでは、会社の課題や今後の対策についてディスカッションするのですが、その会議に参加いただいた方の内定承諾率は100%です。ミートアップ開催日から、採用決定までのリードタイムが長くなることもありますが、月に1度は採用見込み対象者に価値提供ができるような勉強会や交流会などを開いてフォローしていきます。

ミートアップの開催には、ペルソナの設定から実施までかなりの工数がかかるので、最初は大変です。しかし、運営の形が決まってきたら新入社員に任せてみるのもオススメです。ミートアップの運営には、仕事のエッセンスが詰まっているので、新人教育にも最適だと考えています。

HeaR株式会社作成のイベント開催チェックリスト

現場の協力、準備、アフターフォローが必須

田島氏:ミートアップの実施で心掛けていることが3つあります。1つ目は、現場メンバーとの協力関係を作ること。ミートアップは人事のみならず、会社を挙げてのイベントです。現場メンバーとは、どんな人材を採用したいのかを共有し、そのために「○〇さんにこのテーマで話してほしい」といった要請にも応えてもらえるように、コミュニケーションを取っておかなければなりません。

2つ目は、入念な企画と準備です。準備さえ完璧にできていたなら、90%は成功すると考えています。企画のゴールは明確になっているか、用意したコンテンツはゴールに沿っているのか、自分たちが設定したペルソナに間違いはないのか、そのペルソナのインサイトはどんなものなのかなど、準備を入念に行っています。

3つ目は、アフターフォローです。ミートアップで会社に興味を持ってくれたとしても、人の心は簡単には動きません。開催後のアクションまでをきちんと企画に織り込み、細かなフォローをしてこそ、転職を決断するタイミングで「この会社に来たい」と思ってもらうことができます。アフターフォローを継続的に、丁寧に行って初めて、ミートアップをやってよかったと言えるのではないでしょうか。

写真提供:キャディ株式会社、HeaR株式会社

取材後記

「低コスト」に目が行きがちなミートアップですが、採用ブランディングにおいて他のツールをしのぐ効果も期待できます。今回ご登場いただいた2社では、転職希望者向けだけでなく、選考に入った応募者向けにもミートアップを実施しています。

社員と採用見込み対象者の距離を縮めるミートアップは、ウェブサイトなどの情報だけでは表現しづらい会社の魅力を伝えることができると、梅木・田島両氏は口をそろえます。そしてそれが、内定承諾率向上にも直結するわけです。新人教育にも最適というミートアップ。いろいろな使い方がありそうです。

企画・編集/海野奈央(d’s JOURNAL編集部)、野村英之(プレスラボ)、取材・文/森 英信(アンジー)