【弁護士登壇】人事・採用担当者必見!法律的にNGな採用のやり方~求人・面接・内定~

第一東京弁護士会労働法制委員会、日本CSR普及協会(雇用労働専門委員)、経営法曹会議等に所属。経営者側労働法を多く取り扱い、労働審判・労働訴訟等の係争案件、団体交渉(組合・労働委員会)、労災(行政・被災者対応)、労務DD対応を得意とする。
経営課題を抽出し、依頼者のニーズを踏まえたベストプラクティスの提案を心掛ける。
主著に『労働行政対応の法律実務』(中央経済社 共著)、『「働き方改革実行計画」を読む』(月刊人事労務実務のQ&A 2017年7月号 日本労務研究会 共著)など。

募集・採用における差別などの禁止
募集・採用に関わる情報提供など
採用時における法的規制

募集広告の文言はもちろん、採用面接でうっかり聞いてしまうと個人情報保護に抵触する内容などについて、普段から人事・採用担当者は法令遵守を心掛けていると思います。

そこで改めて、法律の専門家である弁護士の先生に登壇していただき、求人・面接・内定時に法的な観点からはもちろん、レピュテーションリスクも含め、注意すべきポイントについて解説していただきました。

募集・採用における差別などの禁止

どのような人を募集・採用するかは原則自由

募集・採用においては、基本的には会社がどのような人を労働者として募集・採用するかは、法律などによる特別の規制がない限り、原則自由とされています。実際、過去に行われた裁判の判例でも、そのように示されています。

ただし、各種差別については法律で明確に禁止されていますので、注意する必要があります。具体的には主に以下の差別です。私が実際に受ける相談事例なども紹介しながら、それぞれ解説していきます。

・男女差別
・年齢による差別(年齢制限)
・国籍を理由とする差別
・障害者差別(能力による差別)

男女差別

男女雇用機会均等法第5条において事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならないと示されています。つまり、募集・採用時の性別を理由とする差別を禁止しています。

厚労省の指針では、具体的にどのような事象が男女差別に該当するのか、明確に示していますので、参考にしていただきたく思います。

 

一方で、男女差別に該当しない採用・募集のケースもあります。具体的には「ポジティブアクション」に該当する場合です。例えば、1つの雇用管理区分における女性労働者の割合が男性の4割を下回っており、それを改善する目的であれば女性のみを募集・採用することが認められています。

その他、指針で定められている職務として、「芸術・芸能の分野における表現の真実性などの要請から男女のいずれかのみに従事させることが必要である職務」(ドラマの役者など)、「防犯上の要請から男性に従事させることが必要な職務」(警備員、守衛など)、「労基法などの法律上、男女のいずれかの就業が禁止されている職務」(深夜業務、坑内業務、助産師など)、「宗教上・風紀上・スポーツにおける協議の性質上その他の業務の性質上男女のいずれかのみに従事させることについてこれらと同程度の必要性があると認められる職務」(巫女など)についても、例外的に、男女のいずれかに限定しても差別には該当しません

年齢による差別(年齢制限)

「事業主は、労働者がその有する能力を有効に発揮するために必要であると認められるときとして厚生労働省令で定めるときは、労働者の募集及び採用について、厚生労働省令で定めるところにより、その年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない」

このように労働施策総合推進法第9条において、年齢を理由に採否を決定してはならない、と明確に示されています。一方で、こちらも例外があります。具体的には以下の通りです。

・定年を設けている事業者がその定年を下回る年齢であることを条件とする場合
・労基法により年齢制限がある(警備業務など)
・長期勤続によるキャリア形成を図るため、若年者等を期間の定めのない労働者として募集する場合
・技能・ノウハウの継承の観点から、特定の職種において労働者が相当程度少ない特定の年齢層に限定し、かつ、期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合
・芸術・芸能の分野における表現の真実性などの要請がある場合
・60歳以上の高齢者、就職氷河期世代の不安定就労者、無業者または特定の年齢層の雇用を促進する政策の対象となる者に限定して募集・採用する場合

また、若年層のキャリア形成に関する採用方法として、以下のような相談を実際にいただいたりもします。

「長期雇用を前提とした正社員について、若年層を中心とした採用は可能か」

結論からお伝えすれば、このような採用も可能となります。ただし、期間の定めのない労働契約であり、長期間の継続勤務による職務に必要な能力の開発及び向上を目的とすること、また、新卒者もしくは同等の対象者の職業経験を不問とすることなどを理由に、基本的には35歳未満の年齢制限とすることが必要となります。

国籍を理由とする差別

 

国籍差別に対する法律ならびに、厚労省による指針は上記のような内容です。ただし、これらの内容はあくまで採用後の話です。また、外国人に対する職業紹介や職業指導などに限定した内容となっており、事業主が直接外国人を募集する際には適用されません。

とはいえ、自社の採用ページに明らかに外国人差別と思われる求人広告を記載してよいのかというと、好ましくないと言わざるを得ないでしょう。

法律違反ではありませんが、会社のブランド毀損やネガティブな評判が広まるなど、レピュテーションリスクが懸念されますし、コンプライアンスの観点からは、社会的見て外国人差別との指摘を受けるような表現は、できるだけ避けるべきと考えます

障害者差別(能力による差別)

障害者雇用促進法第34条において「事業主は、労働者の募集及び採用について、障害者に対して、障害者でない者と均等な機会を与えなければならない」と示されています。そして厚労省の指針では具体的に、以下のことを禁止事項として示しています

・障害者を採用対象から排除する
・障害者のみに不利な条件を課す
・障害者でない者を優先して採用する

では、こちらもよく相談される事例ですが、次のケースは障害者差別に該当するでしょうか。

【相談事例】

物流会社がドライバー候補生(採用後に運転免許を取得させ、ドライバーとして勤務させる)の募集に際し、「運転免許を取得できる視力・聴力を有していること」を条件とすることは可能か。

結論から言えば、視力や聴力はドライバーとしての業務を行うにあたり特に必要なものといえるため、障害者差別には該当せず可能と考えます。

「障害者に対する差別の禁止に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針」(障害者差別禁止指針)には、「募集に際して一定の能力を有することを条件とすることについては、当該条件が当該企業において業務遂行上特に必要なものと認められる場合には、障害者であることを理由とする差別に該当しない。」と明示されています。

一方で、特に必要でないにもかかわらず、障害者を排除するために条件を付けることは差別に該当します。

「業務遂行上特に必要」とは、その能力を要するとしなければ業務の遂行に不都合が生じてしまうと客観的に見て真に必要と認められる場合であるとされています。

つまり同事例であれば、運転免許という条件(能力)がなければドライバーとして働くことはできないため、差別禁止には該当しない、ということになります。

募集・採用に関わる情報提供など

求人広告における注意点

 

募集・採用に関わる情報提供、求人広告におけるNGワードや、気をつけたい表現などについて解説します。スライドのとおり、「性別」「年齢」「障害者」に加え、コンプライアンスの観点からは先ほど紹介した国籍差別も加え、それぞれで注意していきます。

例えば「性別による制限に当たる表現の禁止」において、その表現は、看護婦は看護師に、営業マンは営業職に、ウエイター・ウエイトレスはホール従業員などとします。

 

職業安定法による規制もあります。同法では、求人広告は的確で明確であること、理解できる内容であること、労働者に誤解を与えない、平易な表現を用いると明記されています

こちらはあくまで努力義務ですが、求人広告の内容と実際の業務内容が異なり、トラブルに発展しているケースがあり、実際に私のところにも相談があります。

場合によっては罰則に該当することもありますので、同内容を参考に、適切な求人広告を作成する必要があるでしょう。

労働条件提示における注意点

 

職業安定法第5条の3において労働者の募集を行う者は、労働者の募集において、労働条件を明示しなければならないと示されています。具体的に明示すべき事項は、スライドの内容です。なお、同内容は採用時の明示と重なるものもありますが、下線部の内容は、募集・求人の場合にのみ明示が必要なものです。

明示方法は原則、書面とされていますが、求職者やハロワークなど職業紹介先が希望した場合は、FAX・電子メール・SNSなどでも可能です。明示時期については、募集主やハローワークなどが応募者や求人者と「最初に接触する時点」とされており、面談や面接、あるいはメールなどで労働条件などに関する質問を受けた時点を指します。

条件が変更になった際も、先と同様の手法で可能な限り速やかに伝えるべきであると法律で明示されています。変更箇所に下線を引く、色を変える、注記などでも構いません。重要なのは、迅速に求職者に伝えることです。

そして、こちらもよく受ける相談ですが、募集時点で労働条件が未確定な場合の対応についてご説明します。

回答としては、労働条件の一部が確定していない場合であっても、未確定の部分について明示を行わないのではなく、一定の幅を持った明示を行うことが適切とされています。

例えば給与の場合であれば、具体的にわかっている範囲として「25万~30万円」などと明記します。なお一定の幅を持つ記載自体は、法律で認められています。

採用過程で数字が具体的に固まった場合には、繰り返しになりますが、こちらも迅速に求職者に伝える必要があります。給与に限らず、他の条件も同様です。

個人情報取得に関する注意点

 

個人情報の取得に関しては、特に多くいただくご相談で、具体的にはスライドのような内容の相談をいただくことが多いです。特に、健康に関しては実際に働きだしてからトラブルになるケースも少なくないため、企業としては事前に聞いておきたい内容でしょう。

抑えておくべきポイントは“要配慮個人情報”に該当するかどうかです。改正個人情報保護法2条3項において、要配慮個人情報は次のように示されています。

「本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取り扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報」

「政令で定める記述等」とは、具体的には以下の内容をいいます。

・身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他の個人情報保護委員会規則で定める心身の機能の障害があること。
・本人に対して医師などにより行われた疾病の予防および早期発見のための健康診断などの結果。
・健康診断などの結果に基づき、または疾病、負傷その他の心身の変化を理由として、本人に対して医師などにより心身状態改善のための指導または診療もしくは調剤が行われたこと。

これらの記述などが含まれる個人情報が要配慮個人情報となり、これを企業が取得するためには、求職者本人の“同意”が必要とされています。

また職安法では、求職者などから個人情報を収集し、保管・使用する場合は、業務の目的達成に必要な範囲で、直接本人から収集等しなければならないとされています。もっとも、本人の同意がある場合は、業務の目的の達成に必要な範囲でなくても収集等することが認められています。

さらに、「社会的差別の原因となるおそれのある」個人情報を取得する際には、採用目的を達成するために職務上どうしても必要(必要不可欠)であることを前提に、どのような目的で取得するのかを明確に示した書面を用意します。回答の有無は任意であること、情報を提供することに対して本人が同意している証明、つまり署名をもらいます。書面の内容についても、十分に求職者に説明するとの配慮が必要です。

このような内容を踏まえて、冒頭の相談事例を改めて振り返ると、以下のような回答になります。

 

※スライドの(要件ア~ウ)は以下の通り。
ア:採用目的達成の上で必要不可欠であること
イ:収集の目的を示す
ウ:本人から任意に提出を受ける

採用面接においても、これまで紹介してきたことに留意しながら、質問をする配慮が求められます。基本的人権を尊重し、就職差別につながるおそれのある事項については、聞かない方が望ましいと言えるでしょう。厚生労働省も以下のような点に留意するよう求めています。

採用時における法的規制

最後に、採用時における法的規制について解説します。まずは先ほど求人の箇所でも説明したように、労働条件を明示する必要があります。

 

次に、採用内定の法的な性質です。まず、会社と求職者の労働契約は、何時をもって成立となるのか――。労働契約法6条では、書面ではなくお互いが合意に達した段階で成立すると明記されているため、解釈によると言えるでしょう。

このような背景から、特に、内定後に別途、書面による契約書の締結などのフローがない場合においては、会社が内定を出した段階で、労働契約は成立したと評価されやすくなります。実際、判例でも同様の結果となっています。

内定取り消しが認められるためには、解雇と類似の要件が必要となります。内定後新たに発覚した、事前段階では知ることができなかった経歴詐称や犯罪歴などがある場合は、そのような事情が社会常識的に見て合理的といえるか否かという観点から、内定を取り消すことが認められるか否かが判断されることになります。

また、内容を取り消す理由については、内定通知書や契約書に明記された取消事由に限られないことが、過去の判例でも示されています。

編集後記

採用活動は、「求人票作成」「面接」「内定」といった各プロセスごとに法改正の影響を受けることに加え、労働関係の法律に触れる機会が少ない配属予定部門の担当者にも協力していただくことも多いことから、法改正に伴う正しい知識をアップデートし、それを関係者に周知徹底することがとても重要です。

良かれと思ったことが意図せず法律に反していたり、知らず知らずのうちに信頼を損なったりすることのないよう、法的に問題ない範囲を理解した上で定期的に採用活動を振り返り、社内のガイドラインを作成・見直す機会を持つことが望ましいといえるのではないでしょうか。

取材・文/杉山忠義、編集/白水衛・d’s JOURNAL編集部

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